米国のビル・クリントン元大統領が5月4日、ニューヨークでの講演で「ロシアによるウクライナ侵攻の可能性」を2011年にロシアのウラジーミル・プーチン大統領から直接、聞いていたことを明らかにした。
米国は、なぜ戦争が起きる前にしっかり対応しなかったのか。
戦争開始から1年以上も経ったいまになって、こんな話が飛び出すとは、まったく驚きだ。
これは、「リベラリズム(理想主義)の失敗」と言ってもいい。
5月5日付の英「ガーディアン」によれば、クリントン氏は2011年にスイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムでプーチン氏と会談した。
プーチン氏はそこで、ウクライナとロシア、米国、英国が1994年に結んだ「ブダペスト覚書」の話を持ち出し、自分は合意していないと語ったといいます。
だが、クリントン氏は、それより3年前の時点で、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性を認識していたことになる。
それによれば、プーチン氏は2008年4月に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「クリミア半島は1954年に旧ソ連からウクライナに移譲されました。
いま振り返れば、その時点で「ウクライナ侵攻も時間の問題だった」と言って良いです。 クリントン氏は、論文で自己弁護に終始していたのに、いまになって「実は、プーチンが侵攻する可能性は、本人から聞いていたので知っていた」「ウクライナの核放棄は残念だ」などと言うのは、批判されても当然ともいえます。
【私の論評】平和条約を締結していても、平和憲法を制定しても、条件が整えば他国は侵攻してくる(゚д゚)!
クリントン氏は、モスクワでプーチン大統領と会談した際、大統領のほうからウクライナ問題を持ちかけられたといいいます。プーチン氏は、ウクライナは「ロシアの歴史的な一部」であり、同国が西側との結びつきを強めていることを懸念していると述べました。クリントン氏は、ウクライナはロシアにとって脅威ではなく、安定し繁栄するウクライナは両国の利益になるとプーチン氏を安心させようとしたといいいます。
しかし、プーチンは納得していませんでした。ウクライナのNATO加盟を「許さない」、ウクライナが加盟しようとすれば「行動を起こす」と言い出しました。クリントンは、プーチンの発言に「深く悩まされた」とし、「来るべき事態の予兆である」と考えていたといいます。
この情報の出所は、ビル・クリントン自身です。彼は、クリントン・グローバル・イニシアチブ年次総会でのスピーチで、この事実を明らかにした。この主張には、他に独立した裏付けはないです。しかし、プーチンのウクライナに対する見解について我々が知っている他の事柄と一致しています。
中国、NATO日本事務所に反発 「歴史の教訓くみ取れ」―【私の論評】中国は、将来「インド太平洋諸国同盟」が出来上がることを恐れている(゚д゚)!
ロシア 爆発で2日連続の列車脱線「破壊工作」とみて捜査―【私の論評】あらゆる兆候が、ウクライナ軍の反転大攻勢が近く始まることを示している(゚д゚)!
