2023年4月2日日曜日

中国外相、半導体規制に反発 台湾問題「介入許さない」―【私の論評】林外相は日本人男性の早期解放を要求し、それが見込めない場合訪問を取りやめるという選択肢もあった(゚д゚)!

中国外相、半導体規制に反発 台湾問題「介入許さない」

中国の秦剛国務委員兼外相(右)と会談する林外相=2日、北京の釣魚台迎賓館

 中国外務省によると、中国の秦剛(しんごう)国務委員兼外相は2日、林芳正外相との会談で、米国が主導する対中半導体規制を念頭に「封鎖は、中国の自立自強の決意をさらに呼び起こすだけだ」と述べ、日本に米国と連携しないよう求めた。

 秦氏は「日本はG7(先進7カ国)のメンバーであり、加えてアジアの一員でもある。会議の基調と方向性を正しく導き、地域の平和と安定に有益なことをすべきだ」と呼び掛けた。G7議長国を務める日本にクギを刺した。

 秦氏は「矛盾や不一致に対し、徒党を組んで圧力を加えることは問題解決の助けにはならず、お互いの隔たりを深めるだけだ」と発言。米中対立を背景に、G7メンバー国などが対中圧力を深めていることを暗に批判した。

 秦氏は、台湾問題について「中国の核心的利益の核心だ」と改めて主張。台湾との台湾との連携を進めている日本に対し、「台湾問題への介入は許されず、どのような形であれ中国の主権を損なってはならない」と警告した。

 日本政府が春以降の開始を見込む東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出については、秦氏は「人類の健康、安全にかかわる重大な問題で、日本は責任ある態度で処理すべきだ」と注文を付けた。

 日本の製薬大手・アステラス製薬の現地法人幹部男性の拘束については、「中国は法に照らして処理する」と主張した。また、秦氏は日本側に「実務協力を推進し、人文交流を増進することを望む」などと発言した。

 中国外務省によると、会談では日中韓協力や朝鮮半島情勢、国連安全保障理事会改革などについても意見交換を行った。

【私の論評】林外相は日本人男性の早期解放を要求し、それが見込めない場合訪問を取りやめるという選択肢もあった(゚д゚)!

中国を訪問中の林芳正外相は2日、秦剛政治局員(外交担当)と会談し、アステラス製薬の社員が拘束されたことに抗議し、早期解放を強く求めるとともに、日本周辺で中国の軍事活動が活発化していることについて懸念を伝えました。一方、首脳レベルをはじめ韓国を含めた3カ国の協議の枠組みを再開することで一致しました。


林外相と泰剛泰剛中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任が対面で向かい合うのは初です。ただし、林氏は会談後、記者団に対し「邦人拘束について抗議し、早期の開放を含む日本の厳正な立場を強く申し入れた」とした上で、「中国において当面予見可能な公平なビジネス環境が確保されること、安全面とともに正当な経済活動が保証されることを強く求める」と伝えたことを明らかにしました。

秦剛主任は法律に基づいて対処すると強調したのは、ようはゼロ回答です。これに対して林外相は「安全面とともに正当な経済活動が保証されない限り、日本企業の中国進出には安全が保障できないと、日本政府として警告する」等というべきでした。
中国当局は先月、日本人男性をスパイ活動に関与した疑いがあるとして拘束。アステラス製薬の広報は、同社の社員だと明らかにしている。共同通信によると、中国では2015年以降、これ以外に少なくとも16人の日本人がスパイ活動の疑いで拘束されています。

日本の外相が訪中するのは3年3カ月ぶり。このあと中国共産党の最高指導部の1人、李強首相とも会談しました。

以前もこのブログで語ったことがありますが、中国と日本とでは、政治体制や組織が異なるので、日本の序列の感覚からいうと、中央外事工作委員会弁公室主任の秦剛氏を外相とするのは間違いです。それは、中国共産党の組織図を見ればすぐわかります。この組織図は古いです。この組織図では、楊潔篪の後釜に秦剛氏がなったということです。


外務省の部長クラスとみるのが正しいです。現在の王毅氏は、政治局員であり次官クラスとみるのが正しいでと思われます。ただ、これが正しいかどうかは、意見が分かれるところだと思います。そもそも、中国では外交はあまり重視されていないようで、日本でいう外交を担当する外務大臣のような閣僚のポストはありません。

