まとめ
- 国際機関は中国が目標の経済成長率を達成できない可能性があると指摘している一方、インド経済への見通しは前向きである。
- インドの実質GDP成長率は8.4%と高く、前年から加速している。中国との成長率の開きが中国政府を動揺させている。
- 自動車販売など他の経済指標でも、インドの成長ぶりが目覚ましい。
- インフレ率は5%と高めだが鈍化傾向にあり、中国のデフレ問題よりはましな状況。
- インフラ投資がインドの経済成長を後押ししており、中国がかつて経験したインフラ投資の効果を現在インドが享受している。
停滞する中国 AI生成画像 |
インドの実質GDP成長率は8.4%と高く、前年から加速している。中国に経済規模で追いつくにはまだ時間がかかるが、両国の成長率の差は中国政府を動揺させているに違いない。インド政府は国民に繁栄をもたらす約束を実現しているが、中国は同様の約束を果たせていない。
他の指標でも、インドの成長ぶりが目覚ましい。自動車販売は前年比37.3%増だった。IMFはインドの2024年度成長率予想を6.5%に上方修正したが、インド政府は7.6%と見込んでいる。
インフレ率は5%と高めだが、鈍化傾向にある。高インフレは経済不振の要因となるが、中国のデフレ問題よりはましである。
インドの経済成長を支えているのはインフラ投資で、かつて中国が享受した開発の恩恵を現在インドが受けている。必要な道路、住宅、港湾整備への公共投資が成長と生活水準向上をもたらしている。一方で中国は、すでにそうした過程を経ているため、同様の大きな効果は望めない。
両国の経済格差が縮まれば、中国は経済、外交、軍事面での政策を変更せざるを得なくなる可能性がある。特に太平洋進出を目指す中国にとって、台頭するインド経済は脅威となりうる存在だ。
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。
中国が「一帯一路」構想を打ち出した背景には、国内のインフラ整備余力が小さくなってきたことが大きな要因となっています。
1990年代以降、中国は高速道路、高速鉄道、空港、港湾などのインフラ投資を大々的に行い、経済発展を支えてきました。しかし、こうした国内投資の効果が一巡し、新たなインフラ需要が限られてきたのです。
【私の論評】インド主導の新たな地政学的勢力図が浮上し、中国は孤立を深めるか
まとめ
- 中国が一帯一路が行き詰まった場合、その空白部分にインドが食い込み、中国に代わる存在になる可能性が高い。
- 債務問題で疲弊した国々に対し、インドが中国に代わる融資や経済援助の選択肢となり、それによって中国の影響力がさらに薄れる可能性がある。
- インドの経済成長に伴い影響力が高まれば、インドが中心となり、中国を地政学的に孤立させる新たな国際秩序が生まれる可能性がある。
- インドは中国の南シナ海進出に強い警戒心を持っており、経済力の伸長とともにインド洋からの南シナ海への存在感を増す可能性がある。
- パキスタンなど、かつては中国に接近してきた国々が、経済的な実利を重視してインドに接近する動きが出てくるだろう。中国の伝統的な友好国・同盟国関係が崩れる可能性がある。
発展するインド AI生成画像 |
インドの経済発展が中国にとって地政学的な脅威となる可能性は以下の点から考えられます。
1. 影響力の拡大
経済力を背景に、インドは南アジア地域での影響力を一層高めるでしょう。これにより、中国の「一帯一路」構想への対抗勢力となりうる。特に、パキスタンなど伝統的な中国の友好国でさえインドに接近するかもしれません。
2. エネルギー安全保障を巡る対立
経済成長に伴い、インドのエネルギー需要は増大する一方です。中東やアフリカからの海上交通路の安全確保が重要になり、この地域での中国の存在感の高まりとぶつかる可能性があります。
3. アジア太平洋地域でのパワーバランス
経済力を梃子に、インドはアジア太平洋地域でより大きな発言力を求めるでしょう。中国の一党支配体制に対抗する民主主義勢力の中心となれば、この地域での勢力均衡を変える可能性があります。
4. グローバル・ガバナンスへの影響
国連などの国際機関や新興国グループでの発言力が高まれば、中国の主張に反するルール形成が進む恐れがあります。 特に人権などの価値観の対立が表面化しかねません。
5.軍事的対立への発展の可能性
領土・領海をめぐる対立が先鋭化すれば、国境地帯での小規模衝突が大規模化するリスクも排除できません。
