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まとめ
- 「円高シンドローム」とは、長期にわたる過剰な円高ドル安状況を指す言葉である。
- その発端は1985年のプラザ合意で、米国レーガン政権が日本などに対してドル安誘導を強要したこと。
- しかし、経済学的には貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤りだった。
- にもかかわらず、その後も政治的圧力により円高が続き、日本の政策当局(日銀と財務省)も対米従属を優先して円高を誘導した。
- その結果、バブル崩壊やデフレ長期化など、日本経済に深刻な影響が生じた。現在も財務省と日銀は円安抑制に動いているが、国内景気への悪影響が懸念される。
ブラザ合意後円高水準が続いている |
「円高シンドローム」とは、長期にわたって円が過剰な高水準で推移し続けた経済状況を指す用語だ。その発端は1985年のプラザ合意にありました。当時の米国レーガン政権は、累積する貿易赤字を解消するため、日本など諸国に対してドル安誘導の協調介入を政治的に強要したのだ。
しかし、経済学的に見れば貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤った政策判断に基づくものでした。それにもかかわらず、その後も共和党、民主党を通じて、政治的な圧力により円高が続きました。
しかし、経済学的に見れば貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤った政策判断に基づくものでした。それにもかかわらず、その後も共和党、民主党を通じて、政治的な圧力により円高が続きました。
日本の政策当局、すなわち日銀と財務省も、国内経済よりも対米従属を優先し、為替介入や金融緩和により円高を誘導し続けた。その結果、バブル経済の発生と崩壊、長期デフレ不況といった深刻な経済的影響を招くこととなった。
現在、植田日銀体制では再び円安抑制に動き出しており、金融引き締めを通じた円安防止策をとりつつある。しかしこれは国内景気を冷やしかねず、また物価高対策にも影響を及ぼすおそれがある。
現在、植田日銀体制では再び円安抑制に動き出しており、金融引き締めを通じた円安防止策をとりつつある。しかしこれは国内景気を冷やしかねず、また物価高対策にも影響を及ぼすおそれがある。
政策当局には、国内経済の実情を冷静に見極め、適切な通貨・金融政策を採用することが求められている。「円高シンドローム」の反省に立ち、健全な経済成長を実現するための施策が重要となっているのである。
【私の論評】現時点の円高誘導は、円高シンドロームの再燃、日本経済への破滅的な悪影響もたらす
まとめ
- 貿易赤字や黒字は国内需給の均衡状態を反映しているが、為替レートは資金の国際移動で決まるため、両者は基本的に独立している。
- プラザ合意のような為替レート操作は、本来の経済原理に反するものであり、マッキノン教授らも強く批判している。
- 1980年代以降の日本の円高傾向は「円高シンドローム」と呼ばれ、日本政府の対応の失敗により長期的な経済歪みを招いた。
- しかし、安倍政権下の金融緩和政策により、円高が是正されデフレからの脱却が進んだ。
- 現在では各国政府も日本の政策姿勢を理解しており、強い批判は見られなくなっている。日本は、金融緩和を継続し、国内産業を支援し、消費税減税などをするのが正しい政策てあって、円高誘導は間違いである。
経済学の標準的な理論によれば、国際収支の赤字や黒字は、総需要と総供給の均衡状態を反映しているものです。つまり、自国の国内需要が自国の供給能力を上回れば貿易赤字となり、逆に国内需要が供給を下回れば貿易黒字となります。
一方、為替レートは、国際的な資金の移動によって決まります。資金が流入すれば自国通貨高となり、流出すれば自国通貨安となります。
つまり、貿易赤字というマクロ的な現象と、為替レートというマクロ的な現象は、基本的に独立して決まるものなのです。
例えば、日本の貿易収支の赤字は、日本国内の需給バランスの状況を反映したものですが、一方で円高ドル安は、日米間の資本移動や投資家心理などによって決まっているのです。
よって、政策当局が為替レートを操作することで、容易に貿易収支を改善できるというのは、経済学的に正しくありません。プラザ合意のような為替介入は、本来の経済原理に反するものだったと言えるのです。
2012年に安倍晋三氏が首相に就任すると、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が導入されました。その中核となったのが、日銀による大胆な金融緩和策でした。
この金融緩和政策によって、長年続いた円高傾向が是正され、円安基調に転じていきました。これにより、日本の輸出企業の収益改善や国際競争力の回復が見られるようになったのです。
つまり、安倍政権の登場と、その下で実施された金融緩和政策は、まさに「円高シンドローム」からの脱却につながったと言えるのです。マッキノン氏らが懸念していた経済の歪みは、徐々に解消されつつあったと考えられます。
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一方、為替レートは、国際的な資金の移動によって決まります。資金が流入すれば自国通貨高となり、流出すれば自国通貨安となります。
つまり、貿易赤字というマクロ的な現象と、為替レートというマクロ的な現象は、基本的に独立して決まるものなのです。
