米国、中国も「道連れ」制裁か プーチン大統領を擁護、デフォルト迫るロシア救済…第三国の〝抜け穴〟許さない! 「二次的制裁」という伝家の宝刀も
プーチン大統領(左)を一貫して擁護する習主席 |
西側諸国がロシアへの非難を強めるなか、擁護姿勢が際立つのが中国だ。ウラジーミル・プーチン大統領と親しい習近平国家主席は対露制裁に反対を明言し、経済面でもデフォルト(債務不履行)が迫るロシアを救済している。米国は制裁の抜け穴を作った国への「二次的制裁」も視野に入れており、米欧と中露の対立構図は鮮明だ。
習主席は21日、中国海南省で開かれた経済会合「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」年次総会の式典で、米欧の対露制裁を念頭に「一方的な制裁の乱用に反対する」と強調した。「冷戦思考は世界平和の枠組みを壊すだけで、捨てるべきだ」とも述べ、ロシア寄りの姿勢を見せた。
中露は日本への威嚇でも歩調を合わせているようだ。防衛省統合幕僚監部は20日、ロシア海軍の駆逐艦や政府系天然ガス企業「ガスプロム」関連のパイプ敷設船など計6隻が対馬海峡を抜け、東シナ海から日本海へ北上したのを確認した。同じ日に中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県の奄美大島付近の海域を通過し、東シナ海から太平洋に移動した。
経済でも中国の影がちらつく。欧米や日本が経済制裁を行い、ロシア国債は5月にもデフォルトとなる可能性が高まった。一方で中国はロシアから原油や小麦などの輸入を増やしている。
中国経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストによると、中国の3月の輸入額全体は前年同月比0・1%減と弱含みである一方、ロシアからの輸入額は同26・4%増と対照的な動きをみせた。
西濱氏は「足元はゼロコロナの問題が大きいが、物価が上振れしている中で家計部門の痛みを和らげるため、ロシアと付き合うことで影響を抑えられる面もあるのかもしれない」と分析する。
対露制裁を主導する米国は、第三国にも自国の制裁を順守させる「二次的制裁」という伝家の宝刀を持つ。
福井県立大学の島田洋一教授は「米議会の中ではロシアの金融機関に抜け穴を与えた中国の金融機関に口座を持たせないとする法案も出ている。こうした金融機関における第三国制裁が一番効くことになるのではないか。西側諸国の一部の天然ガス輸入が継続している限り、中国への制裁も難しいが、米国から欧州への天然ガス供給体制ができれば、中国への制裁の可能性も高まるだろう」との見通しを示す。
ジョー・バイデン米政権はウクライナに兵器の追加供与を進める一方、ロシアの「戦争犯罪」と、中国の「人権弾圧」の監視を継続している。
米国務省が12日公表した「2021年版人権報告書」では、ロシアが93ページ、中国が90ページとほぼ同量の紙幅が割かれた。
ロシアについて、ウクライナ東部で親露派武装勢力の「訓練や戦闘などを継続した」と記した。障害者や性的少数者らを標的とした暴力的犯罪もあると強調した。
中国に対しては100万人以上のウイグル人が強制収容され、200万人が「再教育」を受けたと指摘する。恣意(しい)的な監禁や身体的自由の剥奪、強制不妊手術、強姦、拷問などの行為を列挙した。
報告書は中露を「権威主義国家」と指弾した。民主主義国としての米国の本気度が問われている。
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習主席は21日、中国海南省で開かれた経済会合「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」年次総会の式典で、米欧の対露制裁を念頭に「一方的な制裁の乱用に反対する」と強調した。「冷戦思考は世界平和の枠組みを壊すだけで、捨てるべきだ」とも述べ、ロシア寄りの姿勢を見せた。
中露は日本への威嚇でも歩調を合わせているようだ。防衛省統合幕僚監部は20日、ロシア海軍の駆逐艦や政府系天然ガス企業「ガスプロム」関連のパイプ敷設船など計6隻が対馬海峡を抜け、東シナ海から日本海へ北上したのを確認した。同じ日に中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県の奄美大島付近の海域を通過し、東シナ海から太平洋に移動した。
経済でも中国の影がちらつく。欧米や日本が経済制裁を行い、ロシア国債は5月にもデフォルトとなる可能性が高まった。一方で中国はロシアから原油や小麦などの輸入を増やしている。
中国経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストによると、中国の3月の輸入額全体は前年同月比0・1%減と弱含みである一方、ロシアからの輸入額は同26・4%増と対照的な動きをみせた。
西濱氏は「足元はゼロコロナの問題が大きいが、物価が上振れしている中で家計部門の痛みを和らげるため、ロシアと付き合うことで影響を抑えられる面もあるのかもしれない」と分析する。
対露制裁を主導する米国は、第三国にも自国の制裁を順守させる「二次的制裁」という伝家の宝刀を持つ。
福井県立大学の島田洋一教授は「米議会の中ではロシアの金融機関に抜け穴を与えた中国の金融機関に口座を持たせないとする法案も出ている。こうした金融機関における第三国制裁が一番効くことになるのではないか。西側諸国の一部の天然ガス輸入が継続している限り、中国への制裁も難しいが、米国から欧州への天然ガス供給体制ができれば、中国への制裁の可能性も高まるだろう」との見通しを示す。
ジョー・バイデン米政権はウクライナに兵器の追加供与を進める一方、ロシアの「戦争犯罪」と、中国の「人権弾圧」の監視を継続している。
米国務省が12日公表した「2021年版人権報告書」では、ロシアが93ページ、中国が90ページとほぼ同量の紙幅が割かれた。
ロシアについて、ウクライナ東部で親露派武装勢力の「訓練や戦闘などを継続した」と記した。障害者や性的少数者らを標的とした暴力的犯罪もあると強調した。
中国に対しては100万人以上のウイグル人が強制収容され、200万人が「再教育」を受けたと指摘する。恣意(しい)的な監禁や身体的自由の剥奪、強制不妊手術、強姦、拷問などの行為を列挙した。
報告書は中露を「権威主義国家」と指弾した。民主主義国としての米国の本気度が問われている。
【私の論評】中国を停戦協定に介入させれば、「蟻の一穴」の諺通り、世界はとてつもない惨禍に見舞われかねない(゚д゚)!
