日本人向けアニメの最大級海賊版サイト・B9GOODの運営者ら4人を刑事摘発
かつてのB9GOODのサイト画面 現在はサムネイル等もみれません |
日本人向けアニメの海賊版サイトとして最大の規模を誇るB9GOODの運営者ら4人が、中国江蘇省の公安局により刑事摘発された。
アニメを中心にドラマや映画が配信され、日本からのアクセスが約95%を占めていたというB9GOOD。2月14日に重慶市在住の33歳無職男性Aの身柄が拘束されるともに取り調べが行われ、2月18日から3月21日にかけて成都市在住の30歳会社員女性B、上海市在住の38歳無職男性C、福建省福州市在住の34歳自営業女性Dに対して家宅捜索と在宅での取り調べが実施された。
刑事事件化を一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)に要請したのは、アニプレックス、テレビ東京、東映アニメーション、東宝、日本放送協会、バンダイナムコフィルムワークスの計6社。そのほか複数のCODA会員社も、同サイトに掲載されていた作品の被害確認で調査協力を行った。CODAからの刑事告発で中国の海賊版サイトの運営者やアップローダーが刑事摘発されたのは今回が初となる。
主要関係者の刑事摘発とサーバーの解析捜査が行われたのち、同サイトは3月27日に完全に閉鎖。男性Aは保釈保証金を納付し、3月19日に保釈された。公安の調べによると、男性Aはサイトの運営およびアップロードを認めているという。男性Aが同サイトの広告から得た収入の一部で購入していた400万元相当(約8000万円)の住宅はすでに差し押さえられているが、公安は男性Aがこれまでに600万から700万元(約1億2000万円から1億4000万円)を得ていたと見て裏付け捜査を進めている。
また男性Aは女性B、Dと面識があり、報酬を支払ってアップロードさせていたと供述。女性Bは3万元(約60万円)、女性Dは8万元(160万円)の報酬を得ていた。男性Cはほかのストレージサイトに違法コンテンツをアップロードし、B9GOODからのリンクで誘導、独自の広告を表示する方法で広告費を稼ぎ、これまでに30万元(約600万円)の収入を獲得していたとされる。今後被疑者らは起訴され、刑事裁判手続きに入る予定だ。
CODA代表理事・後藤健郎氏コメント
この度、B9GOODの運営者やアップローダーが中国で刑事摘発されました。
日本人向けアニメの海賊版サイトとして最大規模のB9GOODがついに刑事摘発されたことの意義は大きく、今後の国際的な海賊版対策や国際連携・国際執行の強化に資する大きな成果であると考えます。著作権侵害行為は中国で行われていましたが、サイトへのアクセスは約95%が日本からのものでした。運営者は日本から集まる膨大なアクセスで広告費を稼いでいたのです。日本から海賊版サイトを大量視聴することで、海外の犯罪者に多額のお金が流れています。そして日本の権利者には1円も還元されることはありません。著作権を保護することの大切さを再認識していただくとともに、どうか海賊版サイトではなく、正規のコンテンツを視聴してください。
【私の論評】中国内での合法的な日本アニメのさらなる規制も強まる予感(゚д゚)!
B9GOODは2008年に「B9DM」というサイト名で開設。その後サイト名とドメインを「b9good.com」に変更し、Web解析ツールの「SimilarWeb」によると21年3月から23年2月までの2年間で3億回以上のアクセスを集めていました。閲覧者を違法コンテンツへ誘導する、いわゆるリーチサイトの“リンク元”としても機能していました。22年9月に北海道警が摘発した「全話一気に視聴するならココ!!(アニメ)」もB9GOODにアップロードされた動画へ誘導していたことが分かっています。
B9GOODの刑事摘発は、間違いなく日本にとっては良いことなのですが、私には素直には喜べないところがあります。
中国ではテレビの普及とともに1980年代以降、日本からさまざまなアニメ番組が輸入されました。「一休さん」、「ドラえもん」、「ドラゴンボール」、「聖闘士聖矢」など日本国内でもおなじみの作品を中国の子供たちは観て育ち、その作品は今はすっかり大人となった中国人の脳裏に刻み込まれています。
2000年以降はインターネットで作品の配信も行われるようになり、日本のアニメやゲームは中国社会に大きな影響を与えています。
中国社会の中に日本のアニメやゲームの文化がすっかり根付いてしまっているのは確かですが、こうしたなか習近平政権は日本のアニメやゲームなどを狙い撃ちし始めていました。
2015年6月に上海で開かれ国際映画祭に合わせて日本の作品が紹介されましたが、日本国内でも人気が高い「進撃の巨人」は上映できませんでした。この時は、その理由が明らかにされませんでしたが、中国文化省は映画祭に先立って、「進撃の巨人」や「寄生獣」など38作品のリストを公表。インターネットでの配信を禁止する措置を取っており、この影響を受けたとみられています。
38作品をリスト化した表向きの理由は「未成年者の犯罪や暴力、ポルノ、テロ活動をあおる内容が含まれる」というものですが、中国政府や共産党の見解を額面通りに受け取るような人はよほどのお人好しでしょう。
人間を捕食する「巨人」が支配する世界で、築いた壁の内側で戦きながら暮らす人類がやがて「巨人」との戦いを決意する「進撃の巨人」は、中国共産党の支配力が着実に浸透している香港に重ね合わせることもできます。巨人=中国共産党であり、人類=香港の人々という具合に。「進撃の巨人」は世界中でファンを獲得したが、香港でも大きな反響を呼びました。
