【独話回覧】菅政権は一刻も早く財政支出を拡大せよ 中国に土地や不動産を買い漁られ…経済萎縮は“安保上の危機”に
1月30日付産経新聞の拙連載コラム「経済正解」でこう論じたが、実のところ筆者はこれまで15年間、同じような主張を展開してきたので、「ああ、やっとアメリカの経済学者で、しかも財政の最高責任者が言い出したか」との感慨があった。
これまでは、いち経済ジャーナリストがいくら「正論」を唱えても、しょせん多勢に無勢で、わが日本国では政官財界はもちろん、経済学界もメディアも、主流は財務省の意のままだ。彼らエリートは学術的にも経験的にも根拠がないにもかかわらず、財政均衡至上主義で増税や財政支出削減をすれば経済は良くなる、というフェイク情報で国民をだまし続けてきた。
緊縮財政でどうなったか、日本は実に4半世紀もの間の慢性デフレ局面から抜け出せない。もっと恐れるべきなのは、経済規模、すなわち国内総生産(GDP)を世界標準のドルでみると、日本は20年前の1995年よりも小さくなっていることだ。
95年のGDPと、新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)のあった2020年の見通しを比較すると、日本は5兆4000億ドルから4兆6000億ドル(19年実績は5兆800億ドル)と減少している。
中国は7300億ドルから14兆8000億ドル(同14兆3000億ドル)と約20倍、米国が7兆8300億ドルから19兆5000億ドル(同21兆4000億ドル)と約2・5倍、ユーロ圏が約7兆5000億ドルから11兆2000億ドル(同13兆3000億ドル)と約1・5倍に増えている。日本だけが世界経済史上、前例のないほどの長期停滞、マイナス成長を続けてきた。
ドル建てのGDPが細って他国に水をあけられることはそれだけ、国民の賃金や所得でみて相対的に貧しくなっていることを意味し、なおかつ、モノ・サービス価格は下がり、不動産など資産価格もそれにひきずられる。ドル建てGDPが増えている国は購買力が上がっているわけだから、日本はモノも飲食・宿泊などのサービスも、さらに土地もマンションも「安い!」ということになる。
政府は中国などからのインバウンド消費に頼り、昨年2月の春節にはコロナ感染の元凶、中国人旅行客を「歓迎」するメッセージを安倍晋三首相(当時)が送る始末だった。インバウンド消費に頼らざるを得ないというのは、貧困国である証左であり、北海道の山林原野、農地から東京都心の不動産まで中国資本や中国人によって買い漁られる。中国は何も武力を使わなくても、日本を徐々にわがものにしていける。四半世紀間もの経済萎縮は、実は日本国の安全保障上の危機である。
それにもかかわらず、政財官学、メディアに危機感が乏しい。相変わらずコロナ不況対策で財政支出が増えると、財政規律を忘れるな、消費税のさらなる増税を準備せよとのたまう向きが幅を利かせる。
代表的な論説が日本経済新聞1月24日付朝刊社説で、見出しは「財政悪化の現実を直視できないのか」である。「困窮している個人や企業を、いまはしっかりと支えるべきだ。そのために必要な国・地方の財政出動をためらう時ではない」と、緊急の財政出動を認めながらも、政府債務残高がGDPの2倍近いとし、「たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる」と例によって「オオカミ少年」の本性をむき出しにしている。
冒頭のイエレン財務長官発言に戻ると、財政支出拡大をよしとする基準は「債務水準」であり、イエレン氏は政府の借金利払いの対GDP比率だとしている。
グラフは日米とユーロ圏の同比率の推移である。日本とユーロ圏については、経済協力開発機構(OECD)が各国地域別に発表している見通しから抜き出し、米国については米財務省が公開している利払いデータから算出した。一目瞭然、利払い比率がダントツに低いのは日本であり、20年、21年とゼロ%以下である。
米国はイエレン長官が、08年のリーマン・ショック当時よりも低いと言っているが、それでも20年9月時点では利払いのGDP比が1・6%に上る。つまり、財政支出拡大に最も悠々と踏み切ることができる国は米欧ではなく、日本である。
日本は前述したように、25年前から経済萎縮病に見舞われており、コロナ禍はそれをひどくした。宿痾(しゅくあ)はデフレとマイナス成長であり、それを引き起こしてきたのは消費税増税と緊縮財政である。菅義偉政権は財政支出拡大によって、一刻も早く国難から脱出する戦略を進めるべきだ。
■田村秀男(たむら・ひでお) 産経新聞社特別記者。1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後の70年日本経済新聞社入社。ワシントン特派員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級研究員、日経香港支局長などを経て2006年産経新聞社に移籍した。近著に『検証 米中貿易戦争』(ML新書)、『習近平敗北前夜』(石平氏との共著、ビジネス社)、『日本再興』(ワニブックス)など多数。
世界的な権威といわれる経済学者の中で、日本以外の学者で、財政均衡主義が正しいと、言ったのは二人くらいかもしれません。ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハートです。
これについては、間違いであったことをこのブログでも2013年に指摘しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
「ごめんなさい」では済まされない! 財政切り詰め策の根拠となった論文に誤り 欧州連合の方針に疑問―【私の論評】 これは経済学者というか、科学者として許すまじ行為!!世界を日本を惑わした罪は大きい!!見せしめのために、学会から追放せよ!!日本は、消費税増税絶対にみあわせようぜ!!