例えば、日本の貿易収支の赤字は、日本国内の需給バランスの状況を反映したものですが、一方で円高ドル安は、日米間の資本移動や投資家心理などによって決まっているのです。
よって、政策当局が為替レートを操作することで、容易に貿易収支を改善できるというのは、経済学的に正しくありません。プラザ合意のような為替介入は、本来の経済原理に反するものだったと言えるのです。
上の記事にでてくる「円高シンドローム」という言葉は現在スタンフォード大の名誉教授である、ロナルド・マッキノン氏が最初につかいはじめました。
マッキャノン氏の著書 |
マッキノン氏は、1980年代半ばからの長期にわたる円高ドル安を「円高シンドローム」と呼称し、その弊害を指摘しています。その中心的な論点は以下の通りです。
マッキノン氏は、プラザ合意以降の急激な円高は、本来の経済調整メカニズムを歪めてしまったと分析しています。通常、貿易収支の赤字国の通貨は自然と下落していくはずですが、日本政府による為替介入で円高が促進されたことで、この健全な調整プロセスが阻害されたのです。
その結果、日本の輸出企業の収益が圧迫され、国際競争力が低下しました。しかし、日本政府は、この円高に対して適切に対応しませんでした。むしろ、財政支出の削減や金融引き締めなどの失敗した政策対応をとったため、かえって財政赤字の増大や超円高、デフレなどの経済的歪みを生み出してしまったと指摘しています。
つまり、マッキノン氏は、為替レートの人為的な操作が、本来の市場メカニズムを損なっただけでなく、日本政府の政策的な失敗も重なり、長期的な経済の歪みを招いたと警鐘を鳴らしているのです。
この分析は、クルーグマンやスティグリッツ、バーナンキなどのノーベル経済学賞受賞者の見解とも共通するところがあります。彼らも、為替レート操作による経済歪曲の危険性を指摘しており、マッキノン氏の指摘は、そうした国際的な経済学者の問題意識と軌を一にしていると言えるでしょう。
2012年に安倍晋三氏が首相に就任すると、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が導入されました。その中核となったのが、日銀による大胆な金融緩和策でした。
この金融緩和政策によって、長年続いた円高傾向が是正され、円安基調に転じていきました。これにより、日本の輸出企業の収益改善や国際競争力の回復が見られるようになったのです。
つまり、安倍政権の登場と、その下で実施された金融緩和政策は、まさに「円高シンドローム」からの脱却につながったと言えるのです。マッキノン氏らが懸念していた経済の歪みは、徐々に解消されつつあったと考えられます。
特に、この頃から実施された金融緩和政策に関しては、他国から批判されていません。米国政府は当初、日本の金融緩和策に対して批判的な姿勢を示していたものの、近年ではデフレ脱却と経済成長を重視する日本の政策姿勢を理解する傾向にあるようです。
一方、中国も円安傾向に対する警戒感は示していたものの、自国の通貨政策を展開していることから、日本の政策に大きな異議を唱えるには至っていません。韓国も、日本の金融緩和による円安が輸出企業に影響すると懸念していたようですが、自国の通貨政策を通じて輸出競争力を高めてきた経緯があり、強硬な批判は行っていないのが現状のようです。
つまり、当初は各国が日本の金融緩和策に対して警戒感を示していたものの、最近では日本の政策姿勢を理解する傾向にあり、大規模な批判は見られなくなってきているということができます。プラザ合意の際のような強い政治的圧力は、現時点では生じていないようですし、これからも生じる可能性は低いです。
つまり、当初は各国が日本の金融緩和策に対して警戒感を示していたものの、最近では日本の政策姿勢を理解する傾向にあり、大規模な批判は見られなくなってきているということができます。プラザ合意の際のような強い政治的圧力は、現時点では生じていないようですし、これからも生じる可能性は低いです。
それに独立国家であれば自国内の経済のために、独自の金融政策を実施するのは当然の権利であり、これに反対するような国にはその誤りを指摘しつつ、独自の金融政策を実行するのが本来のありかたです。
さらに、プラザ合意なる誤った政策が実施される背景ともなった幼稚な「通貨戦争」のような概念も廃するべきです。ある国が、輸出を有利にするために金融緩和策をいつまでも継続しているとどうなるでしょうか。いずれかなりのインフレに見舞われて、緩和政策を続けられなくなります。そうして、いずれ引き締めに転じることになります。「通貨戦争」は空想の産物に過ぎません。
通貨戦争 AI生成画像 |
日本が金融緩和政策を実施しているのは、あくまで国内事情のためであり、需給ギャップがマイナスである日本では、未だ緩和策を継続する必要があります。しかし輸出入を行っているために、国内では海外からの影響も受けます。それに対する調整をする必要があります。
その調整策は、円安で有利になる輸出企業(大企業が多い)の法人税収入は増えるので、それを活用するなどして、輸出産業以外の産業(国内向け、輸入産業、中小企業が多い)支援をし、減税などで消費者を支援する政策などが、正しい政策であって、円高誘導などとんでもあません。
現時点での円高誘導は「円高シンドローム」の再来であり、日本経済に大きな悪影響を及ぼすことになります。
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