2024年4月23日火曜日

「F-35戦闘機で核使用OKに」それが意味する重大な転換点 日本には“有益”といえる理由―【私の論評】日本の核抑止力強化と地域安全保障への貢献:F-35A戦闘機の核搭載がもたらす可能性

「F-35戦闘機で核使用OKに」それが意味する重大な転換点 日本には“有益”といえる理由

まとめ
  • 2024年3月、F-35AがNATOでB61-12戦術核運用が認証された
  • これでNATO加盟国がF-35AによるB61-12の核攻撃能力を獲得
  • B61-12は出力調整可能で精密誘導される使いやすい核兵器
  • 日本は非核三原則だが実質的にはアメリカの核の傘に守られている
  • 仮に核武装すれば自衛隊F-35AへのB61-12搭載が現実的選択肢となり、核抑止力になり得る
上昇するF-35A

 2024年3月、米国製ステルス戦闘機F-35Aが戦術核弾頭B61-12の運用が認証されたことが報じられた。これによりF-35AはNATO加盟国において、通常兵器と核兵器の両方を搭載できる「複合対応航空機(DCA)」としての役割を担うことになった。

 NATOでは、アメリカから核爆弾を借り受ける「ニュークリア・シェアリング」を行っており、F-35Aを保有または導入予定の米国、オランダ、イタリア、ベルギー、ドイツの各空軍がB61-12の運用能力を順次獲得することになる。従来の運用機種に加えてF-35Aが加わり、将来的にはF-15EとF-35Aの2機種でNATOの核抑止力を支えていく。

 B61-12は出力を0.3~50キロトンまで調整可能で、GPS誘導による精密な投下も可能なため、比較的使いやすい核兵器とされる。一方で広島・長崎の原爆並みの破壊力を持つ。

 日本は非核三原則を掲げつつ、実際にはアメリカの核の傘に守られている。仮に将来的に核武装を決断した場合、現実的な選択肢は「ニュークリア・シェアリング」を通じてB61-12を航空自衛隊のF-35Aに搭載することだろう。

 F-35Aは同盟国で共通の機体なので、自衛隊機をDCA化するのは比較的容易だ。したがって、自衛隊のF-35A増強は、核武装の意思はなくとも、潜在的な核攻撃能力の保持を対外的にアピールし、結果として核抑止力となり得る。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の核抑止力強化と地域安全保障への貢献:F-35A戦闘機の核搭載がもたらす可能性

まとめ
  • 米国製ステルス戦闘機F-35Aが核兵器B61-12の運用が認証され、核兵器を搭載・運用可能に。
  • これにより、日本の自衛隊F-35Aが通常兵器と核兵器の両方に対応可能な複合対応航空機となり、NATOや米国の核の傘の中核戦力となる可能性がある。
  • 日本は非核三原則を掲げているが、米国の同盟国として「核の傘」の下にあり、有事の際には米国の核兵器による抑止力を受けられる。
  • 日本が将来的に核武装を決断した場合、航空自衛隊のF-35AにB61-12を搭載することが現実的な選択肢となる。
  • 日本が核抑止力を保持することにより、インド太平洋地域の安全保障環境に新たな核の均衡が生まれ、地域の平和と安定に資する可能性がある。

B61-12戦術核爆弾

「米国製ステルス戦闘機F-35Aが戦術核弾頭B61-12の運用が認証された」ということは、簡単に言えば、F-35A戦闘機が核兵器B61-12を搭載して運用(投下)できるようになったということです。

上の記事の"DCA((Dual-Capable Aircraft)化"とは、従来の対地・対空攻撃能力に加えて、核兵器運用能力をF-35Aに持たせることを意味しています。これにより自衛隊のF-35Aが通常・核の"複合対応航空機"となるわけです。  NATOや米国にとって、F-35Aが核の傘の中核を担う戦力となり得ることを意味しています。


日本には過去には、核兵器を搭載して運用(投下)できる航空機は存在していませんでした。

日本は、唯一の戦争被爆国として「非核三原則」(核兵器の保有・製造・持ち込みを行わない)を掲げており、核兵器を搭載・運用できる航空機を保有することは非核三原則に反するためです。

ただし、本文中にも記載がありましたが、日本はアメリカの同盟国であり、実質的には米国の「核の傘」の下に入っています。そのため、有事の際には米国の核兵器による抑止力を受けられる立場にあります。

上の記事では、仮に日本が将来的に核武装を決断した場合、現実的な選択肢は航空自衛隊のF-35Aにアメリカ製の戦術核弾頭B61-12を搭載することだと指摘されています。

