2024年4月3日水曜日

静岡の川勝知事が辞意表明 新規採用職員への職業差別訓示で批判―【私の論評】静岡県知事辞任 - 製造業界の支持離れとリニア開業の遅延

静岡の川勝知事が辞意表明 新規採用職員への職業差別訓示で批判

まとめ
  • 静岡県知事の川勝平太が、6月の県議会をもって辞職する意向を表明した。
  • 新規採用職員向けの訓示で「頭脳、知性の高い方」と発言し、職業差別と批判された。
  • 過去に度々不適切な発言を繰り返してきた経緯がある。
  • リニア中央新幹線の大井川工区の工事着工を認めず、JR東海と対立していた。
  • 川勝知事の辞職表明でも、リニア開業の大幅な遅れは避けられない見通し。

川勝知事

 静岡県の川勝平太知事が2日、県庁で記者団に対し、6月の県議会をもって知事職を辞すると表明した。これは、1日の新規採用職員向け訓示で、「毎日毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかとは違い、基本的に皆さんは頭脳、知性の高い方。それを磨く必要がある」と述べたことが職業差別と批判されたためである。

 川勝知事はこの発言について「差別的な意図や意識はない」と釈明したものの、「言葉が不十分だった。不愉快に思った人がいたら申し訳ない」と謝罪した。しかし、川勝知事には過去に不適切発言を繰り返してきた経緯があった。

 早稲田大教授や静岡文化芸術大学長を経て2009年に知事に初当選した川勝知事は、御殿場市を「コシヒカリしかない」と発言するなど問題視されてきた。昨年7月には県議会で不信任決議案が可決を免れたものの、「今後不適切な言動があれば辞める」と述べていた。

 また、川勝知事はリニア中央新幹線の大井川工区の工事着工を認めず、工事主体のJR東海と対立していた。JR東海はこのため先月29日、当初の2027年開業を断念すると表明している。川勝知事の辞職表明が出たものの、工期の大幅な遅れは避けられない見通しで、関係者は今後の情勢を注視することになった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】静岡県知事辞任 - 製造業界の支持離れとリニア開業の遅延

まとめ
  • 川勝知事の強力な支持基盤は、スズキ、ヤマハ、日産系列、ホンダ系列など県西部の大手製造業界にあった。
  • 県央部の鈴与など製造業界に加え、地元メディアも川勝知事を支持していた。
  • 一方で県東部では組織票が弱かったが、この地域は人口の多い都市は少なく、他候補には勝ち目がなかった。
  • 今回の失言が製造業支持基盤の離反を招き、辞任を選択した可能性が高い。
  • リニア開業遅延が核融合発電などの先端技術振興にも影響を及ぼすため、問題視されたとみられる。
川勝知事の強力な支持基盤として、スズキを始めとする静岡県の製造業界が挙げられます。

具体的には、スズキ、ヤマハ、ジャトコ(日産系列)、ユタカ技研(ホンダ系列)など県西部の大手企業や、鈴与をはじめとする県央部の企業が組織票として川勝知事を支えていたと考えられます。さらに地元紙のテレビ静岡や静岡新聞などのメディアも川勝推しであったようです。

一方で、県東部では組織票が弱かったものの東部には人口の大きな都市は少なく、そのため他の候補者には勝ち目がなかったようです。県全体として製造業の集積が非常に大きな静岡では、このような経済界からの影響力は無視できなかったでしょう。

つまり、川勝知事を支える有力な個人的支持基盤は、スズキの鈴木修会長や鈴与シオタニ会長など、静岡県を代表する大手製造業界の経営者層にあったと推測されます。この点が、川勝氏の長期政権を支えた大きな要因だったと考えられる次第です。

それしても、今回のこの失言はわざとらしいです。あまりにもレベルが低すぎるからです。ならば、なぜ辞職を決めたのでしょうか。

リニアの完成遅延が確定し中国からの指令を果たしたからかと邪推したくもなりたくなります。これに関しては、おそらく正しいと思うのですが、残念ながら確かめる術はいまのところありません。どなたか、解明していただきたいです。

片山さつき

もしくは片山さつき議員の国会での「リニア稼働が遅れると核融合発電のサプライチェーン作りも遅れる」という指摘の反響が大きかったかからでしょうか。

片山さつき議員の国会での指摘は以下の事実に基づいています。

核融合発電は、将来の重要なエネルギー源として期待されている次世代発電技術です。しかし、核融合炉を実用化するためには、高性能な超伝導材料などの先端部材が大量に必要となります。

これらの部材を製造・輸送するサプライチェーンを構築する上で、リニア中央新幹線の高速大量輸送力が極めて重要な役割を果たすと考えられています。リニアが開通すれば、核融合炉建設に必要な部材の効率的な調達が可能になるからです。

時速500kmで走行できる高速性と、大量の貨物を一度に輸送できる大容量性を兼ね備えたリニア中央新幹線が、核融合炉建設におけるサプライチェーンを支える重要な役割を担うと期待されているのです。時速500Kmなら、東京、札幌間は2時間と少しくらいです。

マックス・プランクプラズマ物理学研究所英語版)が設置したヘリカル型核融合実験炉

リニアが開通すれば、全国各地から必要な大型部材や資材を集約し、効率的に核融合炉建設現場に輸送できるようになります。人の往来もかなり迅速で、楽にできます。このため、リニアの開業が大幅に遅れれば、核融合発電実用化に向けた体制整備にも大きな影響が出ると危惧されているわけです。

つまり、リニア開業が大幅に遅れれば、核融合発電の実用化に向けたサプライチェーン整備にも著しい遅れが生じかねない、と片山議員は指摘したのだと理解できます。

先端技術を支える高速輸送インフラとしてのリニアの重要性を強調し、リニア問題の重大性を国会で訴えたものと考えられます。このように、リニア問題が単なる地域の問題にとどまらず、日本の科学技術振興全体に影響を及ぼす重要課題であることを示唆したものだったと言えるでしょう。

リニアモーターカー

リニアの開通は、核融合だけではなく、スズキを始めとする静岡県の製造業界にとっても、強力で迅速で、柔軟なサプライチェーンの高度化に寄与すると考えられます。さすがの川勝知事推しの、静岡県製造業界にとっても、臨界点を超えたので支持できなくなったか、川勝知事がそう考えた可能が高いと考えられます。

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