2023年3月31日金曜日

多くのナゾ残し「捜査終結」安倍元首相の暗殺事件 山上被告を追起訴も…消えた銃弾、遺体の所見に食い違い、動機など不可解な点―【私の論評】岸田首相は、政府主導で委員会を設置し安倍元首相暗殺事件の検証・報告にあたらせるべき(゚д゚)!

多くのナゾ残し「捜査終結」安倍元首相の暗殺事件 山上被告を追起訴も…消えた銃弾、遺体の所見に食い違い、動機など不可解な点

事件直前、奈良市で街頭演説する自民党の安倍晋三元首相。右奥は山上徹也容疑者=昨年7月8日午前

安倍晋三元首相暗殺事件で、奈良地検は30日、山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=を建造物損壊のほか、銃刀法、武器等製造法、火薬類取締法の各違反の罪で追起訴した。一連の捜査は、発生から8カ月超を経て終結したというが、事件にはまだ、多くの謎が残っている。来年以降の初公判とみられる裁判で事実関係がどう認定されるのか。


安倍氏は昨年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中、山上被告に手製のパイプ銃で銃撃されて死亡した。

奈良地検は、約半年間の鑑定留置の結果、山上被告の刑事責任を問えると判断し、今年1月、殺人と銃刀法違反の罪で起訴していた。

山上哲也被告

事件の謎の1つは、「消えた銃弾」だ。

安倍氏には銃弾2発が当たったが、致命傷を与えた1発が行方不明なのだ。「事実関係の立証に支障はない」(奈良県警)とするが、重要な物証が消えたことは確かだ。

「遺体の所見」にも食い違いがある。

安倍氏が緊急搬送された奈良県立医科大学付属病院は、直後の記者会見で、死因は失血死とみられると説明した。弾は首から入り心臓や胸の大血管を損傷、左肩にも、弾が貫通したとみられる傷が1つあったという。

これに対し、県警は司法解剖の結果、死因は左上腕部を撃たれて動脈を損傷したことによる失血死だと発表しているのだ。

このほか、「動機」や「背景」「第三者の関与」「手製銃の威力」など不可解な点は多々ある。裁判員裁判で、検察側が提出する証拠をもとに、どのような事実認定がされるのか注目される。

【私の論評】岸田首相は、政府主導で委員会を設置し安倍元首相暗殺事件の検証・報告にあたらせるべき(゚д゚)!

安倍元首相暗殺事件は、日本にとって未曾有の大事件であり、国民の不安や衝撃は非常に大きいです。警察の捜査に加えて、政府主導で事件の検証・報告が必要かどうかは、検討すべき問題です。

ケネディ暗殺事件のときには米国では当時リンドン・ジョンソン大統領によってウォーレン委員会が設置され、その背景や事情が異なるため、単純に比較することはできません。ただし、過去において政府主導で事件の検証・報告が行われた例もあります。例えば、1995年に発生したオウム真理教の一連の事件について、政府は「オウム真理教事件等に係る内閣調査委員会」を設置して、事件の検証・報告を行いました。

下は、1964年9月24日ウォーレン委員会報告書をジョンソン大統領に提出する委員たちのものです。左から右へ ジョン・ジェイ・マックロイ 、 ジェイ・リー・ランキン、 リチャード・ラッセル、 ジェラルド・フォード、委員長アール・ウォーレン、 大統領リンドン・ジョンソン、 アレン・ダレス, ジョン・シャーマン・クーパー, ヘイル・ボッグス。


ウォーレン委員会は、独自調査として延べ552人の証人喚問を行い、やがて1964年9月に全文約296,000語、全888ページに全26巻(20000ページ以上)、委員会文書1553の膨大な関連資料が付いた報告書がまとめられました。そして 1964年9月24日に調査の結果を報告書(Warren Commission report)としてジョンソン大統領へ提出され、その3日後に一般公開されました。

報告書の結論

1.ケネディ大統領を殺害し、コナリー知事を負傷させた銃弾(複数)は、テキサス教科書倉庫の南東角にある6階の窓から発射されたものである。

2.ケネディ大統領は、最初に首の後ろから入って首の前の下の部分から出た弾丸に撃たれたが、必ずしも致命傷にはならなかっただろう。 大統領は、頭の右後部に当たった2発目の弾丸で、致命的な大怪我を負った。

3.コナリー知事は、背中の右側から入った弾丸が胸の右側を通り、右の乳首の下から出て、右手首に当たった。この弾丸はその後、彼の右手首を通り、左大腿部に入り、表面的な傷を負わせた。