ジョー・バイデン政権というか、現状の米国は議会から、司法まで、中国は「権威主義国家」であり、西側の技術を剽窃したり、強制労働などで不当に安いコストで様々な製品の製造を行い、それを米国等に輸出するなどして儲け、富を貯め込み、第二次世界大戦後の米国を頂点とする世界秩序に挑戦し、それを作り替えようする、敵であるとみなしています。
これは、米国が今後民主党政権になるのか、共和党政権になるのかでは変わらず、もはや米国の意思といっても良いです。
無論、ロシアは米国にとって敵であるとはみなしてはきましたが、近年は中国をより警戒するようになっていました。その理由は明らかで、このブログでも指摘してきたとおり、中露の一人あたりのGDPは中国と同程度(100万円前後)ではあるものの、中国の人口はロシアの10倍の1億4千万人であり、そのため中国のGDPは、ロシアの10倍であり、米国の安全保障の観点からみれば、中国のほうがロシアよりもはるかに大きな脅威であるからです。
ロシアのGDPは現在韓国を若干下回る程度であり、東京都と同程度です。にもかかわらず、あの広い国土を中国の1/10程度の人口で守らなければならないのです。
ただ、現在はロシアがウクライナに侵略したため、ロシアの暴挙を放置するわけにもいかず、ロシアに強く対峙していますが、中国のほうがはるかに大きな脅威であると考えていることには変わりはありません。
ロシアに関しては、すでに様々な外国企業の工場が操業停止を決めています。これは、ロシア国内では、部品が入手困難になることが予想されることや、売上をドルで受け取れなくなることが予想され、操業しても無意味になることが考えられ、ロシアの軍需工場もいずれ、兵器の製造が不可能になるとみられます。
しかし、中国はロシア以上の敵であるにもかかわらず、ロシアに対する制裁よりは、中国に対する制裁のほうが甘いので、現在の中国はロシアほどの窮地には至ってはいません。
ただ、このブログも示したように、「権威主義国家」である中露のうち、露をいくら制裁などで、弱らせたにしても、中国が現状のままの状態であれば、たとえロシアが弱体化したとしても、米国にとっては中国による懸念は拭い去ることはできません。
一方、中国が弱体化してしまえば、ロシアの脅威などとるに足りません。黙っていても、ロシアは弱体化します。北朝鮮もそうなります。
米国の優先するのは、やはりロシアよりも中国なのです。米国が中国に対峙しようとする姿勢は変わっていないどころかますます強化されたみるべきです。
このようなさなか対露制裁を主導する米国は、中国が米国の制裁に反してロシアを利するような行動にでれば、ためらうことなく「二次的制裁(secondary sanctions)」という伝家の宝刀を抜くでしょう。たとえ、バイデン政権がそうしなくても、米国議会はそのように動き、バイデン政権にそうさせるでしょう。
ところが同日、バイデン政権のプライス報道官は、記者会見で、ロシア軍のウクライナからの完全撤退でもない限り「停戦交渉のオファーなどは無意味なので、受けるな」という趣旨のこと発言をしたこと等から米国は、最初から停戦交渉を阻止しようとしてきたというものです。
確かに一刻も早い「停戦」が望ましいのは間違いないこととは思います。しかし、以前もこのブログで述べたように、バイデンは、ウクライナ戦争関する事柄でも、中東諸国やイスラエル、トルコ等とはある程度妥協しても良いですが、中国と妥協してロシアを説得させ停戦交渉成立させるべきではありません。
早期停戦実現のため米国が妥協して、中国に停戦協定に関わらせ、停戦が実現してしまえば、習近平の存在感は嫌がおうでも高まります。下手をすると、習近平はノーベル平和賞を受賞するかもしれません。そうなると、習近平はそれを活用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。
そうなると、習近平は余勢をかって、喜び勇んで台湾併合にはずみをつけるかもしれません。その後世界は中国にさらに翻弄されることになるでしょう。これは、悪い妥協です。バイデンはこの種の妥協は、絶対にすべきではありません。
今のところ、そのような兆候はありませんから、さすがのバイデンも中国に利するような真似はしないつもりなのでしょう。
もしも、戦争を少しでも早く終わらせることを大義名分として、バイデンが悪い妥協をしてしまえば、中露に大きな勘違いをさせてしまうことになるでしょう。
ウクライナ侵攻や、台湾侵攻などの暴挙を行ったとしても、米国は戦争を早期集結させるために、すぐに妥協するから、俺たちは何をやっても酷いことにはならないという勘違いをさせることになります。
