2022年4月1日金曜日

露プーチン政権への“クーデター”を恐れる習近平。絵空事ではない中国大崩壊―【私の論評】中国にロシアとウクライナの仲介を絶対にさせてはいけない理由(゚д゚)!

露プーチン政権への“クーデター”を恐れる習近平。絵空事ではない中国大崩壊

プーチンと習近平

3月30日に行われた外相会談で協力関係の強化を確認した中ロですが、習近平政権サイドが抱えるジレンマは相当に深刻なもののようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、ロシアの政変が中国崩壊に直結しかねない理由を解説。それ故に習近平国家主席は、ロシアとプーチン大統領を支援せざるを得ない苦しい立場に追い込まれていると指摘しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年3月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)

1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】ロシアでクーデターが起これば習近平政権も中国も大崩壊

中国資産巡る警戒感、強まるばかり-中ロ首脳の結束で政治リスク

ロシアのウクライナ侵略以降、中国に対する投資家の警戒感が高まりつつあります。ブルームバーグによれば、外国投資家が中国投資の際に参照するMSCI中国指数が、他国の株価指数に対して、過去20年余りで最大に近い定位で推移しているということで、外国投資家が中国株から逃避していることがわかります。

習近平もプーチン同様に全体主義国家の独裁者であり、何をしでかすかわからないという不気味さがあるからです。ロシアへの軍事協力により西側諸国の制裁対象になる可能性もあり、また、台湾侵略を強行するかもしれないという懸念があるため、外国人投資家は手を出しにくくなっているのです。

中国政府は株式市場の安定や経済成長を支える政策を打ち出し、また、これまで行ってきた巨大IT企業などへの締め付けを早期に終わらせるとアナウンスすることで、外国人投資家の懸念を払拭しようとしています。

中国は株式市場を安定維持へ、国外上場も支持-本土・香港株急騰

これにより一時的に株価は上昇に向かったようですが、冒頭の記事によれば、外国人投資家は利益を確定するための準備に入っており、持ち直しは長くは続かないと予測しています。

いずれにせよ、習近平政権のリスクについて、投資面でも世界は気づき始めたということなのです。つい数年前まで、外国企業も外国政府も中国にどっぷり浸かっていたことから考えると、隔世の感があります。

そしてもうひとつ、世界が懸念しているのは中国の「ゼロコロナ政策」です。これについては1月のメルマガでも書きましたが、中国はこれまで新型コロナに対して完全に封じ込めていると「勝利宣言」をしてきました。

ところがオミクロン株という感染力の強い変種が出てきたため、中国国内で感染者が激増してきています。ただしオミクロン株は感染力は強くても重症化率や死亡率が低いのはご承知のとおりです。

そのため、多くの国々では「ウィズコロナ政策」へと転換しているのですが、中国共産党は絶対に誤りを犯さないという無謬の存在ですから、ゼロコロナ政策から転換したくても、出来ないのです。

【関連】習近平の面目丸つぶれ。ゼロコロナ失敗の中国は「尖閣奪取」に動く

3月28日から、中国最大の経済都市である上海がロックダウンされました。ユニクロもテスラも休業や工場停止に追い込まれています。

上海ロックダウンで「ユニクロ」休業、テスラも工場停止…コロナ新規感染は最多更新

今年の秋に最高指導者として異例の3期目を目指す習近平にとって、コロナ対策で失敗することは命取りとなります。いまさら「ゼロコロナ政策は失敗でした」などとは、口が裂けても言えないでしょう。

そのため、無理をしてもゼロコロナ政策を続けているというのが現在の中国なのです。現在では、クラスター感染を起こした地域では、感染対策を怠ったとして、地方幹部がどんどん処罰されており、3月だけで150人以上が免職や停職などの処分を受けたそうです。

「ゼロコロナ」の中国、大学クラスターで市長免職…3月だけで地方政府幹部ら150人超処分

こうなると、幹部は感染者数をごまかそうとするでしょうし、それによって感染者が爆発的に増え、そしていずれロックダウンをせざるを得なくなるという負の連鎖が始まります。外国投資家も、怖くて中国に投資できるはずがありません。これも独裁国家であるがゆえの負の部分です。

