2025年3月5日水曜日

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道―【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道

まとめ
  • トランプ米政権とウクライナが鉱物資源(レアアース)の共同開発合意を計画し、トランプ大統領が3月5日の施政方針演説で発表意向を示したものの、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名に至っていない。
  • 会談での激しい対立によりウクライナ側がホワイトハウスから退去させられ、合意は未署名のまま流動的だが、ゼレンスキー氏は協議を続ける意向を示し、トランプ氏との言い合いを「残念」と表現した。

トランプ、ゼレンスキーの会談は決裂

 トランプ米政権とウクライナが鉱物資源に関する合意に署名する計画が報じられた。トランプ大統領は3月5日の施政方針演説でこの合意を発表する意向を示したが、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名は実現していない。

 会談では激しい言い合いとなり、ウクライナ側がホワイトハウスから退去させられた。合意はまだ署名されておらず、状況は流動的。ゼレンスキー氏は協議継続の意向を示しつつ、トランプ氏との対立を「残念」と述べた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

まとめ
  • 戦争は適切なタイミングで終えるべきだという鉄則があらゆる戦争に当てはまる。戦略的バランスを重視する米戦略家ルトワックは、ウクライナ戦争をロシアの誤算と膠着状態とみなし、住民投票による妥協的終戦を提案した。
  • 日露戦争は適切なタイミングで終わった好例だ。日本は成果を上げつつ国力の限界で1905年に終戦を選び、歴史家半藤一利が「絶妙な判断」と評価する。
  • 戦争が長引くと、ゼレンスキーの権力維持や西側の戦争継続派(EUリベラル派、米民主党、ネオコン)の利権が強まる。ウクライナ戦争では支持率65%を維持するゼレンスキーだが、終戦後、パナマ文書疑惑や経済難で地位が危うくなるのは確実。
  • 第一次世界大戦やベトナム戦争は長期化で利権と私的動機が顕著になり、適切なタイミングを逃した。軍需産業の儲けが戦争を延ばしたと解釈できる。
  • ウクライナ戦争はルトワックの提案を逃し、2025年3月時点で利権(支援金1830億ドルやロッキード株価上昇)が肥大化。トランプの終戦主張は戦争継続派と対立し、マスコミが追随する中、終戦の決断が求められている。
戦争などというものは、どの時代でもどの場所でも、「適切なタイミングでやめるべき」と私はは思う。どんな戦争にも当てはまる、シンプルで揺るぎない鉄則だ。特に戦争が長引いた場合はそうだ。

米国の戦略家ルトワック氏

アメリカの戦略家エドワード・ルトワックは、ウクライナ戦争を冷徹に見つめ、ロシアのプーチンが「ウクライナを一気に叩ける」と見誤った結果、双方が限界にぶち当たって膠着状態に陥ったと言う。

2023年7月のUnHerd記事「Why no one can end the Ukraine war」では、「ウクライナがモスクワを落とせるわけないし、ロシアだってキエフを奪えやしない」とバッサリ切り捨てている。彼は現実を直視し、住民投票でドネツクとルガンスクの帰属を決めて、ロシアに他の占領地から手を引かせる案をぶち上げた。

2022年4月の記事「How the Ukraine war must end」で、核戦争の火種を消しつつ、勝ち負けにこだわらない戦略的バランスを説く。この視点は、戦争の目的と損失を天秤にかけ、ズルズル長引かせて消耗する愚を避けるべきだと示す。まさに「適切なタイミング」の証明だ。

歴史を振り返れば、日露戦争(1904~1905年)がその典型だ。日本は旅順を落とし、日本海海戦でロシアを叩きのめし、朝鮮半島と南満州の利権を握った。だが、戦費は国家予算の2倍に膨れ上がり、16万もの命が消えた。そこで1905年、ポーツマス条約でスパッと戦争を終えた。

