古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
まとめ
- 石破氏の言語感覚は奇妙極まる。最も簡明でわかりやすい事柄を最も複雑でわかりにくい言語で表現。
- 所信表明演説でも、当たり前のことを改めて大上段から振りかざす形でさも新しいことのように述べた。
- 当たり前の表現の羅列は、米政治ではplatitudeと呼ばれ軽蔑される。
石破氏が自民党の総裁となり、総理となっての一連の言葉の使い方から、さらにそう思わされるようになった。彼が所信表明演説で、打ち出した「納得と共感の内閣」というスローガンも、主語が曖昧で、石破内閣が納得し共感するのではなく、本来は国民がそうすべきだという意味であるべきだ。
まとめ
- アメリカでは、政治や職場でシンプルな英語が推奨され、誰にでも理解しやすい表現が重視されている。
- 一方イギリスの名門校では、難解な言葉遣いがエリート教育の一環として使われてきた。しかし、一国のリーダーはエリート校の教育者ではない。シンプルさを心がけるべき。
- 石破茂氏の「石破構文」は、具体性や実現可能性に欠け、複雑すぎるとの批判がある。
- 政治家には、複雑な問題をシンプルに伝え、有権者に理解しやすいメッセージを発信する責任がある。
- 我々有権者は、正しいことに「イエス」、間違ったことに「ノー」と言える胆力を持つことが大切だ。
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教育現場でも、英語を第二言語とする学生や識字力に差がある生徒がいるため、簡潔でわかりやすい表現が好まれている。また、Wikipediaにも「Simple English」というバージョンがあり、誰にでも理解できるような文章で情報が提供されている。
職場においても、シンプルで明確な英語が推奨されており、ミスコミュニケーションを防ぐために必要とされている。特に、グローバルなビジネスの現場では、英語が母語でない同僚や取引先と効果的にコミュニケーションを取るために不可欠だ。こうしてアメリカでは、幅広い層に向けた情報発信において、簡単で明確な英語が用いられているのだ。
その中でも、上の記事にもある通りアメリカでは「platitude」(平凡で陳腐な決まり文句)が嫌われる。なぜなら、これらの言葉は曖昧で意味が薄く、聞き手に具体的な行動や内容を伝えることができないからだ。アメリカで推奨されるシンプルな英語では、明確で簡潔な言葉が重視され、誰にでも理解できるような表現が求められている。そのため、platitudeのような決まり文句は避けられ、具体的でわかりやすい説明が必要とされている。
一方で、イギリスのエリート養成校では、わざと複雑な言葉遣いや難解な表現が使われてきた歴史がある。これには理由があり、学生たちに高度な思考を促し、彼らの知的好奇心を刺激するためだ。難しい言葉を解読し、複雑な内容を理解することで、批判的思考力や分析力が鍛えられる。そして、こうした特殊な言葉遣いを習得することで、学生たちはエリートとしての意識を持ち、自らが特別な集団に属しているという感覚を強くする。このような教育手法は、名門校で伝統的に続けられてきたものだ。
だが、一国のリーダーとなる者は、エリート校の教育者とは違う。国民全体に向けて政策を訴え、誰にでも理解できる形でメッセージを伝える能力が求められる。つまり、シンプルな言葉を使って、政策の重要性やその必要性をわかりやすく説明する力が不可欠なのだ。
職場においても、シンプルで明確な英語が推奨されており、ミスコミュニケーションを防ぐために必要とされている。特に、グローバルなビジネスの現場では、英語が母語でない同僚や取引先と効果的にコミュニケーションを取るために不可欠だ。こうしてアメリカでは、幅広い層に向けた情報発信において、簡単で明確な英語が用いられているのだ。
その中でも、上の記事にもある通りアメリカでは「platitude」(平凡で陳腐な決まり文句)が嫌われる。なぜなら、これらの言葉は曖昧で意味が薄く、聞き手に具体的な行動や内容を伝えることができないからだ。アメリカで推奨されるシンプルな英語では、明確で簡潔な言葉が重視され、誰にでも理解できるような表現が求められている。そのため、platitudeのような決まり文句は避けられ、具体的でわかりやすい説明が必要とされている。
一方で、イギリスのエリート養成校では、わざと複雑な言葉遣いや難解な表現が使われてきた歴史がある。これには理由があり、学生たちに高度な思考を促し、彼らの知的好奇心を刺激するためだ。難しい言葉を解読し、複雑な内容を理解することで、批判的思考力や分析力が鍛えられる。そして、こうした特殊な言葉遣いを習得することで、学生たちはエリートとしての意識を持ち、自らが特別な集団に属しているという感覚を強くする。このような教育手法は、名門校で伝統的に続けられてきたものだ。
だが、一国のリーダーとなる者は、エリート校の教育者とは違う。国民全体に向けて政策を訴え、誰にでも理解できる形でメッセージを伝える能力が求められる。つまり、シンプルな言葉を使って、政策の重要性やその必要性をわかりやすく説明する力が不可欠なのだ。
上の写真は英国の元首相チャーチルとその言葉である。"There is no greater mistake than to suppose that platitudes, smooth words, timid politics, offer today a path to safety."
