【まとめ】
アメリカのバイデン政権が中国への融和を示すような動きをあいついでとった。
アメリカ新政権の中国への姿勢や態度は日本でもきわめて関心度が高い。その新政権は登場から5週間ほど、新任の高官たちは議会の公聴会などでみな中国をアメリカの競合相手と呼び、中国側の軍事拡張や不公正な経済慣行、さらには人権弾圧への批判的な言辞を述べる。
その発言を集めると、バイデン政権も中国にはなかなか強硬な態度をとるかのようにもみえる。日本の識者たちももっぱらバイデン政権の対中政策は強硬になるとの見方が多いようだ。だがその判断の根拠となるのはみな言葉だけのようである。
ところがバイデン政権が実際の公式の行動として中国発の新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と呼ぶことを公式に禁止した事実は日本では意外と知られていないようだ。
それだけではない。
バイデン政権は同時にアメリカの各大学が中国共産党の対外宣伝教育機関の「孔子学院」との接触を米側公的機関に報告することを義務づけたトランプ前政権の行政命令をも撤回した。
両方とも中国への融和や忖度を思わせる措置である。単なる言葉ではなく、実際の行政措置という行動なのである。
「バイデン政権はトランプ前政権と同様の対中強硬策をとる」と断言する向きは直視すべき現実だろう。
この二つの措置はいずれもトランプ政権の政策の逆転だった。しかもその逆転に対してアメリカ国内ではすでに激しい反対論も生まれてきたのである。
バイデン大統領は2021年1月26日、新型コロナウイルスのアメリカ国内での大感染の結果、アジア系米人への差別や憎悪が生まれているとして、その種の差別を取り締まる大統領令を出した。
その行政令に付随した覚書でバイデン大統領は「このウイルスの起源の地理的な場所への政治指導者の言及がこの種の外国人嫌悪を生んだのだ」と述べ、連邦政府としては「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」という呼称を使うことを禁ずることを宣言した。政府関連の文書でのその種の用語の禁止だった。
同覚書の「政治指導者」とは明らかにトランプ前大統領やその閣僚らを指していた。トランプ氏は2020年春から率先して「中国ウイルス」という呼称を使っていたからだ。
トランプ政権の方針を逆転させたこの措置には保守系の政治学者ベン・ワインガルテン氏が大手雑誌ニュースウィーク最新号への寄稿で「国際的な感染症を発生地名で呼ぶことはごく普通であり、その禁止は隠蔽の責任を隠す中国政府を喜ばし、米国の国家安全保障への脅威となる」と激しく反対した。
さらに注目されるのはアメリカ国内での孔子学院に関するバイデン政権の動きである。バイデン政権が孔子学院に関するトランプ前政権の規制の行政令を撤回したのだった。
その措置も「中国ウイルス」という用語の禁止令が出たのと同じ1月26日だった。
トランプ政権は孔子学院がアメリカの多数の大学で講座を開くのは中国共産党の独裁思想の拡散やスパイ活動のためだとして刑事事件捜査の対象としてきた。
トランプ政権はその政策の一環としてアメリカ国内の各大学に対して、もし孔子学院との接触や契約があれば政府当局に報告することを行政命令で義務づけてきた。
驚くべきことは、トランプ氏が、7300万超という共和党候補としては過去最高の票を獲得したことです。これは前回2016年の大統領選より約1千万票多いです。リベラル・メディアでは、コロナ対策の失敗だけではなく国際協調を無視した外交・通商や人種・民族を差別するような言動、自らを批判する報道機関を「フェイクニュース」と決めつける手法として、取り上げられ、徹底的に糾弾されたトランプ氏ですが、それを膨大な数の米国民が拒否していないのです。
・バイデン政権が「中国ウイルス」「武漢ウイルス」の呼称禁止。
・米大学が「孔子学院」との接触を報告する義務づけも撤回。
・バイデン大統領の実際の行動はすでに習近平政権への融和路線。
アメリカのバイデン政権が中国への融和を示すような動きをあいついでとった。
アメリカ新政権の中国への姿勢や態度は日本でもきわめて関心度が高い。その新政権は登場から5週間ほど、新任の高官たちは議会の公聴会などでみな中国をアメリカの競合相手と呼び、中国側の軍事拡張や不公正な経済慣行、さらには人権弾圧への批判的な言辞を述べる。
その発言を集めると、バイデン政権も中国にはなかなか強硬な態度をとるかのようにもみえる。日本の識者たちももっぱらバイデン政権の対中政策は強硬になるとの見方が多いようだ。だがその判断の根拠となるのはみな言葉だけのようである。