歴史家の半藤一利は「勝ちすぎず負けすぎず、絶妙なところで引いた」と言い切り、国力のピークで終わらせた判断が日本を救ったと断言する。ルトワックの目で見ても、ロシアを完膚なきまで潰すような無茶をせず、現実的な成果で手を打った好例だ。

日露戦争で用いられた日本陸軍の28センチ榴弾砲

ところが、戦争が長引くと話は変わってくる。ウクライナ戦争は2022年から2025年3月まで続き、死傷者が公式で5万人超、非公式なら数十万人とも言われる中、ゼレンスキーの支持率は戦争前の20%台から今や65%をキープしている(キーウ国際社会学研究所)。

だが、戦争が終われば、汚職の闇が噴き出し、経済はどうしようもないほど落ち込んでいる。2016年のパナマ文書や2021年のパンドラ文書で暴露されたゼレンスキーのオフショア口座疑惑が再燃するのは確実だ。ゼレンスキーは大統領になる前、テレビ会社「クヴァルタル95」の稼ぎを英領バージン諸島などで隠し、4000万ドル以上を動かしていたとされる。戦争が終われば、この汚点が国民の怒りを呼び、彼の地位はガタガタになるだろう。それが戦争を続ける理由かどうかは定かではないが、可能性は大きい。

他にも、戦争が長引くと私利私欲や利権が顔を出す。第一次世界大戦(1914~1918年)は、当初の目的が霞み、消耗戦に突入。軍需産業や指導者の権力維持が裏で糸を引いた。ドイツは1918年に停戦を選んだが、それまでのグダグダで経済はボロボロ、ヴェルサイユ条約でさらに締め上げられ、それが後の第二次世界大戦の引き金の一つにもなったとされる。

ルトワックなら「タイミングを逃した」と言うだろうが、戦争継続派の利権が遅らせたとも考えられる。アメリカの軍需生産は1914年の1億ドルから1918年には20億ドル超に跳ね上がり(米国商務省データ)、戦争が一部の連中の飯の種だったのは明らかだ。

ベトナム戦争(1955~1975年)もそうだ。アメリカは共産主義を潰そうと20年戦って、死者5万8000人、戦費3兆ドルをドブに捨て、南ベトナムが崩れて終わりだ。歴史家のスタンリー・カーノウは「勝てないと分かった時点でやめるべきだった」と喝破するが、軍産複合体、ロッキードやボーイングの儲けが戦争を引っ張ったとしか思えない。

ウクライナ戦争に戻れば、ルトワックの「住民投票で終わらせる」が正しいタイミングだったはずだ。だが、2025年3月までダラダラ続く今、ゼレンスキーは権力を守るために、西側の「戦争継続派」――EUのリベラル派、米民主党、ネオコン――は軍需産業の儲けや地政学的野心のために、戦争をやめさせない。

フォンデアライエン次期EU委員長はマクロン仏大統領

支援金1830億ドル(米国)や1450億ドル(EU)が軍需や復興企業に流れ、ブラックロックが暗躍する状況は、長期化が利権を大きくしている証だ。ロッキードの株価だって、2022年の350ドルから500ドル超に跳ね上がってる。

「戦争は適切なタイミングでやめるべき」は、ルトワックの現実主義から見れば正しい。日露戦争のように、成果と損失を見極めて終わらせるのが賢い道だ。だが、長引けばゼレンスキーの私的動機や利権が絡み、タイミングを逃す。

今のウクライナがまさにそれだ。ルトワックが言うように、ロシアもウクライナも適切な瞬間を逃したのかもしれない。もうグズグズしてる場合じゃない。トランプ大統領が「終わらせろ」と叫ぶのも当然だ。だが、ゼレンスキーは権力を握り続けたいし、西側の戦争継続派とは真っ向からぶつかる。マスコミがトランプを叩くのも、そいつらの尻馬に乗っているだけだ。こうしている間にも、多くの人々が、亡くなり、重症を負っている。結局、戦争を終わらせるのは誰かが見極めるしかない。そこに真実がある。

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