まとめ
- 選挙結果と主要政党の動向:ドイツ総選挙でCDU・CSUが29%で首位、AfDが21%で第2党、SPDが17%で第3党、緑の党が12%を獲得。メルツ氏が勝利宣言し、SPDとの大連立が有力視されるが、過半数には3党以上が必要な可能性も。
- 争点と政策:経済再生と移民対策が焦点となり、メルツ氏は規制見直しや減税を公約、AfDは移民への不安を吸収して支持を拡大。議席獲得には5%以上の得票が必要で、議席数は630に削減された。
ドイツで23日に行われた総選挙では、保守系のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が予想得票率29%で首位となり、メルツ党首がベルリンで勝利を宣言した。右派のドイツのための選択肢(AfD)が21%を獲得し第2党に躍進し、ショルツ首相の社会民主党(SPD)は17%で第3党、緑の党は12%の見込み。
低迷する経済の再生や移民対策が主要争点となり、メルツ氏は環境規制の見直し、減税、エネルギー価格引き下げを公約し、ドイツのための選択肢(AfD)は移民による犯罪への不安を背景に支持を拡大した。メルツ氏は連立交渉を急ぐ意向を示し、社会民主党(SPD)との大連立が有力だが、議席過半数確保には3党以上の連立が必要な場合も。議席獲得には5%以上の得票が必要で、連邦議会の議席数は733から630に削減された。
【私の論評】ドイツ政局不安定:連立政権危機とエネルギー供給不安・移民問題がEU・日本に与える衝撃
まとめ
- CDU/CSUは得票率29%を記録し最大政党となったが、過半数未達のため連立政権樹立が必要であり、SPDや緑の党との調整が極めて困難である。
- AfDは得票率21%を記録し、移民受け入れに対して厳格な姿勢を示すことで議会内の支持を拡大し、政治の分極化を一層深刻化させた。
- 政局の不安定は、経済再生や移民対策といった主要改革の先送りを招くだけでなく、環境規制の見直し、減税、エネルギー価格の引き下げ策も大幅に遅延させる恐れがある。
- エネルギー政策の決定先送りにより、再エネ依存政策の見直しが遅れ、国内のエネルギー供給不安定と価格高騰が生じ、EU全体やグローバルなサプライチェーンにも悪影響を及ぼす可能性がある。
- ドイツの政局不安定は、日本にとっても重要な貿易相手国としての協力関係に影響を与え、輸出や投資、技術協力に悪影響を及ぼすとともに、過去の極端な移民政策の是正も早急に取り組むべき課題である。
ドイツの政局は、今、激動の渦中にある。総選挙ではCDU/CSUが得票率29%を獲得し最大政党となったものの、単独で過半数に達しなかったため、連立政権の樹立は避けられない。メルツ党首は連立交渉を迅速に進める意向を示すが、SPDとの大連立が現実的な選択肢である一方、SPDの支持率は17%に留まり、また緑の党との協力についてはCSU内に否定的な意見が根強いため、連立内での政策調整は極めて困難な状況にある。
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ドイツでは2015年アンゲラ・メルケル首相(当時)が100万人以上の移民受け入れを推進する旨を公表 |
さらに、AfDが得票率21%を記録し第2党に躍進した結果、移民受け入れに対して厳しい姿勢を示す動きが議会内で一定の支持を集め、政治の分極化は一層深刻な局面を迎えている。この動向は、CDU/CSUが移民政策や経済政策において、より保守的な立場を強固にする要因となり、連立交渉の複雑さを一層増すと同時に、必要な改革の先送りを招く危険性を孕んでいる。
政局の不安定さは、経済再生や移民対策といった主要争点における具体的な改革の遅延を引き起こすのみならず、エネルギー政策にも深刻な影響を及ぼす。ドイツ経済が低迷する中、環境規制の見直し、減税、エネルギー価格の引き下げなどの施策が打ち出されているが、連立パートナー間の意見の相違が具体的な政策決定を大いに遅らせる懸念がある。
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欧州のエネルギーコストは高止まりしているが、最近のドイツはさらに顕著に |
政局の混迷により、再エネに過度に頼る政策の見直し等、エネルギー政策の見直しに関する決定が先送りされる可能性が高まり、国内のエネルギー供給が不安定となる。結果として、エネルギー価格の高騰が続き、企業や家計に計り知れない負担を強いることになる。
ドイツはEUの経済大国であり、その政局の乱れはEU全体のエネルギー市場にも連鎖的な悪影響を及ぼす。ドイツに起こる供給不足は、EU全域でエネルギー価格の上昇と経済成長の鈍化を引き起こし、さらにはグローバルなサプライチェーンにも影を落とす恐れがある。
ドイツはEUの経済大国であり、その政局の乱れはEU全体のエネルギー市場にも連鎖的な悪影響を及ぼす。ドイツに起こる供給不足は、EU全域でエネルギー価格の上昇と経済成長の鈍化を引き起こし、さらにはグローバルなサプライチェーンにも影を落とす恐れがある。
加えて、ドイツは日本にとっても重要な貿易相手国であり、特に自動車産業や機械産業における協力関係は極めて密接である。ドイツの政治的不安定、経済低迷、そしてエネルギー価格の上昇は、日本の輸出、投資、技術協力、共同研究開発に多大な悪影響をもたらすだろう。さらに、ドイツ政局の混乱がEUの政策決定に波及すれば、日本とEUとの貿易交渉や経済連携協定にも遅れが生じ、国際経済の枠組み全体が揺らぐ可能性がある。
こうした状況下で、ドイツの政局が不安定なまま推移すれば、政治の分極化や連立内の政策調整の難航が、経済再生や移民対策の改革を大きく遅延させるのみならず、エネルギー政策のみなおし等の決定先送りにより、エネルギー供給の不安定化と価格高騰を招く結果となる。
こうした状況下で、ドイツの政局が不安定なまま推移すれば、政治の分極化や連立内の政策調整の難航が、経済再生や移民対策の改革を大きく遅延させるのみならず、エネルギー政策のみなおし等の決定先送りにより、エネルギー供給の不安定化と価格高騰を招く結果となる。
これにより、ドイツ国内のみならず、EU、日本、さらには世界経済にまで深刻な悪影響が及ぶ。ドイツにおいては、気候変動対策への拘泥からの脱却、エネルギー供給の安定と価格抑制、さらには失敗が誰の目にも明らかとなり、社会不安・不安定の元凶となった過去の移民・難民政策の見直しが、今後の最重要課題として優先されるべきだ。
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