2025年4月18日金曜日

欧州中央銀行 0.25%利下げ決定 6会合連続 経済下支えねらいも―【私の論評】日銀主流派の利上げによる正常化発言は異端! 日銀の金融政策が日本を再びデフレの闇へ導く危険

欧州中央銀行 0.25%利下げ決定 6会合連続 経済下支えねらいも

まとめ
  • 利下げとインフレ: ECBは6会合連続で0.25%利下げ、政策金利を2.25%に。インフレ率は2.2%上昇で低下傾向。
  • 経済と貿易摩擦: トランプ関税による貿易摩擦で景気減速懸念。ECBは経済下支え狙い、成長への影響を警告。
ユーロのモニュメントが立つ、欧州中央銀行

欧州中央銀行(ECB)は17日、金融政策を決定する理事会で、6会合連続となる0.25%の利下げを実施し、政策金利のうち金融機関から資金を預かる際の金利を2.25%に引き下げた。ユーロ圏の消費者物価指数は先月、前年同月比2.2%上昇と2カ月連続で伸びが鈍化し、ECBは「インフレ率の低下は順調に進んでいる」と評価。

一方で、トランプ政権の関税措置による貿易摩擦の激化が景気減速を引き起こす懸念が高まっており、経済成長見通しは悪化している。今回の利下げは、こうした状況下でユーロ圏の経済を下支えする狙いがあるとみられる。ラガルド総裁は記者会見で、「世界的な貿易摩擦と不確実性が輸出を抑制し、ユーロ圏の成長率を低下させ、投資や消費の足かせとなる可能性がある」と述べ、関税と報復関税による影響に強い懸念を示した。

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【私の論評】日銀主流派の利上げによる正常化発言は異端! 日銀の金融政策が日本を再びデフレの闇へ導く危険

まとめ
  • 中川順子氏の2025年4月17日発言「利上げを進める」は、日銀主流派のいわゆる正常化志向を反映。日本国内でも世界標準主流派は、2%物価目標未達成(CPI1.5~2%)と米関税リスクを軽視する誤りと批判。早期利上げはデフレを再燃させる。
  • 世界標準主流派的には、高圧経済を重視。2%超のインフレでも緩和継続、4%くらいまでは上昇を許容。フィリップス曲線に基づき、失業率2.5%でも物価低迷なら引き締め回避、賃金・物価好循環を優先すべき。
  • 中川氏の発言は期待インフレ率を下げ、2013年黒田緩和の成功に逆行。民間出身で経済学背景なし、2021年就任時から専門性に疑問。正常化志向の田村直樹氏と同様の懸念。
  • ECBは2025年4月17日、利下げ(金利2.25%)でインフレ鈍化(CPI2.2%)と関税リスクに対応。日本も緩和が必要だが、中川氏の発言は経済を不安定化。
  • 財務省の緊縮は異端と批判されるようになったが、日銀の金融政策の異端性や雇用政策との一体性の認識は低い。この理解が広がらなければ、金融政策の誤りで「失われた30年」が再来する可能性を否定できない。

日銀審議委員中川順子氏は2025年4月17日発言「経済・物価見通しが実現すれば利上げを進める方針に変更はない」と発言しているが、これは、世界標準主流派(グローバルな標準的マクロ経済学に基づく)の視点からは明らかな間違いである。2%物価目標の未達成(2025年CPIは1.5~2%)と米関税の不透明感を軽視しているという点で、誤りである。この発言は、日銀政策委員会の日銀主流派の意見を反映し、2024年3月のマイナス金利解除や7月の国債購入縮小に賛成する審議委員(例:田村直樹氏、高田創氏)の金融正常化志向と一致する。

世界標準主流派、つまりグローバルなマクロ経済学の常識から見れば、中川順子氏の上の発言は、完全に的外れだ。日本の消費者物価指数(CPI)は2025年時点で1.5~2%と、2%目標に届かず、米国の関税政策による不透明感が経済を脅かす中、こんな発言は無責任としか言いようがない。

この発言は、日銀政策委員会の日銀主流派、つまり金融正常化を急ぐ一派の考えをそのまま映し出している。2024年3月のマイナス金利解除や7月の国債購入縮小に賛成する田村直樹氏や高田創氏らと足並みを揃えたものだ。しかし、世界標準主流派は声を大にして言う。2%目標が安定して達成されるまで、金融緩和を続けるべきだ。早期の利上げは、デフレの悪夢を呼び戻すだけだ。

