2023年6月18日日曜日

西側の対トルコ関係改善か―【私の論評】西側諸国との関係が改善すれば、トルコはウクライナ停戦で大きな役割を果せる(゚д゚)!

西側の対トルコ関係改善か


 トルコの大統領選挙でエルドアン氏が勝利し、彼の政権はNATOへの忠誠とロシアへの経済的依存のバランスを取る課題に直面している。

 西側ではエルドアン政権に反発してきたが、関係改善の期待もある。ただし、EU加盟問題では進展は見込めず、トルコは欧州連合との関係を築くことは難しい。

 一方、エルドアン政権の継続は恩恵をもたらす可能性もあるとの見方もある。米議会ではエルドアン政権に対する反発が強く、ロシアとの関係やクルド人への弾圧に対する懸念がある。

 トルコはNATOに属しているが、同時にロシアとの関係も持っており、ウクライナ戦争で重要な役割を果たす可能性がある。

 EU加盟国はNATOとの関係に注目しており、EU加盟交渉はエルドアン政権の再選で進展しない見通し。

 EUとトルコは難民・移民問題などで協力しているが、加盟交渉は凍結状態にある。

 エルドアン政権の継続は国内で保守化の傾向を強め、対外政策では民族主義的な姿勢を取りながらも、国益を追求しようとするだろう。ウクライナ戦争の中で、トルコと西側の関係の動向が注目される。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】西側諸国との関係が大きく改善すれば、トルコはウクライナ停戦で大きな役割を果せる(゚д゚)!

ロシア軍のs-400防空システム

欧米諸国とトルコの関係悪化の背景には、以下のような要因があります。

  • トルコがロシアのS-400防空システムを購入したこと: 2019年、トルコは、米国や他のNATO同盟国から、そうすることでトルコの同盟加盟が危うくなるという警告を受けたにもかかわらず、ロシアのS-400防空システムを購入しました。S-400の購入は、トルコのNATO同盟国による大きな裏切り行為とみなされ、米国による制裁の発動につながりました。
  • シリア内戦におけるトルコの役割:トルコはシリア内戦の主要なプレーヤーであり、バッシャール・アル・アサド政権と戦うシリアの反政府勢力に軍事的・財政的支援を提供してきました。トルコのシリア内戦への関与は、シリア政府の主要な同盟国であるロシアと対立することになりました。
  • トルコの人権状況の悪化: トルコの人権状況は近年悪化しており、政府は反対意見を取り締まり、ジャーナリストや反対派の人物を逮捕しています。トルコの人権状況の悪化は、トルコをイスラム世界における民主主義の模範と見なしてきた欧米諸国との関係を緊張させています。
  • トルコの経済問題 :トルコ経済は数年前から危機的状況にあり、高水準のインフレと失業に直面しています。経済危機は多くのトルコ人の生活水準の低下を招き、トルコに資金援助をしてきた欧米諸国との関係もぎくしゃくしています。
  • トルコの過激派組織への支援 :トルコは、イラク・シリアのイスラム国(ISIS)などの過激派を支援していると非難されています。トルコは、これを否定していますが、2019年、国連の報告書は、トルコがISISへの外国人テロリスト戦闘員の流入を「防ぐための適切な措置を講じていない」と指摘しました。報告書はまた、トルコが "テロ活動の資金調達を防ぐために必要なすべての措置を講じていない "ことを明らかにしました。このため、欧米諸国は、トルコのテロとの戦いに対するコミットメントを懸念しています。
  • 東地中海におけるトルコの役割:トルコは、東地中海のエネルギー開発をめぐり、ギリシャやキプロスとの紛争に巻き込まれています。この紛争は、トルコとNATO同盟国との関係を緊張させています。
トルコと欧米の関係悪化は複雑な問題であり、簡単な解決策はないです。関係改善のためには、双方が譲歩する姿勢が必要です。

