- 石破茂新総裁が衆参両院の本会議で102代首相に指名され、石破内閣が発足。閣僚は石破氏に近い議員が重用され、旧安倍派からは誰も入閣しなかった。
- 閣僚人事に対する批判:石破氏の人事は他の派閥に譲る姿勢が欠けており、自民党内での不評や反発が強いことが報じられた。
- 政治評論家の見解:田崎氏が旧安倍派を干しているとの見解を示し、これが安倍元首相への恨みを象徴しているとの発言があった。
総務相に起用された村上誠一郎氏は、安倍晋三元首相の国葬を「国賊」と表現したことで党役職停止処分を受けており、この人事に対して高市早苗氏の陣営からは批判が噴出しているという。田崎史郎氏は、石破氏が旧安倍派を冷遇する人事を行ったことに党内でも不満があり、「恨みがあったのでは」とも分析している。
【私の論評】安倍首相、石破首相との比較から見る長期政権を支えた唯一の資質とは
- 安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」は、日本経済の復活を目指して大胆に推進され、デフレ脱却と成長を目標に真摯に取り組んだ。
- 外交政策においても、東南アジア諸国やアメリカのトランプ大統領との強固な信頼関係を築くなど、国際社会で日本の地位向上に真摯に取り組んだ。
- 安全保障の改革では、国家安全保障会議(NSC)の設立や安保法制の改正を通じ、日本の安全と抑止力強化に真摯に対応した。
- 安倍氏の政策立案や実行力、真摯な態度が石破氏の政策の具体性不足と対照的だった。
- 真摯さは、リーダーの資質として唯一認められるものであり、安倍氏の政策立案や実行力は真摯さに裏打ちされていたことは論を待たない。
安倍氏は経済政策を最優先課題とし、アベノミクスと呼ばれる大胆な金融緩和政策を実施しました。その結果、デフレ脱却に向けて大きな前進を遂げ、GDP600兆円という野心的な目標を掲げるまでに至りました。また、外交面でも積極的な姿勢を見せ、就任直後から東南アジア諸国を訪問し、各国首脳との個人的信頼関係を深めました。これは、祖父である岸信介元首相の外交手法を踏襲したものであり、安倍氏の政治的洞察力の深さを示しています。
さらに、安全保障面では日本版NSCの設置を実現し、外交・安全保障政策の一元化と迅速な意思決定を可能にしました。これは第一次安倍内閣時からの懸案事項であり、安倍氏の粘り強さと政策実現能力を示す好例です。
一方、石破茂氏の政策立案能力や専門知識は、安倍氏と比較すると不足していると言わざるを得ません。例えば、2015年の安全保障関連法案の審議において、石破氏は「存立危機事態」の定義について明確な説明ができず、国会で混乱を招きました。また、経済政策においても、石破氏のアベノミクス批判は具体性に欠け、代替案の提示も不十分でした。
2018年の自民党総裁選では、石破氏は「地方創生」を掲げましたが、その具体的な施策や財源について明確な説明ができませんでした。これは、安倍氏が掲げた「GDP600兆円」や「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」といった具体的な数値目標と対照的です。
また、憲法改正に関しても、安倍氏が自衛隊明記を含む改正案を積極的に推進したのに対し、石破氏は慎重な姿勢を示しました。しかし、石破氏の憲法解釈に関する発言は時に矛盾を含み、専門家からの批判を受けることもありました。
安倍氏の長期政権を支えた要因の一つに、人事面での手腕があります。第二次安倍内閣では、麻生副総理と菅官房長官、二階自民党幹事長などを礎石に据え、安定した政権運営を実現しました。これは、第一次政権での経験から学んだ結果であり、安倍氏の政治的成長を示しています。
さらに、安倍氏は国際舞台でも存在感を示し、特にトランプ大統領との個人的な関係構築に成功しました。ゴルフを通じて率直に意見交換できる関係を築いたことは、安倍氏の外交手腕の高さを示しています。
これらの事実は、安倍氏の政治家としての能力と経験が、石破氏を大きく上回っていることを明確に示しています。安倍氏が築いた長期政権は、その政策立案能力、実行力、そして外交手腕の賜物であり、石破氏との能力差は明らかです。この差は、最終的に石破氏の政治的立場を弱め、党内での影響力低下につながったと考えられます。
高橋洋一氏は、安倍晋三元首相を特異な政治家だったと評価しており、以下のようなエビデンスを挙げています。
金融政策への関心について、高橋氏は、安倍氏が官房副長官時代から金融政策について質問してきた初めての政治家だったと述べています。当時、ほとんどの政治家が金融政策を役所に任せきりにしていた中で、安倍氏は「ゼロ金利解除はいいのか」と高橋氏に質問しました。これは、安倍氏の経済政策への深い関心を示しています。