2009年にギリシャ問題が発覚し、それが欧州財政危機問題へと拡大した際、欧州委員会は危機を回避する政策を策定するにあたってひとつの論文を参考にしました。
それはハーバード大学のケネス・ロゴフ教授とハーバード・ケネディ・スクールのカーメン・ラインハート教授による「Growth in a Time of Debt(国家債務時代の経済成長)」という論文です。
ロゴフ教授とラインハート教授は『国家は破綻する』という本の著者でもあり、日本でも知られています。
ところがマサチューセッツ大学アマースト校の博士課程に学ぶトーマス・ハーンドンがこの論文に書かれている結果を再現しようとしたところ、ロゴフ教授とラインハート教授が主張するような、「国家負債が90%を超えるとGDP成長が著しく鈍化する」という結果が得られませんでした。そこで彼の指導教授であるマイケル・アッシュ教授ならびにロバート・ポーリン教授とともに「結果がそうならなかった」という指摘をしました。
これが両者の間で論争を巻き起こしましたが、結局、ロゴフ教授とラインハート教授がエクセルのスプレッドシートを操作する際、コーディングのミスをした為、一部のデータが演算に反映されていなかったことが判明しました。
ロゴフ教授とラインハート教授がエクセル操作上の凡ミスを全面的に認め、謝罪の声明を出すということで論争には終止符が打たれました。
しかし切り詰め政策を強要されているギリシャやスペインの国民からすれば「間違いでした、ごめんなさい」ですまされることではありません。
この馬鹿まるだしの間違いをしたのは、以下の写真の二人です。
ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハート |
ケネス・ロゴフは、現在は現在、ハーバード大学教授です、カーメン・ラインハートは現在全米経済研究所の研究員(Research associate)であり、経済政策研究センターのリサーチフェローであり、 またVoxEUの創立協力者でもあります。
この二人の学者は、この当時はブログをごらんいただくと私自身もかなり批判をしましたが、それにしても、この二人は処方的な過ちなのですが、素直に誤りを認め、謝罪の声明を出しています。だからこそ、今日の地位があるのだと思います。
しかし、この教授たちのように、「国家負債が90%を超えるとGDP成長が著しく鈍化する」という誤った説を唱え続けているおかしな組織な個人が日本にはいます。
それが、財政規律に拘泥する日本の財務省であり、財務省の走狗である経済学者たちであり、これらの言説を鵜呑みにして報道するマスコミが存在します。
がれらの歪んだ頭では、イエレン氏の考えなど理解できないようです。彼らの歪んだ頭では、デフレ下での増税や、そもそも保険であり、財政とは無関係である年金なども、歪められ、社会保障と税の一体改革などという不可思議な理論がまかり通ってしまいます。
彼らはいまでこそ、コロナ禍で大勢の人が苦しんでいるので、息を潜めていますが、コロナが収束すれば、日本経済の状況など無視して、東日本震災後の復興税制などのようなコロナ増税を実行しようとするでしょう。それどころか、現在10%の消費税を、15%、20%にするなどといいかねません。
もう私達は、財務省とその走狗たちの、認知症的な財政政策等に惑わされるべきではありません。
財政均衡主義に拘泥する財務省の太田事務次官 |
もう昔とは状況が変わっています。このブログですら、もうすでに、10年以上も前から、財政規律に拘泥することの間違いについて主張してきて、今年で13年目に入ります。
昔は、政官財界はもちろん、経済学界もメディアも、主流は財務省の意のままであり、彼らエリートは学術的にも経験的にも根拠がないにもかかわらず、財政均衡至上主義で増税や財政支出削減をすれば経済は良くなる、というフェイク情報で国民をだまし続けてこれましたが、もうそのような時代ではありません。
財務省とその走狗たちが、いくら緊縮財政至上主義を訴えても、それに嬉々として従うのは、マスコミでしか情報を得られない、ワイドショー民である高齢者などの少数です。
財務省とその走狗たちの思い通りにさせることは、多くの国民が許さないでしょう。彼らの宿痾は消えそうもありません。であれは、財務省をなくすべきです。
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