2022年4月7日木曜日

中国による侵攻への準備を見せる台湾の離島軍事演習―【私の論評】台湾の大繁栄とロシアのウクライナ侵攻の大失敗が、習近平の企みを打ち砕く(゚д゚)!

中国による侵攻への準備を見せる台湾の離島軍事演習

岡崎研究所

 3月16日付のロイター通信が、台湾が馬祖列島の東引島で実弾演習を最近実施したことを取り上げ、その背景と東引島の戦略的意味を解説する記事を出している。


 3月16日、台湾国防当局は、台湾の最北端に位置する離島・東引島(Dong In Dao)で軍事演習を行ったことを公表した。台湾国防省は、台湾対岸の福州沖にある金門島、馬祖島に近接した東引島での演習は「通常業務」であったと述べている。

 この演習は、ロシアのウクライナ侵略後に中国がロシアと同様の動きをすることを警戒して、台湾国防当局が行った軍事演習であったにちがいない、とロイターの解説記事は述べているが、その通りだろうと思われる。

 ウクライナへのロシアの侵略が、中国の言う「一つの中国」の原則に如何なる影響を及ぼすことになるのか予断しがたい面はあるが、今回の軍事演習は蔡英文政権下において中国解放軍に対する警戒心が強まりつつあることの具体的現れの一つとみるべきだろう。

 金門島、馬祖島はもともと、第二次大戦後、国民党政府軍が大陸を追われ、台湾に亡命政権をつくった頃より、台湾政府が全島を要塞化してきた島嶼である。なかでも東引島は馬祖島列島の北部に位置し、対岸の福州に近く、1950年代から台湾防衛の最前線に当たってきた。

 東引島の軍隊は台湾の自作の対艦ミサイル(Hsiung Feng〈雄風〉II)、地対空ミサイル(Sky Bow〈天弓〉II)を装備しており、「最も戦略的に重要な」離島になっている、という。約1500人の一般市民が住むこの島は、中国が台湾を攻撃する場合、東部の浙江省から南に向かう中国軍にとって、重要な通路に当たる。

 中国の人民解放軍が台湾を攻撃する場合、「東引のミサイル基地は最初の標的の一つになるだろう」というのが、台湾の軍事専門家の見方であるという。「この島は台湾海峡北部の支配の鍵」と言われる所以だ。

 2月4日の北京オリンピックの開会に際し、プーチンと習近平は北京で首脳会談を行い、中露共同声明を発出した。この共同声明は、相互に「核心的利益」なるものを支持しあっている。すなわち、ロシアは「一つの中国の原則」を支持すると述べ、「台湾は中国の固有の領土」であり、如何なる形であれ台湾の独立に反対することを確認する、と述べた。そして、ウクライナの名前は明記しないまでも、中露双方は「北大西洋条約機構(NATO)の拡大に反対する」と書き込んだ。

 さらに、「中露両国の友情に限界はなく、協力に禁止区域はない」、とも記述した。その際、プーチンがウクライナへの軍事侵攻をどの程度具体的に習に話したかわからないが、この共同声明から見る限り、中露両首脳にとって、ウクライナへの侵略行為と台湾への行動という二点は連動していることが明白だ。

それでも、台湾侵攻は起こり得る

 ロシアのウクライナへの侵略行為はいつ、どのように終結するのか。習近平から見れば、ロシアの侵略行動の結果、ウクライナが短期間に降伏するのであれば、台湾についても中国は同様に、これを好機とみて、あまり時間を空けずに台湾併合への行動をとることを考えたかもしれない。しかし、プーチンの誤算はいまやだれの目にも明らかだろう。プーチンやロシアに科された経済上、軍事上その他の制裁措置から見て、習近平としても今の状況下で、台湾併合への具体的動きを取れば、結果的に世界の多くの国々を敵にまわす可能性が出てきたことに内心衝撃を受けているかもしれない。

 かといって、中国共産党にとって「核心的利益」たる台湾統一へのスローガンを放棄することもありえないだろう。このような状況下において、台湾当局としては、「台湾関係法」をもつ米国の支援に期待しつつも、いざとなれば、自らが可能な限り自らを守るための準備を行わなければならない、という厳しい現実に直面している。最近の東引島における台湾の軍事演習はそのための準備の一例を示すものに他ならないと考えられる。

【私の論評】台湾の大繁栄とロシアのウクライナ侵攻の大失敗が、習近平の企みを打ち砕く(゚д゚)!