専門外の分野への理解に関しては、安倍氏は元々厚労族でしたが、金融政策という全く異なる分野に関心を持ち、理解を深めようとしていました。高橋氏は、これを「例外的な政治家」の特徴として挙げています。
経済財政諮問会議への参加については、安倍氏は官房副長官時代に、経済財政諮問会議にオブザーバーとして参加し、金融政策の議論に関心を持っていました。これは、安倍氏が幅広い政策分野に精通しようとしていたことを示しています。
専門家の意見への関心として、高橋氏は、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンからのメール(ゼロ金利解除は失敗だったという内容)を安倍氏に見せたことがあると述べています。これは、安倍氏が専門家の意見を重視し、政策立案に活かそうとしていたことを示唆しています。
これらのエビデンスから、高橋氏は安倍氏を、通常の政治家とは異なる幅広い関心と理解力を持ち、専門家の意見を積極的に取り入れようとする特異な政治家として評価していたことがわかります。
さらに、安倍氏の特異性は、政策立案への関与の仕方にも表れていました。高橋氏によれば、他の総理大臣、例えば小泉純一郎氏などは、政策案を提示されると「よしわかった。任せる」と言って、詳細には立ち入らないことが多かったそうです。しかし、安倍氏は例外的な存在でした。安倍氏は政策案を提示されても、その内容について詳細に質問し、理解しようとする姿勢を見せました。時には、政策の細部にまで踏み込んで議論を行うこともあったといいます。
安倍氏の長期政権を支えた要因の一つに、人事面での手腕があります。第二次安倍内閣では、麻生副総理と菅官房長官、二階自民党幹事長などを礎石に据え、安定した政権運営を実現しました。これは、第一次政権での経験から学んだ結果であり、安倍氏の政治的成長を示しています。
さらに、安倍氏は国際舞台でも存在感を示し、特にトランプ大統領との個人的な関係構築に成功しました。ゴルフを通じて率直に意見交換できる関係を築いたことは、安倍氏の外交手腕の高さを示しています。
これらの事実は、安倍氏の政治家としての能力と経験が、石破氏を大きく上回っていることを明確に示しています。安倍氏が築いた長期政権は、その政策立案能力、実行力、そして外交手腕の賜物であり、石破氏との能力差は明らかです。この差は、最終的に石破氏の政治的立場を弱め、党内での影響力低下につながったと考えられます。
以上から考えると、旧安倍派の冷遇は、会社の人事であれば報復人事とも受け取られないかねない人事です。たた、この人事の元となったのは、やはり石破氏やその取り巻きが安倍晋三氏を理解できないというところがあるのかもしれません。
そもそも、安倍晋三氏は特異な政治家でした。その特異さ故、これを総理大臣はもとより政治家のスタンダートとすることには無理があると考えられます。無論これは、安倍晋三氏を否定するものではないので、最後まで私のつたない文章を読んで頂きたいです。
高橋洋一氏は、安倍晋三元首相を特異な政治家だったと評価しており、以下のようなエビデンスを挙げています。
金融政策への関心について、高橋氏は、安倍氏が官房副長官時代から金融政策について質問してきた初めての政治家だったと述べています。当時、ほとんどの政治家が金融政策を役所に任せきりにしていた中で、安倍氏は「ゼロ金利解除はいいのか」と高橋氏に質問しました。これは、安倍氏の経済政策への深い関心を示しています。
専門外の分野への理解に関しては、安倍氏は元々厚労族でしたが、金融政策という全く異なる分野に関心を持ち、理解を深めようとしていました。高橋氏は、これを「例外的な政治家」の特徴として挙げています。
経済財政諮問会議への参加については、安倍氏は官房副長官時代に、経済財政諮問会議にオブザーバーとして参加し、金融政策の議論に関心を持っていました。これは、安倍氏が幅広い政策分野に精通しようとしていたことを示しています。
専門家の意見への関心として、高橋氏は、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンからのメール(ゼロ金利解除は失敗だったという内容)を安倍氏に見せたことがあると述べています。これは、安倍氏が専門家の意見を重視し、政策立案に活かそうとしていたことを示唆しています。
これらのエビデンスから、高橋氏は安倍氏を、通常の政治家とは異なる幅広い関心と理解力を持ち、専門家の意見を積極的に取り入れようとする特異な政治家として評価していたことがわかります。
さらに、安倍氏の特異性は、政策立案への関与の仕方にも表れていました。高橋氏によれば、他の総理大臣、例えば小泉純一郎氏などは、政策案を提示されると「よしわかった。任せる」と言って、詳細には立ち入らないことが多かったそうです。しかし、安倍氏は例外的な存在でした。安倍氏は政策案を提示されても、その内容について詳細に質問し、理解しようとする姿勢を見せました。時には、政策の細部にまで踏み込んで議論を行うこともあったといいます。
