まとめ
- 武藤容治経済産業相は、ラピダスに対する追加の財政支援について経済対策の中で検討する方針を表明し、必要な支援法案の早期提出を強調。
- ラピダスは現在工場建設が順調に進んでおり、IBMと連携して技術開発を進め、2025年4月の試作用ライン稼働を目指している。
武藤氏はラピダスの工場を視察し、政府としても必要な支援を行うための法案を早期に提出したいと述べた。ラピダスの小池社長は、現在建設中の工場の進捗と、将来的に1.4ナノメートルの半導体製造を計画していることを説明した。ラピダスはIBMと連携し、2025年4月の試作用ラインの稼働を目指している。
【私の論評】安倍ビジョンが実を結ぶ!ラピダスとテンストレントの協業で切り拓く日本の次世代AI半導体と超省電力化
まとめ
- ラピダスは日本の大手企業8社と政府から巨額の支援を受け、先端半導体の量産を目指している。
- 顧客確保の課題に対処するため、AI半導体のカナダ企業テンストレントと提携を発表。
- 提携の焦点は省電力AI半導体の開発で、世界的な電力消費増加への対応が期待されている。
- 米中対立の中、日本の技術力に注目が集まり、地政学的要因も背景にある。
- 安倍元首相の国家戦略の影響が、この提携を支えている。
さらに、上の記事にあるように、ラピダスとIBMは先端半導体の開発と製造で提携し、具体的には、半導体の製造工程のうち、特に半導体基板をパッケージに収める「後工程」の技術が対象となっており、ラピダスの技術者はIBMの米国拠点で研修を受ける。この提携は日本の半導体産業の競争力を高めるための重要なステップであり、特に2nm世代の半導体量産技術の開発においてIBMのノウハウが大きく貢献することになる。
だが、この野望には一つの難題があった。顧客の確保――すなわち市場の支持をいかに勝ち取るかという課題だ。
そんな難局を打開するため、ラピダスは驚きのカードを切った。2023年2月27日、AI半導体で業界を席巻するカナダのスタートアップ「テンストレント」との協業を発表したのだ。テンストレントのCEO、ジム・ケラー氏――その名を聞けば、技術者なら誰もが首を縦に振る天才エンジニアである。アップルやテスラといった名だたる企業で輝かしい実績を残し、いまやAI向け半導体の最前線に立つ彼が、ラピダスのパートナーとなる。
ラピダスの小池淳義社長は、この提携に強い意欲を見せる。「日本が得意とする産業ロボットやヘルスケア分野で、世界標準を作り上げていく。それが我々の目標だ」。彼の目には、日本の強みを世界に広げる覚悟がにじみ出ている。AI技術は莫大な電力を消費する。小池社長は、これをどう抑えるかが今後の鍵になると語り、「省電力な半導体の開発は必須だ」と強調した。
ラピダスへの支援は、単なる国内の産業政策を超えた国家的そうして国際的プロジェクトだ。IBM、テンストレントとの協業は、日本が世界市場で再び競争力を持つための重要な布石となり、技術的な自立と国際的な影響力の向上に寄与するだろう。この提携が生み出す技術革新は、日本の未来を変える可能性を秘めている。そして、その成果は、経済的利益だけでなく、国の安全保障にも直結する。これこそ、安倍元首相の「自主・自立」が形となった瞬間だ。
結局のところ、ラピダスとIBM、テンストレントの提携は、米中対立の中で生まれた新しい半導体の時代を切り開くものであり、日本の技術力が再び世界を驚かせる未来が、すぐそこに迫っているのだ。
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そんな難局を打開するため、ラピダスは驚きのカードを切った。2023年2月27日、AI半導体で業界を席巻するカナダのスタートアップ「テンストレント」との協業を発表したのだ。テンストレントのCEO、ジム・ケラー氏――その名を聞けば、技術者なら誰もが首を縦に振る天才エンジニアである。アップルやテスラといった名だたる企業で輝かしい実績を残し、いまやAI向け半導体の最前線に立つ彼が、ラピダスのパートナーとなる。
ラピダスの小池淳義社長は、この提携に強い意欲を見せる。「日本が得意とする産業ロボットやヘルスケア分野で、世界標準を作り上げていく。それが我々の目標だ」。彼の目には、日本の強みを世界に広げる覚悟がにじみ出ている。AI技術は莫大な電力を消費する。小池社長は、これをどう抑えるかが今後の鍵になると語り、「省電力な半導体の開発は必須だ」と強調した。
これについては、昨日のこのブログ記事でも述べたように、生成AIの普及により、データセンターの電力消費が急増。AIサーバーは従来よりも6〜10倍の電力を消費する。米国ビッグテック企業のグーグル、マイクロソフト、アマゾンが、安定的な電力供給を目的に原子力への投資を進めており、特に小型モジュール式原子炉(SMR)の導入や、原発再稼働が注目されていることを示した。