ところがバイデン政権が実際の公式の行動として中国発の新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と呼ぶことを公式に禁止した事実は日本では意外と知られていないようだ。
それだけではない。
バイデン政権は同時にアメリカの各大学が中国共産党の対外宣伝教育機関の「孔子学院」との接触を米側公的機関に報告することを義務づけたトランプ前政権の行政命令をも撤回した。
両方とも中国への融和や忖度を思わせる措置である。単なる言葉ではなく、実際の行政措置という行動なのである。
「バイデン政権はトランプ前政権と同様の対中強硬策をとる」と断言する向きは直視すべき現実だろう。
この二つの措置はいずれもトランプ政権の政策の逆転だった。しかもその逆転に対してアメリカ国内ではすでに激しい反対論も生まれてきたのである。
バイデン大統領は2021年1月26日、新型コロナウイルスのアメリカ国内での大感染の結果、アジア系米人への差別や憎悪が生まれているとして、その種の差別を取り締まる大統領令を出した。
その行政令に付随した覚書でバイデン大統領は「このウイルスの起源の地理的な場所への政治指導者の言及がこの種の外国人嫌悪を生んだのだ」と述べ、連邦政府としては「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」という呼称を使うことを禁ずることを宣言した。政府関連の文書でのその種の用語の禁止だった。
同覚書の「政治指導者」とは明らかにトランプ前大統領やその閣僚らを指していた。トランプ氏は2020年春から率先して「中国ウイルス」という呼称を使っていたからだ。
トランプ政権の方針を逆転させたこの措置には保守系の政治学者ベン・ワインガルテン氏が大手雑誌ニュースウィーク最新号への寄稿で「国際的な感染症を発生地名で呼ぶことはごく普通であり、その禁止は隠蔽の責任を隠す中国政府を喜ばし、米国の国家安全保障への脅威となる」と激しく反対した。
さらに注目されるのはアメリカ国内での孔子学院に関するバイデン政権の動きである。バイデン政権が孔子学院に関するトランプ前政権の規制の行政令を撤回したのだった。
その措置も「中国ウイルス」という用語の禁止令が出たのと同じ1月26日だった。
トランプ政権は孔子学院がアメリカの多数の大学で講座を開くのは中国共産党の独裁思想の拡散やスパイ活動のためだとして刑事事件捜査の対象としてきた。
トランプ政権はその政策の一環としてアメリカ国内の各大学に対して、もし孔子学院との接触や契約があれば政府当局に報告することを行政命令で義務づけてきた。
孔子学院が中国共産党の直轄機関として対外的に中国政府の共産主義独裁の思想や人権抑圧の統治の正当化の理論を広げる政治プロパガンダの拡散だけでなく、アメリカ側へのスパイ活動、ロビー工作、アメリカ国内の中国人留学生の監視など違法活動にもかかわっている、というのがトランプ政権の認識だった。だからその活動を最大限に規制するという方針を打ち出していたのだがバイデン政権はそのトランプ政権の行政命令をなくす措置をとったのだった。
この措置もコロナウイルスの呼称の措置も同政権は当初はあえて公表しなかっためアメリカ国内一般に情報が広がるのが遅れていた。
この措置もコロナウイルスの呼称の措置も同政権は当初はあえて公表しなかっためアメリカ国内一般に情報が広がるのが遅れていた。
その結果、2月中旬になってまず議会の共和党側ではバイデン政権の孔子学院に関する措置への強い反対が表明された。
マルコ・ルビオ上院議員やマイケル・マコール下院議員が以下の趣旨の声明を出したのだ。
「孔子学院のアメリカ国内での活動はアメリカの高等教育機関や学生への危険な洗脳、影響力行使の工作だと証明されているのにバイデン政権の規制撤回の措置はそんな工作の黙認につながる」
マルコ・ルビオ上院議員 |
ルビオ議員はとくに「バイデン大統領は言葉では中国を『戦略的競争相手』などと批判するが、実際の行動ではすでに習近平政権への融和の道を歩み始めた」と厳しく論評した。
こうした展開はバイデン政権の中国に関する言葉ではなく実際の行動として注視すべきだろう。
バイデン政権の対中態度はちょうど日本の古い表現の「衣の下から鎧がみえる」の反対だともいえそうだ。「鎧の下から衣がみえる」という感じなのだ。
表面だけは共和党の抗議や一般国民からの反発を懸念して中国に対しては強硬な批判や糾弾の言葉を述べる。だがその強固にみえる鎧の下からはソフトな衣がちらつく。そして本音はどうも鎧よりも衣、中国への融和や協調のようなのである。
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
【私の論評】バイデン政権は、かなり短命になる可能性も(゚д゚)!
