2023年6月21日水曜日

岸田政権の「少子化対策」は成功するのか さすがにまずい保険料上乗せ、国債を財源とするのが筋 扶養控除見直しは政策効果を損なう―【私の論評】新たな未来を築き、ハイリターンが期待される「子ども」や「若者」対する投資は、国債を用いるべき(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」
岸田政権の「少子化対策」は成功するのか さすがにまずい保険料上乗せ、国債を財源とするのが筋 扶養控除見直しは政策効果を損なう


 岸田文雄政権の少子化対策には、児童手当の拡大、出産費用の保険適用、育休給付率の引き上げなどが含まれている。

 少子化の逆転に期待されているが、少子化対策は難しく、他の国の政策を参考にしながら効果的な手法を模索している。

 先進国では、所得制限のない一定額の児童手当と税控除の組み合わせが一般的であり、一般財源から資金が提供されることが通例となっている。

 しかし、岸田政権の少子化対策では、「こども金庫」という特別会計を使用することが提案されている。これには育児休業給付などが含まれており、保険とは言えないため、別の特別会計に組み込む必要があるとされている。

 しかし、特別会計の財源として社会保険料の増額は問題視されており、実質的に保険料の引き上げになってしまう可能性がある。

 代わりに、特別会計に国債発行機能を持たせることで、少子化対策に対する投資として国債を利用するべきだとの意見もある。

 ただし、効果が高く確実な投資に限定する必要があり、扶養控除の見直しや縮小は政策効果を損なう可能性があり、先進国の税控除が少子化対策の主流となっている現状とも一致しないと指摘されている。

 児童手当で所得制限をなくすとともに、扶養控除を見直すとどうなるか。一般的には児童手当が定額なのに対し、扶養控除の見直しは高額所得者には不利に働くので、一定所得以上の人はネットでマイナスになる。全体としてみると、政策効果をかなり損ない、本来の少子化・子育て支援には程遠いだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】新たな未来を築きハイリターンが期待される「子ども」や「若者」対する投資は、国債を用いるべき(゚д゚)!

扶養控除の廃止はかなり評判が悪いです。以下にそれに関する金子洋一氏のツイートをあげておまきます。

先進国における少子化対策は、扶養控除が大きな役割を果たしています。ただ、これが本当に少子化対策になっているかは未知です。

扶養控除(Dependent Care Tax Credit、DCTC)とは、保育料(養育費)を支払った納税者が請求できる税額控除です。この税額控除は、働いている親も専業主婦の親も利用でき、13歳未満の子供の保育料を相殺するために使うことができます。

DCTCは出生率に悪影響を与えるという批判もあります。その論拠は、DCTCがあることで親が働きやすくなり、少子化につながるというものです。例えば、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の調査によると、DCTCは米国の既婚女性の出生率の低下と関連しています。

しかし、DCTCは出生率に影響を与える要因のひとつに過ぎないことに注意することが重要でです。生活費、保育の利用可能性、子供を持つことの社会的受容性など、他の要因も一役買っていると考えられます。

以下は、DCTCが出生率に及ぼす潜在的な悪影響について論じたソースの一例です。
「扶養控除と出生率」Jane Waldfogel (2009)
この研究は、DCTCが米国の既婚女性の出生率の低下と関連していることを明らかにしました。また、DCTCはすでに働いている女性の出生率を下げるのに特に効果的であったとされています。

ただ、この研究は、このテーマに関する研究の1つに過ぎず、DCTCが出生率に与える影響を完全に理解するためには、さらなる研究が必要であることに注意することが重要です。しかし、この研究は、DCTCが出生率にマイナスの影響を与える可能性を示唆しており、政策立案者が出生促進政策を立案する際に考慮すべきことです。

ただし、先進国の多くの国々において、扶養控除が少子化対策として用いられているのは事実です。

カナダ政府は養育費を支払った納税者が請求できる養育費控除(CCED)と呼ばれる税額控除を提供しています。CCEDは米国のDCTCに類似しており、カナダの出生率向上に役立っていると評価されています。

フランス政府は、Allocation de garde d'enfant(AGPE)と呼ばれる税額控除を提供しています。APGEはカナダのCCEDよりも手厚く、フランスを世界で最も家族思いの国にした一因と評価されている。

ドイツ政府はKindergeldと呼ばれる税額控除を提供しています。これは、18歳未満の子供がいる家庭に毎月支給されているものです。

イタリア政府はAssegno al nucleo familiare (ANF)と呼ばれる税額控除を提供しています。ANFはミーンズ・テスト制を採用しているため、所得の低い家庭しか利用できません。

英国政府は保育税額控除(Childcare Tax Credit)と呼ばれる税額控除を提供しています。育児税額控除は米国のDCTCに似ており、英国の出生率向上に貢献していると評価されています。

これらの国が少子化対策として行っている政策は、扶養控除だけではないことに注意する必要があります。その他の政策としては、有給育児休暇、養育費、家族に優しい職場などがある。しかし、扶養控除は、親が子供を持つことをより安価にするのに役立つ重要な政策であります。

上記の情報の出典は以下の通りです。
「扶養控除と出生率」ジェーン・ウォルドフォーゲル(2009年)
「養育費控除」(カナダ歳入庁)
「L'Allocation de garde d'enfant」(サービス・パブリック)
Kindergeld" (Bundesamt für Finanzen) "幼稚園税" (Bundesamt für Finanzen)
「家族手当」(INPS)
「育児税額控除」(歳入関税庁)
扶養控除が、本当に少子化対策に役立っているかどうかは、なんとも言えないところがあります。扶養控除に限らす、様々な少子化対策が功を奏していないことが明らかになりつつあります。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。

