【日本の解き方】懲りない「コロナ後増税」論 復興増税の二の舞い許すな、国民がノーの声上げる時だ!
財務省 太田次官 |
思い出されるのが、10年前の東日本大震災後の復興増税である。当時の日本の主流経済学者は、復興対策の必要性を認めつつ、財源として国債を発行するが、その償還のためとして復興増税を主張した。そして多くの日本の学者がこれに賛同した。任命拒否問題で話題になった日本学術会議からも、復興増税の提言が出された。それらの背後には財務省の影がちらついていた。
当時、筆者はこうした動きを激しく批判した。筆者の主張は、東日本大震災による経済ショックは「需要ショック」だと予想し、復興対策を賄うため国債を発行しても、それらは日銀が購入すれば事実上、財政負担がなくなるというものだった。仮に日銀が購入しないとしても、東日本大震災のように数百年に1度の経済ショックに対しては、超長期国債で財源作りをして、その償還も超長期とすれば当面の増税措置は不要だと念を押した。
こうした考え方は、従来の財政学においても、課税平準化論として学部や大学院でも教えられているレベルのものだ。
いずれにしても、復興増税は不要であった。そもそも大きな自然災害の後の増税など古今東西で聞いたことがなく、専門家でなくても分かることだ。
しかし、当時の民主党政権は、財務省の強力な後押しがあったため、復興増税を選び、実行した。その結果、日本経済は、東日本大震災と復興増税により往復ビンタされたようなものだった。この意味で、日本の主流派経済学者のレベルの低さも示してしまった。
コロナ増税を主張する人は、復興増税に賛同した人ばかりだ。しかも、また、財務省が裏で動いているようだ。学部レベルの経済理論さえ使いこなせない人たちが、今でも間違った主張をしている。しかも、マスコミは相変わらず彼らの意見をたれ流している。
コロナ対策の財源は国債であるが、日銀が購入するので実質的に財政負担はなく、将来世代の負担もない。これは本コラムで繰り返して主張してきたことだが、筆者は、非常勤とはいえ内閣官房参与という公職に就いているので政権の一部にもいる。もし筆者の意見が間違っていれば、何らかの「説明」があるはずだが、これまでのところない。
また、この意見は、筆者が大蔵省(当時)の官僚時代から省内で公言してきた正統的な経済理論に基づくものだが、それについてもまともな反論を受けたことがなかった。
しかし、コロナ増税論者は、そうした正統的な経済理論を無視して、間違った意見を言い続けている人たちだ。
国債の大量発行により財政危機になると思い込んでいるだけなので、それが間違っていると言うのは簡単だ。事あるごとにみんなで指摘しよう。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)
新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中の国々が巨額の財政支出を行っていますが、コロナ終息直後に増税をしようとする国は、世界の中で日本だけでしょう。
未だに確定申告でも徴収される復興税 この状況に国民はもっと怒るべきだ |
復興増税は復興特別所得税、復興特別法人税、復興特別住民税と3種類あります。所得税は税率2・1%で13年1月から37年12月まで25年間課されています。法人税は税率10%で、12年4月から15年3月まで3年間の予定でしたが、1年前倒しで14年3月に廃止されましたた。住民税は府県民税・市町村民税合わせて1000円を14年4月から24年3月までの10年間課されています。
所得税の税率2・1%は、仮に消費性向90%で消費税に換算すれば2・3%程度なので、消費に与える影響は大きいです。具体的にいえば、実質所得が4・6兆円程度減少し、その結果、消費も4兆円程度減少します。
大災害が100年に一度の規模であれば、復興費用は「100年国債」で調達するのが原則です。大災害時の増税は経済学の課税平準化理論にも反するもので、古今東西行われたことがない愚策です。
課税平準化理論とは、簡単にいうと、大災害などがあった直後に復興のために、増税したとすれば、本来は復興で修理したり、新たなに作成するインフラ等は、震災を受けた世代とともにも将来世代も使用するにも関わらず、震災を受けた世代だけが、費用負担が強いられ非常に不平等なことになってしまうことを指します。
そのような不平等が生じないようにするためにこそ、復興費用は「100年国債」で調達するのが、普通です。日本も、大きな災害があったときには、過去にはそうしてきました。東日本震災における復興税だけが例外中の例外です。
震災などで「供給ショック」より、需要の喪失による「需要ショック」が大きい場合、デフレ圧力が高まるので、インフレ目標に達するまで、中央銀行による国債買い入れが可能になります。 停電で暗くなったたぬき小路商店街をスマホの灯りを頼りに歩く人々 2018年9月6日 |
東日本大震災の時には、こうした背景が無視され、需要ショックであったにも関わらず、日銀による国債買い入れもなく、本来は不必要であったはずの復興増税が行われました。100年国債も発行されず、事実上25年償還となり、前述のように毎年の負担は大きいです。
東日本大震災で被災した宮城県南三陸町を訪問、がれきが広がる町並みを 見つめられる天皇、皇后両陛下(当時)=2011年4月27日 |
財務省としては、二匹目のドジョウを狙っているのでしょう。コロナ対策で多額の財政支出を強いられるので、財政悪化を理由としてコロナ増税を主張する。その勢いで、消費税率も12%、さらには15%へと、再びホップ・ステップ・ジャンプをもくろんでいるのではないでしょうか。
世界の先進国では、中央銀行による国債の無制限買い入れや、減税、給付金など積極財政政策で一致しています。そして、当然のことながら、大災害での増税はしません。
コロナ・ショックでは需要が激減してしデフレ圧力が高まっています。このような時に増税すれば、落ち込んだ経済への致命的なダブルパンチとなるのは必定です。
0 件のコメント:
コメントを投稿