2021年2月27日土曜日

米英と中国の間で加熱するメディア戦争―【私の論評】先進国が中国とのメディア戦争に勝利するには、北京冬季オリンピックに不参加を早めに明確に意思表示すること(゚д゚)!

 米英と中国の間で加熱するメディア戦争

岡崎研究所

 2月4日、英国の放送規制当局であるオフコム(Ofcom:Office of Communications情報通信庁)は、中国の海外向けテレビ放送(CGTN:China Global Television Network)の英国国内での放送免許を取り消した。


 もともと中国は、極めて活発に対外宣伝活動を展開しており、CNNやアルジャジーラを真似して、テレビでの発信も強化していた。中国国営テレビ(CCTV)の英語ニュースは2000年から活動を開始し、英国でも18年間放送していた。中国は2016年12月、海外向け放送事業を整理統合してCGTNという名称にし、海外24時間テレビ放送を更に拡充させた。

 CGTNは、北京の本部以外に、海外拠点をロンドン(欧州統括)、米国ワシントン、ケニア・ナイロビ(アフリカ統括)に設置し、更に全世界に70以上の支局を有する。英語以外に、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語放送もしており、現在100カ国以上で8500万人の視聴者がいる。インターネットでも見ることができる。そして近年、習近平政権の下で共産党の指導が強められていた。

 英国の放送規制当局オフコムは、テレビに公正性、正確性、プライバシー保護などを厳しく求めてきた。英国国内で、中国、イラン、ロシアのテレビが放送免許を得ていたが、様々な処分を受けてきた。2012年には、イランのテレビ局「プレスTV」が英国国内の放送免許を取り消され、2019年には、ロシアのテレビ局「RT(ロシア・トゥデイ)」が、公平性に違反したとして、数十万ポンドの罰金を課された。

 昨年5月、オフコムは、香港の民主化運動についてのCGTNの放送が、中国共産党以外の見解を伝えなかったため、公平性ルールに違反したと指摘した。また昨年7月には、CGTNが、その番組の素材取得に関連してルールに違反したと指摘した。英国の元ジャーナリスト等が中国で逮捕され、強制自白させられ、それがCGTNで放映されたことも問題視されていた。

 今回のオフコムによるCGTNの放送免許取消し決定は、中国にとり大きな痛手だ。人権擁護NGOが、CGTNの放送倫理違反と党派的性格を英放送規制当局に訴えていたことが功を奏した。

 このオフコムの決定に対し、2月5日、北京のCGTN(CCTV)本部に加え、中国外交部王文斌報道官も強く反発した。CGTN本部は、オフコムの決定に遺憾と反対を表明し、CGTN放送は、「客観性、理性、バランスの原則に基づき全世界でニュース報道を展開」との声明文を出した。外交部の王報道官は、「CGTNが中国共産党の支配を受けているというオフコムの指摘は正しいのではないか」との記者の質問に対して、「中国は共産党が指導する社会主義国家である、中国のメディアの属性は、英国側にとっても一貫して明確だ」、「英国側が今になって中国メディアの属性について語り、CGTNの英国での活動を妨害するのは、完全に政治的策動だ」と答えた。王報道官は事実を述べたのだが、これではCGTNの放送内容の「公正性」等を西側の人々に説得することはできない。

 約1年前、中国の活発な対外宣伝活動は、米国でも警戒され、国務省は規制を強化した。昨年3月2日、ポンペオ国務長官(当時)は、中国の公的な5つのメディア機関―ー新華社、CGTN、中国国際ラジオ、『チャイナ・デイリー』(英字新聞)、『人民日報』―ーを「外国ミッション」(大使館、総領事館と同様、スパイ活動も行う機関)と指定し、米国駐在人数を計100人に限定すると発表した。もともと彼らは中国の公用旅券をもって海外赴任していると言われるほど、中国共産党の保護を受けているらしい。

 NGO「セーフガード・ディフェンダーズ」の働きかけが、今回のオフコムの決定に大きな影響を与えているといわれているが、当NGOは、米国、カナダの放送規制当局にもCGTNの問題を同様に訴え、調査結果を待っており、今後の展開が注目される。

 欧米諸国や日本では、中国の宣伝活動はある程度警戒され、CGTNの成果にも一定の限界があるだろうが、途上国ではかなり成果を挙げているとの見方もある。各国が連携して、中国の宣伝活動を観察・分析し、然るべく対応していく必要があるだろう。

 中国国内(一般の家庭や事業所)では、中国当局が許可しないため、米CNN、英BBC、仏TV5、日本のNHKなどの視聴はできない。外国人向け高級ホテル、外国人駐在員向け高級アパートでは視聴できるが、あくまでも例外である。中国国内で外国のテレビに認めない権利を、中国のテレビは外国で享受し、それを失うと声高に文句を言い、対抗措置をほのめかす。実際、今回、中国当局は、2月12日、英BBCの国際放送「ワールドニュース」の中国国内での放映を許可しないことを発表した。実質的に、対抗措置とみて良いだろう。

【私の論評】先進国が中国とのメディア戦争に勝利するには、北京冬季オリンピックに不参加を早めに明確に意思表示すること(゚д゚)!

