2025年2月20日木曜日

「硫黄島の戦い」から80年 トランプ大統領が談話「日米同盟は平和と繁栄の礎となった」―【私の論評】トランプのゼレンスキー塩対応と硫黄島80周年談話の驚くべき連動を解き明かす

「硫黄島の戦い」から80年 トランプ大統領が談話「日米同盟は平和と繁栄の礎となった」

まとめ
  • トランプ大統領は「硫黄島の戦い」80周年を記念し、1945年の戦いで旧日本軍が約2万2000人の犠牲を出して敗北したことを振り返り、アメリカの自由が若者たちによって守られたと談話で述べた。
  • 日米が過去に激しい戦争を戦ったにもかかわらず、現在の日米同盟はインド太平洋地域の平和と繁栄の礎となっていると強調した。
「硫黄島の戦い」から80年の談話を公表したトランプ 背景は硫黄島のすり鉢山に米国旗を立てた米兵の銅像 AI生成画像

 トランプ米大統領は、太平洋戦争末期に日米両軍が激突した「硫黄島の戦い」から80年が経過した2月19日、談話を発表した。この戦いは1945年2月19日から始まり、旧日本軍が約2万2000人という甚大な犠牲を出し玉砕した歴史的な戦闘である。

 トランプ大統領は談話の中で、「アメリカの自由は、硫黄島の戦いで旧日本軍を打ち破ったアメリカの勇敢な若者たちによって守られた」と当時を振り返った。その上で、「日本とアメリカはかつて残酷な戦争を戦ったにもかかわらず、今日の日米同盟はインド太平洋地域における平和と繁栄の礎として確立されている」と述べ、同盟の意義を強く強調した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプのゼレンスキー塩対応と硫黄島80周年談話の驚くべき連動を解き明かす

以下に「トランプ談話に関する分析」と、談話の本文及びその翻訳を掲載します。

まとめ 
  • トランプ大統領が2025年2月19日、硫黄島の戦い80周年談話とゼレンスキー批判を同日に行ったのは偶然ではなく、外交と国内アピールを絡めた戦略だ。
  • 硫黄島談話は日米同盟を称賛し、アメリカの強さと「アメリカ第一主義」を強調する愛国的なメッセージである。
  • ゼレンスキー批判はウクライナ戦争の早期終結を求めるトランプの外交姿勢を示し、同盟国を選びつつアメリカの利益を優先する意図が透ける。
  • 中国との対峙を最優先とするトランプは、ウクライナ問題を片付け、日本との連携を強化してインド太平洋に集中する狙いがある。
  • 日本への間接的な警告も含まれ、アメリカの優先事項に協力しない場合、同盟関係に影響が出ると示唆している。 
トランプ大統領が2025年2月19日、硫黄島の戦い80周年を記念する談話を発表した。同日にSNSでウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙をしていない独裁者」とぶった斬った。この二つ、無関係ではない可能性がある。タイミングがドンピシャであるし、トランプの政治スタイルを考えれば、外交戦略と国内メッセージが絡んだ一石二鳥の仕掛けだと見る余地がある。
安倍首相は日本の首相として初めて、米上下院合同会議で演説した

