まとめ
- イスラエル軍はイランへの報復として、イラン国内の軍事目標を攻撃した。
- イランがイスラエルにミサイルを撃ち込んだことへの報復措置であり、イスラエルは自衛の権利を主張している。
- この攻撃は中東の緊張を高める可能性があり、さらなる紛争のリスクを孕んでいる。
イスラエル軍によるテヘラン近郊の軍事基地への攻撃 |
イスラエル軍は、イランがイスラエルにミサイルを撃ち込んだ報復として、26日未明にイラン国内の軍事目標に対する攻撃を開始したと発表した。イランのメディアによると、テヘラン近郊の軍事基地が攻撃され、防空システムが作動したとのされる。詳細な被害状況は不明だ。
イスラエル軍は、イランとその代理勢力が継続的に攻撃を行っているとして、反撃の正当性を主張している。イスラエルは米国のTHAADシステムを配置し、再攻撃に備えている。再報復があれば、中東全体の緊張が高まる可能性がある。
イランは今月初め、ハマスやヒズボラの指導者が殺害されたことに対する報復として、イスラエルに大規模ミサイル攻撃を行った。ネタニヤフ首相は報復を予告し、米国は一部理解を示しつつ、石油や核関連など重要施設への攻撃には反対していた。
イスラエル軍は、イランとその代理勢力が継続的に攻撃を行っているとして、反撃の正当性を主張している。イスラエルは米国のTHAADシステムを配置し、再攻撃に備えている。再報復があれば、中東全体の緊張が高まる可能性がある。
イランは今月初め、ハマスやヒズボラの指導者が殺害されたことに対する報復として、イスラエルに大規模ミサイル攻撃を行った。ネタニヤフ首相は報復を予告し、米国は一部理解を示しつつ、石油や核関連など重要施設への攻撃には反対していた。
【私の論評】中東の緊張と日本の安全保障:イスラエル・イラン対立から学ぶべき教訓
まとめ
- 今回のイスラエルの攻撃は石油や核関連施設を標的にせず、軍事施設に限定された。
- 現代の攻撃手段として、核を搭載しないミサイルやドローンによる精密攻撃が普及し、軍事行動のハードルが低下している。
- ロシアはウクライナの民間施設をミサイル攻撃の標的にすることにより士気をくじこうとしているが、中国も台湾に対してこのような戦略をとる可能性は否定できない。それどころか、日本もその標的になりかねない。
- この現実的な脅威に対す安倍晋三氏の取り組みは、敵基地攻撃能力やミサイル防衛体制の強化を通じて抑止力を強化することに焦点を当てていた。
- 現在の衆院選では、イスラエルとイランの対立や台湾問題を語る候補者が少なく、これらのテーマに触れない候補者には、信頼を置くことはできない。
今回の攻撃には石油や核関連施設は含まれていないようだ。イスラエル軍の情報筋がCNNの取材に応じ、イランへの報復でエネルギーインフラは標的にしないと明かした。情報筋によれば、26日に行われたイラン攻撃は100%イスラエル主導であるが、米国とは防空分野などで深い協力関係が続いているという。また、ネタニヤフ首相を含むイスラエル政府が米国に対し、石油施設や核施設は攻撃対象から外し、軍事施設に限定すると確約したことも明らかにされた。
イスラエルが石油や核施設を重要視するならば、まず最初にそこを叩くはずだ。軍事施設から手をつけ、後回しにするというのは考えにくい。なぜなら、そうすることでイラン側の防御が強まり、攻撃効果が下がるリスクがあるからだ。
このブログでも10月20日の記事で予測していたが、核や石油関連施設には手をつけず、軍事基地などが狙われるだろうという予想が的中した形だ。
イスラエルにとってイランの挑発は一大問題だが、米国が石油施設や核関連施設への攻撃に反対しているため、イスラエルも慎重を期している。もしイランの石油施設を攻撃すれば湾岸地域が不安定化し、原油価格の急騰は世界経済に悪影響を及ぼす。また、イランが報復としてアラブ諸国の産油施設を攻撃する可能性があり、これが中東全体の戦火拡大を招きかねないからだ。中東の戦火拡大は米国もイスラエルも、そしてイランも望まないはずである。
さらに、現代の戦争において重要な要素は、核を搭載しないミサイルやドローンによる精密攻撃である。これらは敵味方の損害を最小限に抑えつつ、特定の軍事目標を正確に狙うことが可能となった。このため、従来よりも軍事力を用いる障壁が低くなったと言える。精密攻撃のハードルが下がったことで、戦争の敷居が下がり、少ないリスクで相手に打撃を与える選択肢が拡大した。
ロシア軍の攻撃を受け破壊されたウクライナの高層住宅 |
この情勢の中、目を向けたいのが台湾やウクライナである。ロシアがウクライナで行っているのは、民間施設への攻撃を通じて相手国の士気をくじく戦略である。同様に、中国も台湾に対して、必ずしも直接的な侵攻ではなく、ミサイル攻撃などによる威圧行為を繰り返す可能性がある。さらには、日本がその標的になる可能性すら否定できない。これは絵空事ではなく、国際情勢の変化や軍事バランスの移り変わり次第で現実に起こり得るシナリオである。
安倍晋三氏が取り組んだのは、まさにこうした現実的リスクへの抑止力強化である。安倍政権下で「敵基地攻撃能力」が議論され、自衛の範囲内で防衛力を整備し、日米同盟の抑止力を強化する取り組みが進められた。さらに、イージス艦やパトリオット(PAC-3)、イージス・アショアといったミサイル防衛体制の強化も試みられたが、一部の計画は地元の反対で撤回されるなど、課題も残る。
外交面では米国との同盟強化と同時に、ロシアとの関係改善にも注力した。ロシアとの平和条約交渉も試みたが、大きな成果には至らなかった。それでも安倍氏の外交努力は、日本の防衛を支える抑止力の一環として機能していたといえる。
安倍氏の戦略は、軍事力と外交力の両面で抑止力を築き、敵国の攻撃をためらわせるものだ。現在の防衛政策の基盤となっているのは、この抑止戦略である。
現在、衆院選の真っ只中だが、イスラエルとイランの対立や台湾、ウクライナ問題について語る候補者は少ない。この重要なテーマに触れない政治家に、果たして信頼を置けるだろうか。
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