上の記事では、中国では外国人向け高級ホテル、外国人駐在員向け高級アパートでは海外放送の視聴できるが、あくまでも例外であるとしていますが、これでさえ当局に規制を受けています。

2019年12月に中国の武漢で原因不明の肺炎が広がっているとSNSでいち早く警鐘を鳴らしていた武漢の医師・李文亮さんが去くなってから2月7日で1年を迎えました。中国のSNSでは哀悼と称賛の声が広がっていましたが、中国国内では李さんの功績を伝える報道はほとんど見られませんでした。

故・李文亮医師と妊娠5ヵ月の妻・付雪潔、5歳の息子

李さんは、世界でいちばん最初に気が付いた人でした。そのタイミングでは新型コロナではなくて、SARSっていう、前に流行ったものがもう1回流行ったのではという疑いを持たれていて、その後亡くなられました。

サイト上の李さんについて書かれた内容は削除されていませんでしたが、1年経過した現在では、中国国内では李さんの功績を伝えるテレビ・新聞報道は全くみられません。たとえば、中国では、先程述べたように、外国人向け高級ホテル、外国人駐在員向け高級アパートでは海外放送の視聴でき、NHKの国際放送も視聴することができます。そのため、中国の在留邦人や観光・ビジネスで訪れた日本人は、これを視聴することが多いです。

そのNHKの国際放送のなかで、この李さんに関してのニュースを伝えたところ、中国国内ではその部分だけ突然画面が消えて、何も見えず、画面が真っ黒になったということが、視聴した複数の日本人から伝えられているのです。これは、当然のことながら、中国内の国内メディアでは全く報じられていないことを示しているといえます。

中国内ホテルでNHK国際放送が見れなくなり画面が真っ黒になったテレビ

なぜそのようなことができるかといえば、中国内の独特のシステムによるとされています。中国内の海外の放送は、世界の各国がリアルタイムでそのまま家庭に届けているのですが、中国では検閲官がその海外番組を見ていて、例えば日本からNHK国際放送を送信する際に意図的に10秒とか15秒とか中国内での放送を遅らせていて、これを放送用語では「ディレイ」といいます。

そのため検閲官が中国内で放送される、10秒から15秒くらい先に見て、これはまずいと思ったらスイッチを押すと、そこから先は見られなくなるのです。中国ではそういうシステムができているのです。

中国では、このようなことを平然とするのですから、中国の海外向けテレビに公正性、正確性、プライバシー保護など求めるのは最初から間違いなのかもしれません。私は、中国の報道はすべて、そのように見なしています。

中国の報道は、最初からフェイクもしくは、何らかの意図があるものと捉えており、ほとんど信用していません。

このブログでも以前掲載したように、米国の大手世論調査専門機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が昨年10月6日に発表した世界規模の世論調査報告によると、多くの先進国における反中感情は近年ますます強まり、歴代最悪を記録しました。

同調査によると、反中感情を持つ14か国とその割合は、高い順番から日本(86%)、スウェーデン(85%)、豪州(81%)、デンマーク・韓国(75%)、英国(74%)、米国・カナダ・オランダ(73%)、ドイツ・ベルギー(71%)、フランス(70%)、スペイン(63%)、イタリア(62%)となっています。また、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、韓国、豪州、カナダの9か国の反中感情は、同機関が調査を始めてからの15年間で、過去最悪となっています。

この調査は、先進国対象であり、先進国では中国への風当たりは厳しいものがあるようです。心配なのはやはり発展途上国です。発展途上国においては、先進国の海外向け放送で、中国の悪辣さの報道を強化すべきです。無論、わざわざ悪辣さを強調する必要はないのてすが、中国が実際に海外で行っている行動をそのまま報道すれば良いのです。

一番周知できるのは、やはり冬季オリンピック不参加でしょう。もう、EUや米国は参加しないようです。冬季オリンピックでは、EUと米国を除くと、ほとんど参加国がないという状況になります。

そうなると、いくら中国が冬季オリンピックを開催しようにも、事実上開催不能ということになります。

日本としては、間近に東京五輪が迫っているので、あまり中国を荒立てなくないという気遣いからでしょうか、未だに北京オリンピック不参加を表明していません。

しかし、米国にもジェノサイド認定され、ウイグル人を弾圧は明確な事実と世界から非難されている中国でのオリンピックには日本は参加できません。参加すれば、米英をはじめとする世界中の国々に誤ったメッセージを与えてしまいます。そのようなことを避けるためにも、もうそろそろ、日本も不参加を表明すべきです。というより、いずれ表明せざるを得なくなるでしょう。であれば、遅延することなく早めにそうすべきです。

22日、オタワにある議会外で、ウイグル族などイスラム教徒への中国の行動を非難する人々

そうして、先進国等は北京五輪の代替大会として、2022年に世界の各地で分散してでも、大会を開催すれば良いと思います。個人的には、その中に、日本の札幌等も含まれていると良いと思います。

いずれにしても、北米、英国、EUや日本などの先進国が、北京冬季五輪に参加しないということなれば、世界中のいかなる国でも、その理由や背景が報道されることになります。

そうなれば、中国は報復のため、東京オリンピックに不参加ということになるかもしれませんが、不参加国は中国、北朝鮮等と、限定されたものになるでしょう。

であれば、たとえ限定的でも開催して、コロナ後最初の開催国として、国際世界で存在感を枡にすることこそ、日本の国益に資するものと考えます。

多くの国が早い時期に、北京五輪不参加を決めれば、これに勝る中国に対するネガティブキャンペーンはありません。

【関連記事】

中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書―【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!


米海軍の太平洋「最恐」兵器?、巡航ミサイル原潜オハイオ―【私の論評】オハイオにも弱点はあるが、それを日本の通常型潜水艦で補えば無敵となる(゚д゚)!

牙を剥く中国、「海警法」のとんでもない中身―【私の論評】未だに尖閣、台湾を含む第一列島線を確保できない中国の焦り(゚д゚)!

0 件のコメント:

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...