しかし、プーチンは納得していませんでした。ウクライナのNATO加盟を「許さない」、ウクライナが加盟しようとすれば「行動を起こす」と言い出しました。クリントンは、プーチンの発言に「深く悩まされた」とし、「来るべき事態の予兆である」と考えていたといいます。
この情報の出所は、ビル・クリントン自身です。彼は、クリントン・グローバル・イニシアチブ年次総会でのスピーチで、この事実を明らかにした。この主張には、他に独立した裏付けはないです。しかし、プーチンのウクライナに対する見解について我々が知っている他の事柄と一致しています。
上の記事もでてくる「プタペスト合意」について以下に掲載します。
ブダペスト安全保障覚書は、1994年12月5日にハンガリーのブダペストで開催されたOSCE会議において、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの核兵器不拡散条約(NPT)への加盟に関連して、署名国が安全を保証するために締結した政治協定です。この3つの覚書は、もともとロシア連邦、英国、米国の核保有3カ国によって署名されたものです。中国とフランスは、別の文書でやや弱い個別保証をした。
覚書の条項の下で、3つの核保有国は以下のことに合意しました。
- ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン(以下3国と記載)の独立と主権、既存の国境線を尊重する。
- 3国の独立と主権、および既存の国境を尊重する。3カ国の領土保全や政治的独立に対する武力による威嚇や使用を控える。
- 3国の政治的又は経済的意思決定に影響を与えるために、経済的、政治的又はその他の圧力を行使することを差し控える。
3国のいずれかが武力攻撃またはその安全に対するその他の脅威の犠牲となった場合、相互に協議する。
その見返りとして、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンは以下のことに合意しました。
- 核兵器問題の解決に向けた国際的な取り組みに、あらゆる側面から貢献する。
- NPTの下での義務を誠実に履行すること。
- 核兵器開発のための援助を求めたり受けたりしない。
ブダペスト合意は、締結後、何度も違反されています。2014年、ロシアはウクライナからクリミア半島を併合しました。2022年、ロシアはウクライナに侵攻しました。いずれの場合も、ロシア政府は、ウクライナは主権国家ではなく、ブダペスト協定の条件を遵守していないため、これらの行動を取ることは正当であると主張してきました。
ブダペスト覚書の将来は不透明です。専門家の中には、ウクライナの現状を考えると、もはや意味がないと考える人もいます。また、まだ重要であり、強化すべきと考える人もいます。米国とその同盟国は、ブダペスト合意書を守ることを約束すると言っていますが、それができるかどうかは未知数です。
プーチンはプダペスト合意を認めていないと発言しており、だからこそ、現在ロシアはウクライナに侵攻しているのです。
ある国が平和条約を結んだり、平和憲法を定めているからといって、侵略されないという保証はありません。平和条約を結んでいるにもかかわらず、侵略された国の例はたくさんあります。
以下はその例です。
古い事例としては、第二次世界大戦末期、日ソ不可侵条約を締結して板にも関わらず、ソ連は当時のソ満国境を超えて、侵攻しました。
ソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻しました。アフガニスタンは1969年のジュネーブ協定に調印しており、この協定ではアフガニスタンからすべての外国軍を撤退させることを求めていました。
ソ連がアフガンに侵攻したときのソ連兵 |
米国は2003年にイラクに侵攻しました。イラクは安全保障理事会の承認なしに他国に対して武力を行使することを禁止する国連憲章の署名国であったにもかかわらずです。
イラクに侵攻した米軍 |
さらにすでに述べたように、ロシアは、ウクライナが核兵器の放棄と引き換えにウクライナの安全を保証する1994年のブダペスト覚書に署名していたにもかかわらず、昨年ウクライナに侵攻しました。
いずれのケースでも、侵略国は自国に正当な理由があると主張しました。しかし、これらの侵略が国際法に違反するものであったことに変わりはないです。
平和条約や憲法が、戦争を防ぐために必ずしも有効でないことを忘れてはならないです。政情不安、経済的苦境、ナショナリズムの台頭など、戦争勃発の要因はさまざまです。平和条約を締結していても、平和憲法を制定していても、条件が整えば他国が侵略してくる可能性もあるのです。
結局のところ、いかなる国もまずは自国は自国で守るという気概がなければ、他国から侵略される可能性を否定できなくなってしまうのです。これは、現在のウクライナでも証明されたと思います。
ウクライナにその気概なければ、戦争の初期にキーウをロシア軍に占領され、今頃ウクライナにはロシアの傀儡政権ができていたかもしれません。ゼレンスキー大統領がウクライナにとどまり徹底抗戦をする姿勢を見せたので、そうはならなかったのです。他国からの支援も得られることになったのです。
私たちは、中露北という、3国の独裁国に囲まれた日本こそ、そのような気概が多くの国民になければ、条件が整えば、侵略される危険と隣り合わせであることを認識すべきです。
それにしても、悔やまれるのは、クリントン元大統領が、戦争の可能性を察知したのなら、はやめにそれを公表して、警告を出すべきでした。そうすれば、事態は変わっていたかもしれません。返す返すも悔やまれます。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