2021年1月15日金曜日

中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書―【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!

 中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書

北京で2018年4月

 米国の中国問題に関する超党派の連邦議会・行政府委員会(CECC)は14日に公表した2020年の年次報告書で、中国当局が新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウイグル族などのイスラム教徒少数民族に対し、国際法上の犯罪である「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を実施している可能性があると指摘した。

 報告書は、この1年間で自治区での大量虐殺を含む「人道に対する罪の証拠」が浮上したと指摘し、米政府に対して自治区でのウイグル族などへの弾圧をジェノサイドであると公式に認定するよう促した。

 国務省は、ポンペオ国務長官の指示でジェノサイド認定するかどうかについて検討を進めているとされ、トランプ大統領の任期が切れる20日までに認定に踏み切るかが注目される。

 報告書によると、自治区ではウイグル族やカザフ族、キルギス族などの少数民族や約180万人が「広範かつ組織的」に施設に収容され、強制労働に加え、拷問や政治教化を受けている。また、外部に流出した中国政府の文書によると、強制収容システムが中国共産党の最高幹部の指令によって構築されたことが一層裏付けられたとした。

 さらに、中国当局がウイグル族らに対し、「家族や文化、宗教的信仰心の破壊」を目的に避妊手術や産児制限を組織的な政策として強制している証拠が新たに浮上したと指摘した。

 報告書はその上で、米政府に対し、ジェノサイド認定に加え、自治区の住民の監視に利用される顔認証システムや人工知能(AI)技術に関する新た輸出規制を設けるよう要請した。

【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!

米共和・民主両党の上院議員は昨年10月27日、中国がウイグル人をはじめとするチュルク語系少数民族に対するジェノサイド(大量虐殺)を行っていると宣言する決議案を提出しましたた。

昨年ドイツ人研究者によるウイグル自治区“強制不妊リポート” 中国が真っ向反論したが・・・

上院では来週の大統領選後まで審議が行われないため、すぐに採決されることはありませんでしたが、これらの少数民族100万人以上が強制収容されているとされる問題で中国への圧力が強まる可能性があることが指摘されていました。

決議案は、中国が「新疆ウイグル自治区でウイグル人、カザフ人、キルギス人、その他のイスラム教徒の少数民族に行っている」活動は、「ジェノサイド」に当たるとしています。

 ジョン・コーニン上院議員(共和党)は、「決議案は中国の行為を犯罪と認め、中国にその極悪非道な行為の責任を取らせる第一歩だ」と述べました。

 ジェフ・マークリー上院議員(民主党)は、決議は米国が「黙っていられない」ことを示すだろうと語り、「監視の強化、強制収容、拷問、強制的な『再教育キャンプ』といった、ウイグル人やその他のイスラム教徒の少数民族に対する中国の攻撃はジェノサイドだ。単純明快だ」と話しました。

決議案の発起人には、外交政策でドナルド・トランプ大統領に近いマルコ・ルビオ上院議員(共和党)や、上院外交委員会の民主党のトップ、ロバート・メネンデス上院議員も名を連ねています。

マイク・ポンペオ国務長官は27日、訪問先のインドでニュースサイト、ザ・プリントのインタビューに応じ、「(中国の行動は)1930年代にドイツで起きたことを想起させる」と述べました。

マイク・ポンペオ米国務長官

米大統領選の世論調査でトランプ氏より優勢になっている民主党のジョー・バイデン前副大統領の陣営も、中国の行動をジェノサイドと呼び、対応を強化する方針を示してきました。

昨年12月24日には、対中強硬派のポンペオ国務長官が検討作業を指示されていることが、米当局者が明らかにしました。米政府が認定すれば、中国の強い反発が予想されます。

国務省で国際刑事司法問題を担当するタン大使が検討作業を取りまとめ、ポンペオ氏に報告する予定だといいますが、報告の時期は不明でした。その報告書が今回、提出されたのです。ジェノサイドに認定した場合、中国に対する何らかの制裁措置を求める声が高まるのは確実とみられます。

バイデン政権が、一部の識者が言うように対中強硬姿勢を崩さず、ウイグル問題でもトランプ氏と同じような対応をとる可能性もあり、そうであることを強く期待しています。

しかし、大統領になる以前に、そのような意向を表明することと、実際大統領として中国に対峙し、ウィグル問題でも譲歩しないかどうかは別問題です。

バイデン政権が、米国が中国との平和と安全を、人権を尊重する日本や台湾、他の先進国との共通の価値観よりも優先するように変わっていくのならば、日本は今度こそきちんと憲法と国防の議論を行い、この米国依存体質から脱却する方法を考えるときかもしれないです。

そうして、昨日も述べたように、安倍・トランプ両氏の置き土産である日米豪印(クアッド)の中国包囲網を強化すべきでしょう。

ウイグル問題はバイデン政権の踏み絵・・・・・

そういう意味では、トランプ大統領の任期が切れる20日までに認定に踏み切るにしても、バイデン政権に委ねられるにしても、これはバイデン政権の試金石になることは間違いありません。これはトランプ政権による踏み絵と見ても良いと思います。

ウイグル人権法がすでに施行されている現在、この法律に沿ってバイデンがどのような具体的な行動を起こすかが注目されます。宥和的な政策をとれば、共和党による批判攻撃は強まり、今回の選挙でも明らかになった、米国の人口のおよそ半分を占める保守層の国民の反発も強まるでしょう。

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