【新華社北京1月6日】中国国家衛生健康委員会は6日、31省・自治区・直轄市と新疆生産建設兵団から5日に報告を受けた新型コロナウイルスの新規感染者(無症状感染者除く)が189人だったと発表した。
【私の論評】先進国の「ゼロコロナ政策」とは似て非なる中国の「社会面清零政策」の末恐ろしさ(゚д゚)!
この報道からみると、最新の中国のコロナ感染者数は、189人であり、死亡者は0人です。人口が約14臆人の中国では、この数字は両方ともほぼ0に近く、この数字が本当であれば、中国のコロナ感染症はほぼ収束したと言っても良いようです。
しかし、実際には北京オリンピックを1ヵ月後に控えた中国のコロナ対応に国内で不満の声があがっています。
米国・CNNによると、中国のゼロコロナ政策は大規模検査、長期間の隔離、感染確認後即座にロックダウンなどが行われているそうです。
中国中部の大都市で人口約1300万人の西安市では去年12月9日~23日、新型コロナの234人の市中感染が確認され、23日午前0時からロックダウンに入りました。
各家庭1人だけ2日に1回、食料品など購入の外出のみ可能だそうです。
感染対策のため封鎖された居住区の出入り口=5日、中国陝西省西安市 |
その後も感染拡大が収まらず、食料品などの買い物も禁止され、住民の自動車の運転も禁止。西安市在住の男性は「外出禁止後、政府から1度野菜だけが届いた。お米だけ、ヨーグルトだけ届いたという人もいる。隔離中の人がいる家には封印のお札のようなものが貼られる」と語ったそうです。
中国メディアの報道では粛々と検査を受ける市民や食料の配給が行わえる様子が報じられました。
中国のSNSでは食糧難を訴える人が急増。西安での食材の買い出し困難についても拡散され、きょう時点で4.3億回以上閲覧されましたが、検閲により現在は削除されています。
1月1日に行われた西安市のコロナ感染防止コントロール指揮部のビデオ会議で、1月4日までに西安市の新規コロナ感染者をゼロに抑えるゼロコロナ政策目標が打ち出されました。2日には陝西省の書記、劉国中が、社会面清零(ゼロコロナ)目標をできるだけ早く実現せよ、と通達しました。
ところが1月2日、陝西省で新たに92人の新型コロナ感染者が出ています。うち90人が西安市の住人です。3日には西安市だけで95人の感染者が出ました。
西安市では12月23日に都市封鎖(ロックダウン)が始まり、8日ぶりに新規感染者が100人を切ったという意味では徐々に落ち着いてきているにもかかわらず、1月4日までに新規感染者をゼロにするなど、あまりに非科学的・非現実的に思われます。
ところが、インターネット上に流れた西安市の「強制隔離」風景の動画を見たとき、多くの市民たちは気づくことになりました。「ゼロコロナ」とはコロナウイルスを徹底排除せよ、ということではなく、コロナ感染者を社会から徹底排除し、「ゼロ」とすることだったのです。
ところが、インターネット上に流れた西安市の「強制隔離」風景の動画を見たとき、多くの市民たちは気づくことになりました。「ゼロコロナ」とはコロナウイルスを徹底排除せよ、ということではなく、コロナ感染者を社会から徹底排除し、「ゼロ」とすることだったのです。
実際、感染拡大の可能性のある「小区」(集合住宅の集まる住宅区、団地)の住民が、数万人単位で「社会」と隔絶された僻地の「収容施設」に収容されていました。
ここで問題の本質は、中国でコロナ対策としての「社会面清零」モデルの概念が固まったことでしょう。在カナダ華人の人気YouTuber文昭が、こうした「社会面清零」措置の例の動画などを挙げて、こう解説していました。
「社会面清零の概念は、人と社会を分離して、強制収容キャンプモデルで管理するということだ」
市内の居住区に住民がおらず、空っぽであれば、そもそも人がいないのですから、ゼロコロナが達成されたことになります。仮に隔離施設内で新規感染者が発生しても、それは新規感染者にカウントされません。なぜなら、彼らは社会から隔絶されたところにいるからです。
そうして、重要なのは、政策として打ち出された「社会面清零」が、中央からの無茶な指示を受けた現場官僚たちが、何とか帳尻を合わせるために人民を欺く論理として確立したことです。そうして、この論理は中国内の他の地域でも感染者が発生すれば、適用されることになるでしょう。
