2021年1月27日水曜日

バイデン政権の対中政策で「戦略的忍耐」復活か オバマ政権時代の外交失策を象徴 識者「政権の本音が出た可能性」 ―【私の論評】当面外交が定まらないバイデン政権だが、日本政府は最悪の事態に備えよ(゚д゚)!

 バイデン政権の対中政策で「戦略的忍耐」復活か オバマ政権時代の外交失策を象徴 識者「政権の本音が出た可能性」 

激突!米大統領選

アントニー・ブリンケン新国務長官

 ジョー・バイデン米政権の外交・安全保障チームが、やっと本格始動する。米上院本会議は26日、国務長官にアントニー・ブリンケン氏(58)を充てる人事を賛成多数で承認したのだ。バイデン政権は「対中強硬姿勢の維持」を表明したばかりだが、報道官から突然、「戦略的忍耐(Strategic patience)」というキーワードが飛び出し、物議を醸している。バラク・オバマ政権時代の外交失策を象徴する言葉であり、日本をはじめ、同盟国の懸念となりそうだ。


 「(中国は)米国にとり最も重大な外交的懸案」「(ドナルド・トランプ前政権に続き中国に)強い立場で臨んでいく」

 国務長官に指名されたブリンケン氏は19日、上院外交委の公聴会でこう語った。ハーバード大学卒、コロンビア大学法科大学院修了のエリートで、オバマ元政権で国務副長官を務めた。バイデン大統領の次男に中国疑惑が指摘されるなか、ブリンケン氏の存在が安心感を与えていた。

 ところが、中国の習近平国家主席による「ダボス・アジェンダ」での講演を受けて、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は25日、次のように語った。

 「米国は、21世紀のありようを決める苛烈な戦略的競争を中国と展開している」「多少の『戦略的忍耐』を持って対応したい」

 「戦略的忍耐」とは、オバマ政権時代に対北朝鮮政策に用いられた言葉で、北朝鮮に圧力をかけながら態度変更を待つ戦略だ。だが、北朝鮮はこの間に、核・ミサイル開発を高度化させた。外交界では「大失敗」「大失策」というのが定説となっている。

 トランプ前政権でも、マイク・ペンス副大統領が2017年の訪韓時に、「戦略的忍耐の時代は終わった」と皮肉を込めて語っている。

 サキ報道官は、オバマ元政権で国務省報道官を務めた。バイデン政権が、中国に対して「戦略的忍耐」という用語を出してきた意味は何なのか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「サキ報道官が『戦略的忍耐』が『無為』『失敗』の代名詞とされてきたことを熟知していないわけがない。バイデン政権の本音が出た可能性もある。報道官は、首脳会談で大統領と同席が許され、ときに助言する立場でもある。『戦略的忍耐』という言葉を用いながら、政権側から釈明や訂正もまだ出ていないのは危ういのではないか」と語った。

【私の論評】当面外交が定まらないバイデン政権だが、日本政府は最悪の事態に備えよ(゚д゚)!

米・ホワイトハウスのサキ報道官は1月25日、アメリカの対中政策について、「米中は厳しい競争関係にある」と対抗姿勢を示す一方、「戦略的忍耐を持ってこの問題に取り組みたい」と話し、今後、同盟国などと協議しながら中国に対応して行く考えを示しました。


ただ「戦略的忍耐」という言葉は、オバマ政権のときに北朝鮮に使っていた言葉です。あまり良いイメージはありません。オバマ政権が戦略的忍耐をしていたら、北朝鮮はどんどん核開発してしまいました。

多くの人は、結局この時と同じような姿勢で臨みつつ、放置ということなのかと思ってしまうかもしれません。しかしこれは報道官見解です。トランプ氏であれぱば、トップダウンでツイッターで発信していたでしょう。

バイデンさんはそういうことはしません。全部ボトムアップでやって行くでしょう。「厳しい姿勢」と言いつつ、「戦略的忍耐」と言うということは、どちらを言っているのかわかりません。「途中でどちらかを消せばいい」と考えている可能性が高いです。

結局報道官報道官レベルに発言させ、反応を探っている状況であると考えられます。両方言っておいて、大統領がどちらかを言うという形にするのでしょう。大統領にフリーハンドで残しておき、様子をみて最終的に大統領が意思决定してそれを、正式に公表するのでしょう。

あとで「大統領はこう決めた」というやり方です。ボトムアップでやって行くと、こういうことが多いです。大統領ではないのに食い違ったら困るので、両方言っておく方が無難です。報道官レベルではまだなんとも言えない状況にありながら、それでも質問等があれば応えないわけにもいかず、無難にこなしているところでしょう。

バイデン政権は、始まったばかりで外交方針がわからないので、「戦略的忍耐」「米中は厳しい競争関係にある」などの表現がされると、1つ1つ反応して「どうなのか」と考えてしまいがちです。

こういうときも全体で判断すべきです。AもBもという言うということは、まだわからないし決まっていないということと解釈すべきです。トランプ大統領からの引き継ぎ期間等がほとんどなかったので、これから決めるのでしょう。

特に中国について、「対抗姿勢は前と同じだ」と言っているということは、あとから変わるということです。トランプ政権を引き継いでいるのだから、スタート時点は当然、同じなのです。でもそのあとはわからないです。3ヵ月から半年くらい経たなければ、本音はわからないのではないでしょうか。

特に政権交代したときには、そのくらいしないと定まって行かないです。トランプ氏も、大統領選のときは北朝鮮のことは何も話していませんでした。外交はその時々で変わって行くので今の時点では、わかりません。