G7での中では、少子化対策がうまくいっていると言われてきたフランスでさえも、最近は少子化が進んでいます。フランスの出生率は長年低下し続けており、現在は女性一人当たりの出生数が1.848人と過去最低を記録しています。つまり、フランス人女性の平均出産数は2人以下ということなのです。

無論、フランス政府も様々な手を打ってはいますが、うまくはいっていません。そもそも、「少子化の原因」に関しては、これだと言い切れる決定打がないのが現実です。

それでも、なぜ多くの国々が「こども」に投資をするかといえば、やはりリターンが大きいからでしょう。

引用記事の中でも述べましたが、政府の子どもへの投資がハイリターンであるという主張を支持する多くの情報源は多々あります。

だからこそ、多くの国々で、「少子化」に効果は薄いとされながらも、政府が様々な「子ども」に対する投資を行っているのでしょう。「少子化」に効果があるかどうかは分からなくても、「ハイリターン」ということでは、効果が高く確実な投資を積極的に行うべきでないでしょうか。

「子ども」や「若者」に対する政府による投資はハイリターンであることが知られている

「子ども」に限らず、もっと大きな、若者に対する投資もハイリターンであることが知られています。

「子ども」が平等にスタートを切ることができるように、支援し、さらに努力して高等教育にふさわしい学力をつけた若者には、教育投資をして、家庭の経済的都合等により、高等教育を受ける資格が十分にもあるにもかかわらず、受けられない若者を支援するなどのことも考えられます。

子どもたちが、基礎的な体力や学力を身に着けられれば、子どもたちが大人になって優れた働き手となって富を生み出すことになります。さらに、高等教育を受けた若者は、日本の未来を変える研究や貢献をしてくれることになります。

そうして、このようなハイリターン投資には、当然のことながら国債を用いるべきです。増税してしまえば、それこそ子育てにも支障が出かねないので本末転倒ですし、まだ需給ギャップがあるとみられる日本経済にとっても大きなマイナスになります。それにすでに支給されている扶養控除をカットするというのも、マイナスです。

扶養控除が少子化対策にあまり効き目がないかもしれないという情報は、財務省が扶養控除をカットするために用いようとするかもしれません。しかし、これには、多くの国々が未だに扶養控除を行っていること、そうして「少子化」に役立っているか否かは別にして、子ども投資はハイリターンであることから実施しているとみられることを主張して、財務省の目論見をくじくべきです。

ただ、そうなると、少子化対策はどうなるの、という考えもあるでしょうが、これは引用記事にもあげたように、AIとロボット化により少子化の弊害を取り除くことで解決できるはずです。

具体的なアイデアをいくつか挙げてみます。

AIやロボットを使って、現在人間が行っている作業を自動化します。これにより、人間の労働者はより創造的で戦略的な業務に専念できるようになる可能性があります。

また、ある業務を遂行するのに必要な労働者の数を単純に減らすこともできます。例えば、AIを搭載したロボットが、部品の組み立てや溶接など、製造業における繰り返し作業を行うことができます。これにより、人間の労働者は新製品の設計や生産ラインの管理など、より複雑な作業に集中できるようになります。


高齢者の介護にAIやロボットを活用します。高齢の親族を介護する家族の負担を軽減し、高齢者が必要なケアを受けられるようにすることができます。

例えば、AIを搭載したロボットは、高齢者の自宅での付き添いや介助に利用できます。また、高齢者の健康状態を監視し、何か問題があれば早期に警告を発するために使用することもできます。

さらに、AIやロボットを活用して新たな雇用を創出することもできます。AIやロボットの普及が進めば、これらの技術の開発、製造、メンテナンスに関わる新たな雇用が創出されます。例えば、新しいAIアルゴリズムを開発する人、ロボットを設計・製造する人、ロボットを保守・修理する人などが必要とされるでしょう。

AIを使って、子どもから大人まで使える新しい教育方法を開発します。これにより、年齢や場所に関係なく、誰もが質の高い教育を受けられるようになります。

AIを活用して、あらゆる年齢の人々の生活の質を向上させる新しいヘルスケア技術を開発します。これには、新薬や治療法の開発、病気の新しい診断・管理方法などが含まれます。

AIを使って、人々の移動を容易にする新しい交通技術を開発します。これには、自動運転車やバスの開発、交通渋滞を管理する新しい方法などが含まれます。

AI"Dream Studio"で生成された画像

これらは、日本の少子高齢化に対応するためにAIやロボットをどのように活用できるかというアイデアのほんの一部に過ぎません。これらの技術が発展し続けるにつれて、この課題に対処するための革新的な活用方法がさらに増えていくことが予想されます。

これらは、日本における少子高齢化がもたらす課題に対処するためにAIやロボットが利用できる方法のほんの一部に過ぎません。これらの技術が発展し続ければ、日本だけでなく世界中の人々の生活を向上させるために、さらに革新的な活用方法が登場することが期待されます。

これらの革新を行うのは、AIやロボットではなく、人です。子どもや青年に対する投資により、多くの人々がこのような変革に携わることができるようになっていれば、文字通りこの投資は、ハイリターンになっているはずです。

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