- 消費税減税・現金給付:与党は食料品の消費税減税と一律現金給付を検討。公明は2026年度実施を主張、自民は賛否分かれる。給付額は3~10万円、財源に赤字国債も。
- 経済対策・補正予算:石破首相は2025年度補正予算案を指示、自動車業界助成含む経済対策を今国会で成立目指す。
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首相官邸に入る石破首相 4月2日 |
- 林官房長官の否定発言: 2025年4月11日、林芳正官房長官は現金給付や消費税減税の検討を否定。消費税は社会保障の柱として減税は不適切と断言したが、対応は曖昧に「適切に」とした。
- 財務省派と反財務省派の対立: 日本の政治は、財政規律を重視する財務省派(加藤勝信、森山裕ら)と、減税・給付を求める反財務省派(斉藤鉄夫、玉木雄一郎ら)の激しい対立に支配される。
- 反財務省派の積極策: 反財務省派は食料品の消費税減税(2026年度目標)や現金給付(3~10万円)を推進。石破首相は補正予算を指示し、自動車業界支援を含む経済対策を今国会で目指す。
- 財務省派の抵抗と批判: 財務省派は消費税減税や給付に反対し、財政の安定を優先。2025年2月のデモは、財務省派の硬直した姿勢への国民の不満を反映。
- マクロ経済的提言: マクロ経済の視点では、デフレ脱却のため5%への時限的消費税減税、低所得者向け給付金、ゼロ金利維持、国債発行による財政拡大を提案。財務省派の緊縮はデフレを長引かせ、債務負担は低金利で軽いと主張。
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林芳正官房長官 |
この発言は、食料品の消費税減税や一律現金給付を進める動きと真っ向から対立する。金額は3~5万円から大胆な10万円まで議論され、石破茂首相は補正予算の編成を指示し、自動車業界への助成も含めた経済対策を今国会で成立させる気だ。2020年の10万円給付や2023年の所得税減税を思えば、この積極姿勢は驚くに値しない。トランプの関税が自動車産業を直撃する危機感も、こうした動きを後押しする。国民の生活を守るため、選挙を前に支持を集めるため、行動は加速する。
だが、林官房長官の否定は、まるで別の世界の話だ。このズレはどこから来るのか。答えは明快だ。日本の政治は、財務省派と反財務省派の激しい綱引きに支配されている。財務省派は、財政規律という鉄の掟を死守し、消費税を社会保障の命綱と信じる。
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公明党の斉藤鉄夫代表 |
対する財務省派はどうか。財務大臣の加藤勝信は、元官僚の冷徹な論理で動く。2025年2月の衆議院予算委員会で、彼は「財政の安定が最優先」と断言し、減税や追加支出を牽制した。自民党の森山裕幹事長も、消費税減税に否定的だ。「社会保障の財源を削れば、国民に迷惑がかかる」と彼は言う。これが財務省派の鉄壁の論理だ。2024年10月、加藤の財務大臣就任は、財政規律を貫く姿勢の象徴だった。財務省派の影響力は、予算編成や税制改正で動きを縛り、時に「強すぎる」と批判される。
この対立は、2025年初頭に一層鮮明になった。物価高とトランプの関税が経済を直撃し、反財務省派は食料品の消費税減税や現金給付を強く求めた。しかし、財務省派は財政の安定を盾に、これを跳ね返す。国民民主党は、所得税の非課税限度額引き上げを提案したが、財務省派は「経済のバランスが崩れる」と一蹴した。加藤財務大臣は、財政の安定を理由に、慎重な姿勢を崩さない。森山幹事長も、消費税の重要性を説き、減税は社会保障を脅かすと警告した。
だが、反財務省派の声は止まらない。玉木雄一郎は「今、国民が求めているのは即時の支援だ」と訴え、経済の苦境を強調する。斉藤鉄夫も、消費税減税の必要性を力説し、来年度からの実施を現実的な目標に据える。この分裂は、政治の根深い問題を映し出す。長期的な財政責任か、短期的な経済救済か。財務省派の影響力は強いが、批判も多い。2025年2月のデモは、財務省派が国民のニーズを無視しているとの不満が爆発した瞬間だった。
この闘いは、単なる政策論争ではない。日本の未来を左右する戦いだ。反財務省派の積極策は、選挙を意識したものかもしれない。2025年夏の参議院選挙が近づく中、国民の支持をどう集めるかは死活問題だ。2020年の10万円給付金は、国民の記憶に残る成功例だ。一方、財務省派の慎重論は、経済の安定を重視する視点から出ている。林官房長官の「適切な対応」という言葉は、このジレンマの象徴だ。何かを約束するでもなく、何かを否定するでもなく、ただ曖昧に響く。
この対立は、妥協でしか解決しない。過去を振り返れば、2024年の税制改革で、国民民主党は非課税所得限度額の引き上げを求めたが、財務省派の抵抗で中途半端な妥協に終わった。10万円給付案も、3~5万円に落ち着くかもしれない。財務省派は歳入を守るため、減税より限定的な支援を押し通すだろう。選挙前の熱狂と、経済の現実がぶつかり合う中、日本の政治は揺れる。