新型コロナが世界的流行を見せた初期の頃、決定が遅い民主主義国家よりも、トップダウンで物事が決まる独裁国家のほうが、パンデミックに対しては有利なのではないかという意見がありました。しかし、ロシアのウクライナ侵略から完全に潮目は変わりました。全体主義、独裁国家の危うさがはっきりと露見したのです。

そして世界は、中ロなどに対して備えるようになりました。台湾ではウクライナ情勢を踏まえて、自衛力強化を図る動きを強めており、2018年に事実上廃止された徴兵制の復活を検討し始めていると報じられています。

徴兵制を事実上廃止した台湾、ウクライナ戦争で4年ぶりに回帰か

中国にとって最悪なのは、ロシアで政変が起こることでしょう。プーチン政権内部では、高官の辞任や国防相が表に出てこないといったことが続き、国民の不満の高まりもあって、クーデター説が絶えません。

プーチン政権に不満渦巻く くすぶるクーデター説 ロシア高官辞任、国防相は雲隠れ

もしもロシアでクーデターが起これば、中国でも失脚させられた高官や弾圧されてきた民主派、あるいは反習近平派の逆襲が始まる可能性が高まります。西側諸国からロシアと同一視されることを回避したい習近平政権としては、本来はプーチン政権と距離を起きたいはずですが、とはいえプーチン政権が倒れれば、その余波は自分にも向かいかねません。だからプーチン政権を支えざるをえないというジレンマに陥っているのです。

かつてソ連が崩壊しても中国は崩壊しませんでした。その理由としては、鄧小平が毛沢東路線を捨てて改革開放路線に舵を切って西側に近づき、個人の独裁体制から集団指導体制に変わったことも大きな要因だったと思われます。

しかし習近平は現在、毛沢東路線へ回帰し、個人崇拝の独裁体制を強化しています。プーチン独裁が終わりロシアに政変が起これば、それは中国でも個人独裁の弊害が意識され、習近平下ろしの権力闘争が始まるかもしれません。それどころか、ロシア崩壊が中国崩壊に直結して共産党独裁体制が終わる可能性すらあります。

習近平は、そのような厳しい状況にあるため、ロシアとプーチンを支援せざるをえないのです。

【私の論評】中国にロシアとウクライナの仲介を絶対にさせてはいけない理由(゚д゚)!

習近平は厳しい状況にあるのですが、一方で中国にウクライナとロシアの仲介をさせよという声もあります。しかし、これだけは避けるべきですし、それにウクライナ侵攻の原因にもなったバイデン政権にその反省も意味も含めて大きな役割を果たさせるべきです。

ロシアがウクライナに侵攻する直前、バイデン政権には、CIAをはじめ複数の情報機関から「プーチンはウクライナ侵攻を既に決断した」との確報が次々に寄せられていました。ところが、バイデンは信じ難いミスを犯しました。


極秘にすべきインテリジェンスを敢えて公表しながら、「侵攻には大規模な経済制裁で応じる」と言うだけで、軍事上の措置は取らなかったのです。 

NATOに加盟していないウクライナに米軍を派遣する条約上の義務はないと明言して、プーチンの軍事侵攻を後押ししてしまったのです。米大統領の机上には「宝刀が載っていない」と手の内を晒す戦略的誤りを犯してしまいました。 

その結果プーチンは安んじてロシア軍にウクライナへの全面侵攻を命じています。その後もバイデンは「攻撃が東部地区に限られるなら制裁も小振りになる」と述べ、「ミグ戦闘機をドイツの米軍基地を経由してウクライナに送る」とのポーランドの要請も断わってしまいました。バイデンは迷走に次ぐ迷走を重ねていきました。

 「想定できない事態をこそ想定し備えておけ」。安全保障に携わる者の大切な心構えです。ところが、米国の外交・安全保障当局者たちにとって「プーチンの戦争」は、彼らの予想を遥かに超えるものとなりました。ロシア軍の侵攻は、東部の国境地帯に限定されるはずと楽観的だったが、いまや戦火は全土に広がっています。 

最大の誤算は、原子力施設への攻撃でした。チェルノブイリ原発はすでに廃炉で、ベラルーシから首都キエフを衝く途上のため占拠したにすぎないと軽く見たようですが、こうした見立ては惨めなほどに間違っていました。

ロシア軍は、欧州最大のザポリージャ原発をはじめとする原子力施設を制圧しました。プーチンは“神の火”たる原子力は我が掌中にありと誇示、右手に原子炉、左手に核ミサイルをかざし、西側世界への脅しました。 