東引島といっても、地理的にピンと来ない方も多いでしょうから、以下に地図を掲載しておきます。下の地図で、馬祖列島はすべて台湾領です。金門島も台湾領です。廈門は、中国福建省に属します。馬祖列島といい、金門島といい、台湾ではなく、大陸中国にかなり近いことにあらためて驚かされます。


台湾の呉ショウ燮(ゴ・ショウショウ) 外交部長(外相)は「中国の “台湾侵攻”費用は、ロシアのウクライナ侵攻より、費用がかなりかかるだろう」という警告のメッセージを発しました。

呉外交部長は、きのう3日報道された英国日刊紙“ザ・タイムズ”の日曜版“サンデータイムズ”とのインタビューで「台湾と中国の間には海があり、台湾が全世界のハイテク供給網において重要な役割を果たしているという点などを根拠に、先のように語った」と“自由時報”など台湾メディアがきょう(4日)伝えました。

呉外交部長は「中国がロシアのウクライナ侵攻を見守りながら、台湾への侵攻能力と国際社会の反応について再評価した可能性が高い」と語りました。つづけて「引き続き、非対称戦略の発展と全民防衛能力強化に力を注ぐと同時に、米国などの国々と安保対話を続けていく」と語りました。

また「ロシアのウクライナ侵攻後、ジョー・バイデン米大統領は歴代の高位官僚たちで構成された代表団を台湾に派遣し、台湾への支持を示してくれた」と強調しました。 呉外交部長は「中国はこの1年の間、1000機ちかい軍用機による “台湾防空識別区域(ADIZ)への進入”というグレー地帯戦術以外にも、これまでとは異なる情報戦・認知戦(cognitive warfare)などの安保脅威を行なっており、このような経験をヨーロッパ諸国と積極的に共有している」と語りました。

台湾呉外交部長

一方、米国の外交専門誌“フォーリン・ポリシー(FP)”は「米ウィリアム・アンド・メアリー大学の教授・研究・国際政策(TRIP)プロフェクトが、昨年5月からことし3月までに平均800余人の国際関係学者を対象に調査した結果、『中国は台湾に侵攻しないだろう』という回答が70%を占めた」と報道した。 また「もし中国が台湾に侵攻すると仮定した場合、90%以上は『対中制裁に賛成する』とし、80%は『台湾への軍事支援拡大を支持する』と答えた」と伝えました。

私は、このブログでは、中国による台湾侵攻はしばらくはないだろうということを主張してきました。そのため、この調査結果十分に頷けるものです。

中国軍の資料などから、中国軍は最初にミサイルで台湾沿岸部を狙い、空港や通信施設、レーダー設備、物資輸送の結節点、政府機関などを重点的に攻撃し、その後、大規模な上陸作戦を展開する計画だとされています。

しかし、近年の研究で、台湾や米国、日本は中国が攻撃を始める60日余り前に攻撃準備の情報を把握できると見積もられています。台湾侵攻程度の大作戦になれば、その全貌を隠し果せることなどできません。

この期間中に、台湾は軍の指揮・管制施設を山中に移転させたり、海中に機雷を仕掛けたりするなど、中国の侵攻に備えることが十分できます。

さらに、台湾の地形からいっても、中国軍が上陸しうる場所は台湾西部に13カ所しかありません。さらに、台湾の沿岸部の街には化学工場が多くあり、ここをミサイル攻撃すれば、中国軍は有毒ガスの脅威にさらされる可能性があります。

中国軍が上陸に成功したとしても、台湾各地の都市やジャングルに散らばる250万人の予備兵と戦う必要があります。中国は、海上輸送力が脆弱であり、一度に輸送できる部隊は、10万人以下の数万単位です。中国には空挺部隊もありますが、その規模は3万人です。

そうなると、中国は最大でも一度には10万以下の部隊しか台湾に送り込むことかできず、これは台湾軍に逐次撃破されてしますます。

それに実際に中国の台湾侵攻がはじまりそうになれば、日米やEUも台湾に支援を行うでしょう。支援だけではなく、日米が軍事的にも介入した場合、このブログでも何度か主張したように、日米は中国よりも圧倒的にASW(対潜水艦戦闘)力に優れているため、台湾を攻撃する艦船のほとんどは台湾に到着する前に撃沈されてしまうことになります。

それでも中国が甚大な被害を受けても陸上部隊を台湾に上陸させたとしても、米国が台湾を複数の攻撃型原潜で包囲した場合、台湾に近づく補給船や、航空機はことごとく破壊され、台湾に上陸した部隊への補給が途絶え、上陸部隊はお手上げになってしまいます。

