2021年1月30日土曜日

バイデン政権、対中強硬派のキャンベル氏を起用―【私の論評】対中国強硬派といわれるカート・キャンベル氏の降伏文書で、透けて見えたバイデンの腰砕け中国政策(゚д゚)!

 バイデン政権、対中強硬派のキャンベル氏を起用


カート・キャンベル氏

【世界を読み解く】「米国は中国の野心を過少評価してきた」など過去の対中政策は誤りと論述

 1月13日、米国新政権はホワイト・ハウス国家安全保障会議(NSC)にアジア政策統轄のポスト「インド・太平洋調整官」を新設し、カート・キャンベル氏を起用することが明らかになった。

  キャンベルはオバマ政権で東アジア・太平洋担当国務次官補(局長級)を務め、アジアへの「リバランス」(軸足を移す)政策を進めた。2018年春に米国外交問題雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に、過去の米国の中国政策は失敗だったとの論文を発表し、大きな反響をよんだ。キャンベルは多くの省庁にまたがる対中政策全体を統轄することになるらしい。彼の起用により、バイデン新政権の対中政策が見えてきた

▼キャンベルは、過去の米国の対中政策は誤りだったと指摘 

 『フォーリン・アフェアーズ』にキャンベルは2018年からの3年間で6本の論文を投稿した。その全てが中国について論じた。彼の主張は次の通りだ(6本の論文をまとめ再構成した)。

 1)米国の思いどおりにならない最も手強い競争相手
 ―過去、米国は中国の進路を決められると考えてきたが、それは間違いだった。ニクソン、キッシンジャーもこの間違いを犯した。現実に立脚して、米国の対中政策を再考すべきだ。
―過去、米国は中国を敵として扱わないようにすることで、中国が実際に米国に敵対することにならないのだと考えてきた。中国も「平和的台頭」(2005年)、「平和的発展」(2011年)という言葉を使っていた。
 ―米国にとり中国は、近代史上、最もダイナミックで手強い競争相手だ。中国はかつてのソ連よりも洗練され手強い。中国のGDPは購買力平価換算で既に米国を上回る。米国は、これまでの中国に対する希望的発想を捨てる必要がある。 ―トランプ政権は、二国間貿易赤字、多国間貿易協定の破棄、同盟の軽視、人権問題の軽視、外交の軽視などにより、米国自身の競争力を高めることなく、いたずらに対立的であった。他方、中国は対立的になることなく、中国の競争力を着実に高めている。

 2)依然閉鎖的・差別的な経済、国際経済面で無責任な動き ―中国との経済交流の拡大は、中国経済の自由化をもたらすと期待されたが、実際には国有企業、産業政策、補助金が強化され、外国企業の中国市場へのアクセスは制限されている。
 ―ブッシュ(息子)政権の国務副長官だったゼーリックは、中国を「責任あるステークホルダー」にすべく、国際秩序に組み込もうとした。しかしうまくいかなかった。たとえば中国は多くの非民主的政府への制裁を妨害している。また米国抜きの国際経済協力としてアジア・インフラ投資銀行、新開発銀行(BRICS銀行)、一帯一路を構築した。

 3)内政での統制強化 ―2013年、中国共産党の内部文書は、「西側の立憲民主主義」とその他の「普遍的価値」に対してあからさまに警告を発した。2015年だけで、300人以上の法律家、法務助手、活動家を拘束した。通信技術の進歩は、国家の統制の強化を助けている。
 ーウイグルでの弾圧は民族浄化のキャンペーンと言える。香港の国家安全保障法は、香港の外にも取締対象を広げるという従来にはない攻撃的アプローチを示している。 
―経済発展や中国人留学生の米国への留学は、政治的自由化につながると期待されたが、中国政府は壁を作り、統制強化でグローバライゼーションに対応した。