財務省派と反財務省派の主要人物とその立場
以下は、2025年時点で財務省派と反財務省派に属するとみられる現時点で影響力のある主要人物とその立場だ。なお石破首相の立場は状況に応じて揺れるので除外した。
派閥 | 主要人物 | 立場 | エビデンス/エピソード |
---|---|---|---|
財務省派 | 加藤勝信(財務大臣) | 財政規律を重視し、減税や追加支出に慎重。消費税は社会保障の柱と強調する。 | 2025年2月の衆議院予算委員会で「財政の安定が最優先」と発言。2024年10月の財務大臣就任で財務省の影響力を強化。 |
財務省派 | 森山裕(自民党幹事長) | 消費税減税に否定的。社会保障財源の確保を優先し、財政拡大を牽制する。 | 2025年4月11日の記者会見で「社会保障の財源を削れば国民に迷惑」と強調。 |
財務省派 | 林芳正(官房長官) | 財務省の慎重論を代弁し、給付金や減税の検討を否定。財政規律を支持する。 | 2025年4月11日の記者会見で「新たな給付金や減税の検討はない」と発言。 |
財務省派 | 麻生太郎(自民党副総裁) | 財政健全化を重視し、過去の税制改正で財務省寄りの姿勢を示す。影響力は依然強い。 | 2024年の自民党総裁選で財政規律派の候補を支持(NHK報道)。 |
財務省派 | 鈴木俊一(元財務大臣) | 財務省出身で、財政規律を一貫して主張。減税や給付に慎重な立場を維持。 | 2023年の予算編成で「財政の持続可能性」を強調(日本経済新聞)。 |
反財務省派 | 斉藤鉄夫(公明党代表) | 消費税減税を強く主張し、国民の負担軽減を優先。赤字国債も視野に入れる。 | 2025年4月11日の記者会見で「来年度からの減税が常識的」と発言。 |
反財務省派 | 玉木雄一郎(国民民主党代表) | 所得税減税や消費税減税を推進。国民の即時支援を求め、財務省の抵抗に反対。 | 2024年12月の税制改正で非課税限度額引き上げを部分実現(FiscalNote)。 |
反財務省派 | 高市早苗(自民党政調会長) | 経済活性化を優先し、消費税減税や給付に前向き。財務省の緊縮に批判的。 | 2024年の総裁選で積極財政を主張(産経新聞)。 |
反財務省派 | 西村康稔(自民党経済産業相) | 産業支援と経済成長を重視し、減税や給付で需要喚起を支持。財務省に異議。 | 2025年3月の経済対策で自動車産業支援を推進(朝日新聞)。 |
反財務省派 | 山本幸三(元地方創生相) | リフレ派の重鎮で、消費税減税と財政拡大を強く主張。財務省の緊縮を批判。 | 2024年の講演で「消費税は経済のブレーキ」と発言(YouTube講演)。 |
結論だ。日本経済を現状を認識した上での標準的なマクロ経済の視点(以下マクロ経済の視点とする)に基づけば、答えは明確だ。日本経済は今、デフレの呪縛から抜け切れていない。2025年、物価は上がるが、実質賃金の伸びは鈍く、消費は弱い。マクロ経済の視点からはデフレマインドを打破し、需要を喚起するため、大胆な財政・金融政策が必要だ。
消費税減税・撤廃は、国民の購買力を高め、経済を動かす即効薬だ。消費税撤廃の前にまずは5%への減税なら、歳入への影響を抑えつつ、消費を刺激できる。その後は、様子をみて、減税の幅を増やし、撤廃するしないは様子をみて決めても良いだろう。私としては、経済の実情にあわせて、インフレが亢進した場合は、亢進度合いインフレ要因によって税率を定めて消費税を導入、デフレになれば要因など関係なくすぐに低減・撤廃するなどの柔軟な対応をすべきと思う。柔軟さがマクロ経済の鉄則だ。社会保障の柱とするなどはありえない議論だ。
こうした段階的に措置によって、反財務省派の、消費税の低減・廃止により経済が発展するという理論が実証されるだろう。その方向性に日本が動く姿勢をみせれば、消費税を非関税障壁とみなすトランプも納得するだろう。現金給付も、低所得者向けに絞れば、効率的に需要を押し上げる。日銀の金融緩和はゼロ金利を維持しつつ、国債発行で財政拡大を支えるべきだ。
財務省派の『財政規律』は、まるで経済を縛る鎖だ。マクロ経済の視点では、ケチな締め付けはデフレを長引かせるだけだ。日本の公的債務は確かに大きいが、資産を加味すればカナダ並みに低い。EU流の統合政府で見れば、2019年頃にはすでに財政は黒字だ。低金利の今、債務の重さは大したことない。債務のGDP比を騒ぐ声もあるが、経済を大きくすれば自然と小さくなる。2020年の給付金は、国民の買い物を増やし、経済を支えた実績がある。今必要なのは、国民の生活を支え、経済に火をつける政策だ。消費税減税と給付金を組み合わせ、自動車産業への補助金も加えれば、トランプ関税の打撃を和らげ、成長のエンジンを回せる。財務省派も反財務省派も、国民の未来を見据え、硬直した論理を捨てて大胆な一歩を踏み出すべきだ。それが、日本を再び輝かせる唯一の道だ。
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