反ワクチン団体「神真都Q」は全国各地でデモ活動を展開している |
自然科学系と社会科学系に分けてみてみよう。自然科学系ではイデオロギーと関係なく、事実に基づく実験と数理ロジックで論証されるのが基本だ。そのため、科学知識があれば、陰謀論はかなり排除できる。そもそも陰謀論の論法は自然科学ではありえないものだ。
科学知識のない人はどうするか。自然科学の場合、陰謀論を排除する人や組織がかなりあるので、ネット上の情報だけでも、これは陰謀論かなと見分けることができる。少しでも陰謀論の匂いがあれば、避けるのが賢明だ。
社会科学系の場合、どうしたらいいのだろうか。筆者の場合、自然科学と類似した論法でチェックしている。社会科学の場合、実験ができないので、統計数字に基づくモデルの検証を行って、妥当な理論を選び出すという作業になる。筆者の戦争確率論も、過去の戦争データから統計手法により導き出したものだ。社会科学の場合でも、定性分析と定量分析があれば後者を信頼する。
「ユダヤ資本やディープステートによれば…」といった話が陰謀論の典型であるが、統計数字どころか、用語の定義も出てこない。筆者は、歴史的に明確な前提、定量的な事実関係や議論がない話は基本的には信用していないし、定義のない用語に基づく話は聞こうとも思わない。
陰謀論は、根拠が不十分な説明に基づいて物事を断定しているので、筆者の判断基準から見れば、話を聞かないとなる。
根拠が匿名の証言やコメントであったり、ソースが不明なものも時間の無駄なので無視することが多いが、陰謀論もその類いである。
マスコミ報道でも、「関係者」「専門家」といった書き方で、具体的な名前が明かされないものは情報としてそれほど価値がないと思っている。「捜査関係者」や「政府関係者」とかもあまり信じない。
筆者は役人時代、記者にとって都合のいい記事に付き合うために、しばしば「政府関係者」に仕立て上げられたが、適当な与太話にすぎないことも少なくなかった。
いずれにしても、ソースが明らかにできない場合、証言を翻す可能性もあるので、それほど信憑(しんぴょう)性は高くないことが多い。
筆者は、情報の信憑性について、発信者によって区別しないようにしている。ただし、陰謀論を唱える人は繰り返す傾向があるので、避けるのは当然である。
総じて自然科学系の人は、あまり陰謀論にハマらないが、例外も少なくない。人によっては、年を取ると陰謀論に陥る人もいるので要注意だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
たとえば、財務省の陰謀論もそうかもしれないです。財務省に関しては、前々からとにかく増税、とにかく緊縮財政をすれば良いと思っているとしか考えられない行動や発言を繰り返し、それを正当化する「ご説明資料」を作成し、政治家や、他の官僚や、場合によってはマスコミまで出向いて自分たちの言い分が正しいことを主張するという行動をとってきました。
そのため、多くの政治家や、官僚、マスコミ、経済学者までが、財務省の増税・緊縮財政に賛同し、日本経済がデフレであろうとなんであろうと、とにかく増税・緊縮をすすめてきました。これは、陰謀なのではないかと思わせられることもしばしばありました。
同時期には日銀も同じような傾向があり、日本経済がデフレだろうと、なんであろうと、とにかく緊縮するのが正しいという考えにもとづいて、事あるごとに金融引締を実行しようとして、実際現日銀黒田総裁前までの日銀はその傾向が顕著でした。日銀官僚も様々な異常な、言動を繰り返しました。
一番驚いたのは、日銀が資料として「デフレは人口減によって起こる」というとんでもない説を日銀のサイトに資料として掲載したことです。これは当時掲載されているのを見た記憶があるのですが、本日再度確認してみたところ、見つかりませんでした。削除されたのかもしれません。
ただは、白川元総裁などが、それを匂わすような発言をしている記録はありました。
ちなみに、過去にこれをわかりやすくする例え話を掲載したことがありますが、それを以下に再度掲載します。
非常にきな臭い話になりますが、これはあくまで譬え話です。日本で、中性子爆弾(生物は殺すが建物などの構造物は壊さないとされている)を爆発させて、人口がいきなり半分になった直後はどうなるかという話です。
正解は、インフレになります。貨幣がそのままで、人口が半減すれば、当然のことながら、一人あたりで比較すれば、貨幣量は従来の2倍となり、インフレになります。その後日銀がこれに対して何もしなければ、インフレが続くことになります。
