2023年3月6日月曜日

ウクライナ戦争で大きく変わる世界秩序 米国が中国を抑え付ける好機、日本も自由民主主義国としての連携を―【私の論評】ここ10年が最も危険な中国に対峙して日本も米国のように「準戦時体制」をとるべき(゚д゚)!

日本の解き方


 中国からロシアへの兵器供与を断念するよう米国が求めるなど、米中対立が強まっている。急速に台頭する国が既存の大国と衝突するのは歴史上、珍しいことではない。

大統領補佐官サリバン氏は「(武器供与する)道に進めば中国に代償を強いることになる」と述べた

 覇権国の歴史をみると、ナポレオン戦争終了時(1815年)から第一次世界大戦勃発(1914年)までが英国、第一次大戦終結(18年)から第二次大戦(39年)までの間は米国、英国、フランスの多極体制、第二次大戦終結(45年)から湾岸戦争・ソビエト連邦崩壊(91年)までは米ソの両極体制・冷戦、それ以降は米一極体制だ。

 ウクライナ戦争で、ロシアはウクライナにも勝利できないことが改めてわかったので、米国の対抗になり得ない。台頭してきた中国が唯一の競争相手だ。自由民主主義と専制権威主義の対立である点は冷戦時と変わらないが、多くの発展途上国・新興国にとっては中国モデルが魅力的なものとみえる。

 習近平国家主席は、中華人民共和国成立100周年に当たる2049年に、米国を凌駕(りょうが)する社会・共産主義大国として覇権を取るとしている。その前に台湾統一があり、遅くとも5年以内と多くの専門家はみている。

 中国は経済を発展させることで、中国共産党が権力を持つことを国民に納得させてきた。だが、最近は国民1人当たり国内総生産(GDP)が1万ドルを長期に超えにくいという社会経験則にぶち当たっているように見える。

 となると、ウクライナ戦争で世界秩序が大きく変わろうとしている今、米国にとって中国を抑え付ける絶好のチャンスだ。この好機は2大政党の民主党と共和党も共に認識しているので、誰が大統領でも同じだ。

 米中間で対立が激化したのはトランプ前政権時だが、バイデン政権が発足して以降も緊張関係は続いている。米国はトランプ政権から、5G(第5世代移動通信システム)におけるファーウェイ(華為技術)に象徴されるように、中国企業のハイテク分野での活動を排除した。輸出管理や中国の対米投資に対する審査強化は今後も続く。

 トランプ政権ではヒューストンの中国総領事館閉鎖など産業スパイ対策があったが、バイデン政権下では人権とビジネスに関する規制が一層強化されるようになった。一例が「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」だ。

 バイデン政権では民主党らしく産業政策を重視している。例えば、半導体補助金を含む競争力強化のための大型投資法案「CHIPSおよび科学法」や、史上最大の気候変動対策予算を含む「インフレ削減法」が成立した。

 安倍晋三元首相がかねて各国首脳に説いていた中国の脅威がいよいよ現実化してきた。自由民主主義と専制権威主義の対立であることから、日本としては自由民主主義国としての振る舞いが求められるし、日米同盟も堅持するのは当然だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授)

【私の論評】ここ10年が最も危険な中国に対峙して、日本も米国のように実質上の「準戦時体制」をとるべき(゚д゚)!

ジョー・バイデン米政権が、中国の軍事的覇権主義に対峙する強い姿勢を示しました。ダニエル・クリテンブリンク国務次官補は2月28日、米下院外交委員会の公聴会で、中国による沖縄・尖閣諸島や台湾への威圧に対し、「米国は対抗し続ける」と表明しました。

ダニエル・クリテンブリンク国務次官補

中国とロシア、北朝鮮などの専制主義国家が連携を強めるなか、米国は世界各国で外交攻勢を仕掛けている。識者は「米国が『戦時体制』に入った」と分析しました。 東アジア・太平洋を担当するクリテンブリンク氏は、委員会に事前提出した書面証言で、南シナ海や尖閣諸島を含む東シナ海、台湾海峡をめぐる中国の脅威や挑発を看過しない立場を表明しました。

 米国本土上空に飛来した「偵察気球(スパイ気球)」問題にも触れ、「中国が国内ではより抑圧的に、対外的にはより攻撃的になっていることをさらけ出した」と非難しました。

 米国が制裁対象とする中国の衛星会社「スペースティー・チャイナ(長沙天儀空間科技研究院)」が、ウクライナを侵略したロシアの民間軍事会社「ワグネル」に衛星画像を提供していたことも明かし、中露の連携について友好国と「懸念を共有している」と述べました。

 今後は、中国と「全力で競争」しつつ、衝突を回避すべく「責任あるかたちで管理していく」と説明しました。 米国は、ロシアが勢力圏とする中央アジアへの働きかけも強めています。

 アントニー・ブリンケン米国務長官は2月28日、中央アジアのカザフスタンを訪れ、カシムジョマルト・トカエフ大統領と会談しました。経済などの関係強化で一致した。中央アジア5カ国との定期協議枠組み「C5プラス1」の閣僚会合にも参加し、経済やエネルギー、安全保障など各分野での協力推進を協議しました。

トカエフ・カザフスタン大統領と会談したブリケン国務長官

このブログでは、かねてから中国による台湾侵攻は、中国がASW(Anti Submarine Warefare:対潜水艦戦)能力が日米に比較してかなり低いことや、ロシア軍がウクライナで露呈したように、中国の兵站も脆弱であり、さらに兵員を輸送する船舶も多くはなく、難しいとの見方を掲載してきました。