2015年春には北京テレビが「名探偵コナン」を取り上げ、「アニメ作品の旗を掲げた、あからさまな犯罪の教科書だ」と批判。また、2014年9月には成都市共産党委員会機関紙の成都日報が「ドラえもん」にかみつきました。成都日報は「ドラえもん」が2020年東京五輪招致の際に招致スペシャルアンバサダー(特別大使)に就任したことなどに触れ、「ドラえもんは国家としての価値観を輸出し、日本の文化戦略で重要な役割を果たす」と主張。むやみに親しみを持たないように呼びかけました。
これだけ中国政府や共産党が日本のアニメやゲームの文化に対して警戒感と敵愾心を示すのは「たかがアニメやゲーム」と侮れない発信力があると認識している明らかな証拠でしょう。
このあたりのことは、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
幼少の頃に文化大革命に遭遇し、後に日本に帰化した石平氏は、「この結果、中国では論語の心や儒教の精神は無残に破壊され、世界で屈指の拝金主義が跋扈するようになった」と批判しています。中国では、文化財などの保存もいい加減であり、とても、過去の先達の知恵を継承しようなどという考えがあるとは思えません。古代中国の知恵を自分たちの血とし、肉として、それを現代に至るまで継承してきたということでは、日本のほうが現代中国よりも、古代中国の知恵の継承者として、数段上にあると言っても良いくらいです。誰でも、一度は漢文に接したことがあることでしょうし、習字をしたこともあると思います。さらに、私達の生活習慣の中にも、古代中国の知恵や文化が息づいています。
これに関しては、上の写真を見ても理解できます。上は、日本の安倍総理による習字と、習近平のものを対比したものです。
これを見ても、どちらが古代中国の文化や知恵、徳の継承者であるか良く理解できます。そうは、言っても、日本でもとても古代中国の文化を継承しているとは思えない人もいます。それは、以下の写真をご覧いただければ、おわかりいただけるものと思います。
このような例外は、除いて、普通の日本人なら、古代中国の徳や、知恵が体に染み付いています。日本のアニメや、ゲームも作者は意識していなくてもそうなので、それが意識しなくても、作品に現れてしまうのです。それを中国共産党は、自分たちの統治の正当性を脅かすものとして、警戒感と敵愾心を示すのです。
その後もアニメなどに対する中国の締め付けは継続されています。中国の放送規制当局、国家広播電視総局(広電総局)は2021年9月24日遅くに公表した通知文で、オンラインで配信するアニメーション動画の制作者に対し、「健全な」作品をつくるよう求め、暴力的だったり、低俗で性的だったりするコンテンツを排斥するよう促すと表明しました。
広電総局は、アニメ動画は子どもや若者が主な視聴者だと指摘。各適格機関は「真善美を発揚する」コンテンツを放送する必要があるとしました。
中国共産党は当時から、エンタテインメント業界に対する締め付けを強化していました。
それまで、中国ではテレビやネットでのアイドル育成番組が人気で、歌やダンスを披露するアイドルの卵に若者らが投票したり、審査員がアドバイスする番組が複数ありました。しかし政府は、2021年から芸能人の「人気ランキング」や「投票行為」や未成年の「投げ銭」を禁じた上、これらの放送をすべて禁止としました。
芸能人の「人気ランキング」や「投票行為」は民主的な選挙を連想させ、政府の統制が行き届かないところで大きな集団が形成され、中国共産党に対する批判が行われることを警戒してのことのようです。
さらに中国共産党は、テレビ局に対しても強い規制をかけ、主要BS放送4社に「娯楽性を求めるな」と是正命令を出し、過度のエンターテイメント性を追い求めず、ファン文化を助長せず、「高い政治的意識をもって」(中国語:政治家辦報)番組の制作にあたるように命じ、中国共産党に対して従順でない芸能人の起用も禁じました。
「政治家辦報」とは、毛沢東が1956年にメディアのあり方について述べたときに使用した言葉です。
これらの規制に対して、ファンや有識者からは「まるで文化大革命だ。国は一つの声しか許さない」「中国社会はとっくに終わっている。だれも庶民の声を聞かない」「毛沢東の独裁時代に戻り、洗脳を強めていく」との批判が相次いでいました。
これらの規制の煽りを受け、有名タレントの脱税の摘発も強化され、自主廃業に追い込まれている芸能プロダクションは、2021年8月末時点で700社以上に及びました。
また、中国当局は2021年8月30日、ネットゲーム運営企業に、未成年のプレイ時間を「金、土、日の各20~21時の1時間」、つまり週に3時間までに限定するよう命じ、他にもネットゲームアカウントの実名登録制の徹底も要求しました。
中国共産党は、6年前からネットゲームを「毒物」扱いし、敵視してきました。
理由については「若者のゲーム依存を防ぐため」などと説明していますが、ここにも政府の統制の及ばないところで、不特定多数の人が集まることへの警戒があると見られています。
このように中国共産党は、政府に反発する集団が形成されることを極端に恐れており、様々な産業に対する取り締まりを強化していますが、これでは中国経済はますます衰退の一途を辿っていくばかりです。
こうした、背景のもとに、「B9GOOD」のサイトも閉鎖されたと考えられます。無論このサイトは、違法サイトであり、いずれの国においても閉鎖されて当然です。
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