昨年の、大統領選を振り返ってみると、政策の争点は突き詰めれば、新型コロナウイルス対策と経済回復のどちらを重視するかというものでした。コロナに感染し入院してもすぐに退院して、大規模集会で経済回復を訴えたトランプ氏と、マスク着用を呼び掛けて遊説でも「密」を徹底的に避けたバイデン氏の水と油のような違いをそのまま反映しまし。
米メディアが発表した投票所での出口調査によると、経済よりもコロナ対策を重視すると答えたのは51%、経済重視は42%であり、24万人が死亡したコロナの方が当然ながら米国民の喫緊の課題でした。
米メディアが発表した投票所での出口調査によると、経済よりもコロナ対策を重視すると答えたのは51%、経済重視は42%であり、24万人が死亡したコロナの方が当然ながら米国民の喫緊の課題でした。
そのコロナ対策ではバイデン氏の方が良いと判断したのは53%であり、トランプ氏の43%に差を付けました。こうした数字から明らかになるのは、新型コロナウイルスの感染症が米国を襲ったことで票がバイデン氏に集まり当選したという事情が浮かびます。このため、コロナがなければ、米国の地合いは「トランプ再選」だったのだろう、との思いが生じます。
昨年CPACで演説したトランプ氏、今年も予定されている |
バイデン氏は約8000万票という大統領選史上最高の票を得たされていますが、トランプ氏との票差は総投票数と比べて僅差です。現職だから本来は勝って当然だと言えばそうなのですが、トランプ氏が集めた票は、膨大な数のトランプ支持者の存在を証明しています。
今回トランプ氏は郊外票や高齢者票をコロナ対策の失政を理由に失い、バイデン氏に敗れたのかもしれません。しかし、米メディアによると、トランプ氏は前回2016年に比べて、白人女性で2%、黒人男性、黒人女性で4%、中南米系で3%票を上積みしたと報告されています。白人男性票を5%減らしたことでそうした上積みは帳消しとなったようです。それにしても、女性、黒人、中南米系で票を本当に増やしたとすれば、「女性蔑視、人種・民族差別主義者」というトランプ氏のイメージは崩れます。
トランプ氏へのこうした評価は経済政策の実績が背景にあります。実際コロナが始まる前の米国は、オバマ政権時代の景気刺激策とトランプ政権の大型減税策で成長率は先進国の中でトップでした。日本や欧州が1%前後で推移していたのに対して、米国は2%を超え18年には3%の成長を記録した。これは国際通貨基金(IMF)が発表した米国経済の成長見通しを上回りました。
失業率も50年ぶりの低い水準で、富裕層のみならず中間層の所得も着実に増えていました。昨年1月にコロナ禍が始まる前まで、大方の予想はトランプ氏の再選であり、その理由は好調な経済だったことが思い起こされます。
米国の選挙では大きなインパクトを持たないものの、外交での成果もありました。中国への強硬姿勢や北米自由貿易協定(NAFTA)の改定、そしてイスラエルとアラブ諸国の正常化合意などは、トランプ嫌いの民主党も評価していました。
今回の大統領選では、誰に投票するかを投票日の前1カ月以内に決めた人は13%で、1週間前以内は5%だ。そして1カ月前以内に決めた51%、1週間前以内の54%がトランプ氏に投票したという。これはコロナにもかかわらずトランプ氏が展開した遊説の勢い、さらにトランプ陣営の戸別訪問の威力を示したものといえます。
仮定の話になりますが、この猛烈なトランプ氏の追い上げを考えると、あと1週間、あるいは3日間の時間があれば、トランプ氏は再選をもぎ取っていた可能性があると思います。
そしてメディアがあれだけ非難したトランプ氏の人格も大きな影響を与えていないようです。出口調査では大統領に求めるのは「強い指導力」が33%、「良い判断力」24%に続いて「国民統合」は19%です。人格よりも強さが大統領の資質と判断しているようです。
こうした事実から読み取るべきは、バイデン氏は支持基盤が限定された弱い大統領になるという見通しです。だからこそ、トランプ氏は敗北を認めずに抵抗を徹底し、今後の共和党を率いるリーダーとして影響力を行使し続けるつもりでしょう。
バイデン氏の弱さを象徴するのが、有権者は何を目的に投票したのかという調査です。投票者の中で相手候補を倒すために投票したという人は24%いるのですが、そのうちバイデン氏への投票者が68%を占めています。
