4日、罪状認否のため、米ニューヨークの裁判所に出廷したトランプ前大統領 |
トランプ氏は2016年大統領選の投票日の直前、一族企業の弁護士を通じて、不倫相手のポルノ女優に13万ドル(約1700万円)を支払ったとされる。起訴内容によると、自らの当選に不利になる情報を有権者に隠す目的で、一族企業の事業記録を繰り返し改竄したという。
捜査責任者のブラッグ地方検事は記者会見で「16年大統領選の公正さを損なう行為だ」と述べた。ただ、ブラッグ氏は民主党候補として地方検事選に当選しており、トランプ氏は、検察の捜査は「政治的迫害だ」と訴えてきた。
ロイターによると、罪状を合わせると100年を超える懲役刑となるが、有罪になっても実際の懲役刑ははるかに短くなる公算が大きい。また、有罪の場合も大統領選に出馬可能との見方も強い。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50・8%で2位のデサンティス氏(24・6%)を引き離している。
罪状認否を終えたトランプ氏は、プライベートジェット機でフロリダ州の私邸マールアラーゴに戻って支持者らを前に演説した。トランプ氏は「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」「これは捜査ではなく迫害だ」と強調した。
【私の論評】起訴でかなり有利になりつつあるトランプの大統領選挙戦(゚д゚)!
マンハッタンにある司法当局の前には多くのメディアが駆け付けました。米メディアだけでなく、世界各国のメディアが詰め掛けました。
マンハッタン地区検察は2016年の大統領選に絡み、トランプ前大統領の捜査を続けてきました。不倫関係にあったと主張する元ポルノ女優に対する口止め料の支払いと、そのもみ消しを図った疑惑の捜査です。
トランプ前大統領は大統領選の直前、不倫関係が明らかになることを懸念し、ダニエルズさんに13万ドル、日本円にしておよそ1700万円を支払った疑いが掛けられています。大陪審の決定を受け、トランプ前大統領は声明を出しました。
トランプ前大統領の声明:「これは歴史上、最大レベルの政治的迫害と選挙妨害だ」
一方、米・メディアによると、ニューヨーク市警はすべての警察官に対し「制服着用のうえ、31日の午前7時に出勤するよう」命じました。
ニューヨーク市警が警戒するのは、トランプ支持者による連邦議会襲撃の再来です。トランプ前大統領の別荘近くには支持者らが集まっていました。
トランプ支持者:「こんな告発が本当にまかり通ると思うの?本当に年を取った馬面の嘘で、トランプ氏を大統領選から排除できると思うの?ほんの一瞬でも信じられません」
支持者が発した馬面という言葉。トランプ前大統領が不倫相手とされる女性を揶揄(やゆ)した表現です。
トランプ前大統領:「馬面を好きになったことなどない。ひどいってほどじゃないが、そんなことはありえない。我々には素晴らしいファーストレディーがいる」
起訴を歓迎する声も聞かれました。
人類史上、経験がないので今後どう展開するかは、まるでシナリオのないドラマです。劇場型の政治の幕がトランプ氏ではなく、民主党側から切って落とされたという状況といえると思います。ドナルド・トランプ前米大統領は4日、ニューヨーク・マンハッタン地区の刑事裁判所で罪状認否に臨み、無罪を主張しました。
その直後に公開された起訴状によると、トランプは3人の女性との不倫関係を隠すために行った一連の口止め料支払いをめぐり、重罪となる第一級ビジネス記録改ざん34件の罪に問われています。
捜査を指揮したNY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事は2021年初めの選挙でマンハッタン地区の主任検事に選ばれましたが、選挙戦では一貫して「自分が検察官になれば必ずドナルド・トランプを有罪にする」と宣言していました。
NY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事 |
犯罪の裏付けの前に、まず特定人物への法的懲罰を公約にしていたのです。またブラッグ氏が選挙戦に際して、トランプ攻撃で知られる大富豪のジョージ・ソロス氏が100万ドルを寄付したリベラル派政治団体から42万ドルの献金を受けていたことも、共和党側からの非難の対象となっていました。
実はスキャンダルの口止め料を払っただけでは違法にはならいため、この案件はブラッグ氏の前任の検事が捜査をしたものの途中で放棄しています。また7年前の口止め料の支払いは、たとえ違法部分を含んでいても時効となる可能性も高いです。
ブラッグ検事は、おそらくトランプ氏側が口止め料支払いに伴い、選挙活動やビジネスの資金の流れの記録を改ざんしたことや、真実を述べないことなどを「重罪」扱いする見通しが強いですが、共和党側からすればこれは列記とした政治的捜査となります。
トランプ前大統領は来年の大統領選への出馬を表明していますが。こうした問題を逆手に取って自分の支持者、共和党の支持者たちをも巻き込んで熱狂を巻き起こして、さらに寄付金も豊富に集めて、今後の大統領選挙の勢いにこれを変えていこうとしています。
実際、イーロン・マスク氏は以下のようにツイートしていました。
マスク氏は、トランプ前大統領が逮捕された場合、彼は「地滑り的に再選されるだろう」と予測しているのです。
トランプ前大統領が起訴されることで、選挙戦が有利になると考える人は、以下のようなことを論拠としているとみられます。
彼の支持層を結集させることができる: トランプ氏の支持者の中には、起訴を政治的動機に基づく攻撃とみなし、選挙戦でトランプ氏を支持する気運が高まる可能性があります。また、支持者の中には、起訴を政治的な意図による攻撃とみなし、選挙戦での支持を強める可能性があります。
他の問題から目をそらす可能性: トランプ氏が起訴されれば、メディアや世間は法的手続きに集中し、他の候補者が掲げている問題には目を向けなくなるかもしれません。これにより、他の候補者から注目を集めることで、トランプ氏が有利になる可能性があります。
彼を被害者として見せることができる: トランプ氏はこれまで、自らを魔女狩りの被害者として描いてきましたが、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができます。トランプ氏は、自らを魔女狩りの被害者として描いており、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができるでしょう。
たとえば、上の記事にもある通り、政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50.8%で2位のデサンティス氏(24.6%)を引き離しています。
起訴が決まる前の米クイニピアック大学の世論調査によれば、共和党の指名争いではトランプがデサンティスを46%対32%でリードしていました。トランプ起訴によって、その差がさらに広まりました。
デサンテスの支持率が低いのは、ウクライナ戦争の見方によるものとみられています。デサンティス・フロリダ州知事のウクライナ戦争についての発言が物議を醸していました。米ワシントンポスト紙コラムニストのヘンリー・オルセンは、3月16日付の論説‘Ron DeSantis’s stance on Ukraine is a serious political blunder’で、「ウクライナ戦争でウクライナを支援してロシアに対抗することは米国の国家利益ではない」とするデサンティスの立場は政治的失策である、と論じています。
実際、このような考え方が、共和党の大勢を占めていた時期もあります。しかし、ウクライナ戦争が長引いた最近ではそれも変わっています。
トランプ氏は、このような問題に関しては、柔軟に対応できますし、過去にもそうしてきました。たとえば、選挙戦においては「アメリカ・ファースト」などといい、米国が世界から孤立する道を選ぶのではないかと危惧されながら、実際に蓋をあけてみると、かなりまともな外交を実践していました。
共和党内で、有利に選挙戦をすすめてきた、トランプ氏は今回の起訴で、さらに民主党に対しても有利になるとみられます。
日本のマスメディアはなぜか反トランプ報道一色ですが、それが一方に偏した魔女狩り的なものになっているかもしれないとの視点を、持つべきです。
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