さらに、世界標準主流派は高圧経済の必要性を訴える。労働市場や生産能力をフルに使い切る状態を作り出し、物価が2%を超えてもしばらくは緩和を続けるべきだ。一時的に4%程度のインフレになっても、それは経済を強くするためのものだ。なぜなら、30年にわたるデフレで日本人のインフレ期待は地に落ちており、これを立て直すには大胆な一手が欠かせない。

)。日本ではデフレのせいでこの曲線が平べったくなり、失業率が2.5%と低くても物価は上がらない。

世界標準主流派は言う。労働市場をさらに締め上げ、賃金を押し上げ、インフレ期待を根付かせるべきだ。インフレが2%を超えても失業率が上がらなければ、緩和を続けてじっくり見守るべきだ。逆に、失業率が2.5%でも物価が低迷しているなら、引き締めなど論外だ。経済は一度冷やすと、再び温めるのは途方もない努力が必要になる。


驚くべきことに、フィリップス曲線のような基本すら理解しない人が、中央銀行の議論の場にいる。これは世界中どこでも通用する鉄則を無視する行為だ。中川氏の発言は、世界標準主流派の理論をまるで理解していない証拠であり、国際舞台では笑いものだ。

日銀の2024年10月展望レポートは、2025年度の物価見通しを2%前後と予測するが、安定達成は不確実だ。歴史を振り返れば、1997年の消費税増税と金融引き締めがデフレを悪化させた。2024年3月のマイナス金利解除後も、円安(1ドル=150円超)にもかかわらず物価上昇は鈍い。これらは、利上げがどれほど危険かを物語る。

中川氏の発言は、期待インフレ率を下げる毒だ。世界標準主流派は、ポール・クルーグマン等の理論を掲げ、政策はインフレ期待を高めることで力を発揮すると強調する。2013年、黒田東彦総裁の量的・質的金融緩和(QQE)は「レジームチェンジ」を宣言し、期待を動かして失業率低下と企業収益改善を実現した。だが、中川氏の利上げ前提の発言は、緩和継続の約束を曇らせ、期待を冷やす。世界標準主流派の野口旭氏は、2024年の正常化を「時期尚早」と切り捨てた。

中川氏の経歴も問題を深刻にする。野村アセットマネジメント社長という民間出身で、経済学の学術的背景はない。2021年の審議委員就任時、朝日新聞ですら彼女の専門性に疑問を呈した。同じく民間出身の田村直樹氏(2022年就任)は金融正常化を推し進め、世界標準主流派からデフレ脱却の足かせと批判された。中川氏も同じ道を歩む危険がある。

対照的なのが欧州中央銀行(ECB)の動きだ。2025年4月17日、ECBは6会合連続で0.25%の利下げを決め、政策金利を2.25%に設定した。ユーロ圏のインフレは2.2%に鈍化し、トランプ関税による景気減速が懸念される中、ラガルド総裁は貿易摩擦が成長を抑えると警告し、経済の支えを優先した。日本も物価目標未達成と外部ショックに直面している。利上げなど論外で、緩和継続こそが正しい道だ。

中川氏の発言が日銀主流派に沿った慎重なものだとしても、3年の審議委員経験(2021年6月~2025年4月)で知識を補ったとしても、世界標準主流派の目には通用しない。消費税増税やコロナ禍の傷を考えれば、2%達成直後の引き締めは高圧経済を潰し、フィリップス曲線が示す賃金・物価の好循環を壊す。ECBの緩和姿勢と比べ、中川氏の発言はデフレ脱却を遠ざけ、経済を不安定にする誤った信号だ。世界標準主流派を無視する姿勢は、国際的な議論で評価されるはずがない。


日本では、財務省の緊縮財政が、世界標準主流派から異端とされつつあり、批判が広がっている。私自身は、この認識の広まりにより、石破政権後には、日本の財政政策は世界標準主流派に近づいていくであろうことを期待している。

だが、日銀の金融政策が同じく異端であるとの認識はまだ薄い。中央銀行の金融政策は雇用政策と一体であり、雇用の失敗は金融政策の失敗、つまり日銀の失敗だ。世界標準主流派は、雇用の最大化と物価安定を金融政策の双子の目標と見なす。この認識が浸透しなければ、たとえ財政政策が今後正しい方向に変わっても、日銀主流派の金融政策の誤りが「失われた30年」を再び招く危険は消えない。日本の未来は、この認識にかかっている。

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