2021年2月6日土曜日

【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…―【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

 【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…

 無利子でかなりの規模で借金できれば、テレワーク用に最新のパソコンと大画面の表示装置を買おうか、将来の子供の学費にするか、いやマンションを買うか、などさまざまな夢が実現しよう。

  これらの借金は経済合理性にかなっている。借入金利ゼロというのは「ゼロ・コスト」のカネであり、それを不確かでも、何がしかのリターン(利益)が得られそうな分野に投資すればよいのだ。

  以上の経済常識を政府に当てはめたのが米バイデン政権の財務長官に就任したジャネット・イエレン氏である。米国の場合、昨年12月の国債金利は1%を割り込んだ。お金の価値は物価上昇率にも関係があるので、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利はマイナスになっている。借金して投資したほうが得だ。

  イエレン氏は1月19日の米上院の財務長官指名承認公聴会で「世界は変わった」とし、「現在のような超低金利環境では、連邦政府債務が膨らみ続けているにもかかわらず、GDP(国内総生産)に対する利払い額の比率は低い。パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」と言い切った。 

 イエレン氏はGDPに対する利払い負担の低さを挙げて、財政赤字を気にしない財政支出拡大が正しいと論じたのだ。新型コロナウイルス・ショックが図らずも、米国の財政政策を均衡主義の呪縛から解き放つ新財政思想だが、別に難しいことではない。 

 GDPが増えることを意味する経済成長は通常、民間の企業が設備投資し、家計が消費することで実現するのだが、新型コロナ禍が広がる状況下では民間活動は萎縮してしまう。そうなると、経済を支える主役になれるのは政府しかない。その政府が実質金利ゼロで大々的に借金し、経済成長に向けて投資すべきなのだ。不況なのに政府債務の増大を理由に財政支出をけちると、多くの中小、零細企業が倒産し、失業者が町にあふれよう。失業給付など社会保障支出、治安対策費も膨らむ一方で税収は減るので、政府収支赤字は財政出動した場合に比べはるかに大きくなるだろう。

  実は日本こそ、イエレン理論に最もふさわしい。グラフは政府利払い費のGDP比と国債金利の推移である。いずれとも米欧に比べて圧倒的に低い。2019年はいずれもゼロ領域だ。

  だが、国内メディアの大多数は相も変わらず財政均衡主義にこだわる。日本経済新聞1月23日付社説は「困窮している個人や企業を、いまはしっかりと支えるべきだ」としながらも、政府債務残高がGDPの2倍近いとし、「たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる」と警告した。「世界は変わった」とするイエレン発言は馬の耳に念仏なのか。(産経新聞特別記者・田村秀男

【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

このブログにも以前掲載したように、トランプ大統領もイエレン氏と同じような考えを持っていました。これについては、以前のブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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追加経済対策 3次補正予算を決めた国会

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。
米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。

イエレン氏の述べた「パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」 という発言内容と同じことをすでにトランプ大統領は実行していたのです。

大統領選挙の公約においては、バイデン氏は様々な政策を増税して行うと発言しており、米国経済はバイデン政権下で低迷することになると発言していたため、私自身はバイデン政権下で、米国経済は落ち込むと予想していました。

ところが、蓋を開け見ると、イエレン氏が財務長官に任命され、しかも上記のような正しい発言をしていたので、安心しました。よって米経済はトランプ政権時代と比較して遜色ないか、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することが予想されます。

おそらくバイデン氏としては、経済運営に自信がなかったのでしょう。それを補うためにも、過去の実績のあるイエレン氏を財務長官にしたのでしょう。そうして、それは正しい選択でした。バイデン氏の安全保障政策は未だどうなるのか、予断を許さないですが、イエレン財務長官が思ったとおりに財政政策を実施でき、バイデン政権がこれを邪魔しなければ、米国経済は早期に回復して、再び成長軌道に乗ることが期待できます。米国、金融界、産業界などもこれを歓迎していることでしょう。

コロナ禍からの再生担うジャネット・イエレン財務長官

ただし、経済政策においてトランプ氏やイエレン氏だけが、慧眼の持ち主というわけではありません。すでに、予算収支は常にバランスが取れている必要はないというのが世界の通説です。特にまともな経済運営をしている国々においてはすでに常識です。バイデン氏はその常識からかけ離れていたということです。

そうして、特に、インフレ率がゼロに近く、金利がGDP成長率よりも低い日本では、適度の政府赤字が現在世代だけでなく将来世代のためにも有益なのです。むしろ、均衡させたり、黒字にすることこそ、利益に反することになるのです。

コロナ危機が世界の需要を減退させ、GDP成長率を低下させる今、それを一時的にしのぐには政府支出が特に必要なのです。均衡予算への見当違いな固定観念のために、法的用語を使えば「緊急避難」のための財政支出を避けることは非人道的であり、国民経済全体にも害を及ぼすことになります。

菅政権としては、財政健全性という時代遅れな意見を強調する論者の意見を鵜呑うのみにすべきではありません。迷ったら新任の高橋洋一内閣官房参与の意見に従うべきです。「健全財政」の美名の陰には、増税によって権限が拡大することを望む財務官僚の意見や、消費税の減免税率によって利益を受ける新聞業界の利害が隠れているのです。

アベノミクスの第3の矢は、将来に向けて日本の潜在的な成長力を高めるための構造改革でした。この分野での進展は、安倍政権の努力にもかかわらず緩やかであったといえます。能率化を進めようとすると一部の人びとに不利益が及ぶので、構造改革は一部の政治家、官僚、経済人から抵抗を受けます。そのため、日本には官庁のデジタル化の遅れ、公印を押す習慣、所得税で共働きを抑制する税制など時代遅れのルールが多く残っています。

コロナ危機で、会社に皆が同時にいてすべき仕事は意外に少ないことも明らかになったのですが、危機が過ぎた後では守旧派の意見で昔の働き方が戻りつつあり、最近またコロナ禍がぶり返したのに、テレワークが再開した企業は少ないです。

スガノミクスではまず、トランプ氏やイエレン氏のように、財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫いた上で、首相自身の最も持ち味の出る構造改革と成長戦略に焦点を当てるべきです。

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