これ一つ考えても、デフレの原因が人口減というのは間違いであることがかわかります。日本が長い間デフレだったのは、生産性の向上等に応じて日銀が貨幣を増刷しなかったからに他なりません。
生産性が向上しても、それに対応して貨幣が増えなければ、これもデフレとなります。ざっくり言ってしまえば、いままで日本全体で10個しか製品を製造していると仮定し、企業が努力して生産性を向上させて、12個製造できるようにしたとします。そうして、12個製造しても、なお需要はあり、デフレでもインフレでないものとします。
そのときに、日銀金融緩和をして貨幣の流通量を増やさなければ、12個の製品のうち、10個はすぐ売れたにしても、2個はなかなか売れないということになります。これが、まさにデフレです。
私は、日銀官僚や財務官僚がその時々で、まともな経済学の理論からいえば、金融緩和すべきところを金融引締し、積極財政をすべきところを緊縮財政にするのは、なぜなのだろうと、長年不思議に思ってきました。
そうして、財務省の場合は、緊縮財政で経済が低迷したとしても、とにかく増税で税収を増やし自分たちがそれを各省庁などに差配できる量や力を増やし、もって権力基盤を拡大し、自分たちの天下り先の確保のような利権を強化しようという財務官僚による陰謀によるものではないかと思ってきました。
そのためには、黒を白、白を黒と無理やりいいくるめて、まるで大きな政治集団であるかのように動き、様々な策謀をめぐらし、税の徴収実行部隊である国税庁で脅しをかけて様々な陰謀を企んでいるではないかと疑念を持ったこともありしました。
日銀白川元総裁 |
ただ、財務省には何か陰謀めいたものを感じていました。それは、なぜかというと、やはり財務省の官僚は優れているという考えを前提としていたからかもしれません。ただ、確証といえるものにたどり着くことはできず、そのためこのブログでは、財務省が陰謀を企んでいると主張したことはありません。
そうして、長年そうした不可思議な姿勢を続け、いまでもその姿勢を貫いているようであるのを見るにつけ、ひょとして財務省の官僚は頭が悪いだけではないかと考えるようになりました。
そうして、昨年の財務省の矢野康治事務次官の異例ともいえる「政治的発言」により、その考えを強めることになりました。それは、『文芸春秋』昨年11月号に掲載されたる「財務次官、 モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」と題された論説です。
「借金」とは無論「政府の借金」です。「政府の借金」なる言葉は得体が知れず、先日もそのような言葉は経済用語には存在せず、政府や日銀の金融行動と個人の行動とを同次元に扱う点で非常に誤解を招きやすいことを指摘しました。
矢野氏の発言は「政府の借金」という言葉はつかっていませんが、まさしくこれを指しています。
矢野氏は論説の中で、不偏不党の立場で、客観的に財政の危機的な状況を訴えたとしています。例えば、昨年行われた定額給付金や企業への補助金政策を「バラマキ」の典型例としてあげています。
あえて今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。(「財務次官、 モノ申す」より)すでにこれらのバラマキ政策で、十分に民間にはおカネが行きわたっている、コロナ禍が終われば消費や投資が一斉に出てくるだけだ、というのが矢野氏の主張です。さらに昨年度予算の繰り越しが30兆円(4月時点)あるとして、「本当に巨額の経済対策が必要なのか。その経済対策は本当に有効なのか。そのコストや弊害も含めて、よく吟味する必要があります」と言い切っています。
先日も述べたように、これは全くの間違いです。現在でも需給ギャップは30兆円以上あり、これ埋めるための補正予算を組むべきなのです。それは、財務省や内閣府の出している統計資料を吟味すれば誰でも確かめられます。
矢野氏の発言は、全くの間違いです。この間違いを安倍元総理は的確にそうして、わかりやすく指摘しています。
安倍元首相 |
財務省の(矢野康治)事務次官が、このまま日本が借金まみれだと、タイタニック号のように氷山にぶつかって沈没してしまうという趣旨の論文を(月刊誌「文芸春秋」に)書いた。こういう話をするから将来に不安を持って、(消費者の)財布のひもが固くなる。
日本は決してタイタニック号ではない。日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている。