衆院を解散し記者会見する小泉首相(2005年8月) |
このような安倍氏の姿勢は、単に政策を承認するだけでなく、その背景や影響を深く理解しようとする姿勢の表れでした。これは、安倍氏が政策立案プロセスに積極的に関与し、自身の考えを反映させようとしていたことを示しています。
安倍氏のこうした特異性は、彼が長期政権を築き上げ、アベノミクスなどの大規模な経済政策を実行に移すことができた要因の一つだと考えられます。政策への深い理解と積極的な関与が、安倍氏の政治手腕を支える重要な要素となっていたのです。
これらの特徴は、安倍氏が単なる政策の承認者ではなく、積極的な政策立案者としての役割を果たしていたことを示しています。このような姿勢は、日本の政治において新しい形のリーダーシップを示すものであり、安倍氏の政治家としての特異性を際立たせる要因となっていたと言えるでしょう。
しかし、すべての日本の総理に安倍氏のような資質を求めるのには、無理があります。私は、菅氏、岸田氏などは安倍氏と直接比較されたため、低く評価された部分があったといえると思います。石破氏もこれから安倍氏に比較され低く評価される可能性があると思います。
ただ、私は安倍氏について特異な政治家であったあったことの他に、優秀な政治家であったことを際立たせるものが他にもあると考えています。それは、真摯さ(integrity)です。
これは、このブログにも過去に何度が述べてきましたが、ドラッカーがリーダーに求める唯一の資質ともいえます。実際ドラッカーは優秀なリーダーの資質は多様であって、特定の資質はないと断言しています。ただ、一つだけ譲れないのが、真摯さ(integrity)であると主張しています。これについて再度以下に掲載します。
日頃言っていることを昇格人事に反映させなければ、優れた組織をつくることはできない。本気なことを示す決定打は、人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。なぜなら、リーダーシップが発揮されるのは、人格においてだからである。(ドラッカー名著集(2)『現代の経営』[上])
ドラッカーによれば、人間のすばらしさは、強みと弱みを含め、多様性(これは現代のリベラル派が主張する多様性とは根本的な異なるもので、人の強み、弱みにもとづく もの)にある。同時に、組織のすばらしさは、その多様な人間一人ひとりの強みをフルに発揮させ、弱みを意味のないものにするところにある。
だからドラッカーは、弱みは気にしません。山あれば谷あり。むしろ、まん丸の人間には魅力を感じないようです。ところが、一つだけ気にせざるをえない弱みというものがあります。それが、真摯さの欠如です。真摯さが欠如した者だけは高い地位につけてはならないという。ドラッカーは、この点に関しては恐ろしく具体的です。
人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならないのです。人のできることはなにも見ず、できないことはすべて知っているという者は組織の文化を損なうことなります。何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者も昇格させてはならないのです。仕事よりも人を問題にすることは堕落であるとしています。
真摯さよりも、頭脳を重視する者を昇進させてはならない。そのような者は未熟なのです。有能な部下を恐れる者を昇進させてもならない。そのような者は弱いのです。
仕事に高い基準を設けない者も昇進させてはなりません。仕事や能力に対する侮りの風潮を招くことになるからです。
判断力が不足していても、害をもたらさないことはあります。しかし、真摯さに欠けていたのでは、いかに知識があり、才能があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させ、業績を低下させるのです。
ドラッカーは真摯さを非常に重要な資質と位置づけており、特にマネジメントやリーダーにとって欠かせない要素としています。彼は真摯さには「仕事上の真摯さ」と「人間としての真摯さ」の二つの側面があり、後天的に習得できるものではないと指摘しています。だからドラッカーは、弱みは気にしません。山あれば谷あり。むしろ、まん丸の人間には魅力を感じないようです。ところが、一つだけ気にせざるをえない弱みというものがあります。それが、真摯さの欠如です。真摯さが欠如した者だけは高い地位につけてはならないという。ドラッカーは、この点に関しては恐ろしく具体的です。