 4)全面攻撃を仕掛ける外交・軍事政策に米国はいかに対処すべきか 
―米国は中国指導部がいかに不安定でかつ野心的かについて、過小評価していた。中国は米国が主導するアジアでの安全保障秩序に挑戦し、米国と同盟国の間にくさびを打ち込もうとし始めた。 
―中国は、巨額の軍事費を投入し、ソ連以来の軍事国となった。とう小平の「能力を隠し時間を待つ」という言いつけは最早守られていない。 ―中国の冒険主義を抑止するため、米国は意識的に努力すべきだ。
 ―冷戦では闘争の場が世界全体であったが、中国との間の危険は、アジア太平洋に限られるであろう。それでもそこには少なくとも南シナ海、東シナ海、台湾海峡、朝鮮半島の4か所の潜在的なホット・スポットがある。中国は南シナ海で現状を変更し、尖閣付近のパトロールを強化し、台湾近郊で空中偵察を行った。ブータンと新たな国境紛争を起こし、インドと国境で衝突し、中国人民解放軍が30年ぶりに国外で武力を行使した。一つ一つは驚くべきではないかもしれないが、全体では尋常ではないフル・コート・プレス(コート全面を使った攻撃)を仕掛けている。 
―豪州に対する攻撃は、豪州の対中警戒心を高めさせ、国防費増額につながった。 ―インドとの国境衝突は、インドをしてこの地域での中国の決定的な対抗勢力にするかもしれない。
 ―インド太平洋で米中双方の軍が共存することは不可能ではない。米国は軍事的優越の回復が困難なことを受け入れるべきだ。むしろ米国とそのパートナーの行動の自由に中国が干渉し脅威を与えることを抑止することに焦点を当てるべきだ。 
―米国は高価で脆弱な空母ではなく、安価で非対称的な軍事力で中国を抑止すべきだ。長距離無人キャリアからの攻撃機、無人潜水艇、誘導ミサイル潜水艦、高速攻撃兵器などである。また米軍は、東南アジア、インド洋における軍事プレゼンスを多様化すべきだ。

 5)科学技術の競争にいかに勝つか 
―米国は科学技術で中国と競争するために、投資も増やす必要がある。技術窃取、保護主義、産業政策などにより中国は米国企業を不当に扱っており、この問題はWTOでも扱われるべきだ。

 6)世界における民主主義への支援 ―世界において、我々は反中ではなく、民主主義を支持するという立場であるべきだ。一帯一路でも、成長、持続可能性、自由、良いガバナンスを支持する立場で途上国を支援していく。

 7)同盟国・パートナーとの関係強化 
―米国はもっと自らと同盟国・パートナーの力を強めることに努めるべきだ。米国は中国に向かい合う際、アジアそして世界の諸国との緊密なネットワークを構築しないといけない。同盟は、削減されるべきコストではなく、投資すべき資産としてみなすべきだ。 

8)新大統領の課題 ―新大統領は、香港から南シナ海、インド、ヨーロッパまで、中国からの圧力と脅迫は続くことを覚悟すべきだ。 
―新大統領は、懲罰的一方主義を止め、欧州とアジアの同盟国との関係を再調整し、国連、G7、国際機関などの国際機関を改めて重視すべきだ。
 ―今日のインド太平洋では、ヨーロッパの歴史から得られる3つの教訓があてはまる。第1に力の均衡の必要性、第2に地域の諸国が正当と認める秩序の必要性、第3にこれらの2つに挑戦する中国に対処するための同盟国・パートナーとの連合の必要性。 
―パートナーシップ構築は、柔軟に考えるべき。英国が提案したD-10(G7とオーストラリア、インド、韓国)など、随時、臨時の枠組みも検討すべき。

 ▼キャンベルの起用には期待がもてるが、前途は多難 

 キャンベルは、バイデン次期大統領、ブリンケン次期国務長官、サリバン次期国家安全保障補佐官とも近く、彼らからインド・太平洋政策で相当大きな権限を与えられると見られている。なお一時、次期財務長官候補に挙げられていたブレイナードFRB理事はキャンベルの夫人である。

