まとめ
- 海上自衛隊の護衛艦「あきづき」が初めて単独で台湾海峡を通過、その後南シナ海やフィリピン海域でアメリカなどと共同訓練を実施。
- 台湾海峡は国際水域とされるが中国が反対しており、日本による通過は中国の軍事圧力をけん制する狙い。
【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域での団結誇示
まとめ
- 中国が昨年12月に沖縄周辺で軍艦と海警船を共同航行させ、尖閣諸島近辺で武装した海警船を展開するなど挑発を強めており、石破首相は危機感から「あきづき」の台湾海峡通過を極秘裏に決断したとみられる。
- 「あきづき」は通過後、2月5日に南シナ海で日米豪比共同訓練、2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加し、フランス空母の参加や沖縄寄港で三カ国の結束を示した。
- トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年談話で日米同盟を称賛し、中国への対抗姿勢を打ち出し、2月7日の石破首相との会談で確認した「台湾海峡の安定」を補強した。
- 「あきづき」の行動とトランプの談話は直接関係ないようだが、中国への対抗と日米連携の強化という共通目標で間接的につながり、タイミングの近さがその意味を増幅させた。
- 日米仏の協調が「あきづき」の通過、「パシフィック・ステラー」、トランプ談話で一体となり、インド太平洋での団結を誇示し、中国に強いメッセージを突きつけた。
関係閣僚の声を聞き、最終的にGOサインを出したが、その計画は極秘裏に進み、事前に一言も漏らさなかった。日本の動きに目を光らせる中国に悟られないよう、緻密に仕組まれた作戦だったのだろう。親中的ともみられた、石破政権にも抗えない何かがあったものとみられる。
「あきづき」は台湾海峡を抜けた後、2月5日に南シナ海で日米豪比4カ国の共同訓練に飛び込み、息つく間もなく2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加した。この訓練は2月10日から18日にかけて繰り広げられた大軍事演習である。
「あきづき」の動きは日本が独自に決めたもので、トランプの談話とは別物と見られている。アメリカと事前に相談した可能性はあるが、確かな証拠はない。それでも、両者は中国への対抗と日米の結束という同じ旗の下に立っている。「あきづき」の件は、トランプは日米首脳会談の直前においてすでに了解していただろう。このことがあったから、トランプは石破に対して塩対応はできなかったのだろう。ゼレンスキーとの会談とは対照的だった。
結局、直接の因果関係はないかもしれないが、戦略的には深い結びつきがあるのだ。日米仏が中国との対決を見据え、「あきづき」の台湾海峡通過、「パシフィック・ステラー」、そしてトランプの談話がまるで一本の糸でつながったように響き合い、インド太平洋での団結をこれでもかと誇示する流れができた。意図を超えたところで、このつながりは戦略の文脈で生まれ、歴史と今を結ぶ力強いメッセージとして、世界のリーダーたちに轟くものとなったことだろう。中国に対しては、これまでないくらいの力強いメッセージとなったのは間違いないだろう。
「あきづき」は台湾海峡を抜けた後、2月5日に南シナ海で日米豪比4カ国の共同訓練に飛び込み、息つく間もなく2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加した。この訓練は2月10日から18日にかけて繰り広げられた大軍事演習である。
アメリカの空母「カール・ヴィンソン」が2月17日、Facebookで「かが」やフランスの「シャルル・ド・ゴール」と並ぶ訓練の写真を公開した。そこには「スーパーホーネット」「ライトニングII」「ラファールM」といった戦闘機が勢揃いし、「あきづき」も含まれる艦隊が堂々と海を切り裂く姿が映し出されている。何とも迫力のある光景だ。
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カール・ビンソンの公式Facebookで公開された写真の一枚 |
フランス空母が太平洋に姿を見せたのは1960年代以来初めてで、インド太平洋への本気度を世界に示す出来事である。2月13日には「シャルル・ド・ゴール」の艦隊が沖縄の米海軍ホワイトビーチに堂々と寄港し、「クレマンソー25(パシフィック・ステラー参加を含む、仏の空母打撃群の太平洋での行動作戦の仏の呼称)」の一環として三カ国の絆をこれでもかと見せつけた。
さらに、トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年を祝う談話をぶち上げ、2万人の負傷者と6000人以上の死者を出したあの戦いをアメリカの誇りと讃え、日米が敵から盟友へと変わった軌跡を熱く語った。「自由を守る未来を築く」と締めくくり、中国に対する結束を鮮明に打ち出している。2月7日の石破首相との会談で「台湾海峡の安定」を確認した流れともしっかりとつながる力強いメッセージだ。歴史を盾に今を語る、トランプらしい豪快な一撃である。
「あきづき」の動きは日本が独自に決めたもので、トランプの談話とは別物と見られている。アメリカと事前に相談した可能性はあるが、確かな証拠はない。それでも、両者は中国への対抗と日米の結束という同じ旗の下に立っている。「あきづき」の件は、トランプは日米首脳会談の直前においてすでに了解していただろう。このことがあったから、トランプは石破に対して塩対応はできなかったのだろう。ゼレンスキーとの会談とは対照的だった。
「あきづき」が海峡を抜け、日米首脳会談で方向性が固まった直後、トランプが談話で歴史を引き合いに出して補強した形だ。中国はこれを連続したプレッシャーと受け止めたかもしれないし、タイミングが近かったことでその意味はさらに大きく響いた。
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硫黄島80年で、談話を発表したトランプ大統領 |
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