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岡崎研究所
バイデン外交には、人権・民主主義を重視する民主党の基本的立場が背景にある。また、トランプの理念なき外交を批判して政権を獲得したこともあり、自らの持論でもある民主主義重視の価値観外交を進めて来た。
また、バイデンの個人的性格にもあるのか、これまでサウジやア首連の指導者、イスラエル首相、ブラジル大統領など、政策的に問題のある政治指導者とは会おうとしなかった。政策や意見が合わなくとも、いざという時のために、首脳レベルで直接働きかけを行なえるような最低限の個人的関係が構築されていることが望ましい。
また、このようなバイデンの頑なさと共に、あまりに率直な発言に、やや不安を覚えるところがあった。バイデンは、早々にウクライナに軍事介入をしないことを明言し、プーチンを戦争犯罪人と呼び、また、制裁が効果を生ずるのには時間がかかるなど、それらが事実であるにしても、外交駆け引き的な要素が少なく選択の余地を自ら狭めている印象もある。
バイデンは、プーチンの理不尽な侵略に対して米国自身が交渉する余地は無く、当面制裁強化一本やりということであろうが、そうであればこそ、実利を重視し民主的とは言えない第三国に対しては今後もう少し柔軟な対応に軌道修正し、少しでも対ロシア制裁への協力を求めることが望ましい。西側同盟以外の国々が制裁に参加せず協力しないということは、制裁の抜け穴が広がることを意味しかねない。ウクライナ後の中国対策においても同様であろう。
即時停戦がロシアのためであるという説得を
3月16日頃には、ウクライナ筋から15項目からなる停戦合意が近いとの見通しも報道されたが、3月23日には、ロシア側から米国が停戦を妨害しているとのコメントがあり、停戦の機運が遠のいているが、これはロシアが交渉を引き延ばしていることを示唆している。プーチンは、もともと停戦するつもりは無く文民に対する無差別攻撃を継続、強化することにより、ウクライナ側の戦意喪失を待つ作戦なのではないかと疑いたくなる。
ウクライナ人の命を救うためには、プーチンがこのような軍事侵攻に踏み切った理由やこれまでの経緯を考慮すべきだとの意見が内外に散見されるが、これは正に信用できないプーチンの主張である。ウクライナ人側には、命を懸けても守りたいものがあることを理解すべきであろう。
ロシアに影響力を持つ国や人脈を持つ人物は、全力でロシア側に即時停戦を働きかけ、無差別攻撃を続けることが利益とならないことをロシア側に理解させるよう努力すべきである。特にプーチンに対しては、その意図は交渉により実現すべきもので、そのためにはまず即時停戦が必要であると説得するべきであり、それができるのはロシアが頼りとしている中国しかない。
3月24日の北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議でもそのような意見が出たようであるが、中国には、そのような役割を果たす重い責任があるというべきであろう。
ロシア軍がこのような苦戦するのは、最初からある程度予想がつきました。軍事専門家らによれば、ウクライナ全土を制圧するには最低60万人の軍が必要だとされています。
ソビエト連邦軍主導のワルシャワ条約機構軍による軍事介入したチェコ事件においては、80万人の軍隊が動員されました。チェコの人口は1000万人(ウクライナ4000万人)ですし、面積も半分以下です。さらに、ロシアの経済が脆弱(GDPでは韓国より若干下回る、一人あたりGDPは100万戦後で、これは韓国をはるかに下回る)であることから、ロシア軍の戦いはお粗末なものになるであろうことは、最初から予測されたことです。
初戦でのロシア軍のウクライナー侵攻 |
こうしたことはバイデン政権もわかっていたはずです、プーチンにロシアがウクライナに侵攻すれば、相当苦戦することや、西側諸国が支援すれば、さらに苦戦することなどをプーチンに知らしめるべきでしたし、ある程度戦争がエスカレートした場合は、米軍が直接介入する可能性を示唆すべきでした。バイデンはやはり、外交で失敗したと言えるのだと思います。
特に、上の記事でも述べているように、バイデンは、早々にウクライナに軍事介入をしないことを明言し、プーチンを戦争犯罪人と呼び、また、制裁が効果を生ずるのには時間がかかるなど、それらが事実であるにしても、外交駆け引き的な要素が少なく選択の余地を自ら狭めている印象もあるとしていますが、まさにそのとおりです。
腹の中ではどう思っていても、ウクライナに段階的に軍事介入する可能性ははっきり否定すべきではありませんでした。それに制裁されるにしても、それが効き目がでてくるのに時間はかかると認識させたのは間違いないです。
これでは、プーチンは下手をすると、米国やNATOはウクライナに対して、武器供与も、軍事費の支援もしないと思い込んだかもしれません。制裁も、ウクライナを打ち負かす前までに効力を表すことはないとの確信を抱いたかもしれません。
現在、ロシアはウクライナに侵攻を行ったと国際社会から批判されています。侵攻とは、挑発もされないのに、先制武力攻撃を行うことです。プーチンは色々と言い訳をして「ウクライナが先に挑発してきた」と言っていますが、国際社会の圧倒的多数は「それは挑発と認められない」と評価しています。一方で、バイデン大統領は相当のポンコツです。ポーランドに行ってロシアの国際法違反を片っ端からあげつらうまでは良かったのですが、「プーチンを権力の座に留まらせない」とまで発言しました。さすがに同盟国の英仏が「我々は知らん」「いい加減にしろ」と呆れられていましたが、米国政府の高官も火消しに必死でした。
それはそうでしょう。プーチンを「挑発もされないのにウクライナに手を出した」と批判しているのに、バイデンがプーチンを挑発してどうするのでしようか。
そうして、最近のマスコミなどの論調では、真実をつきとめようとか、ロシアの立場にもたってみるべき、などのごたくを並べる者もいますが、これは明らかな間違いです。現在進行形の出来事に、しかも戦時に「真実が知りたい」と思い、探ること自体が、プロパガンダに騙される原因になるだけです。真実など歴史にならないとわからないのに現在進行形の時に探るものではありません。
妥協には2つの種類があります。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基きます。前者では半分は必要条件を満足させます。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となります。半分の赤ん坊では妥協にもなりません。
ソロモン王の裁き |
何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄です。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れことになります。
何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはありません。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失うことになるのです。
現在でいえば、バイデンは中東諸国やイスラエル、トルコ等とはある程度妥協しても良いと思います。ただ、上の記事にもあるように、中国に即時停戦が必要であるとロシアを説得させることはするべきではありません。
それで、ロシアが即時停戦をしたとすれば、習近平の存在感は嫌がおうでも高まります。下手をすると、習近平はノーベル平和賞を受賞するかもしれません。そうなると、習近平はそれを利用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。
そうなると、習近平は余勢をかって、喜び勇んで台湾併合にはずみをつけるかもしれません。その後世界は中国にさらに翻弄されることになるでしょう。これは、悪い妥協です。バイデンはこの種の妥協は、絶対にすべきではありません。
今のところ、そのような兆候はありませんから、さすがのバイデンも中国に利するような真似はしないつもりなのでしょう。
無論、戦争に勝つためには、戦争や戦闘における真実を知る努力は、必要ですが、それ以前のなぜ戦争になったのかなどという事柄は、裁判のとき、さらにその後で、歴史的事実になった後に詳細を分析して、後世に役立てるべきです。
そうして、そのようなことよりも、日本としては、ウクライナがロシアに降伏して、何か良いことがあるのか自問すべきです。 自分を殴っている相手に自らの生殺与奪の権を委ねれば、殺されるだけです。
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