まず、硫黄島談話だ。歴史的な勝利を前面に持ち出し、日米同盟の重みを強調する。アメリカの軍事力の偉業を自慢し、今の同盟関係を褒めちぎる内容だ。トランプの「アメリカ第一主義」と愛国心がむき出しで、保守層や退役軍人に響く、胸が熱くなるメッセージだ。ここには歴史を活かす工夫がある。
2015年4月29日、安倍晋三首相が米議会で「希望の同盟」と演説したことを思い出せ。あの時、安倍首相は硫黄島の戦いを引き合いに出し、敵だった日本とアメリカが今や同盟国になった「歴史の奇跡」を称えた。リンカーンのゲティズバーグ演説をオマージュし、「人民のための政治」を引用して戦死者の犠牲に意味を持たせ、未来の絆を描いた。トランプも同じだ。硫黄島を称え、日米の結束を強調する歴史の使い方が巧みである。
一方、ゼレンスキーへの塩対応はどうだ。ロシアとの停戦協議でウクライナがゴネる姿勢に、トランプが苛立っているのが透ける。彼の外交の軸、つまりウクライナ戦争をさっさと終わらせたい立場を正当化する一発だ。この二つが同日に飛び出した意味は大きい。歴史と今をつなぎ、リーダーシップを際立たせる。トランプの狙いがそこにあるとしか思えない。
具体的に見てみよう。硫黄島談話では、日米同盟を「インド太平洋の平和と繁栄の礎」と位置づける。日本との絆を称賛し、アジアでのアメリカの影響力を誇示する。これは外交のシグナルだ。ウクライナ問題で欧米がギクシャクする中、同盟国との結束を打ち出す。一方で、ゼレンスキーへの冷淡さは鮮明だ。トランプのSNS、Truth Socialで「独裁者」と切り捨て、2月18日の会見でも「戦争を自分で始めた」と言い放つ。ウクライナ支援に懐疑的で、ロシアとの交渉を優先する姿勢が鮮明だ。日本への敬意とウクライナへの批判。この対比が、同盟国を選びつつアメリカの利益を最優先するトランプの姿を浮かび上がらせる。
トランプはこう考えている可能性がある。超大国アメリカでも、二正面、三正面で戦うのはキツい。中国との対立を最優先に据えるなら、ロシアやウクライナ、EUが足を引っ張るのは我慢ならない。中国の「残虐で身勝手な価値観」が世界に広がるのを防ぐ。それが大義だ。EUやウクライナ、ロシアにも利するはずなのに、なぜ邪魔するのか。トランプは苛立つ。そんな思いが両方の発言に滲む。
硫黄島談話で日米同盟を強調するのは、中国への対抗軸として日本の役割を再確認するものだ。ゼレンスキー批判は、ウクライナ問題にリソースを食われることへの警告である。トランプにとって、ウクライナ戦争の長期化やEUの対ロ強硬姿勢は、中国への集中力を削ぐ厄介者だ。それを排除する意図が両方に隠れている。
さらに、日本への警告もあると見える。硫黄島で日米同盟を称賛しつつ、ゼレンスキーに冷酷な態度を取る。これは日本への間接的な一言だ。「アメリカの優先事項に逆らうなら、同盟関係も危ういぞ」と。安倍の演説を思い出せ。彼は硫黄島の戦いで戦った米兵と日本兵の子孫が並んで聴いている姿を「歴史の奇跡」と呼び、第2次大戦記念碑への敬意を述べた。戦死者の犠牲を称え、未来の協力を説いたのだ。トランプも硫黄島を称えるが、その裏には、日本の政権が特に対中戦略で安倍路線を継承しない場合、牙をむく可能性もあるということだ。
日本とアメリカの反応も対照的だ。日本では、ゼレンスキー批判に反発が渦巻く。朝日新聞(2025年2月20日)は「トランプの独善が露呈」と切り捨てた。北方領土問題を抱える日本にとって、ウクライナ侵攻はアジアの安全保障と直結する。一方、アメリカでは支持層がゼレンスキー批判を歓迎だ。Fox News(2025年2月20日)は「ウクライナに税金を使うな」と煽り、保守派から拍手喝采だ。だが、民主党やリベラル層は「ロシアへの譲歩は危険」と反発。国内は真っ二つだ。この違いが、トランプが日本より国内の支持を優先していることを示す。
タイミングも見逃せない。2025年2月19日は硫黄島の戦い開始から80年だ。歴史的な節目である。同時に、ロシアとアメリカの停戦協議が進む中、ゼレンスキーが前日(2月18日)に不満をぶちまけた直後でもある。トランプはこの日に硫黄島談話を出し、ゼレンスキーを叩く。歴史の勝利でアメリカの強さを誇り、ウクライナ問題で交渉力を正当化する二重のメッセージだ。硫黄島では犠牲を払って勝ったが、ウクライナでは犠牲を避け、早く終わらせたい。それがトランプの立場だ。中国との対峙を優先するなら、ウクライナを片付けてインド太平洋に集中する。それが戦略の核心である。
トランプは歴史を政治の道具にするのが上手い。1期目には南北戦争の記念碑問題で愛国心を煽り、支持層を固めた。今回も硫黄島80周年を活用し、愛国心を呼び起こす。同時に、ゼレンスキー批判で「現実主義」をアピールする。「独裁者」発言はウクライナが選挙を延期している状況(2022年ロシア侵攻以降)を指すが、実利を優先するトランプらしい。「自由を守った若者たち」と硫黄島談話で言い、「選挙をしない独裁者」とゼレンスキーを叩く。自由と独裁の対比で外交観を際立たせる。中国との対立を大義とするなら、ウクライナやEU、日本が足を引っ張るのは我慢ならない。そんな思いが隠れている。
硫黄島80周年談話とゼレンスキー批判は無関係ではない。トランプの政治的アイデンティティがそこにある。歴史への敬意、アメリカの強さの誇示、同盟国との選択的協力、ウクライナでの独自路線。それが両者に映し出される。安倍首相が「希望の同盟」で歴史を援用し、日米の絆を強調したように、トランプも硫黄島を活用する。ただし、その裏には厳しい現実主義がある。中国との対峙を最優先とするなら、硫黄島談話で日本との連携を固め、ゼレンスキー批判でウクライナ問題を切り上げる。それがトランプの狙いだ。
日本への警告も込めつつ、国内基盤を優先する姿勢が透ける。アメリカの国益を最大化し、中国という大敵に備える。トランプの外交姿勢の一部だ。ただし、これがどこまで計算ずくか、偶然かは、彼のさらなる発言や証拠がない限り断定できない。だが、この二つが絡み合う物語は、目を離せない展開を見せるだろう。

