2025年2月18日火曜日

日米仏の「空母」共同訓練を実施 空母と艦載機が一同に会したレアショットを公開―【私の論評】仏軍空母、60年ぶりの太平洋展開が示すインド太平洋戦略の新局面

日米仏の「空母」共同訓練を実施 空母と艦載機が一同に会したレアショットを公開

まとめ
  • アメリカ海軍の「カール・ヴィンソン」、海上自衛隊の「かが」、フランス海軍の「シャルル・ド・ゴール」が、2025年2月10日から18日にかけてフィリピン東方海域で日米仏共同訓練「パシフィック・ステラー」を実施し、その様子が「カール・ヴィンソン」の公式Facebookで公開された。
  • 訓練の目的は、日米仏海軍の相互運用性の向上、アメリカ海軍の能力の発信、地域の安定への貢献、そして持続的な影響力の強調にある。

カール・ビンソンの公式Face Bookに掲載された写真

アメリカ海軍の原子力空母「カール・ヴィンソン」の公式Facebookは2025年2月17日、海上自衛隊の護衛艦「かが」とフランス海軍の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」との合同訓練の画像を公開した。この訓練は、2025年2月10日から18日にかけてフィリピン東方の海域で行われる日米仏共同訓練「パシフィック・ステラー」の一環として実施されたものである。

訓練中の画像には、「カール・ヴィンソン」、「シャルル・ド・ゴール」、「かが」の3隻が他の艦艇を従えて並んで航行する様子が映し出されており、さらに「カール・ヴィンソン」のF/A-18F「スーパーホーネット」、F-35C「ライトニングII」、E-2D「アドバンスドホークアイ」や、「シャルル・ド・ゴール」の「ラファールM」といった艦載機が揃った場面も投稿されている。

今回の訓練の目的について、「カール・ヴィンソン」の公式Facebookは、アメリカ、日本、フランス海軍間の相互運用性を向上させるとともに、アメリカ海軍の能力を示し、地域の安定への貢献を促し、さらには持続的な影響力を強調することにあると説明している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】仏軍空母、60年ぶりの太平洋展開が示すインド太平洋戦略の新局面

まとめ
  • 「パシフィック・ステラー25」は中国の海洋進出を念頭に、日米仏の協力強化を図る多国間共同訓練である。
  • フランスの「クレマンソー25」任務と戦略的に連携し、日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想を具体化する狙いがある。
  • フランスの空母展開は1960年代以来初であり、沖縄のホワイトビーチへのフランス艦船の寄港を通じて戦略的影響力を示している。
  • フランス領ポリネシアなどの海外領土を背景に、フランスはインド太平洋地域での関与を強めている。
  • 本訓練は、単なる軍事演習にとどまらず、インド太平洋地域の安定に向けた具体的な行動である。日米仏の協力関係を強化し、戦略的な抑止力を高めることで、この地域の安全保障環境を守る重要な訓練であると言える。

吉田圭秀統合幕僚長

「パシフィック・ステラー25」は、現在の国際情勢において極めて重要な多国間共同訓練である。中国の海洋進出が加速する中、日米仏の連携を示すことで、地域の安定を維持し、抑止力を高める狙いがある。吉田圭秀統合幕僚長も指摘するように、同盟国との協力強化は安全保障上、不可欠な要素である。

この訓練は、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた具体的な取り組みであり、フランスの「クレマンソー25」任務(後述)と戦略的利益が一致していることを示している。日米仏の艦艇が集結することで相互運用性が向上し、日本の防衛能力の向上にも大きく寄与する。

フランス空母の太平洋展開は1960年代以来初となる。これは、フランスのインド太平洋地域への関与を強く示す出来事でもある。実際、フランス軍の活動は沖縄県内でも活発化しており、2025年2月13日にはフランス海軍の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」を中心とする艦隊の一部が、沖縄県うるま市の米海軍施設ホワイトビーチに寄港した。これは「クレマンソー25」の一環であり、三カ国の協力関係を視覚的に示す象徴的な出来事となった。

クレマンソー25のシンボルマーク

「クレマンソー」とは、フランス空母シャルル・ド・ゴールを中心とする空母打撃群の長期任務全体を指す名称である。フランス側にとって、「パシフィック・ステラー」への参加は「クレマンソー25」任務の一環という位置づけであり、この地域における戦略的影響力を高める狙いがある。

ホワイトビーチに寄港したのは、フリゲート艦と最新鋭補給艦「ジャック・シュヴァリエ」である。一方、原子力艦である空母「シャルル・ド・ゴール」は寄港していない。これは手続き上の問題があると推測される。これらの艦船は、国連安保理の制裁決議に違反する北朝鮮の密輸行為を監視する目的で、国連軍地位協定に基づき入港したとされている。

フランス大使館は、これらの動きについて「このオペレーションは、パートナー国や同盟国の支援のもと、フランス軍の自律を示している」とコメントしている。これは単なる軍事演習にとどまらず、フランスの戦略的関与の明確なメッセージでもある。

フランスは南太平洋に海外領土を持ち、その中でも特に重要なのがフランス領ポリネシアである。この地域は、1842年から順次フランス領となり、1958年に海外領土として確立された。ソシエテ諸島、トゥアモトゥ諸島、マルケサス諸島などを含み、首都はタヒチ島のパペーテである。

フランスが1960年代に太平洋に空母を展開した背景には、当時の核実験政策が関係している。フランス領ポリネシアのムルロア環礁は1966年から1996年まで核実験場として使用されていた。当時の空母展開は、核実験を支援するとともに、フランスの軍事的プレゼンスを示す目的もあった。

「パシフィック・ステラー25」は、単なる軍事演習にとどまらず、インド太平洋地域の安定に向けた具体的な行動である。日米仏の協力関係を強化し、戦略的な抑止力を高めることで、この地域の安全保障環境を守る重要な訓練であると言える。

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