中露の「権威主義国家」体質はウクライナ戦争後も温存されることになります。そうなれば、ウクライナの戦争は終了したとしても、ウクライナ危機が去るどころか、過去もそうであったように、ロシアのウクライナへの侵略は今後も繰り返されることになるでしょう。ロシアはその時々で、自分の能力にみあった侵略を小刻みに行い、時間をかけつつもいずれウクライナ全土を手に入れ、その次はモルドバに侵攻するかもしれません。
このようなことはたとえ目の前の戦争は早期に終了したとしても、ウクライナの将来に禍根を残すことになり、決して良いこととはいえません。早期停戦も大事ですが、どのような停戦の仕方をするかも非常に重要なのです。
ロシアが侵攻を小出しに何回も繰り返せば、ロシアはソ連邦だった頃の版図を取り戻すことになるかもしれません。今回のロシアの侵攻がドンバス地方のみに限られていれば、ロシアのウクライナ侵攻は早期に成功していたかもしれません。そうして、米国がこれに妥協して、停戦を安易に認めてしまえば、クリミアの併合と、ドンバス併合に勢いづいたロシアは、ソ連邦だった頃の版図を取り戻すために、8年ごとに侵略を繰り返すことになったかもしれません。
そのロシアのやり方を見習い、中国も台湾に侵攻し、その次は尖閣諸島、次は沖縄、その次は日本本土に侵攻するかもしれません。挙句の果てに、日本を南北で分断し、北はロシアが統治、南は中国が統治という事になりかねません。
分割統治の悪夢は過去にも起こりそうになったことがあります。多くの戦死者を出した第二次世界大戦は、日本の降伏によって幕を下ろしました。終戦後は通称GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下、ほぼほぼ米国の管轄に置かれました。
しかしこの”8月15日”というタイミングで行われたポツダム宣言の受諾が、一週間後にずれていただけで、日本はドイツや朝鮮半島のように分割統治されていた可能性があると言います。
上の地図でもわかる通り、もし分割統治されていれば東京は4か国による統治が計画されていたので、ベルリンの壁にようなものが出来ていたのかもしれません。四国地方だけ公用語が中国語になっていたかもしれません。そうして東北地方・北海道はソ連統治下に入っていた可能性がありました。
そのようなことにならなかったのは、まさに不幸中の幸いでした。
さて、中国が台湾に侵攻すれば、ロシアが仲介し、早期停戦を行い、それがうまくいけば、プーチンはノーベル平和賞を受賞し、プーチンはそれを利用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。
そうなると、プーチンは余勢をかって、喜び勇んでモルドバ併合にはずみをつけるかもしれません。ロシアがモルドバに侵攻すれば、中国が仲介に入り、早期停戦を行い。ということを何度も繰り返し、最終的に、時間をかければ中露が世界中を取り放題ということになりかねません。
そんなことは断じて許すことはできません。だからこそ、バイデン政権のプライス報道官は、記者会見で、ロシア軍のウクライナからの完全撤退でもない限り「停戦交渉のオファーなどは無意味なので、受けるな」という趣旨のこと発言をしたのでしょう。
私から言わせれば、プライス報道官の発言は穏当すぎると感じるくらいです。私なら「無意味」どころか、「停戦交渉のオファーを受ければ、中露を利して、世界をますます不安定化させることになるだけであり、断じて許さない」と言うと思います。
そうして、日本もウクライナ戦争を契機に、安全保証のあり方を検討すべきです。もしバイデンがポンコツすぎて、早期停戦させんがために、中国に停戦協定に関わらせるようなことがあれば、上記の最悪のシナリオを招くことになりかねません。
実際、バイデンはアフガニスタンの無惨な撤退でも、ロシアのウクライナ侵攻でも、それを助長するような発言や行動しています。今後そのようなことをしないという保証はありません。
そうして、バイデンがそのようなことをしなくても、今後中露が他国の領土に侵攻しないという保証はありません。そのときに、時の米国大統領が中露を利するような悪い妥協をしないという保証もありません。
日本としては、そのようなことになっても自分の領土は守れるように、そうして、EU諸国等と協同で米国の誤りを正し、中露の「権威主義国家」から世界を守ることができるように、今から準備すべきです。
最期に念を押しますが、「権威主義国家」の独裁者とは、我々自由主義陣営に住む住人には、その本質は理解不能です。ですから、我々は少なくとも彼らが「やる」といったことは、いずれ必ずやると受け止め、それに対する準備を怠るべきではありません。
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