2023年6月20日火曜日

スウェーデンNATO加盟を無理筋に拒み続けるトルコ―【私の論評】トルコは反対を取り下げ、スウェーデンのNATO加盟を認めるべき(゚д゚)!

スウェーデンNATO加盟を無理筋に拒み続けるトルコ

岡崎研究所

スウェーデン女性とエルドアン大統領(左) AI生成画像

 エスパー元国防長官とファーカス元国防次官補は、トルコとハンガリーがスウェーデンのNATO加盟申請に賛同するべきだと主張している。スウェーデンは、ロシアの脅威に対抗する有利な地理状況、情報識見、強い防衛産業、称賛に値する海洋能力などから、NATO加盟に値する。

 ビリニュス首脳会談を超えて加盟を遅延させることはロシアを元気づけ、NATOを掘り崩す。米国を始めNATO加盟国は、トルコとハンガリーにスウェーデンの加盟を直ちに認めるように圧力をかけなければならない。スウェーデンはエルドアンの要求を満たすためにやれることは全てやった。彼にはさらなる口実はない。

 フィンランド政府高官は、スウェーデンがNATO同盟国でない場合、フィンランドの安全保障は最大にならないと述べた。NATOがすべきでないことはプーチンに立場を強める機会を与えることである。ウクライナ人はあまりに多くの犠牲を払った。

 エスパー元国防長官は米国のシンクタンクであるアリゾナ州立大学マケイン研究所の理事で、ファーカス元国防次官補はマケイン研究所の事務局長をしているが、この論説は、7月のビリニュスNATO首脳会議前にスウェーデン加盟を認めるべきであるとの主張をしている。ジョン・マケイン上院議員が主張したような主張である。

 6月1日にスウェーデンが反テロ法を施行したことを受け、トルコのエルドアン大統領もスウェーデンのNATO加盟反対を取り下げるべきであると思われる。

 そもそもエルドアンがスウェーデンのNATO加盟問題とPKK(クルド労働者党)メンバーのスウェーデン滞在の問題を結び付け、後者の問題の解決がなければ、前者の問題の解決はないとしたのは無理筋のやり方であると考えられる。それにもかかわらず、スウェーデンは憲法の改正や反テロ法の立法にまで踏み込んで、エルドアンの要求に歩み寄ったのである。もはやエルドアンもそれなりの対応をすべきであろう。

 もし、エルドアンがさらに反テロ法の執行状況を見て判断したいというような姿勢を見せるならば、この論説が言うように、エルドアンはNATO首脳会議で歓迎されないと明確にし、NATOとトルコの関係を再検討するということも一つの対応であろう。

 トルコはソ連が南に出ていく際の抑えという地理的重要性を持っていたが、ウクライナ戦争がどう終わるにせよ、ウクライが地上から消えることにはならないので、ロシアの南下を抑える役割の多くはウクライナに期待できるようになると思われる。ウクライナ戦争後のロシアは弱体化が進むと思われるので、なおさらである。

 米国を引き込み、ロシアを排除し、ドイツを抑えるとのNATOの当初の目的に鑑みれば、スウェーデンとフィンランドの加盟はトルコの加盟以上に今は重要であると言ってよいと思われる。

 今後の進展を注視すべき問題である。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トルコは反対を取り下げ、スウェーデンのNATO加盟を認めるべき(゚д゚)!

エルドアンはなぜ、PKK問題にこだわるのでしょうか。PKKとトルコの関係は、対立の関係にあります。PKK(クルド労働者党)は、トルコ、イラク、イラン、シリアの一部に位置するクルド地域の独立を求めて戦ってきたクルド人過激派組織です。トルコはPKKをテロ組織として指定し、数十年にわたり戦闘を続けています。

PKKの女性民兵

PKKとトルコの間の紛争は、血なまぐさい犠牲を払ってきました。何千人もの人々が双方で殺されてきました。また、紛争はトルコの経済や社会にも悪影響を及ぼしてきました。