(新型コロナ禍での巨額の補正予算は)赤字国債でまかない、そのほとんどは市場を通じて日本銀行に買ってもらった。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ。荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する。(昨年12月15日都内であった講演で)
このように簡単に安倍元総理に論破されてしまうような、屁理屈を文書にして『文藝春秋』に平気で掲載してしまうのです。発言するだけならまだしも、あのような形で寄稿すれば、自らの間違った発言が公にさらされるだけではなく、文書として残り、いずれ歴史の一部ともなります。これは、並の「頭の悪さ」ではないと思います。
無論、矢野氏のこの行動は、財務省の省益を拡大したい一心からでしょうが、それにしても、あまりに筋悪です。
矢野氏も大学を卒業したばかりで、財務省に入ったばかりのころは、現在のように頭が悪すぎるということはなかったのでしょう。しかし、あまりにも長い間、民間企業などとはかけ離れた財務省という特殊な空間にどっぷりつかり、本当の意味で「成果をあげる」ことも要求されず、ひたすら、国民経済など無視し、とくにかく財務省省益ばかりを追求するように仕向けら結果のなれの果が、ただのポンコツになってしまたったということなのでしょう。
そうして、これは他の財務官僚にもあてはまるのでしょう。そうでなければ、「とにかくいつでも緊縮こそ我が生命」的な考えや行動の説明がつきません。とにかく「省益」を最大限に追求することを優先するという財務省の立場にたったにしても、現在の財務省のやりかたは、あまりに筋悪です。うまいやり方をすれば、国民からも支持され、もっと豪華な退官後の超ウルトラリッチ生活を満喫できると思います。
国民をもっと豊かにすれば、企業も大いに潤い、その結果として、天下り先も増え、さらに天下り先での現在よりもさらに破格の待遇も期待できるかもしれません。それに国民から批判されることもないかもしれません。今の財務官僚まるで最近のプーチンのようにポンコツになってしまったようです。財務省がこの有様ですから、文部省の前次官前川などをみてもわかるように、他省庁相当ポンコツになっているのでしょう。
財務省がエリートなどといわれるのは、ポンコツ同士の間の想定的比較ではそうだというだけで、外の世界には全く通用しないのだと思います。
このように陰謀といわれているもののなかには、その陰謀を主導している人がただ頭が悪いので、陰謀のようにみえているということもおうおうにしてあるのでしょう。だからこそ、客観的な証拠もあけずに、平気で思いついた与太話ができるのです。
私自身は、陰謀論を撒き散らしたり、簡単に信じ込む人の殆どは、相当「頭の悪い人」なのだと思います。
ツイッターなどのSNSをしていると、こういった類の人にお目にかかることもよくあります。お目にかかるだけならまだ良いですが、ツイートにおかしげなリプライをしてきたりします。
たとえば、財務省への批判をツイートしたりすると、「ここにも馬鹿一人みっけ、○○はユダヤ資本が□□のため、△△したから」などとリプライしたりしてきます。
財務省の増税キャンペーンを批判すると、「そんな幼稚なこといっていないで、財政再建をしないと大変なことになるぞ」などとくだくだとリプライしてきたりします。
このような場合はすぐにブロックするようにしています。話をしても時間が無駄ですから、皆さんもすでにそうしていると思います。
そうして、このような事象にふれるたびに、このブログに掲載した、ドラッカーの主張である、「政府の中で、統治にかかわる部分は残し、残りはすべて政府の外にだすべき」という考えは正しいと思うようになってきました。
この話をすると多くの人は「そんな馬鹿な」というような顔をしますが、民間企業においても統治と実行する部門とが同じ部門にしておくと、統治でも実行でも、無様な程に成果があげられないということは明らかになっています。
そのため、大企業では、統治部分を持株会社等の本部が担い、その他は本部とは別組織の事業会社が担うようになっています。
民間がそのようにして、機能不全を防いでいるのに、政府だけが旧態依然とした組織で運営されています。そのため、今や世界のあらゆる政府が「馬鹿製造機」になってしまっているのかもしれません。その典型例がポンコツプーチンを生み出したロシア連邦政府かもしれません。
【関連記事】
日銀保有の国債は借金ではない 財務省の見解が変わらないなら国会の議論に大いに期待―【私の論評】高校の教科書にも出てこない「政府の借金」という言葉を国会で使わなければならない、日本の現状(゚д゚)!
0 件のコメント:
コメントを投稿