  キャンベルはトランプ政権時代に政権から離れていたが、その間、中国との関係について集中して考察を進め、民主党の対アジア政策を検討していたようだ。

  キャンベルは、共和党ブッシュ(息子)政権下の国家安全保障会議でアジア担当を務めたマイケル・グリーンからも評価されており、キャンベルの活動は超党派で理解と支持が得られるだろう。

  オバマ政権は中国にソフト過ぎだった、トランプ政権は二国間貿易問題などに関心を特化し過ぎだったと言われている。

      2017年1月17日大統領自由勲章をバイデン氏に授けるオバマ氏。
      バイデン氏は、まったく知らされていなかったと話した

  この点キャンベルの思考には総合的な視点がある点、高く評価できる。(ただ、北朝鮮や、ロシアの扱いなどについては突っ込んだ言及・考察は述べられていない。)

  米国と同盟国・パートナーとのネットワーク関係の強化、国際機関重視を主張し、また尖閣への中国の攻撃的姿勢を中国の対外政策全体の中で位置づけていることも高く評価できる。

  キャンベルは、今日の中国の内政、外政での問題を指摘するが、ではなぜそのようになっているのだろうか。

  とう小平が望んだように、中国は経済発展はした。しかし貧富の格差の拡大、地域間・民族間の格差など、社会矛盾を解決できていない。とう小平はその解決法までは言い残さなかった。民主化により、貧者の声を吸い上げ、国政に反映させ、富の再配分メカニズムを作る必要がある。しかし富の再配分に反対する既得権益もできているため、それもできない。

  胡錦濤・温家宝時代には少しはあった民主化の議論もなくなってしまった。成長の鈍化、早すぎる人口高齢化の問題もあり、社会の緊張(不満のガス)が高まっている。そのため、国内的な抑圧、がむしゃらな対外経済活動、国威発揚のための攻撃的政策につながる。悪いパターンにはまってしまっているが、抜け出す良い智恵がない。

  トランプ政権時代の4年間で、米中関係を始め世界はもっと難しい状況になり。「リセット」はできないと『ファイナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストのラックマンは指摘している。

  キャンベルは民主主義擁護と言うが、中国以外にもロシア、ブラジル、インド、トルコ、サウジ・アラビアにいる反動的ナショナリストにどう対処するのか、結局は「現実政治」になるのではないか、しかし米国の国力も落ちているとの指摘だ(FT紙2020年3月9日付け)。バイデン新政権とキャンベルはオバマ大統領が残した4年前よりも厳しい状況からスタートせざるを得ず、その前途は多難である。 (Foreign Affairs 掲載(含むネット版)のキャンベルの6本の論文は次の通り。それぞれ共著者がおり、その中には政権入りする可能性が取りざたされている者もいる。)

 “The China Reckoning”、 March/April 2018
 “Competition Without Catastrophe”、 September/October 2019 
“The Coronavirus Could Reshape Global Order”、March 18、 2020 
“China Is Done Biding Its Time”、 July 15、 2020 
“The China Challenge Can Help America Avert Decline”、 December 3、 2020
 “How America Can Shore Up Asian Order”、 January 12、 2021 

(敬称略)

 ■井出 敬二(ニュースソクラ コラムニスト) 1957年生まれ。1980年東大経済学部卒、外務省入省。米国国防省語学学校、ハ ーバード大学ロシア研究センター、モスクワ大学文学部でロシア語、ロシア政 治を学ぶ。ロシア国立外交アカデミー修士(国際関係論)。外務本省、モスク ワ、北京の日本大使館、OECD代表部勤務。駐クロアチア大使、国際テロ協力・ 組織犯罪協力担当大使、北極担当大使、国際貿易・経済担当大使(日本政府代 表)を歴任。2020年外務省退職。著書に『中国のマスコミとの付き合い方―現 役外交官第一線からの報告』(日本僑報社)、『パブリック・ディプロマシ ー―「世論の時代」の外交戦略』(PHP研究所、共著)、『<中露国境>交渉史 ~国境紛争はいかに決着したのか?』(作品社)、”Emerging Legal Orders in the Arctic - The Role of Non-Arctic Actors”(Routledge、共著)など。編訳に『 極東に生きたテュルク・タタール人―発見された満州のタタール語新聞 』(2021年出版予定)。

【私の論評】対中国強硬派といわれるカート・キャンベル氏の降伏文書で、透けて見えたバイデンの腰砕け中国政策(゚д゚)!