中国は2020年、厳格なロックダウンと国産ワクチンの普及によって新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとしていました。全体主義が成功を大成功を収めたようにもみえました。
しかしながら今日では、オミクロン株のように感染力の高い変異株が登場しています。先日もこのブログでも掲載したように、中国の「ゼロコロナ政策」が世界のリスクになると予測した、ユーラシアグループは、中国の国産ワクチンの効果は限定的であり、変異株への対応力は不十分であると指摘しました。
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ここで問題の本質は、中国でコロナ対策としての「社会面清零」モデルの概念が固まったことでしょう。在カナダ華人の人気YouTuber文昭が、こうした「社会面清零」措置の例の動画などを挙げて、こう解説していました。
「社会面清零の概念は、人と社会を分離して、強制収容キャンプモデルで管理するということだ」
市内の居住区に住民がおらず、空っぽであれば、そもそも人がいないのですから、ゼロコロナが達成されたことになります。仮に隔離施設内で新規感染者が発生しても、それは新規感染者にカウントされません。なぜなら、彼らは社会から隔絶されたところにいるからです。
中国の「社会面清零政策」は、先進国などでいう「ゼロコロナ政策」とは似て非なるものであり、数字上コロナ感染者がゼロになれば、住民の生活や命はどうなっても構わないという政策です。
そうして、重要なのは、政策として打ち出された「社会面清零」が、中央からの無茶な指示を受けた現場官僚たちが、何とか帳尻を合わせるために人民を欺く論理として確立したことです。そうして、この論理は中国内の他の地域でも感染者が発生すれば、適用されることになるでしょう。
「社会面清零」に関する報道をする中国CCTVの画面 |
そうして、先日もこのブログで述べたように、中国では国家が国民を信用していないので、国民にすべての情報を知らせ、国民の判断を尊重するという仕組みが機能していません。そのため政府は失敗が許されません。権力者は常に全知全能、無謬の存在を演じ続ける以外にないのです。
ウイルスにはこの世界から駆逐できるタイプのものとそれが不可能で共存以外の道がないタイプのものがありますが、新型コロナは明らかに後者です。初期の段階で前者だと信じたが故のゼロコロナ政策であり、それで大成功してしまったため、今更やめるわけにはいかないのでしょう。
先進国においては、すでに「ゼロコロナ政策」はやめているか、いずれやめて「ウィズコロナ政策」に柔軟に転換するでしょう。しかし、中国はできない可能性が高いです。
自らの手段が功を奏し、それを国威発揚にまで用いてしまったため、その後は他の選択肢が取り得なくなるというパターンは、今回のコロナ対策に限った話ではありません。「一党専制」という一見、強力な仕組みの最大の弱点はここにあります。
中国製コロナワクチン |
同グループは、中国がこれまで貫いてきたゼロコロナ政策は失敗し、より大規模な感染症拡大と、それに伴う厳しい封鎖や措置を引き起こすと分析しています。そして、これは中国のサプライチェーンの混乱、世界的な経済不安リスクにつながるということになりそうです。
感染者零を目指すために、感染者や感染者とみられる人々の人権を無視して、強制隔離し、挙げ句の果に作り手、運び手まで隔離して、国内のサプライチェーンを破壊し、それが世界を不安に陥れかねないというのですから、本当に末恐ろしいです。
世界は、中国のどの部門が脆弱なのか見極めて、それがどのくらいの悪影響を自身にもたらすのか、前もって準備するしかないようです。ただ、相手が感染症ですから、それがどの程度サプライチェーンを毀損するのか、予め予想するのは難しいです。ただ、この危機が起こり得ることを予め認識しておくべきことは言うまでもありません。
オミクロン株が中国でも、重症者・死者数が少なくなり、中共が頑な「社会面清零政策」から柔軟に「ウィズコロナ政策」に転換することを願うのみです。
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