これを日本語に訳すと、「陳腐な決まり文句(platitudes)、耳障りのよい言葉、臆病な政治が今日の安全への道を提供すると考えるほど大きな間違いはない」である。この言葉は、困難な時代や危機的状況において、表面的な対応や妥協的な態度ではなく、勇気ある行動と明確な立場表明の必要性を強調している。チャーチルは、真の安全と進歩は、時に不快であっても真実を直視し、果断な決断を下すことによってのみ達成されると主張している。
チャーチルは、イートン校と並ぶ最高峰の全寮制パブリックスクールであるハーロー校の出身であり、これは典型的なエリート養成校である。そのチャーチルがplatitudeを否定しているのだ。
ここで石破茂首相の「石破構文」について触れよう。この発言スタイルに対しては、「簡単なことをわざわざ複雑にしている」との批判が付きまとい、実際その指摘には正当性がある。石破氏の発言や政策提言を詳しく見ていくと、具体性や実現可能性に欠けている点がいくつか見つかる。
例えば「アジア版NATO創設」など、壮大に聞こえる提案をしてはいるものの、現実的な裏付けや国際情勢に対する深い理解が欠けている。また、多くの政策提言において、財源についての具体的な説明がないため、無責任な印象を与えてしまう。
さらに、憲法に関する発言と行動に一貫性がないため、憲法論議を深めるための信頼性にも疑問が生じている。そして、マクロ経済に関する基本的な理解が不十分なまま、複雑な言葉を駆使して経済政策を説明しようとする姿勢も見受けられる。これは、内容の乏しさを難解な言葉遣いで隠そうとしているように感じられる。
確かに、石破氏の発言スタイルは、複雑な問題を多角的に捉えようとしている努力の一環とも取れなくもないが、具体性や実現可能性を欠いている点は否定できない。「石破構文」は、表面的には深い思考をしているように見えても、実際には問題の本質を捉え切れておらず、具体的な解決策を提示できていないことが多い。政治家として、複雑な問題に取り組む姿勢は評価できるが、有権者に対して明確で理解しやすいメッセージを発信する責任がある。
さらに、憲法に関する発言と行動に一貫性がないため、憲法論議を深めるための信頼性にも疑問が生じている。そして、マクロ経済に関する基本的な理解が不十分なまま、複雑な言葉を駆使して経済政策を説明しようとする姿勢も見受けられる。これは、内容の乏しさを難解な言葉遣いで隠そうとしているように感じられる。
確かに、石破氏の発言スタイルは、複雑な問題を多角的に捉えようとしている努力の一環とも取れなくもないが、具体性や実現可能性を欠いている点は否定できない。「石破構文」は、表面的には深い思考をしているように見えても、実際には問題の本質を捉え切れておらず、具体的な解決策を提示できていないことが多い。政治家として、複雑な問題に取り組む姿勢は評価できるが、有権者に対して明確で理解しやすいメッセージを発信する責任がある。
結論として、「石破構文」は、深い思考や具体的な政策を反映しているわけではなく、「簡単なことを複雑にしている」という批判は当たっている。政治家として、より明確で具体的な提案をし、それをわかりやすく伝える能力が求められるのだ。この分析を通じて、「石破構文」の特徴と問題点がより明確になり、政治家の発言スタイルが持つ影響力と責任の重要性が改めて浮き彫りになったと言えるだろう。
最後に言いたいのは、私たちはこのような一見複雑な言葉や石破構文等に惑わされることなく、正しいことには堂々と「イエス」と言い、間違ったことには断固として「ノー」と言える胆力を持つべきだということだ。
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