シュレーダー氏と韓国人妻 |
1998~2005年に首相を務めたシュレーダー氏は、プーチン氏の求めに応じ、パイプライン事業「ノルドストリーム」を推進。ドイツが天然ガスの「ロシア依存」を強める契機となった。シュレーダー氏は首相退任後も、同パイプライン運営会社の株主委員会会長や石油大手ロスネフチ取締役会会長など、数々のロシア企業の役員を務め、ロビー活動に協力してきた。ショルツ首相らによるポスト返上の求めにも応じていない。
シュレーダー氏は23日の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、ロシアとの関係を「過ちとは認めない」「過去30年はうまくいってきた」などと強弁。戦争は過ちとしつつ、戦争を終えられる唯一の人物の信を失ってはならないと、プーチン氏との関係を続ける意向を示した。実際に両氏は3月にモスクワで面会したが、成果は何もなく終わったもようだ。
ウクライナ侵攻後、独連邦議会(下院)内のシュレーダー氏の事務所職員は、長年の側近も含め全員辞任。エスケンSPD党首は、シュレーダー氏のプーチン氏擁護は「全くばかげている」と離党を求めたほか、複数の与野党議員が制裁を科すことを主張。ビルト紙が28日公表した世論調査でも、59%が制裁に賛成した。
【私の論評】シュレーダーだけを悪魔化することなく、メルケルやバイデン等の責任も追求せよ(゚д゚)!
ロシアの前身であるソ連は、冷戦中もずっとウクライナ、ポーランド、ベラルーシなどを経由する陸上パイプラインで西ヨーロッパにガスを供給していたのですが、ソ連崩壊後は、そのパイプラインからウクライナにガスを抜かれるという問題を絶えず抱えていたといいます。
1970年代からウクライナは欧州でも有数の天然ガス産出国であり、まだソ連邦の一部であった75年のピークには、年産651億m³を産出する純輸出地域だったとの記録があります。その後次第に生産量が減少し、2012年ごろには黒海でのガス田を中心に年産120億m³の水準にまで落ち込み、現在ウクライナは天然ガスの純輸入国になっています。
天然ガスが不足してきたこのウクライナとロシアの間には、ソ連邦の一部であったウクライナに旧ソ連が格安でガスを提供していたものの、その後ソ連邦の解体とウクライナの独立に続く西側傾斜を受けて、ロシアが天然ガス価格を大きく引き上げるという確執が始まりました。
その後パイプラインでウクライナを通って欧州に輸出されるロシアの天然ガスを、ウクライナが中間抜き取りしているのではないかという疑惑が起き、ロシアはウクライナを通過するパイプラインのロシアによる管理権を主張したのですが、ウクライナ政府はこれを拒否しました。
ウクライナとロシア間のガスを巡る対立から、ロシアが06年と09年の2度にわたり、ウクライナ向けガス供給を停止したことから、同国を経由するEU向けガス供給も止まることになり国際問題となりました。
14年のクリミア紛争以降、ウクライナはロシアからの直接輸入を止め、ロシアから一旦西欧に輸出されたガスを再輸入するという変則的な形でガスを調達し、一方ロシアはウクライナを迂回して直接西欧にガスを送るパイプライン、ノルドストリーム1,2やトルコストリームを建設して、ウクライナ離れを加速してきたのです。
ただ、2019年に稼働するはずだったこのパイプライン計画には、当初から、1本目の時とは比べ物にならないほどの反発がありました。米国はもちろん、東欧の国々も南欧の国々も、皆、それぞれの理由で反対しました。
しかし、何と言っても一番激しく反対していたのがウクライナでした。これが開通すれば、ウクライナのパイプラインは今度こそ完全に用済みです。それにより、EUにとってのウクライナの存在価値は急低下し、ロシアに軍事的に飲み込まれても、誰も助けてくれない可能性は高いと考えられました。
つまり、ノルドストリーム2は、ウクライナにとって国家の存亡が掛かった案件であったのですが、それをドイツは強引に進めたのです。これによってウクライナのドイツに対する不信感がさらに募ったことは、不思議でも何でもありませんでした。
ロシアからEUへのパイプライン |
