カルヴァリ級6隻の最終番艦、就役は2023年後半を予定
インド国防省は2022年4月20日、同国海軍向けの新型潜水艦「ヴァグシーア」が進水したと発表しました。
「ヴァグシーア」はインド海軍が整備を進めるカルヴァリ級潜水艦の6番艦です。全長は67.5m、幅は6.2m、高さ(深さ)は12.3m、水上航行時の喫水は5.8mで、満載排水量は1775トン、乗員数は43人。主武装は魚雷並びに対艦ミサイルで、ディーゼルエンジンと発電機によって、水中ならば最大20ノット(約37km/h)、水上ならば11ノット(約20km/h)の速力で航行できるといいます。
カルヴァリ級は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同開発した輸出用のスコルペヌ級潜水艦をインドがライセンス生産し導入しているもので、開発元であるフランスとスペイン両国での採用実績こそないものの、インド以外にもチリやマレーシア、ブラジルなどが導入・運用しています。
インド海軍はカルヴァリ級を6隻調達する計画で、「ヴァグシーア」はその最終番艦になるとのこと。建造はムンバイにあるマザゴン造船所で行われ、今後は各種艤装や試験などを経て2023年後半までに海軍に引き渡される予定です。
なお、インド国防省によると1番艦「カルヴァリ」が2017(平成29)年12月に就役して以降、これまでに4番艦「ヴェラ」までが実運用に就いており、5番艦「ヴァギル」も2022年中の海軍引き渡しを目指して現在、海上公試が進められているそうです。
【私の論評】印はやがて露から武器輸入ができなくなり、露に配慮しようがなくなる(゚д゚)!
インドは、潜水艦に関してはフランス・スペイン共同開発のものをこれから運用していく予定のようです。ただし、インドは、ロシアの原潜も運用しています。
昨日も掲載したように、そのロシアは西側から部品の供給を絶たれ、まもなく軍事装備の製造も修理も完璧にできなくなります。
それは、今回のように輸入を一国にだけ頼っていると、その国との関係が悪くなったり、その国が戦争に突入した場合、武器の調達が難しくなるからでしょう。
英国のジョンソン首相はインドのモディ首相と会談し、ロシアによるウクライナへの侵攻を非難しましたが、モディ首相は、これまでと同様、直接的には軍事侵攻を非難しませんでした。
イギリスのジョンソン首相は、22日、インドのニューデリーで、モディ首相と会談し、安全保障面での協力を強化することや、2国間のFTA=自由貿易協定の締結に向け交渉を加速させることで一致しました。
モデイ印首相とジョンソン英首相 |
この中には、インドで製造される戦闘機などへの技術支援も含まれ、イギリスとしては、インドの軍事面でのロシアへの依存からの脱却を後押しするねらいもあります。
会談後、ジョンソン首相は「独裁的な支配力が拡大するなか、自由で開かれたインド太平洋地域などで、価値観を同じくするわれわれが協力関係を深めることが重要だ」と述べ、ロシアを非難するとともに、インドとの協力の重要性を強調しました。
一方、モディ首相は「われわれは即時停戦に向けた対話と外交、および、すべての国の領土の一体性と主権の尊重の重要性を確認した」と述べるにとどまりました。
インドをめぐっては、先月19日には岸田総理大臣が訪れたほか、オーストラリアのモリソン首相、中国の王毅外相、ロシアのラブロフ外相、それに米国のバイデン大統領が、首脳間または外相間の会談を対面やオンラインで行うなど、主要国による外交が活発になっています。
背景には、ロシアによる軍事侵攻を非難も支持もしないインドを各国がそれぞれの立場に引き込みたいという思惑もあるとみられます。
ここ数週間、米国が発するメッセージは、インドの姿勢を渋々受け入れるものから、インド側にロシアとの取引を継続した場合に起こり得る結果を警告するものへと変化してきました。
直近では、ロシアとの長期的な安全保障関係を見直すよう示唆しています。 米国家安全保障会議(NSC)の高官ダリープ・シンはニューデリーで今月、中国が次にインドとの国境付近で挑発行為に出た場合、インドはロシアの支援を当てにできないだろうと述べました。
ウクライナ情勢をめぐり日本政府は、避難民を受け入れている周辺国に今月下旬から自衛隊機で救援物資を輸送する計画でしたが、物資を積み込むための経由地のインドから同意が得られなかったとしています。
ロシアは以前から経済的に中国依存の状態でしたが、ウクライナ紛争によってさらに接近しています。 昨日もこのブログで述べたように、西側から部品の供給を絶たれ、まもなく軍事装備の製造も修理も完璧にできなくなります。実際昨日も述べたように、ロシアの戦車工場はすでに操業を停止しています。
ウクライナの旧ソ連制戦車の修理工場が戦車の墓場のようになっているロシアの戦車工場もやがて・・・・ |
AK47ライフルやRPGなどローテクな兵器はこれからも輸出できるでしょうが、ハイテク関連が含まれる兵器は絶望的です。
今後ロシアが、インドへの武器輸出をいつまで継続できるかどうかは不透明です。政治学者のバサブジット・バナジーとベンジャミン・カーチはウェブマガジン「ウォー・オン・ザ・ロックス」で、ロシアの防衛産業は2014年のクリミア併合以降、財政難に直面していると指摘しました。
インドは長年、自国の防衛産業の生産能力不足に悩まされてきました。ロシア製の武器に依存度が高い現状では、輸入を止めるわけにはいかないのでしょう。 結局、米国にとってインドをロシア製の武器から引き離すよりは、依存度が低いロシア産原油から引き離すほうが簡単です。
インドのジャイシャンカル外相は11日の記者会見で、「おそらくわが国の1カ月分の輸入量は、ヨーロッパの半日分にも満たないだろう」と述べたが、 バイデン政権には、長期的にみてもっといい戦術もあります。
米国は、ロシアはそう遠くない将来、武器の輸出なその部品も輸出できくなることを説得し、米国からインドへの武器輸出をさらに拡大し、他の主要なフランスやイスラエル等の武器供給国にも同調を促し、インドの国産兵器製造能力の強化を支援することです。
インド海軍のP8I哨戒機 |
米国からインドへの武器輸出はロシアほどではないですが、実績はあります。たとえば、2021年7月13日、ボーイング社はインド海軍に10機目の哨戒機P-8I(ネプチューン)を引き渡しました。インド海軍向けのP-8Iには、インド海軍の要望により磁気探知装置(MAD:Magnetic Anomaly Detector)とマルチモード(イメージング、天候回避、ビーコンモード等)レーダーを搭載しています。
米国政府は、フルスペックのP-8A(ポセイドン)の海外輸出を認めていませんでした。そのため 、インド海軍向けP-8Iの電子装備は簡素化され、データリンクなど統合情報伝達システムは、インド国内のBEL社製を装備しています。
米国政府は、フルスペックのP-8A(ポセイドン)の海外輸出を認めていませんでした。そのため 、インド海軍向けP-8Iの電子装備は簡素化され、データリンクなど統合情報伝達システムは、インド国内のBEL社製を装備しています。
それにしても、P-8IはAUKUS諸国と直接データー共有などができないだけで、中露の対潜哨戒機よりもはるかに性能が良いです。
今後インドはロシアからの武器輸入はできなくなります。その時が来れば、黙っていてもインドがロシアに配慮をすることはなくなるでしょう。そうして、インド自身もロシアに配慮することは、今後自国の安全保障を危うくしかねないと気づくことになるでしょう。
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