2023年4月13日木曜日

統一地方選前半で〝維新が躍進〟 国政への影響力も強まる勢い 大阪の「クアッド」勝利で政権の枠組み変わる可能性も―【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

日本の解き方


 統一地方選の前半の投開票が9日に行われた。

 全国で唯一、与野党の全面対決となった北海道知事選挙では、与党などが推薦した現職の鈴木直道氏が当選した。大阪は、府知事選挙で現職の吉村洋文氏、大阪市長選挙で新人の横山英幸氏が当選し、前回に引き続き、大阪維新の会がダブル選挙を制した。

 保守分裂となった奈良県知事選挙は、日本維新の会の新人、山下真氏が当選し、大阪府以外で初めて維新公認の知事が誕生した。

 大阪府議会・市議会で維新が過半数の議席を獲得した。維新は府知事選、大阪市長選、府議会選、大阪市議会選の「クアッド(4つの)勝利」だ。維新は、今回、投票が行われた41道府県議会議員選挙でも選挙前の議席を大幅増加させる躍進となった。ただし、奈良県知事選は、自民の内部分裂による漁夫の利だった。

 維新の馬場伸幸代表は記者会見で「大阪府と大阪市の首長と、議会の過半数を預かることになれば『大阪都構想』に代わる次の大きなテーマを考えていく必要がある」と述べた。

 その上で、公明党の衆院の現職議員がいる大阪と兵庫の合わせて6つの小選挙区にこれまで候補者の擁立を見送ってきたことについて「公明党との関係は一度リセットさせていただく」とし、次の衆院選では擁立する可能性に言及した。これは、国政レベルでの自民・公明の連立にも影響があるかもしれない。

 大阪知事再選の吉村洋文氏は、大阪へのIR(統合型リゾート)誘致は民意を得たとした。過去に2度、住民投票で否決された大阪都構想については、現時点での予定はないが今後の任期4年間で何が起きるかわからないとした。はたして「三度目の正直」なのか、「二度あることは三度ある」のか。

 自民党は奈良県知事選でヘマをやってしまった。ただし、道府県議選では、議席を減らしたがまずまずの戦いをした。

 立憲民主党は、道府県議選で微増だった。大串博志選対委員長は、小西洋之参院議員の「サル発言」について、直接の影響を大きく受けている感じはなかったとしている。

 公明党と国民民主党は、道府県議選でほぼ同数だったが、共産党は党員除名騒動の影響もあってか、減少した。

 これからの国政選挙補選、後半戦の統一地方選で、維新の勢いがどうなるのだろうか。前半戦を見る限り、維新は地方選で着実に力をつけており、国政選挙では地方での底力が基盤になるので、国政への影響も出てくるだろう。

 大阪では、自民と共産が組んでも維新の勢いが止められなかった。

 大阪の「クアッド」勝利で公明の牙城が揺らぎ、自公連立に影響があると、政権の枠組み変更にもなりかねない。

【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

維新は、大阪府議会では過半数を占めていましたが、市議会では達していませんでした。それが、今回の選挙で、市議会で46議席を獲得。初めて過半数になりました。


一方自民党は府議団と市議団の幹事長が落選するなど、惨敗。両議会で大幅に議席を減らすことになりました。 

維新のこの躍進に危機感を覚えているのは、自民党ではなく公明党でしょう。大阪府の衆院選挙区は、19区あります。2021年の選挙では維新が15議席、公明党が4議席を獲得しました。

公明党が獲得した選挙区には、維新は候補を立てなかったのです。それは、市議会で公明党の協力が必要だったからです。しかし今回、市議選で維新が過半数を取りました。公明党に頼らなくても市議会運営ができるようになったのです。

たとえば維新が3回めになる『大阪都構想』を示して、公明党に『全面協力をするなら候補者を立てませんよ』ということだってありうるかもしれません。 どうやら、切り札は維新の手中にあるようです。

維新の馬場代表は、先の参院選をホップ、今回の統一地方選挙をステップ、来たるべき衆院選をジャンプと表現しています。果たして悲願の全国政党になることは可能でしょうか。 

今回兵庫県では、神戸市内の全選挙区で議席を獲得。京都府でも選挙前を3議席上回りましたが、強いのはやはり関西圏です。

北海道、群馬、栃木、香川、埼玉、福岡、熊本などの議会選挙で初議席を獲得したものの、神奈川で取りこぼすなど、関西圏以外では弱さも見受けられます。しかし、各党とも無視できない存在になっていることだけは間違いないです。

10年近く続いた保守的な安倍晋三・菅義偉政権が終わり、比較的リベラルと言われる岸田文雄政権で、もし「保守派の離反」が進むなら、自民党にとって怖いのは、立憲民主党などのリベラル野党でなく、維新などの保守野党です。岸田首相は少し心配した方が良いでしょう。

月曜(10日)朝、統一地方選の結果が新聞報道されるなか、気になるニユースがありました。朝日新聞の世論調査で、岸田政権の少子化対策や防衛増税に国民が冷淡だったのです。

調査によると、少子化対策の取り組みへの評価は拮抗していますが、「少子化が改善するか」との問いには、「期待できない」の61%が、「できる」の33%に対し倍もありました。