プーチンは国連憲章や国際法など歯牙にもかけない旧ソ連の復興を願うソ連人であり“現代ロシアの皇帝”でもあります。そうして小児病院や産院まで標的にし、正義の戦いだと主張することすらやめ、戦争犯罪者になろうとしています。「プーチンの戦争」は最後の一線すら越えたのです。

イラクやシリアでも、隣国の主権を踏みにじり、自国民に化学兵器を使う指導者が現われましたが、超大国米国は時に武力を行使して国際秩序を守ってきました。ところが、「バイデンのアメリカ」は、民主主義の守護神としての役割を果たそうとしていません。 

米国が介入したら第三次世界大戦になる、ロシアが核を使うなどと言われていますが、最初からエスカレーションしていきなり核の使用まで行くというよりは、それまでにいろいろな階段があると考えられます。

その階段を全否定するような介入論は、抑止を危うくするだけであるにもかかわず、米国がウクライナに軍事介入すれば、第三次世界大戦となり、核戦争の恐れすらあると慎重な姿勢を崩しません。それゆえ、プーチンは、そんなバイデンの弱腰につけ込み、いまも侵攻を続けています。

キューバ危機に際して、ケネディ大統領は、核のボタンに手をかけることも辞さないと決意を固めたことでクレムリンの譲歩を引き出し米ソ核戦争は回避されました。これが核の時代の究極のジレンマなのです。 

「キューバ危機」当時、キューバから離れるソ連船と警戒する米軍。1962年11月10日

プーチンの戦争を止めるには、主要国の調停が必要です。キーワードは「中立化」です。ウクライナは、いまはNATOに加盟しておらず、妥協の余地はあるはずです。一方のロシア側もウクライナのNATO加盟を断念するよう求めています。

問題は非武装化の主張ですが、戦局が不利になれば、プーチンも態度を軟化させる可能性があるはずです。 

日本も各国と連携して調停に動くべきでしょう。中国に調停させようという声もありますが、先にも述べたように、それだけは絶対に避けるべきです。それは、上にあるような習近平の窮地を救うことになりかねません。

ウクライナ人とロシア人は「一つの民族」であり、ウクライナは不条理な形でロシアから奪われたと主張するプーチン氏の論文は昨年7月に発表されていました。ボリシェビキ革命によって、不当に奪われたウクライナを取り戻すのがロシアの役割だという主張を、21世紀の現代の価値観への信頼から、人類が過去に戻るはずはないと楽観的にとらえ、プーチン氏の言葉を重視しなかったのが西側です。

プーチン氏が隠すことなくその意志を公開してきたのと同様に、習氏もその考えを公開してきました。習氏は2017年10月、第19回中国共産党大会で、中華人民共和国建国100年に当たる2049年には、中華民族は世界諸民族の中にそびえ立つと決意表明しました。そのとき世界秩序の基礎となるのは中国共産党の価値観だと明言しましたた。

そのような中国が調停に成功すれば、習近平はノーベル賞を受賞して、意気揚々と台湾の併合に乗り出すでしょう。そのときも、バイデン政権であれば、やはり核戦争になる、第三次世界大戦になるからいって、これに米国は介入しないかもしれません。それは日本にとっては最悪のシナリオとなります。

中露の違いは、その狡猾さの度合いです。中国はロシアよりはるかに巧みで手強い国です。しかも、経済力はロシアの10倍、人口もロシアの10倍の14億人です。

ウイグル人のケースにみられるように、中国によるジェノサイドは国際社会の目が届かない閉ざされた空間で行われています。チベット人、モンゴル人も、民主化を求める中国人も、同様に弾圧されてきました。中国を国際平和実現の仲介者に仕立てるほど危ういことはないです。むしろ中国の脅威に備えるべきです。

バイデン政権は今からでも遅くありません。ロシアが戦争をエスカレートさせるなら、段階的に軍事介入することも厭わない姿勢をみせるべきです。また、返り血を浴びてもロシアを徹底的に経済制裁すべきです。

ロシアのウクライナ侵攻は大失敗だったと思わせることにより、中国に武力による現状変更は割に合わないことを思い知らせるべきです。この点は絶対に譲るべきではないです。

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