まとめ
- 2025年1月20日就任のトランプ大統領が日本の消費税廃止に言及したとネットで話題だが、伝統メディアではあまり報じられていない。
- 「相互関税」を提案し、アメリカ製造業の再生と販売促進を目指す。メキシコやカナダに25%関税を検討中。日本・EUには付加価値税(消費税)は、関税と同じようなものと主張。
- 日本で消費税が廃止されても、アメリカ車の販売が大きく伸びるとは限らず、右ハンドル対応や販売網整備等が課題。
- アメリカ車は、燃費や品質で日本車に劣るイメージが根強く、アメリカ市場でも日本車や欧州車が人気。
- 関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本での販売拡大より企業判断に委ねる姿勢とみられる。筆者は消費税引き下げを期待。
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なにかと話題なトランプ大統領の言動は、今後自動車の分野でも影響が出そうだと関係者たちは語る。今すぐは難しいかもしれないが、もしかすると今後アメ車が日本で買いやすくなる可能性も!? |
さらにトランプ氏は「相互関税」という概念を提案し、相手国がアメリカ製品に課す関税と同じ水準をアメリカへの輸入品に課すことを検討中。この調査対象に消費税のような付加価値税が含まれ、トランプ氏は「付加価値税と関税は本質的に同じ」と発言したと報じられた。これがネット上で「日本の消費税廃止を要求している」と解釈され、議論を呼んでいる。しかし、消費税が廃止されただけでアメリカ車が日本で売れるようになるかは疑問だ。シボレー・コルベットやジープの一部は右ハンドル仕様があるが、ドイツ車ほど右ハンドル対応が一般的ではなく、アメリカ車ファンの中には「ジャパンナイズ」された仕様に抵抗を示す人もいる。
一方、アメリカ車を個人輸入する愛好家もおり、左ハンドル車を好む層も存在する。販売網の充実がなければ、消費税廃止だけでは販売が飛躍的に伸びるのは難しい。過去、バブル期には「燃費が悪く品質が劣るアメリカ車」とのイメージが報道で強調され、その印象が今も残る。現在のアメリカ車はダウンサイズが進み、1.5~2リッターのターボエンジンが主流だが、日本車に比べ燃費性能が劣るとの声もある。
アメリカ国内では、日本車や欧州車、韓国車が人気で、特にハイブリッド車が売れている。フォードは日本市場から撤退したが、ジープやGMは右ハンドル車を用意し堅実な展開を続ける。トランプ氏の関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本でのアメリカ車販売拡大を直接目指しているわけではないだろう。筆者は、消費税の大幅引き下げを庶民として期待している。
【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い
まとめ
- トランプ圧力によって、日本の消費税廃止が実施されれば、購買力が増え、GDPが3~5%押し上げられる可能性がある。
- 消費税撤廃で消費が活性化し、アップルやハーレーなど輸入が増え、米国製品の輸入も増える可能性がある。
- しかし、関税引き上げをすれで、景気が悪化し、米国製品が売れなくなる可能性がある。
- コルビーが防衛費GDP比3%超を主張、石破首相は増税を検討するかもしれないが、それでは経済低迷で米国製品の売上減少を招くことになる。
- 増税でなく国債で賄えば現世代の負担が減り、景気回復で米国に利点。関東大震災復興の鉄橋がその有効性を示す。
トランプ大統領が、「日本の消費税廃止を要求している」という話題については、最近このブログに述べたばかりである。その記事のリンクを以下に掲載する。
日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?