さらに負担が今より「増えるのはよくない」は60%で、「よい」は36%。こちらも、ほぼダブルスコアなのだ。国民は政権の少子化対策を「評価しているふりはしているが、効果に期待せず、従って負担増もイヤ」だと考えているのではないでしょうか。





防衛増税に関しては、68%が反対でした。こちらも、最近の日本の安全保障環境が変化したので、防衛費増自体には賛成もしくはある程度は賛成だか、負担増はイヤだということを示していると考えられます。防衛費増自体についてのアンケート結果を出さないのは、朝日新聞の防衛費増自体に反対したいという、願望の現れで、さすが「朝日クオリティー」といわざるをえません。

ネットで「少子化対策で年10万円の負担増」というニュースが流れてきたので、他のソースで調べてみたところ、立憲民主党の山井和則衆院議員が国会の質問で、「8兆円とも言われる少子化対策の予算を(全額)保険料で賄うとすれば、1年間で10万円の負担」と指摘していました。

8兆円全額を保険料で賄うということは現実にはあり得ず、政府側は「負担増ばかりを前面に出した印象操作」と言いたいでしょう。しかし、そもそも政府が国民負担の議論から逃げて財源をあいまいにしているのですから、こういう質問が出てくるのが当然です。

3月31日に出された少子化対策のたたき台では、児童手当や給食費など所得制限をつけずに気前よく配るとしていますが、それで子供が増えるのかどうかはなはだ疑問です。「社会で子供を育てる」と言えば聞こえは良いですが、効果がよく分からない政策のために、自分の負担が増えることに国民は納得しないでしょう。

それに、以前このブログでも示したように、少子化対策の財源を保険料にするというのは、実質増税と同じであり、財務省は「保険領の増額で賄うのはおかしい」という世論を盛り上げ、結局諸費税増税に持っていく思惑があるとみられます。財務省は、防衛増税も同時に成し遂げたいとの思惑があるとみられます。

防衛費は、現行と比べ4兆円増えるので、岸田首相は27年度以降の防衛費は、1兆円強を増税で賄う方針を示しています。無論、これは財務省の意向を反映したものでしょう。

国民としては、少子化対策、防衛費の両方とも消費税増税などで賄えば、負担がかなり増えることを危惧しているのでしょう。これは、当然のことだと思います。

岸田首相は早めに少子化対策や防衛費倍増の、財源をはっきり示すべきです。無論、両方とも増税ではなく、政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取るという方式で実施すべきです。

これは、安倍・菅両政権のコロナ対策で行われた方式であり、安倍元首相の言葉を借りれば、「政府日銀連合軍」による資金の調達です。調達総額は両政権合計で100兆円にのぼります。このような対策を行ったので、日本経済はコロナ禍を経ても現在他国のように酷くは落ち込んではいません。

それどころか、コロナ禍期間中であっても、日本では他国のように大きく失業率が上がることもありませんでした。菅政権は、病床確保には医療村の強烈な反対にあって失敗しましたが、それでも脅威のワクチン接種のスピードで、結局医療崩壊を起こすこともなく、コロナ禍を収束させることに成功しました。

これで、国債の大量発行が、将来世代へのつけにならないこともはっきりしました。もし、この100兆円の調達で何かの不具合がでてくれば、財務省は得たりとばかりに、さまざまな不都合をあげつらい今頃コロナ復興税をすすめているはずです。そうならないのは、現状でも将来的にもそのような危機は訪れることはないからです。

このあたり、財務省は見かけは優秀であるようにみえて、実は 抜けています。財務省の省益に立脚すれば、財務省は過去にそうだったように、まず先にさまざまな屁理屈をつけてコロナ復興税を実施するべきです。そうでないと、結局多くの国民が、100兆円の国債を発行しても何も問題がないことに気づいてしまいます。

もう、多くの国民は気づきつつあるようです。だから朝日新聞のアンケート調査でさえも、負担が増えることに対して圧倒的に反対する人が多いのでしょう。ただ、財務省としては、多くの人を巻き込むことができる、もっともらしい屁理屈が思いつかないくらいに、現状の日本経済はあまり問題がないのでしょう。

現状で増税するのは、少子化対策や防衛費増は、将来世代にも利益をもたらすにもかかわらず、現世代に大きな負担を負わせることになります。そうして、日本ではなぜが減税はほとんど行われないので、現代世代が大きな負担を負うだけではなく、将来世代も負うことになるのです。そのことに、国民は反発しているのです。

しかし、財務省は岸田政権を潰してでも、何が何でも消費税増税をやり遂げようとしているのです。岸田首相はそのことにはやく気づくべきです。そうして、少子化対策や防衛費増には、安倍・菅政権が行ったように、増税なしで、政府日銀連合軍で調達することを政治決断すべきです。

そうでないと、国民の反発はつのり、維新の会が国政においても、躍進するのを許すことになります。連立政権という手もありますが、岸田政権が増税を決めれば、自民党の勢力は衰え、維新の会を参考にして、多くの保守政党ができあがり、自民党はその中に埋没するかもしれません。まだ、統一地方選後半戦や、次の国政選挙の結果をみてみないとわかりませんかが、自民党の保守岩盤増がそれでも良いと思うようになれば、自民党の終わりが始まります。

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