一方、国内政治では、イエレン財務長官が正式に指名されました。国内は外交に比較するとかなりわかりやすいと思います。当然のことながら、当面はコロナ対策一色です。イエレン氏は元FRB議長でしたし、雇用重視の人です。失業率を下げるために猛烈な財政出動をするでしょう。

現在は、外交より国内優先になるので、そういう意味で、中国についてバイデン政権がどのような政策をとるかはまだわからないのです。

米国の国内財政出動は1.9兆ドルで、日本円にして200兆円規模だと言われています。これは、余程のことがない限り、通るでしょう。下院では、民主党が優勢ですし、上院は民主と共和党の割合は、50対50です。。

最終的にはは副大統領が投票できるので上院も民主党が多数だと思って良いです。1.9兆ドルには、共和党も反対しづらいでしょうあるとすれば、財政懸念があるというくらいです。いまは長期的な低金利水準ですから、長期的にはメリットがあるとイエレンさんは言っています。長期債を財源にすることは全く正しいです。

ただし、「戦略的忍耐」という言葉は時には、何もせずにして相手の暴走を傍観する口実にも使われるものです。バイデン政権は対中姿勢は心配ではあります。サキ報道官も、明らかに大失敗した「戦略的忍耐」という言葉を使うべきではなかったと思います。

トランプ政権のポンぺオ国務長官は離任直前の19日、中国共産党政権によるウイグル自治区のウイグル族ら少数民族への迫害を「ジェノサイド」(集団虐殺)と認定するなど、任期が終わる直前まで中国共産党政権の脅威をアピールしてきました。

ポンペオ前国務長官

その後継者、アントニー・ブリンケン新国務長官(オバマ政権下では国務副長官)は上院承認公聴会でトランプ政権の中国政策に同意すると発言していました。

バイデン新大統領もブリンケン新国務長官も外交問題の専門家であり、中国共産党政権の実態をよく知っているはずです。それにもかかわらず、バイデン政権発足後の21日、米国務省のウェブサイトから「中国の脅威」、次世代移動通信網(5G)セキュリティらの問題が主要政策項目(Policy Issues)から取り下げられていることは何を意味するのでしようか。

さらに、同サイトには、反腐敗、気候と環境保護、新型コロナウイルスなど17項目が掲載されているにもかかわらず、先に述べた「中国の脅威」や5G項目が削除されています。その理由は説明されていません。そうして、今回の「戦略的忍耐」発言です。しかも、中国に対する施策に関連した発言です。

中国共産党政権がバイデン新政権発足を受け、覇権政策を修正して対話路線に変えたということはありません。にもかかわらず、米国務省の主要政策項目から「中国の脅威」を削除することは北京に誤解を与える危険性があります。

中国共産党は相手が弱く出れば、必ず強く出てきます。バイデン新政権が中国に対して懐柔政策に出れば、北京は待ってましたといわんばかりにさまざまな工作を展開することになるでしょう。

「中国の脅威」だけではありません。新政権の対イラン政策も懸念材料です。バイデン新大統領は就任する前から、トランプ大統領が離脱したイラン核合意に再復帰する意向を表明してきました。

バイデン氏は昨年9月の選挙戦でトランプ大統領のイラン核合意からの離脱を「失敗」と断言し、「トランプ大統領がイラン・イスラム革命防衛隊ゴッツ部隊のソレイマニ司令官を暗殺したためにイランが米軍基地を攻撃する原因となった」と述べ、対イラン政策の修正を示唆してきました。

トランプ前米大統領は2018年5月8日、「イランの核合意は不十分」として離脱しましたが、イラン当局は米国の関心を引くために同国中部のフォルドゥのウラン濃縮関連活動で濃縮度を20%に上げたばかりです。バイデン氏はイランの核の脅威を軽視してはならないでしょう。

バイデン新大統領はトランプ政権の新型コロナ対策が不十分だったと頻繁に批判してきましたが、40万人以上の米国人の命を奪った新型コロナが中国武漢発であり、中国政府が感染発生直後、その事実を隠蔽した事実に対しては批判を控えてきました。

マスク嫌いのトランプ前大統領は新型コロナの発生源については感染拡大当初からはっきりと中国側を批判してきました。


バイデン民主政権下には既に相当親中派・媚中派が入り込んでいるとみるべきでしょう。同時に、リベラルなメディアには中国資本が入り、情報工作をしています。それだけにバイデン新大統領が明確な対中政策を確立しなければ、中国共産党の懐柔作戦に嵌ってしまう危険性が大きいです。

バイデン新政権下の国務省ウェブサイトの主要政策項目から「中国の脅威」が削除されたというニュースと「戦略的忍耐」はその懸念を裏付けるものとみて良いと思います。

ただし、先にも述べたように、バイデン政権の対中国政策は、3ヶ月、半年後をみないとわからいな部分があるのも事実です。

そのため、少なくと3ヶ月から、半年はトランプ政権の対中国政策が踏襲されることになるでしょう。まだ、若干の時間はあります。日本政府としては、この時間を有効に活用して、他国とも協同したうえで、バイデン政権が中国に対する宥和策が取らないように、働きかけていくべきでしょう。

そのためには、ファイブアイズとの関係強化も、クワッドの強化も役立つでしょう。ファイブアイズは米国内の情報もかなり取得しているでしょう。特に英国や豪州は、バイデン政権の弱みなどもかなりつかんでいるはでず。利用しない手はありません。

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