日本の航空自衛隊にはF-35Aが導入されています。具体的には、以下のように導入が進められています。

  • 2012年に42機の調達が決定
  • 2017年12月に最初の4機がアメリカから搬入
  • 2019年3月に三沢基地に初期運用能力を発令
  • 2023年3月時点で38機が既に配備済み
  • 2020年代後半までに最終的に147機を導入する予定

このように、航空自衛隊はすでにF-35Aの運用を開始しており、今後さらに導入を加速させる計画になっています。F-35Aは国産の次期主力戦闘機となることが期待されています。

2012年の時点で、日本政府がF-35Aを将来的にB61-12戦術核弾頭の運用が認証される航空機として認識していたとは考えにくいです。F-35計画は1990年代から開始された長期的な開発プロジェクトであり、当初からの目的は主に通常戦闘機としての運用でした。

核兵器運用能力は初期の要求事項にはなかったはずです。また、B61-12戦術核弾頭そのものも、2012年時点では開発中の段階でした。実際に運用が認証されたのは2024年となっています。

さらに、日本は非核三原則を掲げており、F-35Aを核兵器運用機として検討する必要性はそもそもありませんでした。上の記事の元記事本文中でも、F-35AがB61-12運用が認証されたことは「2024年3月」の出来事として報じられています。

したがって、2012年の時点で日本側がF-35Aの核兵器運用能力の付与を予見していたとは考えにくく、通常戦力の現代化が主な調達目的だったと推測されます。核運用能力は後付けで付与されたものと見られます。

日本は、期せずして核を搭載できる航空機を持つことになったのです。

これにより、日本の安全保障体制は飛躍的に強化され、インド太平洋地域における日本のプレゼンスが著しく高まることでしょう。核抑止力の保持により、日本は北朝鮮、中国、ロシアといった潜在的な敵対国家からの脅威に対して確実な抑止力を発揮できるようになります。これにより、日本は同盟国の米国に過度に依存することなく、独自の安全保障政策を推進する余地が生まれます。

インド太平洋地域

加えて、核シェアリングにより、日本が事実上の核保有国となれば、インド太平洋地域の安全保障環境に新たな核の均衡が生まれ、地政学的な緊張緩和につながる可能性があります。

日本が事実上の核保有国となり、地域の核バランス(核抑止力のバランス)が生まれた場合、他の国々のインセンティブ(動機づけ)が変わることになるからです。

具体的には、例えば中露北といった他の核保有国は、日本にも核抑止力があることを認識すれば、これらの国が無秩序に核兵器や通常兵器を増強しても、日本の核抑止力によってある程度抑えられてしまうため、そのようなコストのかかる軍拡競争を起こすインセンティブ(動機)が低下するということです。結果として、インド太平洋地域全体の平和と安定に資することでしょう。

一般的には、ある国が核兵器を保有すれば、他国も対抗して核兵器や通常兵器の増強に走り、地域の軍拡競争が過熱するものと考えられがちです。しかし実は、日本が核抑止力を備えることで、地域の核の均衡が生まれ、かえって各国の無秩序な軍拡を抑制するパラドクシカル(逆説的)な効果が期待できるのです。

なぜなら、核の均衡状態下では、いずれの国も他国の核による確実な報復能力を認識せざるを得ません。ですから、一方的な軍備増強による優位の追求は、かえって自国の安全を脅かしかねません。このジレンマは、各国に過剰な軍拡を自制させ、地域の軍縮と緊張緩和につながる可能性があるからです。

要するに、日本の核武装は地域の軍拡競争を 逆説的に抑制する効果があるということです。現状では、確かに日本は米国の核の傘の下にあり、均衡は保たれているようにもみえますが、現実に中露北が核を含む武力行使をして日本を攻撃した場合、米国が核による報復に踏みきるかどうかは定かではありません。

核シェアリングの議論を主張していた安倍元首相

しかし、日本が自国の意思でこれを実行できるようになれば、新たな核の均衡が生まれることになるのです。

もちろん、核不拡散体制への影響など懸念材料もないわけではありませんが、日本がこれまで掲げてきた平和主義的理念の下で核武装を厳格に管理すれば、同盟国を含む国際社会からの理解と支持が得られると考えられます。むしろ国内の反対勢力のほうがこれに対する大きなさまたげになることでしょう。

核搭載F-35Aの保有は、日本の新たな抑止力の獲得につながり、地域の安全保障と平和に貢献する大きな可能性を秘めています。

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