2022年1月24日月曜日

日米、沖縄南方で異例の大規模共同訓練の狙いとは 中国や北朝鮮の軍事的覇権拡大の姿勢に警戒か 識者「演習が有事のテストになる」―【私の論評】米・中露対立は日本にとって大きな懸念事項だが、存在感を高める機会ともなり得る(゚д゚)!

日米、沖縄南方で異例の大規模共同訓練の狙いとは 中国や北朝鮮の軍事的覇権拡大の姿勢に警戒か 識者「演習が有事のテストになる」

海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン

 海上自衛隊は23日、米海軍と沖縄南方で17~22日に共同戦術訓練を実施したと発表した。欧米諸国がロシアのウクライナ侵攻に警戒心を募らせるなか、北朝鮮は今年に入って極超音速ミサイルや弾道ミサイルの発射を繰り返している。中国が台湾への軍事的圧力を強める可能性も指摘される。日米共同訓練の狙いに迫った。


 注目の共同訓練には、米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」と、同「エーブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦「アメリカ」と、同「エセックス」、ドック型揚陸艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦3隻が参加。海自からはヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」が参加した。

 これに対し、中国や北朝鮮は軍事的覇権拡大の姿勢を崩さない。

 台湾国防部は23日、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表した。進入したのは、戦闘機「殲16」24機と、戦闘機「殲10」10機、爆撃機「轟6」1機、対潜哨戒機「運8」2機、通信対抗機「運9」2機の合わせて39機とみられる。日米共同訓練が始まった17日から4日連続で台湾のADIZに侵入している。

 北朝鮮は今年に入り極超音速兵器などを4回、計6発発射している。

 日米、中国の動きをどうみるか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「年明けから動きをみせる北朝鮮を含め、日米は中国に警戒心を強めている。空母と揚陸艦を合わせて5隻が参加する訓練は異例の規模だ。特に米国は、北京冬季五輪終了後、ロシアのウクライナ侵攻に乗じて、中国が東アジアで動き出すとみており、演習が有事へのテストになる」と指摘した。

【私の論評】米・中露対立は日本にとって大きな懸念事項だが、存在感を高める機会ともなり得る(゚д゚)!

上の記事にもあるように、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入した意図は、日米の訓練実施を受けて中国の兵力、火力を見せつける意図があった可能性があります。

台湾のシンクタンク、国家政策研究基金会の掲仲副研究員は、進入した機数が過去最多レベルではなく、進入した空域も台湾の南西に集中しており日米が訓練を行った範囲からは離れていることから、弱腰になっていないという態度を示すと同時に、意図しない事態の発生を避ける狙いがあったとの見方を示しいます。

米海軍の異例の行動は、これだけではありません。香港(CNN)によれば、 米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が最近米領グアムに寄港しました。アナリストからはこれについて、インド太平洋地域の緊張が高まる中で同盟国と敵の双方にメッセージを送る動きだとの指摘が出ています。

トライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港しました。弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目です。

米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が先週末、米領グアムに寄港した

米海軍の声明では今回の寄港について「米国と地域の同盟国の協力を強化し、米国の能力や柔軟性、即応態勢、インド太平洋地域の安全と安定に対する継続的な関与を示すものだ」としています。

通常、米海軍が保有する弾道ミサイル原潜14隻の動きは極秘にされています。これらの潜水艦は原子力を動力とするため一度に数カ月連続で潜航することが可能で、航続時間を制約する要素は150人を超える乗組員の生活維持に必要な物資のみとなる。

海軍によると、オハイオ級潜水艦は平均77日間にわたって海にとどまり、その後はメンテナンスや補給のために約1カ月港に滞在します。

ワシントン州バンゴーやジョージア州キングズベイにある母港の外では艦影が撮影されることさえまれです。徹底した秘密主義の結果、弾道ミサイル原潜は「核の3本柱の中で最も生残性の高い部分」となっています。核の3本柱にはこれ以外にも、米本土のサイロに格納される弾道ミサイルや、B2やB52のような核兵器を搭載可能な爆撃機があります。

ただアナリストによると、台湾の地位を巡る米中間の緊張がくすぶり、北朝鮮がミサイル実験を強化する中、米国は弾道ミサイル原潜を展開することで中国や北朝鮮には不可能なメッセージを発することができるといいます。北朝鮮は潜水艦プログラムを開発中ですが、まだ実戦配備レベルに達していません。

米海軍の元潜水艦長で、現在は新アメリカ安全保障センターでアナリストを務めるトーマス・シュガート氏は「意図的かどうかはともかく、弾道ミサイル原潜はメッセージを送っている。米国は100発あまりの核弾頭を相手の玄関先に配置することができるが、相手はそれを知ることすらないか、あるいは大した対応が取れない、というメッセージだ。これが逆の立場になることはありえず、そうした状況はしばらく続く」と述べました。

