2023年4月16日日曜日

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」―【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」

北朝鮮が発射に初成功したと発表した新型固体燃料使用ICBM火星18

 13日に北朝鮮から発射されたミサイルについて、米韓は奇襲能力が高い固体燃料式の新型ミサイルとの見方を強めている。北朝鮮は固体燃料式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を進めており、ミサイル技術の向上を誇示した可能性がある。

 韓国軍関係者は「中距離以上の(射程を持つ)新型の弾道ミサイル」とみており、固体燃料式の新型ICBMの可能性もあるとの見方を示した。

 固体燃料式は液体燃料式よりも発射後の上昇速度が速い。液体燃料の場合、噴射される炎がろうそくのように細長いのに対し、固体燃料式はスカートのように広がる。聯合ニュースによると、米韓当局は今回、こうしたエンジンの特徴を捉えた。複数の韓国メディアは、固体燃料式の新型ICBMとの見方が有力と報じた。

 固体燃料式は、液体燃料のように発射直前に注入する手間が不要で、発射の兆候の早期探知が難しい。

 北朝鮮は、固体燃料式の短距離弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験は実施したが、中長距離弾道ミサイルでは確認されていない。

 北朝鮮は2021年の朝鮮労働党大会で発表した「国防力発展5か年計画」に固体燃料式ICBMの開発を盛り込んだ。昨年12月には高出力の固体燃料エンジンの地上燃焼実験に初めて成功したと主張した。今年2月に行われた軍事パレードでは、固体燃料式のICBMとみられるミサイルを移動式発射台(TEL)に載せて登場させた。

【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

日本のメディアは、北朝鮮のミサイルなどについては、事細かく報道するのに、それに対する日米韓などの対応は、散発的に事実だけは報道するのですが、まとめて統合的に報道しないので、多くの人は実体が見えなくなるようです。そのため、本日は日米韓の北への主に軍事的対応に関することを掲載しようと思います。

このようなことを知れば、なぜ北朝鮮が特に最近矢継ぎ早にミサイルを発射するのか、西側諸国では確率された技術でありながら、北朝鮮としては目先の新しさを追求するのかご理解いただけるものと思います。

金正恩が最も神経を尖らせているのは、米韓によるNATO型の核の共有です。これについては、生前安倍元総理もこれを提唱していました。

韓国の核保有を求める韓国世論の高まりの中で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、今月末の米国国賓訪問時にこの問題をバイデン大統領と協議しようとしています。もしも米国との間で合意に至れば、北朝鮮の韓国への核脅迫は通用しなくなります。

金与正は4月1日の談話で「ゼレンスキーが米国の核兵器搬入だの、独自核開発などと言い立てるのは、自国と国民の運命をもって賭博してでも、なんとかして自分らの余命を維持してみようとする極めて危険な政治的野望の表れである」などと非難しました。

さらに、「米国を神頼みにして主人の虚弱な約束を盲信する手先らは、核時限爆弾を背中に負う自滅的な核妄想から一日も早く覚める方が自分らの命を守る最上の選択になることをはっきり悟らなければならない」とゼレンスキー政権を激しく攻撃しました。


この談話での、ゼレンスキーを、尹錫悦と言い換えれば、そのまま韓国へのメッセージとなりまい。これは「米英中ロ仏だけが核兵器を保有できるのか」として、核保有の正当性を主張してきた北朝鮮のこれまでの立場とは完全に矛盾します。

こうした矛盾に満ちた混乱した主張は、現在米韓の間で検討が進められている「核共有」に対する脅威からきたものでしょう。ちなみに、米韓核共有の話がすすめば、日本も安倍元総理が提唱していた「核共有」の議論が進むことも予想されます。それも恐怖なのでしょう。

米韓で検討されている金正恩が恐れるもう一つの軍事対応は「ダークイーグル(Dark Eagle)ミサイル」(LRHW)の実戦配備でしょう。

このミサイルの発射が初公開されたのは一昨年でした。2021年10月77日、ワシントン州タコマ市郊外にある米陸軍のルイス=マコード統合基地に、開発中の新型中距離ミサイル「LRHW」の試作型発射機が送られ初公開されました。

「ダークイーグル」は、陸海空共通の極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭に使う極超音速滑空ミサイルで、マッハ17、射程2775km以上の最新式の新型中距離ミサイルです。

ダークイーグルの発射想像図

今年3月29日の米軍報道資料によると、この「ダークイーグル」が、米軍の「第3野戦歩兵連隊第5大隊第1多領域任務部隊(MDTF)長距離射撃隊)」に実戦配置されたとされています。

この多領域任務部隊(MDTF)は、ダークイーグルと短距離射程(32-1000km)のハイマース(HIMARS Prsm)そして中距離射程(460ー1600km)のMRCと組み合わせて構成されているといいます。

「ダークイーグル」は、インド太平洋地域に3個部隊が配備されるとされていますが、今のところどの地域に配置するかは明らかにされていません。米国本土だけの配置では迅速対応ができないのは明らかなので、インド太平洋地域のどこかに前進配備するのは間違いないです。

この「ダークイーグルミサイル」の韓国配備を金正恩は恐れているのでしょう。4月10日の党中央軍事委員会で、金正恩が韓国の地図を映し出し指さしている場面がありましたが、「ダークイーグル」対策を語ったかもしれないです。このミサイルが韓国の平沢(ピョンテク)市にある米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)に配備されれば、平壌へは1分、北京は3分で精密打撃できます。