4.発砲がトリプル地下道や、車列の前方から、又はその他の場所から行われたという信頼できる証拠はない。

5.証拠の重みからみて、発砲は3発であった。

6.どの発砲がコナリー知事に命中したかを決定することは、委員会の本質的調査には必要ではないが、大統領の喉を貫いたのと同じ弾丸がコナリー知事の傷の原因となったことを示す、専門家の非常に説得力のある証拠が存在する。しかし、コナリー知事の証言やその他の要因によって、この可能性については意見が分かれている。しかし、委員会のどのメンバーにとっても、大統領とコナリー知事の傷の原因となったすべての銃弾がテキサス教科書倉庫の6階の窓から発射されたことは疑いのないことである。

7.ケネディ大統領を殺害し、コナリー知事を負傷させた銃弾(複数)はリー・ハーヴェイ・オズワルドによって発射されたものである。

8.オズワルドは、暗殺の約45分後にダラス警察のJ.D.ティピット巡査を殺害した。

9.ジャック・ルビーは1963年11月24日午前11時17分過ぎにダラス警察署の地下に入り、午前11時21分にリー・ハーヴェイ・オズワルドを殺害した。ルビーの侵入手段に関する証拠は決定的ではないが、証拠の重みから、ルビーはメイン通りから警察署の地下に通じるスロープを歩いたと考えられる。ルビーがオズワルド殺害に際してダラス警察の職員に助けられたのではないかという噂を支持する証拠はない。
10.委員会は、リー・ハーヴェイ・オズワルドまたはジャック・ルビーのいずれもが、ケネディ大統領を暗殺するための国内外の何らかの陰謀に加わっていたという証拠を発見していない。 
11.委員会の全調査において、連邦、州、地方のいかなる役人による、米国政府に対する陰謀、転覆、背信の証拠も見つかっていない。

12.委員会は、オズワルドの動機について決定的な判断を下すことはできなかった。 
13.委員会は、今回の調査で明らかになった事実によって、大統領警護の改善を勧告せざるを得ないと考えている。

ただ、この結論には今なお多くの米国民が納得しておらず、未だケネディ暗殺に関しては、様々ななところで議論されている状況です。最近でも、SNSなどで活発に議論されています。 

ケネディ大統領は1963年11月22日、テキサス州ダラスを訪問中に狙撃された

安倍元首相暗殺事件についても、政府主導での事件の検証・報告が必要かどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。政府主導での検証・報告には、警察や検察などとは異なる視点から事件を見ることができるというメリットがあります。一方で、政府主導での検証・報告が、事件の真相を隠蔽する可能性や、事件を政治利用する可能性があるというリスクもあります。

安倍元首相暗殺事件について、政府主導での検証・報告が必要かどうかは、今後の裁判などの状況を踏まえながら、慎重に判断する必要があると言えます。

ただ、上の記事でも指摘されたようなたとえば「消えた弾丸の行方」「遺体の所見」の食い違いなど初歩的ともいえるような疑問点は、少なくとも払拭すべきでしょう。できれば、裁判に明らかにすべきです。しかし、これすら明らかにならなければ、政府主導で、米国のように委員会を構成し、検証・報告させるべきです。

政府主導で事件の検証・報告を行う場合、以下の留意点が考慮されるべきです。

1.独立性の確保:政府主導での検証・報告が、事件の真相を隠蔽したり、政治的利用がなされることを防ぐために、独立した調査委員会を設置する必要があります。調査委員会のメンバーは、事件に関係のない第三者や専門家で構成されることが望ましいです。

2.透明性の確保:調査委員会の報告書は、公開されることが望ましいです。また、報告書作成のプロセスも公開されることで、報告書の信頼性が高まります。

3.時限の設定:調査委員会には、期限が設定され、その期限内に報告書を作成する必要があります。期限を守ることで、無限に検証・報告が続くことを防ぎます。

4.資金の確保:調査委員会には、必要な資金を充当することが必要です。資金不足が原因で、調査・報告が不十分なものになってしまうことを防ぐために、十分な予算を確保する必要があります。

ケネディ暗殺事件のように、事件の真相が解明されない場合には、調査委員会は、不十分な点を明確にし、後の調査方針や検証方法を示す必要があります。さらに、調査委員会の報告書には、真相解明に向けた新たな情報提供を呼びかけることで、事件の解明に向けた展開を期待することができます。

私自身は、裁判の結果などにかかわらず、国民の不安や疑問を払拭するためにも、岸田政権は委員会を設置し、この問題の解明にあたらせるべきと思います。

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