人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならないのです。人のできることはなにも見ず、できないことはすべて知っているという者は組織の文化を損なうことなります。何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者も昇格させてはならないのです。仕事よりも人を問題にすることは堕落であるとしています。
真摯さよりも、頭脳を重視する者を昇進させてはならない。そのような者は未熟なのです。有能な部下を恐れる者を昇進させてもならない。そのような者は弱いのです。
仕事に高い基準を設けない者も昇進させてはなりません。仕事や能力に対する侮りの風潮を招くことになるからです。
判断力が不足していても、害をもたらさないことはあります。しかし、真摯さに欠けていたのでは、いかに知識があり、才能があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させ、業績を低下させるのです。
真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、あとで身につけることはできない。真摯さはごまかしがきかない。一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない。(『現代の経営』[上])
真摯さは、自分の役割について考える能力として表れ、他者との信頼関係を築く基盤となります。ドラッカーは、真摯さを持つ人間かどうかを判断するための質問として、「自分の子供をその人の下で働かせたいと思うか」を挙げており、責任感と信頼に裏打ちされたものであることを強調しています。
ドラッカー氏 |
安倍晋三首相が安全保障法制の改正に取り組んだ姿勢は、彼の政治家としての真摯さを如実に示しています。2015年9月に成立した安保法制は、戦後70年にわたる日本の防衛安全保障政策の大きな転換点となりました。この法制は、集団的自衛権の限定的な行使を可能にし、日本の抑止力を向上させることを目的としていました。
安倍首相は、この法制改正の必要性を、中国の海洋進出や軍事費の増大、北朝鮮の核・ミサイル開発など、東アジアを中心とする安全保障環境の変化に求めていました。しかし、この法制改正は国内で大きな議論を巻き起こし、多くの反対の声が上がりました。国会周辺では連日のようにデモが行われ、「戦争法案」だとする批判も強まりました。
にもかかわらず、安倍首相は自身の信念に基づき、この法制改正を推し進めました。世論調査では「政府の説明は分かりにくい」との声が過半数を超え続け、政権支持率の低下も避けられない状況でした。ただ、これは今から振り返ると、政府の説明が分かりにくいというよりは、政府の説明をメディアがまともに報道しなかったためとみられます。しかし、安倍首相は国民の理解を得るべく、国会での説明を重ね、法案の必要性を訴え続けました。
この姿勢こそが、安倍首相の真摯さの真骨頂と言えるでしょう。政権支持率の低下という政治的リスクを承知の上で、国家の安全保障という重要課題に取り組んだことは、彼の政治家としての責任感と真摯な態度を示しています。安倍首相は、目先の人気や支持率にとらわれることなく、自身が国家にとって国民にとって必要だと信じる政策を推し進める強い意志を持っていたのです。
さらに、安倍首相は法制改正の過程で、与党内の調整や野党との議論にも真摯に取り組みました。特に、連立与党である公明党との調整には多くの時間を費やし、慎重に合意形成を図りました。これは、単に自身の考えを押し通すのではなく、民主主義のプロセスを尊重する姿勢の表れと言えます。
また、安倍首相は国際社会における日本の役割についても深く考慮していました。「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と安定に貢献する日本の姿勢を示そうとしたのです。これは、単に国内の安全保障だけでなく、国際社会における日本の責任を果たそうとする真摯な態度の表れと言えるでしょう。
このように、安倍首相が政権支持率の低下という困難な状況下でも安保法制の改正に取り組んだことは、彼の政治家としての真摯さと信念の強さを示す重要なエビデンスとなっています。それは、短期的な政治的利益よりも国家の長期的な安全と繁栄を優先する姿勢であり、まさに安倍首相の真摯さの真骨頂と言えるものです。
さて、私は石破氏の能力の低さ高さ、見かけ、語り口などは問題にしません。ただ、真摯さについてはこれからじっくり注視していきます。そうして、はやければ今月中になるとみこまれる、総選挙の判断材料にします。
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