以下にトランプ大統領の談話の全文と、その翻訳をに掲載します。

Proclamation—80th Anniversary of the Battle of Iwo Jima

February 19, 2025

By the President of the United States of America
A Proclamation

On the morning of February 19, 1945, the first wave of United States Marines landed on the island of Iwo Jima -- commencing 36 long, perilous days of gruesome warfare, and one of the most consequential campaigns of the Second World War. With ruthless fervor, the Japanese struck our forces with mortars, heavy artillery, and a steady barrage of small arms fire, but they could not shake the spirit of the Marines, and American forces did not retreat.

Five days into the conflict, six Marines ascended the island's highest peak and hoisted Old Glory into the summit of Mount Suribachi -- a triumphant moment that has stood the test of time as a lasting symbol of the grit, resolve, and unflinching courage of Marines and all of those who serve our Nation in uniform.

After five weeks of unrelenting warfare, the island was declared secure, and our victory advanced America's cause in the Pacific Theater -- but at a staggering cost. Of the 70,000 men assembled for the campaign, nearly 7,000 Marines and Sailors died, and 20,000 more were wounded.

The battle was defined by massive casualties but also acts of gallantry -- 27 Marines and Sailors received the Medal of Honor for their valor during Iwo Jima. No other single battle in our Nation's history bears this distinction. Eighty years later, we proudly continue to honor their heroism.

American liberty was secured, in part, by young men who stormed the black sand shores of Iwo Jima and defeated the Japanese Imperial Army eight decades ago. In spite of a brutal war, the United States–Japan Alliance represents the cornerstone of peace and prosperity in the Indo-Pacific.