バイデン次期政権は、国家安全保障会議(NSC)の中に「インド太平洋調整官」というポストを新設、カート・キャンベル元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)を任命しました。

このブログでは、かねてからバイデン次期政権は内政重視、消極外交に徹するのではないかと指摘してきましたが、これまでの発言そして閣僚の専門知見から外交上の優先地域は、欧州(NATO)、中東(イラン)、そしてアフリカが想定される一方、中国を筆頭にアジアとは一定の距離が置かれるものと予想します。

「インド太平洋調整官」という新設ポストはバイデン政権のアジア消極外交の証左であると考えられます。またかつての「Pivot to Asia」や「戦略的忍耐」などアジア外交の「失策」を推奨、且つ親韓でもあるカート・キャンベル氏の起用は日本にとって難しい舵取りが強いられると危惧します。

そもそも「インド太平洋調整官」の意味合いとは何なのでしょうか。同ポストの新設は、アジア地域を重視するバイデン政権の姿勢との解釈があるかもしれないですが、米国的感覚だと真逆に見えます。

無論日本では、大企業等で「調整役」は大きな役割を果たしている場合も多いです。しかし、それは、すでに重要なことは意思決定されている場合であり、その意思決定に向けて、力を発揮するのです。しかし、「調整役」は意思決定には直接関わることはできません。重要な意思決定に関わることができるなら、そもそも「調整役」ではありません。

政権の最重要課題・責務は、大統領と頻繁且つ緊密な連携を要するため、閣僚(長官級)あるいは官僚のトップ(副長官級)が直接担い、特使やより階級の低い官僚には任せないものです。

ブリンケン国務長官は欧州(特にNATO)の関係修復に躍起、サリバン安全保障担当補佐官はイラン核開発問題と中東情勢を重視、オースティン国防長官はアジア経験・知見が皆無、そしてグリーンフィールド国連大使はアフリカとの関係強化が至上命題です。これでは、アジアに関係する意思決定が十分になされる環境にないといえます。


新設ポストが重要であるならば、何故「欧州調整官」あるいは「中東調整官」が設けられていないのでしょうか。アジアは、バイデン政権の最重要外交課題ではないのです。要は、主要閣僚にアジアの専門知見が薄いことと共に他の優先地域に尽力しなければいけないので、「調整官」というベビーシッター・監視役的なポストを設けたのです。

最も不可解なのが「調整官」という肩書で、権限のある役職は「(大統領)補佐官」、「政府代表・特使」あるいは「上級部長・顧問」などが付けられるものですが、「調整官」には重みが感じられません。

調整官とは、単に窓口と解釈できます。更に、官僚との指揮系統・役割に重複あるいは混乱が生じないか懸念されます。これから任命される「NSCアジア上級部長」、「国務次官補(東アジア・太平洋担当官)」そして各アジア諸国の駐在大使などの役割とかぶり、調整どころか外交のチームワークを乱しかねないです。

更にキャンベル氏の上司であるサリバン安全保障担当は20歳も年下、しかし外交経験ではキャンベル氏が先輩です。国務省と安全保障会議は若返りを図っており、キャンベル氏との相性が合うのかも気がかりです。

そうして、そもそもキャンベル氏の主張そのものにも疑問符がつきます。キャンベル氏は、「How Can America Shore Up Asian Order ~ A Strategy for Balance and Legitimacy」と題した外交論文を1月12日にForeign Affairs(オンライン)誌に掲載しましたた。そうしてこの論文は、率直に言って中国への降伏宣言ともいえる内容だと思います。