2009年には「1回のGoogle検索で二酸化炭素7グラム排出」という論文が発表され電力消費が破滅的に伸びることが予想されたが、この危機は半導体産業による半導体の省電力化(特に微細化)技術により、そのようなことは結局起こらなかった。
今後AIの普及により、現在のままであれば、電力消費量はやはり破滅的に増えることになるが、それを回避する超省電力半導体の設計と製造をラピダスとテンストレントの提携で実現しようとするのが、ラピダスの小池淳義社長の目指すところなのだ。
小池淳義とジム・ケラー氏 |
ジム・ケラー氏もまた、提携を心待ちにしていた。「日本で強力なビジネスを進める機会を得たことに感謝している」と、彼は語る。だが、彼の言葉の裏には、単なるビジネスパートナーシップ以上のものがある。ケラー氏は、半導体業界でその名を轟かせた真の天才だ。彼のキャリアは革新そのものである。デジタルエキップメント社(DEC)でAlphaチップの開発を担い、AMDではAthlonの開発を指揮。そして、何よりも特筆すべきは、x86-64命令セットの共同設計者として名を馳せたことだ。
彼の手腕は、アップルでのプロセッサ設計にも現れた。iPhoneやiPadの設計に携わり、アップルの躍進を支えた立役者の一人となった。その後、再びAMDに戻り、Zenアーキテクチャーの開発で同社の復活に貢献。テスラでは、自動運転向けの半導体開発にも携わり、名実ともに業界の巨人となった。
今や、ケラー氏はテンストレントのCEOとしてAI向け半導体の最前線に立ち、さらにラピダスと協力して2nm世代の技術を用いたエッジAI向け半導体の開発に乗り出す。この提携は、単なる技術協力では終わらない。これは、新しい半導体エコシステムの構築という大きなビジョンの一端なのだ。ケラー氏のリーダーシップと革新性が、この提携を成功へと導くだろう。
この背景には、米中対立という地政学的な要素も絡んでいる。中国が先端半導体開発で困難に直面する中、世界は再び日本の技術力に注目している。IBMやジム・ケラー氏の参加は、米国、カナダと日本の連携を強化し、新たな半導体サプライチェーンの構築を加速させる象徴的な一歩だ。
この動きの起源には、日本の国家戦略がある。安倍晋三元首相が掲げた「自主・自立」の理念が、今日ラピダスがIBMやテンストレントとの提携を可能にしたのだ。安倍政権下で半導体製造を国家戦略に位置づけ、日本の技術力を強化し、経済安全保障を確立しようとする政策が生まれた。経済産業大臣として萩生田光一氏や西村康稔氏も、この戦略を推進。人材育成や産業振興に取り組み、半導体産業の復活に力を注いだ。
彼の手腕は、アップルでのプロセッサ設計にも現れた。iPhoneやiPadの設計に携わり、アップルの躍進を支えた立役者の一人となった。その後、再びAMDに戻り、Zenアーキテクチャーの開発で同社の復活に貢献。テスラでは、自動運転向けの半導体開発にも携わり、名実ともに業界の巨人となった。
今や、ケラー氏はテンストレントのCEOとしてAI向け半導体の最前線に立ち、さらにラピダスと協力して2nm世代の技術を用いたエッジAI向け半導体の開発に乗り出す。この提携は、単なる技術協力では終わらない。これは、新しい半導体エコシステムの構築という大きなビジョンの一端なのだ。ケラー氏のリーダーシップと革新性が、この提携を成功へと導くだろう。
この背景には、米中対立という地政学的な要素も絡んでいる。中国が先端半導体開発で困難に直面する中、世界は再び日本の技術力に注目している。IBMやジム・ケラー氏の参加は、米国、カナダと日本の連携を強化し、新たな半導体サプライチェーンの構築を加速させる象徴的な一歩だ。
この動きの起源には、日本の国家戦略がある。安倍晋三元首相が掲げた「自主・自立」の理念が、今日ラピダスがIBMやテンストレントとの提携を可能にしたのだ。安倍政権下で半導体製造を国家戦略に位置づけ、日本の技術力を強化し、経済安全保障を確立しようとする政策が生まれた。経済産業大臣として萩生田光一氏や西村康稔氏も、この戦略を推進。人材育成や産業振興に取り組み、半導体産業の復活に力を注いだ。
北海道を訪れた旨を伝える安倍首相(当時)の安倍首相のツイート |
ラピダスへの支援は、単なる国内の産業政策を超えた国家的そうして国際的プロジェクトだ。IBM、テンストレントとの協業は、日本が世界市場で再び競争力を持つための重要な布石となり、技術的な自立と国際的な影響力の向上に寄与するだろう。この提携が生み出す技術革新は、日本の未来を変える可能性を秘めている。そして、その成果は、経済的利益だけでなく、国の安全保障にも直結する。これこそ、安倍元首相の「自主・自立」が形となった瞬間だ。
結局のところ、ラピダスとIBM、テンストレントの提携は、米中対立の中で生まれた新しい半導体の時代を切り開くものであり、日本の技術力が再び世界を驚かせる未来が、すぐそこに迫っているのだ。
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