Nonetheless, our victory at Iwo Jima stands as a legendary display of American might and an eternal testament to the unending love, nobility, and fortitude of America's Greatest Generation. To every Patriot who selflessly rose to the occasion, left behind his family and his home, and gallantly shed his blood for freedom on the battlefields at Iwo Jima, we vow to never forget your intrepid devotion -- and we pledge to build a country, a culture, and a future worthy of your sacrifice.

NOW, THEREFORE, I, DONALD J. TRUMP, President of the United States of America, by virtue of the authority vested in me by the Constitution and the laws of the United States, do hereby proclaim February 19, 2025, as the 80th Anniversary of the Battle of Iwo Jima. I encourage all Americans to remember the selfless patriots of the Greatest Generation.

IN WITNESS WHEREOF, I have hereunto set my hand this nineteenth day of February, in the year of our Lord two thousand twenty-five, and of the Independence of the United States of America the two hundred and forty-ninth.

Signature of Donald Trump
DONALD J. TRUMP



摺鉢山山頂に星条旗を立てる米海兵隊員。これをモチーフにしたブロンズ像がワシントンDCのアーリントン国立墓地に設置されている



翻訳文
宣言—硫黄島の戦い80周年
2025年2月19日


1945年2月19日の朝、アメリカ合衆国海兵隊の第一波が硫黄島に上陸し、36日間にわたる長く危険な戦闘が始まりました。これは第二次世界大戦で最も重要な作戦の一つとなりました。日本軍は容赦ない勢いで迫撃砲、重砲、そして小火器の絶え間ない弾幕で我々の軍を攻撃しましたが、海兵隊の精神を揺るがすことはできず、アメリカ軍は後退しませんでした。
戦闘開始から5日目に、6人の海兵隊員が島の最高峰である摺鉢山に登り、山頂に星条旗を掲げました。この勝利の瞬間は、時を経ても色褪せることのない、海兵隊員や我が国に制服で仕えるすべての人々の勇気、決意、そして不屈の精神を象徴する永遠のシンボルとして残っています。
5週間にわたる絶え間ない戦闘の後、島は制圧されたと宣言され、我々の勝利は太平洋戦域におけるアメリカの大義を前進させました。しかし、その代償は驚異的なものでした。この作戦のために集められた7万人のうち、約7,000人の海兵隊員と水兵が命を落とし、さらに2万人が負傷しました。
この戦いは膨大な犠牲を特徴づけましたが、勇敢な行動もまたその一部でした。硫黄島での勇気ある行動に対し、27人の海兵隊員と水兵が名誉勲章を受章しました。我が国の歴史において、単一の戦闘でこれほど多くの受章者を出した例はありません。80年後の今もなお、彼らの英雄的行為を誇りを持って称え続けています。
アメリカの自由は、80年前に硫黄島の黒い砂浜に突撃し、日本帝国軍を打ち破った若者たちによって一部守られました。残酷な戦争にもかかわらず、アメリカ合衆国と日本の同盟は、インド太平洋における平和と繁栄の礎を代表しています。
それでもなお、硫黄島での我々の勝利は、アメリカの力の伝説的な示威として、またアメリカの「最も偉大な世代」の尽きることのない愛、高潔さ、そして不屈の精神の永遠の証として残っています。家族や故郷を後にし、硫黄島の戦場で自由のために勇敢に血を流し、無私の思いで立ち上がったすべての愛国者に、我々はあなたの不屈の献身を決して忘れないと誓います。そして、あなたの犠牲にふさわしい国、文化、そして未来を築くことを約束します。
よって、ここに私、ドナルド・J・トランプ、アメリカ合衆国大統領は、合衆国憲法および法律によって与えられた権限に基づき、2025年2月19日を「硫黄島の戦い80周年」と宣言します。私はすべてのアメリカ人に、最も偉大な世代の無私の愛国者たちを思い起こすことを奨励します。
以上の証として、私はここに署名し、主の年2025年2月19日、アメリカ合衆国の独立249年目にこれを記します。
ドナルド・トランプ

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