近年、紛争の平和的解決に向けた取り組みが行われています。しかし、これらの努力は今のところ成功していません。PKKは独立のために戦い続けており、トルコはこれをテロ組織として指定し続けています。

PKKとトルコの間の紛争は複雑です。紛争を引き起こした要因は多く、簡単な解決策はないです。しかし、平和的な解決に向けて努力を続けることが重要です。

ここでは、PKKとトルコの関係について補足説明します。

PKKは1978年にアブドゥラ・オカランによって設立されました。その目的は、トルコ南東部にクルド人の独立国家を建設することです。

PKKは1984年以来、トルコ政府と戦ってきました。彼らは、自爆テロや暗殺を含むテロリズムの行使で非難されており、トルコ、米国、欧州連合からテロ組織に指定されています。

PKKとトルコの間の紛争は、何千人もの死者を出し、何百万人もの人々を避難せざるをえないような状況に追い込みました。紛争を平和的に解決するための努力も行われているが、これまでのところ、これらの努力は成功していません。


一方、PKKとスウェーデンの関係を以下に述べます。

PKKとスウェーデンの関係は複雑で、時代とともに変化してきました。過去にスウェーデンは、トルコと米国によってテロ組織とみなされているPKKに支援を提供していると非難されたことがあります。しかし、スウェーデンはこれらの疑惑を否定し、いかなるテロ組織も支援していないとしています。

近年、スウェーデンはPKKと距離を置くための措置をとっています。2016年、スウェーデンはPKKとその関連団体に制裁を課しました。2019年、スウェーデンはPKKのメンバーをトルコに引き渡した。そして2022年、スウェーデンは憲法を改正し、テロ組織を支援することを犯罪としました。

こうした措置にもかかわらず、トルコはスウェーデンとPKKの関係について懸念を表明し続けてきました。2022年、トルコはスウェーデンのPKK支援への懸念を理由に、スウェーデンのNATOへの加盟申請を阻止しました。

PKKとスウェーデンの関係の将来は不透明です。スウェーデンがトルコをなだめ、NATOへの加盟を確保するために、PKKから距離を置く措置を取り続ける可能性はあります。しかし、PKKがスウェーデンに圧力をかけ続け、その結果、両国の間にさらなる緊張が生じる可能性もあります。

リトアニア首都ビリニュス

トルコが今年7月にリトアニアのビリニュスで開催されるNATO首脳会議後もスウェーデンのNATO加盟を拒否し続けるのは全く合理的ではありません。

第一に、先に述べたように、スウェーデンは、トルコがテロ組織とみなすクルド労働者党(PKK)への支援疑惑に対するトルコの懸念に対処するため、重要な措置を講じている。特に、スウェーデンはPKKのメンバー数名をトルコに送還し、トルコへの武器禁輸を解除し、国境内のPKK活動を取り締まってきました。

第二に、スウェーデンのNATO加盟は、同盟の集団防衛を強化し、ロシアからの侵略を抑止することになります。ロシアは近年、攻撃的な姿勢を強めており、ウクライナへの侵攻によって、目的の達成のためには軍事力を行使することも辞さない姿勢を示しています。スウェーデンのNATO加盟は、同盟に新たな安全保障層を追加し、ロシアが加盟国を脅かすことをより困難にするものです。

第三に、スウェーデンのNATO加盟は、トルコの安全保障上の利益を損なわないということです。トルコは、スウェーデンのNATO加盟により、PKKがスウェーデンを拠点として活動することが可能になると主張してきました。しかし、この主張を支持する証拠はないです。実際、スウェーデンはテロとの闘いにおいて強力な実績があり、NATOへの加盟は同盟の能力を強化することになります。

結論として、トルコがスウェーデンのNATO加盟を拒否し続けることは不合理であり、両国にとって有害です。スウェーデンはトルコの懸念に対処するために重要なステップを踏んでおり、NATOへの加盟は同盟を強化し、ロシアからの侵略を抑止することになるでしょう。トルコは反対を取り下げ、スウェーデンのNATO加盟を認めるべきです。

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