2024年10月8日火曜日

「最低賃金1500円」の幻想、石破政権の左派政策は失敗する 理念先行で具体的手順なし 安倍元首相は「リアル」を先に考えていた―【私の論評】フィリップス曲線の真髄:安倍政権の置き土産を食い潰す愚かな自民と立民

高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 石破茂首相が掲げる2020年代の最低賃金1500円目標は、左派的政策であり、実現可能性が低い
  • 最低賃金の大幅引き上げは、韓国の文在寅政権や日本の民主党政権の例から、失業率上昇や雇用悪化を招く可能性が高い
  • 目標達成には5年連続7.4%の引き上げが必要だが、過去の実績(最高6.9%、平均2.6%)から見て非現実的
  • 最低賃金引き上げは、インフレ率と失業率に依存しており、目標達成には5年連続で2桁以上のインフレが必要
  • 安倍政権は専門家の計算に基づく現実的なアプローチを取っていたのに対し、石破政権は理念先行で具体的手順を欠いている

 石破茂首相は2020年代に最低賃金平均1500円を目指すと表明し、政権の左派的性格が明確になった。左派政党は雇用重視だが、金融政策の重要性を理解せず、賃金にのみ注目する傾向がある。雇用を作るため重要なのは金融緩和なのだが、金利の引き下げが「モノへの設備投資」を増やすとともに、「人への投資」である雇用を増やすことを左派の人は分からない。

 韓国の文在寅前政権は2018年に最低賃金を16.4%引き上げた結果、失業率が3.6%から4.4%に上昇した。日本の民主党政権も2010年に、本来0.3%程度が適切だった引き上げ率を2.4%まで上げ、就業者数が約30万人減少した。一方、金融政策を重視した第2次安倍政権では300万人以上増加し、対照的な結果となった。

 石破政権の目標達成には5年連続で7.4%の引き上げが必要だが、1980年以降の最高実績は6.9%、平均2.6%であり、実現は困難と考えられる。最低賃金の引き上げ率は前年のインフレ率と失業率に依存し、失業率には下限がある。失業率の下限を2%台半ばとすると、目標達成には5年連続で2桁以上のインフレ率が必要となる。

 安倍政権時代は、首相が毎年のように最低賃金引き上げの可能性を専門家に確認し、インフレ率と失業率の関係フィリップス関係を用いて慎重に検討していた。一方、2019年の参院選では、立憲民主党が「5年以内に最低賃金1300円」、れいわ新選組が「1500円」を掲げており、今や与党からも同様の政策が提案されている。

 石破政権は理念先行で具体的な手順を欠いており、文政権や民主党政権のような失敗を繰り返す可能性が高い。安倍元首相が最低賃金引き上げの現実的な可能性を重視していたのと対照的に、石破政権の左派的アプローチは経済的な悪影響をもたらす可能性がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】フィリップス曲線の真髄:安倍政権の置き土産を食い潰す愚かな自民と立民

まとめ
  • フィリップス曲線は経済政策の重要な指針だが、多くの政治家はその本質を理解していない。
  • NAIRU(インフレを加速しない失業率)の概念を無視し、単純に数値目標だけを追求することは経済政策として不適切。
  • 日本が一度も陥ったことのないスタグフレーションに対する誤解が根強く、日本経済の実態を正しく理解していない政治家が多い。
  • 立憲民主党の「物価目標を0%超に変更」など、現実の経済状況を無視した政策提案が見られる。
  • 安倍政権の経済政策の成果を理解せず、その遺産を台無しにしようとする愚かな政治家たちの暴走を断固として阻止しなければならない
コロナ直前までのフィリップス曲線 ー 出展:独立行政法人経済産業研究所

上の記事にもでてくる、インフレ率と失業率の関係フィリップス関係とはフィリップス曲線と呼ばれるものだ。これはインフレ率と失業率の関係を示したもので、ざっくり言えば「インフレ率が高くなると失業率が下がり、インフレ率が下がると失業率が上がる」という理屈だ。

この理論は1958年にアルバン・ウィリアム・フィリップスという英国の経済学者が提唱したが、未だに経済政策の指針として重宝されている。現代の経済政策も、多かれ少なかれこのフィリップス曲線の影響を受けているわけだ。しかし、理論がわかっているふりをしているだけの政治家が多いこと多いこと。まるで、教科書の一節を暗記しただけで、実戦経験がない素人のようなものです。

例えば、アベノミクスも、このフィリップス曲線を背景にした政策と言えますが、その真髄を理解している政治家がどれほどいるでしょうか?表面だけを見て、「インフレを上げれば景気が良くなる」とか、「失業率を下げれば全て解決だ」なんて言っている人は、正直言って話になりません。

