2022年1月22日土曜日

台湾の非対称戦力構築を後押しする法案 米議員が提出―【私の論評】米国は「台湾反浸透法」を成立させ、中国の不当な浸透があった場合には制裁を課せ(゚д゚)!

台湾の非対称戦力構築を後押しする法案 米議員が提出


マイク・ギャラガー米下院議員(共和党)は21日、台湾の非対称戦力構築の加速化などを促す「武装台湾法案」を提出した。

法案では、米国防長官に対し「台湾安全支援イニシアチブ」を策定することや、イニシアチブの遂行に向け2023~27会計年度に毎年30億米ドル(約3410億円)を拠出することを求める。台湾の非対称戦力の構築を加速させるとともに、中国の台湾侵攻を遅らせたり阻止したりする目的で、台湾への武器供与や訓練などに使われる。

ギャラガー氏は、同日付のリリースで、「アフガニスタンやウクライナ、イランで露呈したバイデン政権の弱腰ぶりを見て中国は侵略的になる一方だ」と指摘。その上で「議会は、手遅れになる前に抑止力を取り戻すための行動を起こす必要がある」と訴えた。

上院では昨年11月、同じく共和党のジョシュ・ホーリー議員も同様の法案を提出していた。

【私の論評】米国は「台湾反浸透法」を成立させ、中国の不当な浸透があった場合には制裁を課せ(゚д゚)!

台湾海峡の軍事バランスは急速に悪化しています。その結果、中国が2020年代後半までに台湾に侵攻し、その支配権を握ることができる、あるいは実際にできると結論づける懸念が高まっています。

わたし自身は、この説に与するものではありません。このブログでは、現在すぐに中国が台湾を武力侵攻する可能性は低いことを、根拠を指し示してこのブログで何度か掲載しています。

その根拠とは、中国軍の海上輸送力が貧弱であり、台湾を制圧するだけの兵力を一度で台湾に上陸させることができないということです。それでも、無理に台湾を併合しようとして、兵員を送り込めばどういうことなるかといえば、何回かにわけて兵力を送り込むことになり、一度に送り出せる兵力には限りがあり、それは台湾軍に個別撃破されることになってしまいます。

こうした「戦力の逐次投入」で日本もかつて大東亜戦争で失敗しています。現在の中国が台湾に武力で侵攻しようとした場合、こうした失敗を繰り返すことになります。

それに、中国が台湾に本当に武力侵攻した場合、米国は黙っていないでしょう。中国軍は米軍の応援にも対処しなければならなくなります。

中国の海上輸送力が向上するまでは、中国は台湾に武力侵攻できないという結論になります。これは、単純な計算で導き出すことができます。

ただ、このブログでは、それでも台湾が中国に併合される可能性があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
使命を終えた米国の台湾に対する戦略的曖昧政策―【私の論評】中国は台湾に軍事侵攻できる能力がないからこそ、日米は戦略的曖昧政策を捨て去るべきなのだ(゚д゚)!


 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
蔡英文総統の民主進歩党が政権の座についてから、台湾では中国の影響力はかなり低下しました。ただ、中国は台湾に対して浸透工作をこれからも強めるでしょう。それだけではなく、さらに中国は台湾を国際的に孤立させたり威信を低下させる挙にでるでしょう。経済的に不利益を被るように仕掛けるでしょう。

この浸透工作、台湾の国際的地位低下工作によって、台湾に親中政権ができたとしたら、どうなるでしょうか。しかも、その親中政権が中国の傀儡政権に近いものだった場合どうなるでしょう。

中国はある程度時間をかけて、少しずつ中国に人民解放軍を上陸させるでしょう。場合によっては、目立たないように、民間人を装って入国させるかもしれません。仮に30万人以上も上陸させてしまったとしたら、時すでに遅しです。台湾は事実上、中国領になってしまいます。それも、合法的にそうなるのです。

そうして、いずれ台湾は正式に中国の省になるか、あるいは対岸の福建省に取り込まれてしまうでしょう。

これを取り戻すには、米軍にとっても大変なことです。傀儡政権が出来上ってから、米国がこれに対応すれば、ベトナム戦争のように泥沼化する可能性もあります。

そうなる前に、対処すべきです。そのためには、今から「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきです。
現在台湾の蔡英文総統の率いる民主進歩党は、親中的でないですから、中国に与するようなことはしませんが、台湾政府が未来永劫、親中的にならないとはいえないです。さらには、政府が親中的ではないにしても、軍隊や産業界等が中国の工作にあって、親中的になる可能性は十分にあります。

そうなれば、上で示したように、中国が台湾にこっそりと、軍隊を送り込むということはありえます。そうなると、一度に軍隊を送る必要はなく、何度にも分けるとか、方法も空路、海路をもちいて複数の方法でできます。