最終的には、トルコと欧米が、テロ対策や安全保障、経済発展など、互いに関心のある問題で協力する方法を見つけることが目標になるはずです。トルコと欧米が協力することで、世界をより安全で豊かな場所にすることができるのです。そうしてその最大のものが、トルコが将来的にウクライナ戦争停戦交渉の重要なプレーヤーになりうるという可能性です。

その論拠をいくつか以下にあげてみます。

第一に、トルコはヨーロッパとアジアの交差点に位置し、ウクライナを含む、旧ソ連邦諸国と国境を接しています。そのためトルコは従来からユニークな視点を持ち、地域情勢における重要なプレーヤーとなっています。

次に、トルコはロシアとウクライナの両方と経済的、政治的に密接な関係があります。このため、トルコは両国の利害を独自に理解しており、両国の溝を埋めるために貢献することができます。

ウクライナ戦争で大活躍した、トルコ製ドローン、バイラクタルTB2

第三に、トルコには、他国間の紛争を調停してきた歴史があります。例えば、2020年にナゴルノ・カラバフの停戦合意に至った交渉では、トルコが重要な役割を果たしました。

第四に、 トルコは主要なエネルギー通過国であり、エネルギー供給をロシアやイラン、アゼルバイジャンからの輸入に頼っています。トルコは、2020年、黒海で埋蔵量3200億立方メートルに上る同国史上最大規模の天然ガス田を発見したと公表していますが、このガス田がトルコで利用できるようになるのは、まだ随分先のことになります。

そのため、停戦は、トルコを経由するエネルギーの継続的な流れを確保することにつながり、トルコの経済的利益となります。

最後に、トルコには強力な軍事力があり、自国の利益を守るために軍事力を行使してきた歴史があることも注目に値します。トルコの国防費は、サウジアラビアとイスラエルに次ぐ中東で3番目の大きさであり、2019年の支出は20,448百万米ドルでした。 その軍事費は、2012年の115.6億米ドルから、2012年から2018年の期間に79.96%増加しました。

トルコ軍

このことは、トルコがロシアとウクライナの双方を交渉のテーブルに着かせるために必要な影響力を与える可能性があります。

全体として、トルコは将来的に停戦交渉の重要なプレーヤーとなり得る要素を数多く持っています。戦略的な立地、ロシアとウクライナの双方との密接な関係、調停の歴史、停戦への既得権益など、トルコは近隣の紛争において独自の役割を担っているといえます。

西側諸国との関係が大きく改善すれば、トルコはウクライナ停戦で大きな役割を果たす可能性は高いと考えられます。

【関連記事】

プーチン大統領が〝孤立〟 旧ソ連カザフスタンなど離脱、周辺からも支持失う  「反ロシア・反プーチン連合も」 中村逸郎氏が指摘―【私の論評】ウクライナ戦争が旧ソ連地域におけるロシアの立場を弱め、その影響力を維持することをより困難にした(゚д゚)!

ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

中国・中央アジアサミットが示すロシアの影響力後退―【私の論評】ロシアが衰退した現状は、日本にとって中央アジア諸国との協力を拡大できる好機(゚д゚)!

ウクライナ・ゼレンスキー大統領がG7広島サミット会場に到着―【私の論評】ゼレンスキー氏G7広島サミット参加は、ウクライナの情報戦の一環(゚д゚)!

南アフリカがプーチン大統領側にサミットに来ないで―【私の論評】様々な情報が飛び交う中、プーチンが弱体化していることだけは間違いない(゚д゚)!

0 件のコメント:

トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能性も...「本当に怖い存在」習近平の中国との関係は?―【私の論評】発足もしてない政権に対して性急な結論をだすべきではない

トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能性も...「本当に怖い存在」習近平の中国との関係は? まとめ トランプ次期大統領はNATO加盟国に国防費をGDP比5%に引き上げるよう要求し、ウクライナへの支援は継続すると伝えた。 現在のNATOの国防費目標はGDP比2%であり、ク...