2014年にはロシアがクリミアを併合しました。しかし、ドイツ政府の親ロシア姿勢は揺らぐことなく、まさに先々月のロシアのウクライナ侵攻まで連綿と続きました。ちなみに、2020年の時点で、ドイツのロシアガスへの依存は55%を超えていました。ノルドストリーム2が運開すれば、それは70%を超える予定でした。
ところが、それから2年余りで、世界情勢は激変しました。2021年の末には、ロシアの軍事的脅威の膨張のため、ドイツは親ロシア政策を続けることが困難になりました。そして、ついに22年2月22日、ノルドストリーム2の認可手続きの凍結を発表しました。
現在のドイツ大統領は、社民党のフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー氏。氏は、シュレーダー政権下では官房長官を、また、第1次、第3次メルケル政権では外相を務めました。大統領に就任したのは2017年で、最近2期目の続投が決まりました。ちなみに生粋の親露派です。
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2019年、しかし、米トランプ政権の実施した強硬な制裁により、ノルドストリーム2の工事は一時ストップしました。ところが20年の5月、新しく大統領となったバイデン氏が5月末にメルケル首相(当時)を訪問し、「プロジェクトはすでにほぼ完成しており、これを妨害するのは米欧関係にとって生産的ではない」という彼の鶴の一声で工事が再開されたのです。
ただ、バイデン大統領が何と言おうが、米国議会は超党派でパイプラインに反対していたため、この年の夏、ドイツ政府は米国との間で困難な調整を、秘密裏に、しかもウクライナ抜きで続けていたと言われています。
すると、その2日後の24日、ロシアはウクライナに攻め込んだ。これにより、ドイツのエネルギー政策は完全に破綻し、米国がかねてより警告していたロシアエネルギーへの過度な依存による安全保障上の問題が現実のものとなったのです。
3月17日、ゼレンスキー大統領はドイツ議会でのオンラインスピーチで、激しい口調でドイツの対ロシア政策を責めました。ドイツの議員たちは自分の耳が信じられなかったに違いない。この小国の大統領に罵倒されながら、しかし最後には皆が立ち上がって拍手をしていたのは少々滑稽にさえ見えました。
ゼレンスキー大統領のドイツ攻撃はそれだけではない。ブチャで大量虐殺が行われたという報道があった後、4月4日に現地を視察した氏は、こう言いました。
「私はメルケル氏とサルコジ氏をブチャに招待する。ロシアに対する14年間もの譲歩が、我々をどこへ導いたかを見てもらうために」
その日、社民党のシュタインマイヤー大統領は公式に、「これまでの自分のロシアに対する認識、およびノルドストリーム2を継続しようと思っていた態度は間違いであった」と認めた(もっともウクライナに対する謝罪はしていない)。
大統領にしてみれば、潔いと褒められると思っていたかもしれないですが、そうは問屋がおろしませんでした。
現在のドイツ大統領は、社民党のフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー氏。氏は、シュレーダー政権下では官房長官を、また、第1次、第3次メルケル政権では外相を務めました。大統領に就任したのは2017年で、最近2期目の続投が決まりました。ちなみに生粋の親露派です。
4月12日、前代未聞の出来事が起こった。そのシュタインマイヤー大統領が、ポーランド、およびバルト3国の首脳と共にキーウを訪問しようとしたところ、氏だけがウクライナ側から「来てくれるな」と断られたというのです。
13日、ポーランドとバルト3国の首脳はシュタインマイヤー大統領抜きで予定通りキーウを訪れ、勇ましい記念写真を公表しました。ただシュタインマイヤー氏が同行できないことを残念がる首脳はいないようでした。
13日、ポーランドとバルト3国の首脳はシュタインマイヤー大統領抜きで予定通りキーウを訪れ、勇ましい記念写真を公表しました。ただシュタインマイヤー氏が同行できないことを残念がる首脳はいないようでした。
一方、ゼレンスキー大統領はドイツに対し、当然のように戦車や対空ミサイルといった兵器の供与を求めています。ウクライナは今や世界の民主主義のために戦っているのであり、民主主義を標榜する国はウクライナを支援しなければならないと言わんばかりです。