つまり、バイデン氏への投票のうちのかなりが「トランプ憎し」の票であってバイデン氏本人を支持したものではないということです。この傾向はペンシルべニアなど激戦州はさらに強いようです。
ということは、バイデン氏へ票を投じた人々の間で、トランプ氏という「敵」がホワイトハウスから退場するとともに、バイデン氏に対し、急速に関心をなくし、その支持もしぼんでしまう可能性があります。「悪役」の後に登場した大統領としては、ニクソン大統領の後のフォード氏やカーター氏を思い起こすのですが、彼らも役割を終えた段階で、ホワイトハウスから1期だけで消えていきました。
今回トランプ氏は郊外票や高齢者票をコロナ対策の失政を理由に失い、バイデン氏に敗れたのかもしれません。しかし、米メディアによると、トランプ氏は前回2016年に比べて、白人女性で2%、黒人男性、黒人女性で4%、中南米系で3%票を上積みしたと報告されています。白人男性票を5%減らしたことでそうした上積みは帳消しとなったようです。それにしても、女性、黒人、中南米系で票を本当に増やしたとすれば、「女性蔑視、人種・民族差別主義者」というトランプ氏のイメージは崩れます。
トランプ氏へのこうした評価は経済政策の実績が背景にあります。実際コロナが始まる前の米国は、オバマ政権時代の景気刺激策とトランプ政権の大型減税策で成長率は先進国の中でトップでした。日本や欧州が1%前後で推移していたのに対して、米国は2%を超え18年には3%の成長を記録した。これは国際通貨基金(IMF)が発表した米国経済の成長見通しを上回りました。
失業率も50年ぶりの低い水準で、富裕層のみならず中間層の所得も着実に増えていました。昨年1月にコロナ禍が始まる前まで、大方の予想はトランプ氏の再選であり、その理由は好調な経済だったことが思い起こされます。
米国の選挙では大きなインパクトを持たないものの、外交での成果もありました。中国への強硬姿勢や北米自由貿易協定(NAFTA)の改定、そしてイスラエルとアラブ諸国の正常化合意などは、トランプ嫌いの民主党も評価していました。
今回の大統領選では、誰に投票するかを投票日の前1カ月以内に決めた人は13%で、1週間前以内は5%だ。そして1カ月前以内に決めた51%、1週間前以内の54%がトランプ氏に投票したという。これはコロナにもかかわらずトランプ氏が展開した遊説の勢い、さらにトランプ陣営の戸別訪問の威力を示したものといえます。
仮定の話になりますが、この猛烈なトランプ氏の追い上げを考えると、あと1週間、あるいは3日間の時間があれば、トランプ氏は再選をもぎ取っていた可能性があると思います。
そしてメディアがあれだけ非難したトランプ氏の人格も大きな影響を与えていないようです。出口調査では大統領に求めるのは「強い指導力」が33%、「良い判断力」24%に続いて「国民統合」は19%です。人格よりも強さが大統領の資質と判断しているようです。
こうした事実から読み取るべきは、バイデン氏は支持基盤が限定された弱い大統領になるという見通しです。だからこそ、トランプ氏は敗北を認めずに抵抗を徹底し、今後の共和党を率いるリーダーとして影響力を行使し続けるつもりでしょう。
バイデン氏の弱さを象徴するのが、有権者は何を目的に投票したのかという調査です。投票者の中で相手候補を倒すために投票したという人は24%いるのですが、そのうちバイデン氏への投票者が68%を占めています。
つまり、バイデン氏への投票のうちのかなりが「トランプ憎し」の票であってバイデン氏本人を支持したものではないということです。この傾向はペンシルべニアなど激戦州はさらに強いようです。
ということは、バイデン氏へ票を投じた人々の間で、トランプ氏という「敵」がホワイトハウスから退場するとともに、バイデン氏に対し、急速に関心をなくし、その支持もしぼんでしまう可能性があります。「悪役」の後に登場した大統領としては、ニクソン大統領の後のフォード氏やカーター氏を思い起こすのですが、彼らも役割を終えた段階で、ホワイトハウスから1期だけで消えていきました。