ただ、ロシアのウクライナ侵攻についても、多くの識者が「ありえる」と予想していた一方、多くの軍事専門家は、ロシアがウクライナ全土を制圧するのは不可能とみており、そのため侵攻もないだろうし、あったとしても東部一部だけだろうと見ていたのも事実です。

ロシアは東部ドネツクだけではなく、首都キーフやハリキウおよび南部にも侵攻しました。しかし、当初の予想通りかなり苦戦しています。この点プーチンには何らかの誤算があったものと考えられます。

習近平が何らかの誤算をすれば、プーチンと同じように、台湾に武力侵攻する可能性はあります。そうなると、習近平も台湾侵攻でかなり苦戦することになるでしょう。最終的には、軍事目的を達成できずに終わる可能性が高いです。しかし、それでも台湾に被害が出るのは間違いなく、やはり最初から習近平が台湾に軍事侵攻させないようにするべきです。

中国は米国が同盟国との一枚岩を誇示することに激しく反発し、日本については米国の「奴隷」、カナダのトルドー首相については米国の「走狗」と強く批判しています。

西側の結束のほころびを誘おうと中国が練っているのは、米国の同盟国に対して個別に中国と関係を強めるよう働き掛けることです。まず、経済的なメリットを提示し、それでも反中国の協調行動から手を引かないなら、懲罰を与えるという戦略です。

新疆問題で中国の当局者に制裁を科したEUに対しては、不相応なほど厳しい対抗措置を講じており、EUが待望の末にようやく大筋合意した投資協定が破棄される恐れもあります。

民間シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)のアジア・プログラム・ディレクター、ヤンカ・エルテル氏は、中国政府は米国とEUの連合によって核心的利益を脅かされるのであれば、EUとの経済利益は犠牲にする覚悟だとみています。

そうしたメッセージを強調するかのように、習近平氏は最近、ドイツのメルケル首相(当時)との電話会談で、EUが自らの「独立性」に関して正しい判断をするよう望むと伝えました。

ただ、中国はなおも欧州の技術や投資が必要であるのは間違いないです。中国の技術力は進んだとされている一方で、中国は自身の力では、欧米の一歩先を行くことはできても、その先へ進むことはまだできません。一方欧米は、自力で何歩も先へ進み、それどころか、現状の技術力とは断絶したような新しい領域にまで自力で到達することができます。

平たくいうと、中国は今まで聞いたもの見たものの発展系は創造できますが、今まで聞いたことがない、見たことがない領域には踏み込めません。それは、中国には平和賞や文学賞を除いてノーベル賞受賞者がいないことをみても理解できます。

そのため、中国は、中国と競うよりは手を組む方が得だと米国を納得させるのをあきらめたわけではないようです。これは先週に米国のケリー気候変動問題担当特使に対し、22─23日に米国が主催する気候変動サミットに関し、中国として支援する姿勢を見せたことからもよく分かる。

米国が中国を敵とするより友人扱いする方が、米国の利益になると認められるようになることを中国は願っているようです。

ただ、プーチンと同じように勘違いして、台湾に武力侵攻すれば、その道は閉ざされることになります。

日米及びその同盟国は、プーチンが誤算して、ウクライナに侵攻したように、習近平が誤算して台湾に侵攻しないように策を巡らすべきでしょう。

そのためには、中国が軍事的に台湾に侵攻すれば、どのようなことになるかを知らしめるのも一つの方法だと思います。だからこそ、私はこのブログで、中国が台湾に軍事侵攻すれば、大失敗するであろうことを主張してきたのです。

中国の台湾侵攻を懸念するのは悪くはないとは思いますが、それが度が過ぎて、多くの人が、中国が台湾に侵攻すれば、いともたやすく台湾を負かして、台湾を占拠できると思い込めば、それは中国を利することにもなりかねません。本当に台湾の軍事力がその程度でならいたしかありませんが、そうではないことを周知するのは正しいことだと思います。

中国人民解放軍海軍陸戦隊

世界は台湾対して軍事だけではなく、経済的にも支援すべきでしょう。特に経済的には、ただ資金を提供するだけではなく、台湾が経済的にも社会的にも繁栄するような様々な支援をすべきです。

台湾が繁栄し、高度な社会を築き、文化的にも繁栄すればするほど、大陸中国の人々は自分たちの体制が間違いであることに気づき、やがて中共は内部から崩壊するでしょう。

そうして、もう一つの方法としては、世界は、ロシアのウクライナ侵攻は、誰が見ても完璧な失敗だったということを中国に思い知らせるべきです。そのためにも、世界一致協力して、ロシアのウクライナ侵攻を是が非でも大失敗に導かなければならないのです。


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