北朝鮮による弾道ミサイル原潜の開発計画はまだ始まって間もないです。中国は推定6隻の弾道ミサイル原潜を保有しますが、米海軍の保有数には見劣りしますし、米海軍の戦力とは比較にならないという分析が多いです。

また戦略国際問題研究所の専門家による2021年の分析によると、中国の弾道ミサイル原潜は米国のものほどの能力はありません。中国の094型弾道ミサイル潜水艦は水中作戦時米潜水艦の倍の騒音を発するため探知されやすいほか、ミサイルや弾頭の搭載量でも劣るというのが、米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析です。

他にも異例な動きはあります。米国防総省は24日、原子力空母2隻の打撃群が訓練のため南シナ海に入ったと明らかにしました。軍幹部は、同盟国を安心させ、「有害な影響に対抗」する決意を示すのが目的と述べました。

国防総省によると、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」の原子力空母打撃群が23日に南シナ海に展開し始めました。

上の記事にもあるように、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」は沖縄南方で17~22日に日本と共同訓練を行っていますから、この共同訓練が終わってから、すぐに南シナ海に展開したということになります。

この展開力も米軍の強みです。巡航速度がはるかに遅い中国の空母にはできない離れ業です。

米原子力空母「エイブラハム・リンカーン」クリックすると拡大します

両打撃群は、対潜水艦、空や海上の戦いを想定した訓練を実施します。

米海軍は23日、両打撃群が台湾の東岸沖のフィリピン海で海上自衛隊と訓練を実施していると明らかにしました。

一方北大西洋条約機構(NATO)は24日、ロシアによるウクライナ侵攻に備え、東欧に臨時の部隊を待機させ、艦隊や戦闘機を増派すると発表しました。ウクライナのNATO加盟を警戒するロシアは、NATO不拡大を確約するよう米欧に要求しています。バイデン政権は今週、ロシアの提案に文書で回答しますが、確約は拒絶する方針です。

ロシアはウクライナ国境周辺に軍部隊を展開しています。米国務省は23日、在ウクライナ米大使館職員の家族に国外退避を命じました。英国も同様の措置を取りました。

22日、ウクライナの首都キエフで、訓練を受ける同国兵士ら

バイデン米大統領は19日、就任から20日で1年となるのを控え、ホワイトハウスで記者会見した。緊迫するウクライナ情勢について「ロシアはウクライナに侵攻するだろう」との「推測」を示したうえで、その場合、「深刻な代償を支払うことになる」と大規模な経済制裁を発動する意向を強調し、ロシアをけん制しました。

 バイデン氏は会見で、ロシアのプーチン大統領が外交による緊張緩和か軍事侵攻かの「選択」を求められていると説明。侵攻を選んだ場合の制裁として、「ロシアの銀行はドル取引ができなくなる」と述べた。世界の主要金融機関が参加する国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を念頭に置いた発言とみられます。

これについては、米国家安全保障会議(NSC)は、西側諸国が「国際銀行間通信協会」(SWIFT・本部ベルギー)システムからロシアを遮断する可能性を排除したとする報道を否定しました。

中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。

秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。

2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。

移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。

プーチン大統領がウクライナ国境に軍を展開して、武力で威嚇して圧力をかけているのは、おそらく、バイデン大統領の国内の弱い支持基盤を見越して、ウクライナのNATO加盟を阻止し、欧州でのNATOの中距離ミサイル配備をけん制することで、自国の安全保障をより確実にすることが狙いでしょう。

しかし、それが達成されなくとも、欧州の同盟国との連帯をトランプ前政権の違いとして打ち出していきたいバイデンの指導力が低下して、2024年の大統領選挙で、ロシアに「優しい」トランプ大統領が再選されることなど、米国の弱体化と米欧の連帯の弱体化を期待する複合的な狙いがあると考えられます。

中国にとっても、このような米国の同盟国との紐帯を弱める方向性は、自らの利益に沿うものであり、逆に日本にとっては懸念すべき要素です。

かつての日本にとって日米同盟とは、自国を守るための最強のツールとしての意味しかありませんでした。ところが、今や、日米同盟を機能させることは、米国の窮地を救い、長期的な国際秩序の方向性を決める重い課題となっています。その意味で日本の責任は重いと同時に、日本にとっては存在を高める大きな機会でもあります。

その意味でも、日米の沖縄南方で異例の大規模共同訓練は大きな意義のあるものであったと思います。

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