もう一つバイデン氏の悩みの種は民主党内の足並みの乱れでい。オカシオコルテス下院議員を中心とした左派グループです。
左派グループは今回の大統領選で顕著となった若者の民主党への投票を自らの功績として「政策や人事で左派の主張を取り入れなければ、次回選挙で若者は背を向ける」と警告しています。
こうした難局の中で誕生したバイデン大統領は、大統領権限でかなりの行動の自由がある外交に活路を見いだすのかもしれません。バイデン氏は長く上院外交委員長を務め外交を得意とし、優秀な専門家が側近として多数ついています。同盟を重視し、中国との対決は「管理された競争」に移行し、経済制裁・金融制裁も含めて経済安全保障政策を軍事圧力や外交とコーディネートして履行すると期待されています。トランプ時代の予測不能外交との決別は国際社会が望むものではあります。
ところが、内政という足場が弱ければ、外交力も衰えます。中国、ロシア、イランなどの地政学パワーが基盤の弱いバイデン政権を揺さぶってくるでしょう。弱い大統領の誕生とは、国際社会の混乱の深まりに直結してしまうものです。
最後に今回も的確性で話題となった世論調査による事前予測について考えてみます。
確かに事前の世論調査が示したバイデン氏がトランプ氏に対して全米で10ポイント、激戦州で5~7ポイントもリードしているという予測は、選挙結果と異なりました。ただ、これらの数字は調査時点での有権者の判断を示したもので、終盤の猛烈なトランプ氏の追い上げは当然反映していません。
こうした世論調査の数字を基にさらに精緻に各州の動向を分析した政治専門サイトなどは、10月下旬の段階でバイデン氏とトランプ氏の獲得州をほぼ完全に当てました。激戦州の動向もこれらのサイトの予想通りとなりました。こうしたことから、2016年のような当落が予想と反対の結果が出るという屈辱的な失敗は回避できたようです。
しかし、世論調査が白人ブルーカラーや中南米系の意向をとらえきれていないという問題は依然残ったままです。世論調査で正直に思いを答えないという心理の背景には、メディアや世論調査機関などいわゆるエリート体制に対する怒りというものが存在するのからかもしれません。これはトランプ支持者の全容が隠れたままである現状をあらためて見せつけました。
トランプ氏が2024年の大統領選に再出馬するかどうかは分からないです。しかし、7300万票という過去の共和党政治家が得たことがない支持者を握り、トランプ氏は得意のメディアを駆使する戦術で米政治・社会で影響力を持ち続けるでしょう。ホワイトハウスという桎梏から逃れて、より奔放にまた効果的にバイデン氏や民主党を攻撃するはずです。
左派グループは今回の大統領選で顕著となった若者の民主党への投票を自らの功績として「政策や人事で左派の主張を取り入れなければ、次回選挙で若者は背を向ける」と警告しています。
こうした難局の中で誕生したバイデン大統領は、大統領権限でかなりの行動の自由がある外交に活路を見いだすのかもしれません。バイデン氏は長く上院外交委員長を務め外交を得意とし、優秀な専門家が側近として多数ついています。同盟を重視し、中国との対決は「管理された競争」に移行し、経済制裁・金融制裁も含めて経済安全保障政策を軍事圧力や外交とコーディネートして履行すると期待されています。トランプ時代の予測不能外交との決別は国際社会が望むものではあります。
ところが、内政という足場が弱ければ、外交力も衰えます。中国、ロシア、イランなどの地政学パワーが基盤の弱いバイデン政権を揺さぶってくるでしょう。弱い大統領の誕生とは、国際社会の混乱の深まりに直結してしまうものです。
最後に今回も的確性で話題となった世論調査による事前予測について考えてみます。
確かに事前の世論調査が示したバイデン氏がトランプ氏に対して全米で10ポイント、激戦州で5~7ポイントもリードしているという予測は、選挙結果と異なりました。ただ、これらの数字は調査時点での有権者の判断を示したもので、終盤の猛烈なトランプ氏の追い上げは当然反映していません。
こうした世論調査の数字を基にさらに精緻に各州の動向を分析した政治専門サイトなどは、10月下旬の段階でバイデン氏とトランプ氏の獲得州をほぼ完全に当てました。激戦州の動向もこれらのサイトの予想通りとなりました。こうしたことから、2016年のような当落が予想と反対の結果が出るという屈辱的な失敗は回避できたようです。