この記事では、日本が消費税を撤廃した場合、どうなるかについて述べた。以下にその部分を引用する。
日本で消費税が撤廃されれば、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まる。2025年3月時点で日本の消費税率は10%。これがゼロになれば、家計の実質的な購買力は大きく向上する。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際、個人消費が落ち込み、GDP成長率がマイナスに転じた。逆に、消費税を撤廃すれば、内閣府の試算によるとGDPは3~5%押し上げられる可能性がある。
景気が回復すれば輸入需要も増し、米国産の農産物やエネルギー、工業製品の需要が拡大するかもしれない。日本は米国農産物の主要輸出先であり、年間約150億ドルを輸入している。消費税撤廃で日本の消費が活性化すれば、米国の農家にとっても追い風となる。結果として、米国の対日貿易赤字(2024年で約600億ドル)も縮小する可能性がある。
しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らない。為替レートや中国、EUとの競争が影響し、米国製品が割高なら効果は限定的だ。
確かに、消費税を撤廃したからといって、急激にアメ車が売れるとは限らない。しかし、消費税があるよりは、売れやすくなるのは間違いない。
アメリカ製品といえば、車以外にも様々なものがある。パソコンなどのデバイスではアップル製品があり、バイクはハーレダビッドソンなど、根強い人気がある。ハーレーダビッドソンは、輸入二輪車市場でシェアトップを維持している。
これらだけではなく、他の製商品も米国企業が日本にあわせたマーケティング戦略をとれば、さらに売れる可能性は高まるだろう。
私自身も、50年代の米国音楽や、雰囲気が好きで、そのようなテーストのある店には、今でも足繁く通っている。ただ、そのような店は減りつつあり残念に思っている。
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50年代ジャズが聴ける"D-Bop"Jazz Club |
消費税を撤廃すれば、米国製品・商品は今以上に売れる可能性は高まる。しかし、関税があがると岸田、石破政権の経済差政策の不味さもあいまって、日本の景気は後退し、米国製品が今以上に売れる可能性はなくなるどころさらに売上は下がるだろう。一般にどこの国でも、景気が良くなると輸入が増え、景気が悪くなると輸入は減る。米国にとっては、短期的には関税は良いかもしれないが、中長期的には良くない。
このような状況のなか、エルブリッジ・コルビー元国防副次官補は、トランプ米大統領による国防総省政策担当次官への指名に伴い、上院の承認プロセスで、日本が防衛費をGDP比3%以上に早期に引き上げるべきだと主張した。
現在の日本の方針である2027年度の2%目標を「不十分」と批判し、中国や北朝鮮の脅威を考慮すれば2%では不合理だと述べた。また、日本は西太平洋の防衛で更さらに大きな役割を担うべきとし、台湾にはGDP比10%の防衛費を求めた。一方、石破茂首相は5日の参院予算委で、防衛費は他国の指示で決めるものではなく、積み上げによる慎重な議論が必要との立場を示した。
石破総理は、防衛費増の財源としては、消費税などの増税しかないと考えているのだろう。しかし、現状で増税すれば、日本経済は低迷し米国製品はますます売れなくなってしまうだろう。
いつまでも、増税に拘っていれば、ますます米国製品は日本国内で売れなくなるだろう。このジレンマを解決するには、財源を消費税などの増税ではなく、国債によって賄うことを考えるるべきだろう。
長期政策を実施を税金だけに頼ると、現世代が長期政策の全コストを背負い、将来世代がその恩恵をほとんど負担せずに受け取る構造になる。これは現世代に過剰な負担を強いるだけでなく、世代間の不公平を生み、経済的・社会的な歪みを引き起こす。現実は、財務省が主張する、将来世代への付け回しではなく、現世代が多大なコストを背負わせることを意味するのだ。国債を活用すれば、この負担を将来に分散させ、現世代と将来世代の間でより公平な分担が可能になる。
このことは、都内の江東地区に多い頑丈な鉄橋をみてもわかる、これらの橋梁は関東大震災の復興で実施されたものだが、この復興はほとんどが国債で賄われている。関東大震災で江東地区は灰燼に帰し、ほんどの木造の橋が燃えてなくなってしまった。それを復興で現在のような丈夫な鉄橋に架替えたのだ。
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江東新橋 |
さらに、これらの橋は、戦後80年を経ても今でも使われていて、多くの車両や人々が行き交い、私達は今でもその便益を受けている。今でも、江東新橋などの橋がテレビドラマなどにでてくるのを見かける。
トランプ大統領の関税圧力や防衛費増額圧力などが、日本の財政政策を結果として良い結果に導くならば、歓迎したい。ただ、米国の圧力で日本経済が復活するのではなく、やはり自発的にこれを行うべきだろう。
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