あるいは、台湾に在住する中国出身者や、中国に親和性を持つ台湾人を中国側に導いた上で、密かに軍事訓練などをするという方法で、目立たない形で、台湾内に人民解放軍を組織するということもできるでしょう。

しかも、中国が得意なサラミ戦術で、毎年すこしずつ、何十年もかけてこのようなことをすれば、南シナ海で成功したように、台湾でも成功するかもしれません。

そうなれば、台湾は内部から崩壊して、中国の配下に収まるしかなくなります。こうした可能性は十分にあります。

こういうことをなくすためにも、米国は「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきと私は主張しているわけです。

中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏も、習近平がすぐにも台湾に侵攻することはないと主張しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない

遠藤氏は、"習近平は台湾の「武力統一」はしないつもりで、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持って行くつもりだ"としています。

さらに、"2030年頃には、中国のGDPがアメリカを凌駕していて、2035年頃には少なくとも東アジア地域における米軍の軍事力は中国に勝てなくなっているだろう。だから2035年まで待つ。これが習近平の長期戦略だ"ともしています。

そうして、最後に以下のように締めくくっています。

"以上より、「中国は勝てない戦争は絶対にしない」と言うことができ、もし逆に中国共産党の一党支配体制を崩壊させたいのなら、「アメリカや台湾の方から中国に戦争を今すぐにでも仕掛けるといい」という、何とも皮肉な現実が厳然と横たわっている。

習近平にとって、何よりも重要なのは中国共産党による一党支配体制の維持なので、中国自らが率先して台湾を武力攻撃することはない。

これを勘違いすると、日本は「政冷経熱」を正当化して、経済における日中交流、日中友好ならば「安全だ」と勘違いし、その結果、習近平の思う壺にはまっていくという危険性を孕んでいる。"


私自身としては、現状の不動産バブル崩壊の深刻さやこのブログでも述べているように中国が中進国の罠にかかる可能性からみると、2030年頃に中国のGDPが米国を凌駕することはないとみていますし、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持ってくことも難しいのではないかと思います。

ただ、"日本は「政冷経熱」を正当化して、経済における日中交流、日中友好ならば「安全だ」と勘違いし、その結果、習近平の思う壺にはまっていくという危険性を孕んでいる"というところは、私も同感です。

特に、経済界は、台湾政府が親中的になっても、大陸中国の国内産業の締め付けなどをみていれば、全部が親中的にはならないというか、なれないのではないかと思います。

そうすると、やはり上で述べたような、人民解放軍および武器を逐次台湾に上陸させるか、台湾人の親中国的な人々を人民解放軍に引き入れて、30万人以上も兵力を確保できる目処がたったときに、クーデター等にみせかけて、一気に制圧し、台湾を絡めとるのではないかと思います。

こういうことを考えると、台湾の非対称戦力構築の加速化も必要ですが、それ以外にも何らかの措置を講じておく必要があると思います。

そもそも、中国が台湾に対して何か非合法な動きすれば、それを封じる仕組みなどの構築が必要だと思います。

台湾の議会は2019年12月31日、中国から政治的影響が及ぶことを阻止するための「反浸透法案」を可決しました。

台北市内の立法院で、「反浸透法案」に反対し、本会議場で座り込む国民党の立法委員ら

国民党は、他国による浸透から台湾を守る対策は後押しするものの、民進党が支持率拡大のために法案可決を急いでおり、民主制度を脅かしていると非難。国民党の議員数人は採決中に抗議として議長壇の前で座り込みました。議会の外で抗議活動する親中派政党の支持者もいました。

法案は、中国による工作に対抗する数年来の努力の一環によるものです。台湾では、中国が政治家への不法献金やメディア、その他の不正手段で、台湾の政治や民主制度に影響を及ぼそうとしているとの見方が多いです。

反浸透法は、中国によるロビー活動や選挙運動などを含む資金提供を法的に防止する手段となります。違反した場合は最大7年間の服役が科されます。


米国はウイグル人権法の他、ウイグル輸入禁止法も成立させています。中国はこれを内政干渉として批判しています。このような法律を成立させたのですから、米国でも、「台湾反浸透法」を成立させて、台湾への中国の不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきでしょう。中国が台湾に人民解放軍を合法的にみせかけて送り込む等の挙に出た場合は、一定数以上の米軍を台湾に派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。

無論、これはバイデン大統領が主張するように、中国による現状変更を一切許さないという前提で行うべきでしょう。

そうして、ほかならぬ日本は台湾を見習い「反浸透法」を成立させるべきです。日本こそ、そのような法律が必要と思います。岸田政権には逆立ちしても、無理でしょうから、次の政権に期待したいところです。

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