2022年1月29日土曜日

ウクライナ大統領、ロシア侵攻めぐる発言の抑制要求 「これはパニック」―【私の論評】ウクライナ問題を複雑化させる右翼武装グループ「ロシア帝国運動」と「アゾフ連隊」(゚д゚)!

ウクライナ大統領、ロシア侵攻めぐる発言の抑制要求 「これはパニック」

ロシア侵攻に関する発言が「パニック」を引き起こしていると訴えるゼレンスキー大統領

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、他国の指導者がロシアとの戦争の可能性を誇張し、「パニック」とウクライナ経済の不安定化を引き起こしていると訴え、発言の抑制を求めた。

外国報道陣との会見で述べた。これによると、ゼレンスキー氏はバイデン米大統領やマクロン仏大統領との電話会談で、ロシアからの脅威は「差し迫った絶え間ない」ものではあるものの、2014年の侵攻以降、ウクライナ国民はこうした脅威と暮らすことを学んできたと説明したという。

ゼレンスキー氏は「彼らは明日にも戦争になると言っている。これはパニックを意味する」と述べた。

ロシアはウクライナ国境に数万人規模の兵力を集結させており、プーチン大統領が侵攻を計画しているとの懸念の声が上がる。ただ、ロシアはウクライナ侵攻を繰り返し否定している。

ロシアの脅威の深刻さは正確には不明なままで、この点をめぐりゼレンスキー氏とバイデン氏の見解が対立しているとの情報がある。

ウクライナ高官がCNNに明かしたところによると、両氏の27日の会談は不調に終わったとされる。バイデン氏がロシアの侵攻はほぼ確実で差し迫っていると警告する一方、ゼレンスキー氏は脅威は「危険だがあいまい」なものにとどまるとの認識を改めて表明したという。

一方、ホワイトハウスはこの説明に異を唱え、匿名の情報筋が「偽情報をリーク」していると指摘。報道官の1人は、バイデン氏はゼレンスキー氏に2月侵攻の「明確な可能性」があると警鐘を鳴らしたと述べた。

【私の論評】ウクライナ問題を複雑化させる右翼武装グループ「ロシア帝国運動」と「アゾフ連隊」(゚д゚)!

このブログでは、ロシアによるウクライナ侵攻の確率はかなり低いことを主張してきました。その論拠としては、まずはロシアのGDPは今や韓国と同程度あり、しかも人口はロシアが1億4千万人、韓国は5千万であり、一人あたりのGDPとなると、韓国を大幅に下回ることです。

これだけGDPが低く、しかも国土は世界一の広さとなると、守備すべき国境線も長大であり、最早ロシアは大きな戦争はできません。米国抜きのNATOともまともに戦えば、負けます。

さらに、もう一つの論拠はロシア地上軍は兵站を鉄道にかなりの部分を頼っており、脆弱であることを考えると、ロシア軍はウクライナ全土に侵攻するのは不可能というものです。よって、侵攻するのは最大でもドネツクなどのいくつかの州であり、それも州全部ではなく、州の骨棘近くまでかもしれません。

なぜなら、兵站を鉄道に頼るロシア地上軍は、国境近くでは、高いパフォーマンスを発揮できるものの、それを超えると急激にパフォーマンスが低下するからです。

ウクライナ南部クリミア半島で18日、高速道路を走るロシア軍の装甲車

さらに、26日には別の論拠もあげました。それは、米国のランド研究所のアナリストによれば、ウクライナによる反乱を抑え込むためには、ウクライナ人1000人に対してロシアの戦闘員20人を要するとしていることです。

そうなると、ロシアは88万6000人の占領軍を必要とする計算になり。明らかに非現実的であり、反乱を鎮圧するのは困難だというものです。

ロシア地上軍の兵力は、2016年現在、約27万人の兵力と戦車を約2,700両(その他保管約17,500両)保有している(国境警備隊や内務省軍などの準軍事組織を含まない)に過ぎません。これでは、ロシア全陸軍を投入したとしてもウクライナを占拠するのは、到底不可能です。

以上は、純粋に軍事的な観点からの分析です。実は、この他にウクライナ問題を複雑にしている問題があります。それは、ウクライナとロシアに存在する過激な右翼団体の存在です。これについては、情報も少ないので、このブログではとりあげてきませんでしたが、最近は少しずつでてきているので、本日はこれについて掲載します。

ウクライナ側の右翼団体は、アゾフ連隊です。ロシア側のそれは、ロシア帝国運動です。

これについては、以下の記事が詳しいですし、よくまとまとまっています。日本にいて、漏れ聞こえてきた情報をまとめると、おおよそこの記事のようになると思います。私の知り得た情報もこれ以上のものはありません。
ウクライナ危機の影の主役――米ロが支援する白人右翼のナワバリ争い
以下に一部をこの記事から引用します。
クリミア危機の後のミンスクII合意でロシアと欧米そしてウクライナは「外国の部隊」の駐留を禁じることを約束した。これは緊張緩和の一環だった。