同論文は、19世紀の勢力均衡と欧州の協調を論じたヘンリー・キッシンジャーの博士論文を引用して、アジアの秩序を形成するためには、以下が必要であると主張しています。

①バランス(勢力均衡)の修復
中国の拡大する物質的パワー(経済力)は地域のデリケートな勢力バランスを不安定化させ、政府の領土拡大主義を強めた。こうした脅威にアメリカは意識的に対抗する必要がある。

米政府は先ず、空母や大型基地のような高額且つ攻撃を受け易い軍事兵器・施設から脱却すべき。つまり、長距離弾道ミサイル、無人戦闘機や潜水艇そして高速攻撃兵器などへ投資することを意味する。

米政府は、これまでの積極姿勢(存在感)を維持すべきではあるものの、各国と連携して兵力を東南アジアやインド洋に分散する必要がある。
これは、特に最後の文を読むと、日本を含めたアジア諸国により軍事勢力を強化させ、米国の負担を減らすのが本音のようです。軍事力の削減、米民主党がかねてから指摘する軍事経費のコストダウンの意図が示唆されています。

序文では、キャンベル氏は、あたかもトランプ氏のように日本や韓国に防衛費負担を求めないと言及しているのですが、防衛負担は求めない代わり、より自国の防衛体制を強化しろと言っています。

バイデン政権が掲げる同盟国連携の本質は、米国の負担軽減、各国による自立要請のようです。アプローチは違ってもトランプ政権と本質は変わりないようにもみえますが、ただ、オバマ政権においては大幅に縮小させた防衛費の大幅増を実施していました。今後バイデン政権はどうするのか非常に気がかりです。

②レジティマシー(正統性)の回復
地域の秩序を構築する"二つのアジア"がある: 一つは政治・安全保障で、もう一つは経済。前者での秩序を保つには、アメリカの再関与政策 ~ 同盟国を恐喝しない、地域サミットを無視しない、経済協力を惜しまない、そして国家間の協力を阻まない。経済での秩序を強化するには、中国がアメとムチを巧みに使いこなす中で、現体制・システムが同盟国に利益をもたらす仕組みを確保すること。
米国が安全保障に重要な産業の再生、中国との"管理されたデカップリング"を進める中、他国にもサプライ・チェーンを中国から自国に移転することは新たな成長を見出すことが促せる。更に、中国による一帯一路構想に関連したインフラ融資に対抗して米国も新たな融資・支援策を構築すべきである。
米国と同盟国らが中国に競争的ながらも平和な枠組み・秩序を悟らし、それにはいくつかの利益が得られることを認識; 中国政府の存在が地域で認められる、ルールを遵守することで予期できる商業環境、そして環境、インフラとコロナ・ウイルスにおいての協力から得られる利益。

米政府は同盟国と共にシステムの強化に取り組み、中国に生産的に協力・従事するインセンティブを与え、そして中国が地域の秩序を犯すようであれば集団的にペナルティを課す必要がある。 

これらの文章からは、中国に対し寛容的であったオバマ政権のなごりというか、そのままの姿勢を感じます。地域の「政治・安全保障」と「経済」の秩序の強化と主張するものの具体性に乏しいですし、現実性に欠けた理想論に過ぎません。

一つだけ具体的だったのがサプライ・チェーンの回帰、それを「管理されたデカップリング」と言及です。ところが、問題なのはは最後二つの文章です。三つ目は未だに中国は国際社会のルールに従う、説得の余地があるような考えを抱いているようです。

中国をWTOに加盟させ、オバマ政権での「Pivot to Asia」や「戦略的忍耐」のような失策の反省が見受けられません。最後の文では上記で指摘した軍事面での姿勢にも似ていますが、中国に対する制裁・アクションは単独ではなく共同で行う弱腰姿勢です。

日本には「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグがありますが、国際秩序の保護に通じない甘い考えです。みんなで渡るのは良いですが、先ず誰か(米国)が第一歩を取らなければ集団は動きません。

