2023年6月22日木曜日

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕―【私の論評】ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めるべき(゚д゚)!

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕


 ロシアの侵略を受けるウクライナの復興を話し合う「ウクライナ復興会議」が21日、2日間の日程でロンドンで開幕した。61か国の政府や民間の代表、世界銀行や欧州連合(EU)など国際機関の代表ら1000人以上が参加。巨額の復興費用の調達や、戦闘終結を待たずに経済を活性化させる方法などが議題となる。

 復興会議の開催は昨年7月にスイスで開かれて以来で、今年は英国とウクライナが共催した。初日は日本の林外相を含む各国の首脳・外相級が演説。スナク英首相はウクライナに3年間で30億ドル(約4200億円)の融資保証を発表し、ブリンケン米国務長官は13億ドル(約1800億円)以上の追加支援を約束した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はオンラインで演説し、「ウクライナは欧州で何十年にもわたって経済、産業、技術の成長の源となるだろう」と述べ、協力を求めた。世銀の試算では復興費用は4110億ドル(約58兆円)に上り、経済基盤の再構築も求められる。英政府によると、会議を通じ、米シティグループ、英ヴァージングループなどの大手企業が復興への協力を表明する。

【私の論評】ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めるべき(゚д゚)!

ウクライナ戦争が終結すると、戦後のウクライナが急速な経済発展を遂げる可能性を裏付けるいくつかの事実があります。

ウクライナ戦争が終わり、経済発展で幸せになった人々 AI生成画像

まずは、他の途上国と比較すれば、かなり発達した産業基盤があることがあげられます。

農業:ウクライナは主要な農業生産国で、小麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の産地として知られています。2021年、ウクライナは278億ドル相当の農産物を輸出し、世界第10位の農産物輸出国となりました。

 製造業: 鉄鋼、機械、化学製品などの製造業が盛ん。2021年、ウクライナは143億ドル相当の製造品を輸出し、世界第47位の製造品輸出国となった。

航空宇宙産業:ウクライナは宇宙産業で実績があり、戦争前まではロシアに部品を供給していました。また、航空産業でも実績があり、世界最大航空機An-225「ムリヤ」はソ連時代のウクライナで製造されたものです。

IT:ウクライナはITセクターが成長しており、多くのハイテク新興企業が進出しています。2021年、ウクライナのITセクターは68億ドルの収益を上げました。

ウクライナには優れた学術の長い歴史があり、その大学は世界的に高く評価されています。実際、ウクライナはQS世界大学ランキングで2022年、高等教育システムの質で世界40位にランクされました。

ウクライナ戦争の前までは、ウクライナは中国人学生にとって手頃な留学先になっていた程です。その背景を以下に述べます。

授業料:ウクライナの大学の授業料は、ヨーロッパの他の国に比べて比較的安いです。例えば、ウクライナの公立大学の1年間の平均授業料は約2,000ドルです。これは、米国の国公立大 学の1年間の平均授業料(約35,000ドル)よりもかなり低 いです。

生活費: ウクライナの生活費も、ヨーロッパの他の国々と比べると比較的低額です。ウクライナの学生の1ヶ月の平均生活費は約500ドルです。これには宿泊費、食費、交通費、その他の費用が含まれます。

奨学金: ウクライナへの留学を希望する中国人学生には、数多くの奨学金が用意されています。これらの奨学金は、授業料、生活費、旅費までカバーすることができます。

こうしたことから、ウクライナは留学を希望する中国人学生に人気の留学先となっていました。戦争前の2021年には、2万人以上の中国人留学生がウクライナで学んでいました。

さらに、ウクライナの教育の質に関して掲載します。

ウクライナの教育制度はヨーロッパのボローニャ・プロセスに基づいており、ウクライナの大学の学位はヨーロッパ中の大学に認められています。

また、ウクライナの大学は、学部課程、大学院課程を含む幅広いコースを提供していますし、研究に力を入れており、教員 の多くは各分野で国際的に有名な専門家です。

ウクライナの大学で学ぶ学生 AI生成画

産業基盤を持ち、人口も四千万人台と、ヨーロッパの国々と比較すると多い方であり、さらに、ウクライナはヨーロッパとアジアの交差点に位置し、黒海とバルト海の両方にアクセスできます。

 こうしたことから、戦争が終結すれば、ウクライナは急速な経済発展を遂げる可能性を秘めています。ただし、戦争がウクライナ経済に与えたダメージは大きく、回復には時間がかかることに留意する必要があります。

一方ウクライナにおける、 汚職は長年にわたりウクライナの経済発展の大きな障害となってきました。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数によると、ウクライナは2022年に180カ国中122位となり、世界で最も腐敗した国のひとつとなりました。これは、ロシアとあまり変わらない水準です。

ウクライナの腐敗には多くの例がりますが、代表的なものをいくつか挙げます。

贈収賄:贈収賄はウクライナで広く見られる問題です。例えば、企業は許認可を得るため、あるいは罰金や営業停止を避けるために役人に賄賂を贈らなければならない場合があります。

縁故主義:縁故主義もウクライナにおける大きな問題のひとつで、政府との契約やその他の利益を、その資格に関係なく友人や同盟国に与える慣行を指します。これは非効率と浪費を招き、新規事業の競争を困難にします。

脱税: ウクライナでは脱税が大きな問題となっており、政府は毎年数十億ドルの税収を失っていると推定されています。その結果、公共サービスのための資金が不足し、政府がインフラや経済発展に投資することも難しくなっています。

汚職はウクライナ経済に多くの悪影響を及ぼしています。外国からの投資を抑制し、企業の経営を困難にし、政府に対する国民の信頼を失墜させました。その結果、ウクライナはその経済的潜在力を十分に発揮できずにいます。

ウクライナの汚職・腐敗 AIイメージ画像

近年、ウクライナ政府は汚職に対処するために一定の措置を講じていますが、まだ道のりは長いようです。政府は汚職の取り締まりを継続し、より透明性が高く、説明責任を果たせる政府システムを構築する必要があります。そうして初めて、ウクライナはその経済的潜在力をフルに発揮できるようになるでしょう。

ウクライナは戦争を終わらせるだけではなく、国内でのこうした深刻な腐敗・汚職を撲滅する必要があります。もしそれができなければ、EUには加盟できないでしょうし、NATOへの加入もできなくなるかもしれません。TPPに加入の意思を示しているようですが、これもできなくなる可能性もあります。

当初はウクライナに好意的で、多額の投資をしようとしていた、各国政府や民間企業なども、投資をしなくなり、ウクライナへの投資をためらうようになるかもしれません。

ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めていただきたいものです。

そうすれば、ロシアの西隣に、経済発展した国、経済に裏打ちされた軍事大国ができあがることになり、経済的にも安全保障的にも良い結果を生むことになります。

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