このように経済力の伴わない影響力の拡大は、中国の地政学的利益と真っ向から対立する可能性があり、両国関係を大きく揺るがす要因となります。
1990年代以降、中国は高速道路、高速鉄道、空港、港湾などのインフラ投資を大々的に行い、経済発展を支えてきました。しかし、こうした国内投資の効果が一巡し、新たなインフラ需要が限られてきたのです。
中国の高速鉄道は新規の採算路線は見込めない状況 |
一方で、中国の建設・機械産業は過剰な生産能力を抱えるようになり、国内需要だけでは吸収しきれない状況に陥りました。
このため、中国は2013年に「一帯一路」を発表し、余剰生産能力を海外の成長市場でインフラ輸出に振り向けることで、国内産業の空洞化を回避しようとしたと考えられています。
つまり、中国が一帯一路を推進するのは、国内インフラ整備の完了と過剰生産能力の2つの事情が背景にあり、インドのように今後インフラ需要が見込める新興国に着目したものだと言えます。
債務問題が解決できなければ、中国の影響力低下、新規投資機会の喪失、国内外からの批判と信頼の失墜といったリスクが現実化し、構想の継続自体が困難になると考えられます。債務問題への対応が構想の命運を決める最大の鍵となっているのです。
中国の一帯一路構想 |
しかし、現在中国自身が国内で深刻な債務問題を抱えている状況下で、一帯一路における債務国の問題の解決を主導することは極めて難しいと考えられます。
中国国内では以下のような債務問題があります。
中国国内では以下のような債務問題があります。
- 地方政府債務の膨張
- 不動産デベロッパーの債務不払い問題
- 企業部門の過剰債務
- 金融機関の不良債権増加
このように、自国の債務問題で既に手いっぱいの状況にあり、財政出動の余力に乏しくなっています。
そうした中で、一帯一路の債務国に対して主体的に債務再構築や資金支援を行うことは現実的に極めて難しいでしょう。
さらに、中国自身の債務問題が一層深刻化すれば、一帯一路向けの出資・融資自体が制約を受ける可能性もあります。
中国が自国の債務問題に向き合えない状況が続けば、一帯一路の債務国支援は後手後手に回り、債務問題の解決が遅れ、ひいては構想自体の行き詰まりに直結する恐れが高まります。
一帯一路構想の失敗リスクが高まる中で、インドの経済成長は中国にとってさらなる地政学的脅威となる可能性があります。
そうした中で、一帯一路の債務国に対して主体的に債務再構築や資金支援を行うことは現実的に極めて難しいでしょう。
さらに、中国自身の債務問題が一層深刻化すれば、一帯一路向けの出資・融資自体が制約を受ける可能性もあります。
中国が自国の債務問題に向き合えない状況が続けば、一帯一路の債務国支援は後手後手に回り、債務問題の解決が遅れ、ひいては構想自体の行き詰まりに直結する恐れが高まります。
一帯一路構想の失敗リスクが高まる中で、インドの経済成長は中国にとってさらなる地政学的脅威となる可能性があります。
その理由は以下の通りです。
1. 影響力の空白を埋める存在
一帯一路の行き詰まりで、中国の経済的・政治的影響力が後退する空白が生じた場合、台頭するインド経済がその空白を埋める存在となりかねません。特に、南アジアや太平洋地域での影響力の空白は大きな懸念材料です。
2. 債務国の選択肢となる
一帯一路の債務問題で疲弊した国々に対し、インドは中国に代わる融資や援助の選択肢になる可能性があります。その場合、中国の影響力が一層薄れることになります。
3. 対中包囲網のリスク
経済成長とともにインドの影響力が高まれば、中国に対する封じ込め意図を持った国々と連携するリスクが増えます。日米などと協調し、中国を地政学的に孤立させる動きにもつながります。
4. 南シナ海での対立の深刻化
インドは中国の南シナ海進出に警戒を持っており、両国の海洋をめぐる対立が深刻化する恐れがあります。
5. パキスタンの接近を阻む
パキスタンはかつて中国に接近していましたが、経済的実利を求めインドに接近するリスクもあり得ます。
このように、経済力を背景にインド主導の新たな地政学的勢力図が浮上すれば、中国は孤立を深める恐れがあります。一帯一路の失敗と相まって、インドの経済成長は中国の地政学的リスクを一層高めることになるでしょう。
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