2024年4月14日日曜日

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

 杉山大志 直言!エネルギー基本計画

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱 

まとめ
  • 日本のエネルギー供給の8割は化石燃料に依存しており、その安定的な調達が重要
  • しかし第6次エネルギー基本計画では、無理難題とも言える46%のCO2削減目標が設定され、化石燃料の利用制限につながっている
  • その結果、燃料調達や関連事業への参入が困難になり、供給不足や火力発電所の休廃止といった問題が懸念される
  • 一方で、気候変動の悪影響を示すデータや予測モデルの信頼性には疑問があり、CO2ゼロ目標の実効性も極めて低い
  • したがって、「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返り、安定供給を確保する政策を検討すべきであり、パリ協定からの離脱も検討の余地がある
阿蘇外輪山の元牧野に建設されたメガソーラー

 日本のエネルギー供給の8割は依然として石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に依存している。これらの化石燃料を安定的に調達し活用することは、日本のエネルギー政策の最も重要な柱のはずだ。

 しかし、現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年までにCO2排出量を2013年比で46%も削減するという非現実的な数値目標が設定され、化石燃料の利用量も極端に低く設定されている。その結果、企業は長期的な燃料調達契約の締結が困難となり、油田やガス田への事業参入も阻害されている。

 こうした事態が進めば、有事の際に法外な価格でしか化石燃料が調達できなくなったり、最悪の場合は全く調達できなくなる可能性がある。また、火力発電所の休廃止も余儀なくされ、定期的に「節電のお願い」が発出されることにもなりかねない。

 一方で、メディアでは気候変動の悪影響が強調されているが、統計データではそのような事態は確認されていない。さらに、気候変動リスクを示すシミュレーションモデルさえ、過去の再現すら十分にできていないと指摘されており、その将来予測を政策決定に活用するのは適切ではない。

 したがって、「2050年にCO2排出ゼロ」という極端な目標を掲げ、日本のエネルギー政策と経済活動を大きく制限することは不適切であると考えられる。そうではなく、安定したエネルギー供給を確保し、経済発展を支えていく「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返るべきであり、グローバルサウスの支持も得つつ、パリ協定からの離脱も検討する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

まとめ
  • 「エネルギー・ドミナンス」はトランプ政権下の米共和党で使われてきた概念で、安定かつ安価なエネルギー供給を通じた経済発展や民主主義の保護を目指すものです。
  • 第6次エネルギー基本計画は「脱炭素」を重視しつつ、再生可能エネルギー以外のエネルギー源の活用も検討されました。
  • この計画は「S+3E」の視点から、安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性を重視しています。しかし、現実には脱炭素、再エネばかりが強調されています。
  • 安倍晋三氏が存命であれば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような新たな概念を提唱し、地球規模でのエネルギー協力体制を構築していた可能性があります。
  • 「エネルギー・ドミナンス」の代わりに「エネルギー共生圏」のような概念を打ち出すことで、より多くの国々の参加を促し、現実的な世界秩序の再編成を目指すべきです。

「エネルギー・ドミナンス」という用語は、米国共和党で使用されてきた概念です。これは豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指し、経済発展や防衛力の向上、自由や民主主義などの普遍的価値の保護と発展を可能にするとされています。具体的にこの言葉を最初に使った個人についての情報は見つかりませんでしたが、この概念はドナルド・トランプ大統領の下での米国のエネルギー政策に関連してよく言及されています。

「第6次エネルギー基本計画」は安倍政権下で検討されたものではありますが、安倍総理は、2020年9月16日に辞任しており、閣議決定されたのは、2021年10月の菅政権のときでした。

第6次エネルギー基本計画で目指す総発電量に占める電源別の割合

この基本計画が検討された時期においては、「脱炭素」が世界の趨勢となっており、このエネルギー基本計画は、「脱炭素」にも重点を置き、極端な目標が掲げられている一方、再生可能エネルギー以外のエネルギー源についても詳細に述べられています。

この計画は、本来は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものであり、安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「S+3E」の視点を重視しています。

具体的には、以下のようなポイントが含まれています。

安全性(Safety):あらゆるエネルギー関連設備の安全性を最優先し、特に原子力に関しては、国民の懸念の解消に全力を挙げることが強調されています。

エネルギーの安定供給(Energy Security):日本のエネルギー自給率が低いため、エネルギー供給の安定性を確保することが重要視されており、レジリエンス(強靭性)を高めることが求められています。

環境への適合(Environment):カーボンニュートラルを目指し、エネルギー分野の脱炭素化に取り組むことが強調されています。これには、再生可能エネルギーの導入拡大や、CO2排出削減技術の開発が含まれます2。