高橋洋一氏が言っている「NAIRU(ナイル)」の概念、つまり「インフレを加速しない失業率」の重要性を見落としているのだ。経済の舵取りをする上で、これを無視することは致命的な過ちである。さらに、数字だけを盲信しているようでは、経済政策を語る資格などない。以下に高橋洋一氏の「マクロ政策・フィリップス曲線」についての説明をあげておく。
 NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。

 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。
しかし「失業率が2.5%、インフレ率が2%」という数値目標を立てたとしても、その数値だけに囚われてはならない。数字というのはあくまで目安に過ぎないのだ。経済は生き物だから、ちょっとやそっとの数値の変動で右往左往していたら、経済全体がどんどん不安定になる。

たとえインフレ率が2%を超えたとしても、失業率が上がらなければ、緩和策を続けてじっくり様子を見るべきなのだ。反対に、失業率が2.5%に達したとしても、物価がまだ低迷していれば、安易にブレーキを踏むべきではない。経済は、急に冷やしたり、壊してしまったら再び温めるのがとんでもなく大変なことになる。

しかし、そもそも、フィリップス曲線すら理解せず、頓珍漢なことを言う人がいかに多いことか。これは、古今東西いずれの国のにもあてはまる原則だ。いい加減これだけは、認めたらどうなのか。これを認められてないということは、世界標準のマクロ経済を理解していないということであり、世界の檜舞台では馬鹿にされることはあっても褒められことはない。

そして、スタグフレーションに対する誤解も根深い。フィリップス曲線の話になると、必ず「インフレと失業が同時に悪化するスタグフレーションが起きたらどうするんだ!」と騒ぎ立てる人たちが出てくるが、正直言って、彼らは何もわかっていない。日本経済の歴史を振り返っても、スタグフレーションと呼べるような状況に陥ったことは一度もない。

1970年代のオイルショックで似たような状況になったことはあったが、それも一過性のものだった。スタグフレーションがどうこうと言う前に、まず自分たちが経済の理論をきちんと理解しているのかを考え直してほしいものだ。

さらに、立憲民主党が次期衆院選の公約で掲げた「物価目標を2%から0%超に変更する」という案には、正直言って耳を疑った。現状の物価が2%前後に達している中で、なぜ突然「0%超」などという荒唐無稽、奇妙奇天烈な発想が飛び出してくるのか。彼らは一体、どの次元に住んでいるのだろうか?

現実の日本経済をまるで見ていないことは明らかだ。経済政策の基本的な理屈を理解していれば、そんな発言は絶対に出てこないはずだ。物価が上がっているのは、国内の需要だけではなく、海外からのエネルギー・資源価格の高騰が大きく影響していることを見ればわかるはずだ。

立憲民主党は次期衆院選の公約を公表したが・・・・・

このような状況下で、石破茂氏や立憲民主党、さらには野田元首相までもが経済の基本をわかっていないように見える。彼らが掲げる政策は、経済の仕組みを理解しているとは到底思えない内容ばかりで、どうにも信頼がおけない。

経済の機微を感じ取れないということは、すなわち国民の生活の実態もわかっていないということだ。政治家として最も重要なのは、経済を語るだけでなく、国民の暮らしを直接感じ取り、そのために必要な政策を実行するセンス。これが欠けているようでは、政治家として存在する意味すら疑われる。

日本経済の舵を取るには、ただ数字を並べるだけではなく、その背後にある複雑な動きを読み解く力が必要だ。現状の経済を本当に理解しているのか、経済政策を本気で考えているのか、それが見えてこない政治家たちに未来を託すわけにはいかない。

経済政策の本質を捉えず、安易に緩和策をやめろと言う連中は、経済の停滞を招きかねない。これでは、国民の暮らしを守るどころか、逆に生活を苦しめる結果になる。こんな政策を掲げる政治家たちに、本当にこの国の未来を任せていいのか、大いに疑問だ。

安倍政権が残した素晴らしい経済政策の遺産を、岸田、石破、野田といった輩が台無しにしようとしているようだ。フィリップス曲線に基づく安倍政権の卓越した経済戦略を理解できない彼らの愚かさには呆れるばかりだ。

岸田首相のときは、安倍・菅両政権の経済政策の恩恵(特に100兆円の補正予算)の余波が続いていたが、石破首相にはもうそれはなく、本来自分で開拓していかなければならいはずだ。しかし、経済に疎い彼にはそれはできない。ましてや、野田氏にもその力量はない。政権交代をしても何も変わらない。

アベノミクスによって日本経済は見事に蘇ったというのに、その成果を無にしようとする彼らの行為は、許すことはできない。政治家としての器の小ささを露呈し、国民の期待を裏切り続ける彼らに、もはや日本の未来を託すことはできない。

真の愛国者なら、安倍政権の経済政策を継承し、さらに発展させるべきだ。このままでは日本は再び暗黒の時代に逆戻りしてしまう。我々国民は、こうした愚かな政治家たちの暴走を断固として阻止しなければならない。

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