中国には選挙が存在せず、その意味では日本でいうところの政治家は存在せず、官僚ばかりと言っても良いような体制で、日本とはあまりに違いすぎるので、日本の閣僚と中国共産党のポストは単純には比較できませんが、日本の閣僚(内閣府大臣など除く)に相当するのは、中国では俗にチャイナセブンと呼ばれる、党常務委員会に属する7人のメンバーといえるでしょう。

このメンバーの中には、外交を専門とする人はいません。それだけ、中国は外交を重視していないということです。

日本のマスコミがなぜ、外交担当中央委員を外相とするのか、全く意味不明です。それに、人民大会を「日本の国会にあたる」などと報道する報道機関もありますが、これも全く間違いです。

選挙がなく、よって選挙で選ばれだ国会議員も存在しない中国に「国会」などありようもありません。中国人民大会は、日本でいえば、官僚の集会にすぎません。一応合議制のようにみせかけていますが、常務委員や常務委員の指示に従って政治局員などが決めた事柄を、追認する機関にすぎません。

首相李強氏は、さすがに日本でいっても少なくとも閣僚以上には相当するので、中国側としても、日本の閣僚としての林外相に、秦剛政治局員だけを面談させるわけにもいかず、李強氏と政治局委員の王毅氏も面談という運びになったのでしょう。

今回の林氏の訪中は、昨年11月の岸田文雄首相と習近平国家主席による日中首脳会談で合意したハイレベル往来の再開に基づくものです。

日中双方の政府関係者によると、中国側はいったん昨年12月27~28日の日程を打診したのですが、中国国内で新型コロナ感染が急拡大したことや、日本側が求めた習氏との面会に中国側が難色を示したことなどから先延ばしにされていました。

林氏と習氏の面会について、日本政府関係者は「中国外相の訪日時には首相が会ってきた。習氏個人への権力集中が進む中、直接対話の機会を確保したい意味もある」と理由を語りました。

これに対し、中国外交筋は「国家元首である習氏と日本の外相では格が違いすぎる。中国側も首相が対応してきた」と反論しました。

こうした状況を受けて、日本側は2月に離任した孔鉉佑・前駐日大使の岸田首相へのあいさつを拒否。双方の思惑がすれ違う展開が続いていました。

今回も林氏と習氏の面会は見送られ、中国側は李強(リーチアン)首相が面会に応じました。それでも日本側が訪中に踏み切ったのは、3月下旬にアステラス製薬の男性社員が拘束されたことが大きいです。

社員が拘束されたのは3月20日ごろとみられます。中国外務省は「刑法と反スパイ法違反の疑いで拘束した」と認めていますが、具体的な容疑事実は明らかにしていません。中国でスパイを取り締まる国家安全省は今後、正式な逮捕や起訴に踏み切る可能性が高いです。そのため日本側は外交を通じた早期の問題解決へ動いた形です。

過去には、2019年9月に刑法と反スパイ法違反で北京で拘束された北海道大学教授が、約2カ月後に解放された事例もあります。当時、中国外務省は「教授が容疑を認め、反省の意思を表明する手続きに応じたことから保釈した」と説明しましたが、中国外交筋は「翌年に習氏の国賓訪日が予定される中で、日本の対中感情悪化を回避するための政治判断でした。最後は習氏が決めた」と認めました。

2019年、拘束の日本人が解放されたことを発表した菅官房長官(当時)

以上を勘案すると、林外相の今回の訪中は、プラスマイナス・ゼロか若干のマイナスというところでしょうか。こうなることは、分かりきっていました。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は2月3日、中国の偵察用気球とみられるものが米本土の機密施設の上空を飛行しているのが確認されたことについて、「容認できない無責任な」行為だと述べました。さらにブリンケン氏は翌週に予定していた中国訪問を急遽取りやめた。

林外相は今回は、アステラス製薬の男性社員の解放を強く要求して、早期解放が見込めない場合には、訪問を取りやめるという選択肢もありました。ただし、早期解放の折衝などは、外務省が継続的に行うなどのこともできたはずです。そのほうが、中国に対する牽制になったと思われます。

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