ショルツ首相はこれまで色々な理由をつけて殺傷兵器の供与を拒んできたのですが、今、緑の党のベアボック外相が供与を主張し始めました。社民党よりもさらに平和主義者だった緑の党にしては、驚くべき豹変です。
ウクライナ側は現在、兵器供与の決定権を持つショルツ首相のキーウ訪問を強く要請しているといいます。シュタインマイヤー大統領の件が解決しないうちは、首相のキーウ訪問はあり得ないですが、解決は時間の問題でしょう。
では、その後、ウクライナ側から正式な招聘があれば、ショルツ首相はキーウへ行き、兵器の供与を軌道に乗せるのでしょうか。
右手でロシアのエネルギーを輸入し、1日に6億ユーロもの大金を送金しながら、左手でロシア兵を殺傷する兵器をウクライナに供与するというのは、大いなる矛盾ではないでしょうか。しかも、それを理由にロシアがガスを止めれば、ドイツの経済は崩壊するというのにです。
ショルツ首相をはじめ、ドイツの政治家たちは、これまでにも増してウクライナとの連帯を強調しています。であれば、武器は、そうしてガスはどうするのでしょうか。
ドイツは今、あたかも罠に落ちたかのように、八方塞がりの中で呻吟しています。
その呻吟の最中、冒頭の記事にもあるように、ドイツのシュレーダー元首相への批判が高まっているわけですが、シュレーダー氏はこれは制裁の対象にもなり得ると思います。
ただ、シュレーダー氏だけを悪魔化し、全部の責任を彼だけになすりつけるようなことはすべきではないです。メルケル首相やその他、ロシアにタイルエネルギー依存に拍車をかけた人たちの責任も追求すべきです。そうして、できれはバイデンの責任も追求すべきです。
ドイツにはこういうことに対する前科があります、それは第二次世界大戦の戦争責任をナチスを悪魔化し、全部の責任をナチスになすりつけ、自分たちもその被害者であるという立場をとり、今にいたるまで真摯に反省していません。ドイツの知識人、言論人もそのような立場の人が多いです。
これは、第二次世界大戦の戦争責任を特定の人物や集団の責任とはしなかった、日本とは大きく異なります。日本では、ドイツのような合理化はしませんでした。ただし、誤解を招かないように言いますが、当時日本はナチスドイツのような全体主義国家にあったわけではありません。当時の日本をナチス・ドイツと同列に並べて論じるのは間違いです。無論これは、極東軍事裁判などが不当なものであったこととはまた別の問題です。
そうして今日のドイツの苦悩に、加担したともいえるバイデンは、米国内でシェールオイル・ガスの採掘を再開すれば、それをEUに輸出すれば、EUの窮地を救い、自国のエネルギー価格の高騰を抑えることにもなり、今年秋の中間選挙にも有利になると思うのですが、なぜかこれを実施しません。私は、このブログでも何度か述べてきたように、これは期限つきでも良いから実行すべきと思います。
日本の岸田首相もこれについては煮えきらない態度を続けています。日本はEUのようにロシアにエネルギーを依存していることはないですが、エネルギー価格は高騰しつつあります、夏にには電力不足か懸念されています。
岸田首相とバイデン大統領 |
日本でも動かせる原発はすぐに稼働すれば、電力不足は解消されますし、エネルギー価格の高騰を抑えることもできます。にもかかわらず、岸田首相はそれをしようとしません。それに、サハリン1,2の事業からの撤退も決めません。
日米両政権とも、このままでは長期政権にはなりえず、短期で終わることになりそうです。
現役の政治家は、選挙によって国民から評価がされることになりますが、シュレーダー氏やメルケル氏など現役ではない元政治家などは、ウクライナ戦争が歴史となった頃には、徹底的に責任を追求すべきです。現在それを行えは、それこそロシアのプロパガンダに加担することになりかねません。
ロシアのウクライナ侵略自体は、プーチンがその責を負わねばならないです。しかし、戦後に客観的にプーチン以外の戦争を助長した人々の責任も問わずに、シュレーダーのみを悪魔化するようなことがあれば、同じことがまた繰り返されることになりかねません。
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