さらに、台湾軍は開戦当初のウクライナ軍とは異なり、はるかに強力であり、長距離、中短距離、対艦ミサイル、対空ミサイルなどを大量に配備しており、中国が台湾に侵攻すれば、中国軍の艦艇、航空機、さらに中国本土も無傷ではいられないと強調しました。

それは事実です。実際、最近の米軍の軍事シミレーションでも、中国が台湾を侵攻すれば、大打撃を蒙り、侵攻できないとの結果を出しています。ただし、日米も大きな打撃を被る可能性もあるものの、それでも中国は台湾を侵攻できないとしています。

ただし、それで戦争が起きないといえるかといえば、そんなことはありません。侵攻は難しいものの、中国が台湾を武力で威嚇し、さらに台湾軍の艦艇を撃沈したり、航空機を撃墜したり、台湾の軍事基地を破壊したり、現在ロシアがウクライナで行っているように、民間施設をミサイルなどで破壊するということは十分にあり得ます。これは、侵攻ではないですが、戦争の一形態です。このようなことは、十分にあり得ます。

さらに、いきなり台湾を侵攻ということではなく、経済制裁や武力で攻撃しつつ時間をかけてかなり弱らせた上で、侵攻というシナリオも十分にあり得ます。

ただしメデイア等、あまりにも簡単に中国が台湾を侵攻できるかのような報道を安易に繰り返すので、それは違うということを強調したまでで、戦争自体は、どのような形態を取るかは別にして、十分に起きる可能性があります。

結局ロシアのウクライナ侵攻を許してしまい失敗した米国は、アジアではその二の舞いを舞うことはしないことを決意して、米国は事実上の戦時体制に入ったとみられます。

中央アジアにおいては、米中ロが入り乱れて、まるで三国志演義の世界のように、互いに中アジアの国々を自分たちの味方に引き入れようと、競い合ってきました。ブリケン長官が、今のこの時期に中央アジア一の大国である、カザフスタンを訪れたのも、相対的に力が衰えつつあるロシアにかわって、中央アジアでも、中国が台頭することを防ぐためでしょう。

米国の下院に最近設置された「中国委員会」のマイク・ギャラガー氏は、米中の戦略的競争において長期的には米国が有利ですが、10年の短期では危険な状態にあると述べています。中国は人口減少が生む経済問題などから「無謀さを増す」とし、中国に対し米国は対策を誤っていると具体的指摘しています。

台湾有事やインド太平洋戦略で最も重要な海軍の近代化は時間がかかり、その間、防衛線上のサモアやグアムなどの防衛体制や海兵隊の基地の準備が不十分であると指摘しています。

そうして将来の技術を待つのでなく、既存の法や技術、装備の活用を推しています。例えば、日本の防空体制強化のために退役予定の弾道弾ミサイル防衛機能を有す米海軍の巡洋艦シャイロー、ヴェラ・ガルフなどに改善を加え日本に残すことです。

ギャラガー氏は、新委員会の委員長として次のような課題を挙げています。供給網の問題、抗生物質やレアアースなどの過剰な中国依存、中国の殺戮や軍拡への州の年金基金の流用、台湾の防衛強化やインド太平洋諸国との関係強化、共産党中央統一戦線工作部の介入、ロビイング法の甘さや米国の学術組織への影響力、米国の領土や経済安全保障を脅かす土地買収などです。

日本も、将来の技術等に目を向けるだけではなく、現在有しているものの有効活用などを推進すべきでしょう。たとえば、22隻体制を築いた潜水艦隊の有効利用です。新装備品の購入ばかり考えるのではなく、既存の兵器等の弾丸・砲弾・ミサイルなどの供給体制の充実や、兵站の充実で足腰の強い自衛隊を目指すとか、それこそ、ギャラガーが主張していたように、米軍の兵器を譲り受けたり、安倍元総理が生前主張していたように、米国と核共有をするなどです。

令和4年度国際観艦式に参加した潜水艦艦隊

そうして、無論軍事だけではなく、先日もこのブログで示したように、国家安全保障戦略にも示されたように、軍事力に加え、経済・外交・技術力・情報力も合わせた総合力で日本を守り抜くべきです。これは、ギャラガー氏の主張と軌を一にするものとも言えます。

日本もしばらくは、米国のように実質上の「戦時体制」に入り、中国を牽制すべきです。それが、ロシアがウクライナで働いた乱暴狼藉のようなことを、中国がアジアで実施することを思いとどまらせることになります。

米国もいつまでも「戦時体制」を続けることはできないでしょうが、中国の覇権拡大のための無謀な試みはここ10年で最も高まる可能性が強いのですから、そのことを考え、日本もここ10年くらいは「準戦時体制」をとるくらいの気構えをみせるべきです。防衛費も2%にこだわることなく、GDPにも寄与する日本国内の防衛産業を育てることを条件として、3%から4%にしても良いでしょう。10年以内の期限付きでも良いと思います。

ギャラガーのいうように10年もしくはそれ以下で、中国の退潮は明白になり、他の全体主義国家は、たとえ存在していてもその影響力は小さなものであり、世界に平和が戻ってくるでしょう。それまでの辛抱です。中国の覇権に飲み込まれることを考えれば、日本としてもそのくらいのことはして当然です。

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