③連携(コアリション)の促進が重要
同盟国との連携」は決まり文句になっているが、実際に達成するとなるとその壁(チャレンジ)はとてつもなく大きい。現在のインド太平洋の枠組み・秩序を保っていくには幅広い連合組織が必要で、参加するメンバーらは現状のシステムが崩壊するまでその価値を理解しないかもしれない。同盟国による連携の必要性は、現状のステータスが覆されるまで明らかにならないもの。
これはどうしたことでしょうか。第二次世界大戦後の世界秩序の中でのトップリーダーである米国の言うこととはとても考えられません。同盟国の連携を主張しておきながら、どん底に落ちるまで連携は構築できないかもしれないとは何事でしょうか。これは、中国への敗北、降伏宣言以外の何ものでもありません。
遠い欧州のリーダーらは、インド太平洋諸国より中国の強い姿勢をあまり脅威と感じていない。欧州諸国から共感を得ることを難しくしているのが中国の経済力; 先月に、バイデン政権下で統一した大西洋アプローチが難しくなる懸念を示したにも関わらず、中国は土壇場でEUとの貿易協定にこぎ着けたのである。

 この弱音、泣き言は一体何事なのでしょうか。サリバン次期安全保障担当補佐官がEU首脳らに中国との貿易協定を保留するよう求めたにも関わらず聞き容れてもらえなかったのでスネているようにしか聞こえないです。もう、端から対中包囲網など諦めているようにしかみえません。確信も怒りも感じられません。

(連携には)限界があるため、米国はパートナーシップの構築には柔軟且つ革新的になる必要がある。一つずつの議題・問題を大きな連合組織で議論するのではなく、個別問題に乗じてビスポーク・特定のグループを模索すべき、例えばイギリスが提案するD10 ~ G7にオーストラリア、インドと韓国を加える。
「限界」という言葉使った瞬間にやる諦め感がひしひしと伝わってくるではありませんか。中国としてはこれほど勇気づけられる論文は無いのではないでしょうか。更に、キャンベル氏はかねてからオーストラリアと韓国をひいきにしています。その意味で、D10構想を積極的に容認、QUADにおいても韓国の参加を推奨しています。オバマ政権と同じ、日本よりも韓国に沿った姿勢を示すことが推察される。

そうして、多くの人々がすでに指摘していることですが、同論文で「インド太平洋」という言葉は度々使われるものの、「自由で開かれたインド太平洋」は一度も引用されていないのです。


バイデン政権の外交閣僚からも今のところ「自由で開かれたインド太平洋」と言及した形跡がありません。ご存じ、「自由で開かれたインド太平洋」構想は、日本安倍総理のリーダーシップによって形成、アメリカ(トランプ政権)を筆頭にインドやオーストラリア等が賛同し、中国の抑制手段として期待されています。

もしバイデン政権に同構想を否定・修正する意図があるとすれば連携どころかアジアの足並みが乱れる可能性も考えられます。同時に日本は微妙な立ち位置に立たされるかもしれないです。

キャンベル氏の任命により、バイデン政権は、オバマ政権下での消極外交路線に回帰するのは目に見えています。米国が、対中国戦略において、他国と足並みを揃えるだけでは誰も前に出なないというか、出られません。

トランプ氏の外交政策は強引過ぎた面はあったものの、単独でも中国と対立する姿勢は、一定のリーダーシップと存在感を見せていました。キャンベル氏が論文で見せる弱腰あるいは護送船団姿勢では中国とはまともに戦えません。

アジアの新秩序は米国が他国と協調するような姿勢では樹立できません。米国がまず先頭にたたなければ、難しいです。

ここは、日本として、今後の2年後の米議会選挙で、共和党が多数派になること、さらには、4年後の大統領選挙ではトランプ氏が復帰するか、トランプ氏と同じような対中国政策を推進する人物が大統領になってもらうことを期待するしかないかもしれません。

ただ、その前に、まずは日本がアジアでリーダーシップをとるくらいの気構えをみせるべきと思います。そうして意味では、安倍復帰待望論が巻き起こるかもしれません。

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