経済効率性(Economic Efficiency):低コストでのエネルギー供給とエネルギーの安定供給、環境負荷の低減を同時に実現することが、日本の経済成長にとって重要であるとされています。

安倍政権が継続されていた場合、あるいは政権が続いていなくても、安倍晋三氏が存命だった場合、経済効率性やエネルギーの安定供給の観点がもっと強調されていた可能性があります。

しかし、菅政権から、岸田政権にかけて、エネルギー政策というと、カーボンニュートラルや再エネ等が大きく注目されるようになりました。そうして、現状では阿蘇山にはメガソーラ発電省が設置され、釧路湿原国立公園内に、6.6haの太陽光発電施設が設置されるという危機的状況になっています。


このままだと、日本はエネルギー政策で失敗して衰退しかねません。だからこそ、エネルギー問題のまともな専門家たちは、危機を感じているのです。

そうして、上の記事の杉山氏の元記事ように
米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
と警鐘を鳴らしているです。

これは、重要であり、中国やロシアがエネルギー・ドミナンスで優勢になれば、日本を含む西側諸国やその同盟国は安全保証上の脅威にもさらされることを意味しています。

そうして、安倍晋三氏がご存命であれば、この危機にいち早く気づいて、新たな概念を生み出しい、「安全保障のダイヤモンド」のような論文をブロジェクト・シンジケートに投稿していたかもしれません。ちなみに、この論文は、後の「インド太平洋戦略」に結びつき、中国の覇権主義に対抗する上で重要な概念となっています。

エネルギー・ドミナンスの危機に関して、安倍晋三氏がご存命であれば、やはり新たな概念を生み出したかもしれません。

たとえば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」という概念を生み出していたかもしれません。

これは、意味するところは、以下です。
  • 「共生」の文字から、各国や多様なステークホルダーが互いに協力し合い、共に発展していくエネルギーシステムの構築を表現
  • 「圏」の字は、地球規模での包括的なエネルギー協力体制を示唆しています
  • 化石燃料の利用や、原子力エネルギー等、現実的なエネルギー利用の安定供給を目指すとともに、小型原子炉や核融合炉などの将来のエネルギーの開発等も含めた、エネルギーミックスを構築する
  • 先進国と途上国、エネルギー生産国と消費国が対話を重ね、共生的なエネルギーアーキテクチャを構築することを表す
英語での意味は以下のようなものです。
  • "Energy" - エネルギーという分野を表しています。
  • "Symbiosis" - 共生、相互依存的な関係性を意味します。
  • "Sphere" - 地球規模、あるいは包括的な領域を表す言葉です。圏というと、大東亜共栄圏などを思い起こさせる言葉ですが、Sphereは違います。
つまり、「Energy Symbiosis Sphere」は、各国や様々な利害関係者が協力し合って、現実的なエネルギーシステムを地球規模で構築していくという戦略概念を表しています。

この英語表現も、安倍晋三氏の思想を反映した戦略的なイニシアチブを感じさせる言葉だと思います。

「安全保障のダイヤモンド」は、端的に言ってしまうと、「中国封じ込め政策」なのですが、安倍晋三氏は、そうではなくもっと大きな上位の概念からこの言葉を使っています。これによって、より多くの国々が、この言葉に賛同し参加できるような素地をつくりだし、後にさらに「インド太平洋戦略」という言葉を生み出し、インドや太平洋の平和と安定の重要性も強調しました。これによって、安倍晋三氏は世界の秩序を変えたといえます。

そうして、それが世界だけでなく、日本国内にも大きな影響を及ぼしています。

エネルギー・ドミナンスは日本語訳にすると「エネルギー支配」とも訳すことができ、これではエネルギーに関する覇権争いとも受け取られかねません。これでは、日米のエネルギー・ドミナンスの確立に参加を表明したくてもできない国々が出てくる可能性もあります。

Energy Symbiosis Sphere AI生成画像

しかし、安倍晋三氏が生み出したような「インド太平洋戦略」という中露との対立という概念より、上位の概念は、この地域の平和と安定を目指すものであり、この地域や、他地域の多くの国々の賛同を得ることができ、これに真っ向から反対するのは、一部の権威主義的、全体主義的な国々だけです。

日本国内でも、どなたか有力な方が「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような言葉を作り出し、安倍晋三氏が、政権発足直前に「ブロジェクト・シンジケート」で公表したように、新たな概念を公表すべきと思います。

これによって、エネルギーを基軸とした、世界秩序の再編成を目指すべきです。

それにしても、それを実現できる人は、なかなか見当たりません。改めて、わたしたちは偉大な人物を亡くしてしまったことが残念でなりません。

このようなことを実現し、それだけでなく、それを目指して行動する人こそ、安倍氏の真の後継者なのかもしれません。

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