ところが、その後もロシア系人の多いウクライナ東部ではウクライナからの分離独立とロシア編入を求める動きが活発化しており、その混乱に乗じて2019年段階ですでに50カ国以上から約17,000人の白人系右翼が集まっていたと報告されいる。

彼らは立場上「民間人」ですが、実質的には外国人戦闘員です。とりわけ多いのがロシアから流入した白人系右翼で、その背後にいるのが「ロシア帝国運動」だ。

「ロシア帝国運動」の国内でのデモ

民間人の立場を隠れ蓑に軍事活動を活発化させるロシア帝国運動は、ウクライナでエスカレートする緊張と対立の、いわば影の主役とさえいえる。
そうして、影の主役はウクライナ側にもいるのです。ウクライナの右翼団体アゾフ連隊です。
アゾフ連隊(現在はアゾフ大隊と呼ばれている)は2014年、クリミア危機をきっかけに発足し、民兵としてロシア軍やロシア帝国運動と戦火を交えた経験を持ち、その頃から民間人の虐殺といった戦争犯罪がしばしば指摘されてきた。そのためロシアメディアではネオナチ、ファシストと呼ばれている。 
ロシア軍のクリミア侵攻の時に記念写真をとるアゾフ連隊
戦場の様子などもFacebookなどで発信し、欧米からも右翼活動家をリクルートするアゾフは、欧米での白人テロを誘発させかねない存在として危険視されている。実際、アメリカ議会は2015年、アゾフを「ネオナチの民兵」と位置付け、援助を禁じる法案を可決した。

ところが2018年、国防総省からの圧力で議会は法案を修正し、それを皮切りに欧米はアゾフに軍事援助をしてきた。ジョージワシントン大学研究チームが昨年発表した報告書によると、アゾフやその下部団体のメンバーは米国をはじめ欧米諸国から訓練を受けており、なかにはイギリス王室メンバーも卒業生のサンドハースト王立陸軍士官学校に留学した者までいる。

要するに、欧米はロシアを睨んでアゾフを手駒として利用しようとしているのです。これこそ冷たい国際政治の現実であるが、欧米での右翼過激派の動向を考えれば、危険な賭けであることも確かです。

しかし、それはアゾフには関係ない。むしろ、欧米から承認を取り付けたアゾフは、ウクライナ危機がさらにエスカレートすれば、これまで以上に活動を活発化させることになるだろう。

いわば世界が懸念を募らせるウクライナ危機は、日陰の身にあったコーカソイド系右翼にとっての晴れ舞台ともなり得るのである。

ウクライナ問題で、こうした右翼の影の動きがほとんど報道されなかったのは、 ロシアは武装グループである、「ロシア帝国運動」を支援して都合よく使ってきたからであり、欧米やウクライナもロシアの抵抗勢力として、アゾフ連隊を手駒として用いようとしてきたからでしょう。

こうした右翼団体の活動が、両陣営のコントロールが及ばなくなったときのことも想定して、ロシア軍は国境に大部隊を配置している面は否めないと思います。何しろ、ロシアはウクライナと国境を接しているので、その緊迫感は欧米よりは高いでしょう。

国境を直接接していない欧米側は、あくまでウクライナ政府にコントロールさせようとしているのでしょう。

ロシア側としては、「ロシア帝国運動」がロシアの意向に反した行動をした場合、あるいはしそうな場合は、これを攻撃して阻止するつもりでしょう。

また、アゾフ連隊が越境したり、越境しそうな場合には、これを攻撃して阻止するつもりでしょう。また、アゾフ連隊がウクライナ領内外の「ロシア帝国運動」の拠点を潰したり、潰そうとした場合これを攻撃して、拠点を確保するつもりだと思います。そうして、あわよくば、その拠点を増やそうという腹だと思います。

また、「ロシア帝国運動」や「アゾフ連隊」が不穏な動きをしないように、抑止するという意味もあると考えられます。

以上のようなことを知らない人が、ウクライナ情勢をみると、一触即発でウクライナとロシアがすぐに大戦争を始めてしまう可能性を危惧してしまうのでしょう。

米国、NATO、ウクライナ、ロシアもそれは望んでいないでしょう。ロシアとしては、戦争を望んではいないのでしょうが、ウクライナがNATOに入るのは許容できないのでしょう。

冒頭の記事でのゼレンスキー大統領の発言は、以上のようなことを説明していないので、なんとも歯切れがわるいというか、理解しにくいものになっています。

ウクライナ問題を解決するには、まずは両陣営とも、テロリストでもある右翼武装グループに対する支援を打ち切ることだと思います。その方が良いですし、そもそもテロリストはいつ飼い主の手を噛むかわかったものではないからです。

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