しかし、世論調査が白人ブルーカラーや中南米系の意向をとらえきれていないという問題は依然残ったままです。世論調査で正直に思いを答えないという心理の背景には、メディアや世論調査機関などいわゆるエリート体制に対する怒りというものが存在するのからかもしれません。これはトランプ支持者の全容が隠れたままである現状をあらためて見せつけました。
トランプ氏が2024年の大統領選に再出馬するかどうかは分からないです。しかし、7300万票という過去の共和党政治家が得たことがない支持者を握り、トランプ氏は得意のメディアを駆使する戦術で米政治・社会で影響力を持ち続けるでしょう。ホワイトハウスという桎梏から逃れて、より奔放にまた効果的にバイデン氏や民主党を攻撃するはずです。
大統領選挙直前に、保守系のタブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」ジョー・バイデンの家族に関するスキャンダル記事を掲載しました。
ポスト紙は独自に入手したEメールやテキストを引用し、バイデンの長男のハンター・バイデンが、父親の影響力を利用し、ウクライナと中国で事業を行っていたと指摘した。同紙はさらに、バイデン候補がそこから利益を得たと主張しました。
これに関する真偽は、現在もはっきりとはしていませんが、以前から各方面で噂されていたのは事実です。これが解明され、明らかにこれが事実ということになれば、バイデン政権が大きく揺らぐのは間違いありません。
また、不正選挙疑惑もありました。これに関しては、州レベルの訴訟では、トランプ陣営が勝訴しているものも多数あります。米国連邦最高裁では受理して審議中の大統領選挙不正の訴訟が20件以上あります。これは、日本では全く報道されていません。
バイデン大統領は、「トランプ」という巨大な敵に阻まれ「短命」に終わるでしょう。それどころか、年内に終わる可能性すらあると思います。
不正選挙の裁判に関しては、州レベルのものでは、トランプ陣営が勝利しているものも多数あります。さらに、米国連邦最高裁では受理して審議中の大統領選挙不正の訴訟が20件以上あります。これらについては、日本では全く報道されていません。
ただし、いずれの裁判で、不正疑惑が認定されたとしても、それでバイデン政権が終焉することはありません。なぜなら、1月6日に議会で正式な手続きを経て大統領になったバイデンを司法がやめさせることはできません。米国の三権分立においては、司法は議会の決定したことを覆すことはできません。
ただし、バイデンを弾劾裁判にかけるということは、共和党の発議でできます。そうして、その発議の有力な根拠にはなりえます。これに加えて、共和党側の独自の調査で、弾劾に値する何らかの証拠をあげることができて、民主党側に多数の造反者がでれば、バイデンの弾劾は成り立つ可能性はあります。
そうして、これはあながちあり得ないことではありません。なぜなら、民主党はペロシ下院議員の提案により、最初から無理筋のトランプ弾劾裁判を実行したからです。
すでに、退任した大統領を弾劾裁判にかけるという、前代未聞の出来事は、着せずして、弾劾裁判のハードルを下げたといえます。共和党としては、バイデンの弾劾裁判がやりやすくなったともいえます。
ただし、バイデンが大統領を辞任すれば、左翼のカマラ・ハリスが大統領になります。そうなると、共和党側もかえってやっかいなことになります。共和党としては、バイデンと、カマラ・ハリスの両方を同時に辞任に追い込むことが課題となるでしょう。
今後の状況を見極めて、共和党側はこれも視野にいれているでしょう。特に、次回の中間選挙で共和党が多数派に返り咲けば、実行する可能性は十分あると思います。条件が整えば、それ以前にも弾劾手続きに入る可能性は十分あると思います。
弾劾されるかどうかは、別にしても、米国共和党そうして、日本をはじめとする同盟国は、様々な方法を駆使して、バイデン政権が中国に対して宥和的な政策をとらないように、牽制していくべきです。
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