- トランプ関税の不確実性により具体的な対策は困難だが、需要ショックが予想されるため、一律給付金や減税、防衛・インフラ投資などの一般的な対応を準備し、経済の安定と長期強化を図るべきである。
- 日本はトランプの貿易不均衡是正要求に応え、攻撃型原潜購入、エンタメ企業買収、大学投資で協力姿勢を示し、関税リスクを軽減しつつ米日関係を強化する。
- 関税ショックは日本や他国の長年の問題解決の契機となり得るため、報復関税を避け、柔軟な対応で米中対立を静観しつつ、経済改革のチャンスと捉えるべきである。
需要ショックとは、経済全体や特定市場で商品・サービスの需要が急激に増減する現象だ。政策変更や自然災害、関税導入といった外部要因が、消費者や企業の購買行動を一変させる。需要が減れば、企業の売上が落ち、生産や雇用が縮小し、経済成長が鈍る。逆に需要が増えれば、供給不足や価格高騰を招く。トランプ関税の場合、輸出品の価格上昇で需要が減少し、経済にマイナスの需要ショックが予想される。
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トランプ関税の具体的影響は予測不能 |
トランプ関税の展開は予測不能だ。どの産業が、どの程度影響を受けるのか、誰も見通せない。具体的な対策を今打つのは難しい。しかし、関税が需要ショックを引き起こすことは確実だ。だからこそ、一律の給付金や減税といった一般的な対策を準備すべきだ。さらに、防衛装備の増産や老朽インフラの整備など、必要不可欠な分野への投資を優先し、経済への打撃を和らげつつ、長期的な国力強化を図る。これが核心だ。関税の不確実性に振り回されず、広範で柔軟な対応が求められる。
トランプは米国の貿易赤字(2024年で1.2兆ドル)を問題視し、是正を掲げる。日本は同盟国として協力姿勢を示し、関税リスクを軽減する必要がある。攻撃型原潜の購入、エンタメ企業の買収、大学への投資は、米国の輸出を増やし、米日関係を強化する有効な手段だ。これらは需要ショック対策を補完し、トランプの「相互的貿易」の要求に応える。
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米海軍の原子力潜水艦「オハイオ」の後部デッキに上面にある巡航ミサイル「トマホーク」の発射口 |
原潜購入は米国の防衛産業を支え、米日同盟を固める。日本のF-35購入(230億ドル)やAUKUSの原潜計画(30億ドル)は成功例だ。財政負担や米国の生産制約が課題だが、トランプの経済強化の目標に直結し、関税交渉を有利にする。エンタメ企業の買収は、米国のサービス輸出(2023年黒字2780億ドル)を拡大する。ソニーのコロンビア買収(1989年、34億ドル)は米コンテンツ輸出を増やした好例だ。中規模企業への投資なら、米国の投資審査(CFIUS)を回避しつつ、シナジーを生む。
大学への投資は、米国の教育サービス輸出(2023年450億ドル)を支援する。特に、リベラル系大学への公的支援縮小(例:2024年ハーバード大学の連邦資金削減議論)で、投資の可能性が広がっている。韓国のサムスンの研究投資(1億ドル)は参考になるが、ビザ制限が壁だ。研究協業なら、日本の協力姿勢を効果的に示せる。これらの施策は、赤字の大幅削減には及ばないが、トランプの経済強化の目標に応え、関税回避に役立つ。EUのLNG輸入拡大(2018年)や安倍氏の投資約束(2017年、1500億ドル)は、その成功を示す。
日本だけでなく、EUなど他国も同様の柔軟な対応が求められる。国柄を踏まえ、協力姿勢を示すべきだ。報復関税や非関税障壁の新設は愚策だ。中国は報復関税を選び、米国との対立を深めた。自ら墓穴を掘ったのだ。日本を含む他の国々は、柔軟な姿勢で関税ショックを和らげ、米中間の争いに収斂させるのが賢明だ。様子見が最上の策である。
この関税ショックは、実はチャンスかもしれない。日本や多くの国は、長年の問題を抱えている。解決には戦争のような大きなショックが必要だが、関税ショックはそれに次ぐ力を持つ。戦争と違い、人的被害や国土の荒廃はない。トランプ関税は、日本の停滞を打破し、問題解決の端緒となる可能性がある。柔軟に対応し、未来を切り開くべきだ。
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