そうなれば、今北朝鮮が見せびらかしている各種短距離ミサイルの原点遮断が可能となります。それは北朝鮮の各種短距離ミサイルで無力化状態に陥っていた韓国の「キルチェーン(策源地先制攻撃)」復活を意味します。金正恩が不眠症に陥るのは当然です。

金正恩は現在、韓国支配を実現するために「敵がいかなる手段と方式によっても対応が不可能な多様な軍事的行動方案をつくる」として「国防計画5カ年計画」の完成を急いでいますが、しかしそれが完成された頃には、米国によって、「ダークイーグル」をも上回る、とてつもない新兵器が開発されているかもしれないです。

現状の北朝鮮の通常兵器は、米国の数十年前の水準にすぎません。現在ウクライナ戦争においては、ロシア空軍が思ったよりも活躍していませんが、それはロシアの防空システムが米国と比較すれば、30年近くも遅れているからだとされています。

北朝鮮の防空システムは、ロシアよりも遅れており、冷戦期のものから進歩していないとされています。そうなると、北はミサイルや航空機の侵入を防ぐことはできません。

旧ソ連時代終わりに製造されたMiG-29など、北朝鮮では近代的な戦闘機も所有している空軍ですが、その軍事力の主翼は「性能の劣った」戦闘機や複葉機です。

米韓の航空機の侵入やミサイルを防ぐことはできません。爆弾やミサイルが金正恩の頭上に落ちてきても、それを防ぐ手立てはないのです。

海軍はどうかといえば、米国防総省によると水上艦艇は「数は多いが老朽化している小さな巡視艇」で構成されているといいます。これでは、米軍はおろか韓国軍にも太刀打ちできないでしょう。

ただし、高性能から程遠く老朽化も進む反面、北朝鮮の潜水艦の数だけは小さなものまで含めると世界最大規模といわれています。2010年には北朝鮮の小さな潜水艦が韓国船を沈め、46人の船員が亡くなっています。

ただし、ASW(対潜水艦戦)能力とくに、対潜哨戒能力はかなり劣っているので、実際の戦争になった場合、戦力になるとは考えられません。

北朝鮮は最近SLBMも発射するようになりました。旧式でありますが、北朝鮮には1隻だけ「ゴレ級」という潜水艦があり、これは1発だけ弾道ミサイルを搭載できます。このほかに新浦の造船所で潜水艦をつくっていて、これは3発くらいSLBM(潜水艦搭載型大陸間弾道弾)積めると言われています。

しかし、この両方を海に出しても4発しかありません。しかも通常動力型なのでそんなに長くは潜れないですし、遠くにも行けません。さらに、現状では日米の対潜哨戒機や潜水艦が北の潜水艦を監視しており、実際に戦争になり北の潜水艦が出撃すれば、日米に追尾され、核ミサイル発射の様子をみせれば、撃沈ということになります。

国防5カ年計画では、原子力潜水艦をつくろうとしていますが、できたとしても、北朝鮮軍のASW(対潜水艦戦争)能力が、日米に著しく劣るので、これもいざ実戦となれば、すぐに撃沈されてしまいます。

頼みの綱の陸軍ですが、これは旧式ではありながら、韓国のソウルは国境から近いので、かなりの砲弾やミサイルを打ち込めるのは事実です。

だだ、弾丸・ミサイルの備蓄はある程度はあるようなのですが、国内で餓死者が出る始末で、肝心要の食料が十分ではなく、長期にわたって戦闘を継続できるような状態ではありません。

通常兵力では劣る北朝鮮ですが、核の優位を保ち続けることで独立を維持し、金王朝を維持してきたのですが、先にあげたように、米韓に「核共有」され、「ダークイーグル」を配備されてしまうと、その優位性は完璧に崩れることになります。

これでは、金正恩が不眠症に陥るのは当然といえば当然です。核の優位性のない北には、安全保障的には何の優位性もありません、いつ斬首部隊が空から降りてきて、殺されるかわかりません。地下に潜っても、いつバンカー・バスターに攻撃されるかわかりません。

金正恩の立場に立ってみれば、ある日、数十機もの艦載機や、爆撃機が自分襲ってくるかわかりませんし、韓国から米韓合同軍が大挙して押し寄せてくるかもしれません。

最近金正恩は、自分の娘や妻などを伴い、ミサイルの発射を見学したり、公の場に姿を表すようになりました。これは、さまざまな憶測を生んでいますが、このようなこと、特にミサイルの発射の見学などは、プーチンですら娘や妻を同伴させるようなことはしていません。

普通なら誰でも、ミサイル発射など危険を伴うことが考えられますから、家族など同伴しないでしょう。予めスケジューリングされている場に、姿を表すことは、米韓から攻撃されたり、テロリスト等に狙われる可能性もあります。

プーチンの家族は、噂では中央アジアの安全な地下シェルター(宮殿ともいわれている)にいるともいわれています。家族の安全を願うなら、誰でも自分ができる範囲でこのようにすると思います。私としては、不眠症になるくらい不安な金正恩は、娘や妻を同伴して行動することによって、自らの安全を確保しているのではないかと疑っています。

ミサイル発射施設を娘を同伴して視察する金正恩

子どもや、妻を同伴し人間の盾にすれば、米韓軍もさすがにその目の前で、斬首作戦を実行したり、爆弾やミサイルで攻撃したりはしないだろとう見ているのかもしれません。だとすれば、金正恩の精神状態はかなり不安定化しているといえるかもしれません。

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